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スパロボにおける『機動戦艦ナデシコ 』テンカワアキト救済の歴史

機動戦艦ナデシコ The Prince of Darkness』というアニメ映画があった。

テレビアニメ『機動戦艦ナデシコ』の続編でありながら皮肉混じりのコメディタッチで描かれていたテレビ版の作風に比べ全体的にシリアスタッチで描かれてており、賛否両論起きた映画である。

劇場版 機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-

 

テンカワアキトという存在

テンカワアキトという人物はテレビ版では主人公であり、コックであり、ゲキガンガーを愛し、ヒロイン達からは愛され、時間跳躍ができるA級ジャンバーだった。

確かにアニメの時からハーレムで羨ましい展開はあるものの目の前で故郷の人達が惨殺されたり、無理矢理パイロットやらされてたり、仲良くなったばかりのパイロット仲間が瞬殺されたり、自分の両親を謀殺した企業の下でこき使われたりしてコメディタッチであるものの芯にあるのはシリアスで残酷な物語であった『機動戦艦ナデシコ

だが、最後は色々投げ出してヒロインのユリカと幸せなキスをして終わるというハッピーエンドで終わり多くの視聴者はアキトとユリカのこれからの幸せな光景を想像したと思う(ここら辺の幸せな光景は『AからBへの物語』という小説を読めば更に補強出来るがその分映画を観るのが辛くなる) 

そんなテレビ版から劇場版ではいきなりアキトとユリカの葬式から始まるという衝撃的シーンで幕が上がった。

そしてアキトがA級ジャンバーという珍しい個体であるため人体実験で頭を弄られ五感を失い得意だったラーメンを作れなくなりコックには戻れないという衝撃の真実が明かされる。そんな彼は黒衣の姿を身にまとい誘拐されたユリカと奪還と復讐に燃える男になっており、最後は復讐をやり遂げるもユリカに会うことなくどこかに去って終わる。

確かにブラックサレナの格好良さ含めてテレビ版よりある意味魅力的になっている彼だが、本当に不憫というか救いがないというか。

私は続編を望んだが、20年以上待ってもそんな話は出てこない。

最近は『エウレカセブン』や『コードギアス』『マジンガーZ』など同窓会的映画も続々制作されているが、『ナデシコ』は本当に続編が出ない。

確かに、映画で復讐という目標は達成しているのである意味ハッピーエンドとも言えるし、そもそも復讐のために多くの人を犠牲にしたアキトが幸せになってもいいのかという根本的な問題もある(同じような問題があった『コードギアス』は映画ではそこら辺の責任はなぁなぁになってしまった)

 

実際問題続編の製作には色々問題があるのかもしれない。そんな絶望な私たちを救ってくれるものがある。そう、『スーパーロボット大戦シリーズ』(以下スパロボ)である。

スパロボは説明不要のロボットアニメ共演ゲームであり、本編で死んでしまった味方などがそのまま使えるifを楽しめる作品でもある。

そんなスパロボで『ナデシコ』は優遇されており、マジンガー、ゲッター、ガンダムの御三家に続く作品とも言えるぐらい参戦している。

その中でアキトも何度も救済されており、映画で悲しい思いになったファンの心を癒してくれる。

スパロボにおけるアキトの救済の歴史をシリーズ毎に書いていく。

 

テンカワアキトのスパロボ

スーパーロボット大戦R 

機動戦艦ナデシコ The Prince of Darkness』の初参戦携帯機スパロボである。

タイトルの「R」は「Reversal(逆転、反転)」という意味でありストーリーのテーマも歴史改変物。

最初の数話が劇場版であるが、ナデシコCが撃墜されたり原作以上に鬱な展開になる。

そしてそのまま過去に遡りテレビ版の話しになるという衝撃的な初参戦とも言える。

最終的に未来が変わったためにアキトやユリカが劇場版の不幸な展開に陥ることなくハッピーエンドを迎えられた事は良いが劇場版がないことになってしまうのはやはり内なるヴァンさんが否定する。ただ、テレビ版のアキトがブラックサレナに乗るという珍しいモノが見れるのは良い。

 

スーパーロボット大戦MX

Rとは違い、テレビ版ではなく劇場版が最初から最後までメインである。

エンディングで劇場版と同様にどこかに去ったアキトが黒衣の姿を捨てて再びユリカに会って終わるという、素直に「これが見たかった」という終わり方をする。本当にスパロボありがとう。

難点は原作再現していてかつ火星の後継者との決着が終盤になるためアキトが仲間になる所がほんの数話しかないところ。

 

スーパーロボット大戦

スーパーロボット大戦W(特典無し)

本作の大きな特徴として二部構成になっており、一部でTV版、二部で劇場版を再現している。

原作では3話で死んでしまうガイが無条件で仲間になるし劇場版展開になる第2部では本作オリジナルの劇場版仕様のフェイスグラフィックでまさかの登場する。ガイ仕様のエステバリスカスタムも当然用意されており、黒衣の姿のアキトとの合体攻撃もあるのはもはや伝説。

また、アキトも一部で主人公他仲間と顔見知りになっているため復讐鬼になった後もみんなアキトの心配してくれて涙が出てきますよ。

ただ難点はMXと一緒で参戦が遅い所。

エンディングではアキトはリハビリをしながら少しずつ五感も良くなってきていて、ユリカと共に食堂を開いているという幸せそのものな終わり方をする。スパロボありがとう。

 

スーパーロボット大戦

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劇場版ナデシコファンは全員このゲームやってくれ

と言える優遇さがあり、今までの不満点だったアキトの参戦が大幅に前倒しになり積極的に他作品とクロスオーバーしており、ユリカもナデシコCのサブパイロットとして参戦。

ユリカとの再会シーンでは本作独自のボイス付きイベントが用意されているなど、20年間見たかったあの光景を聞きたかった会話を望んでいた展開が全てここにはある。待っていたファンへのご褒美的ゲームだ。スパロボありがとう。ちなみにユリカを救い出した以降のアキトは所々で以前の明るさを取り戻しているかのような描写があり、 「ダイコウジ・ガイについて教えて欲しい」と聞かれた際に「まず『ゲキ・ガンガー』を全話見るところから始めよう」と返す茶目っ気があるアキトが可愛い。

 

スーパーロボット大戦

【PS4】スーパーロボット大戦T

テーマは復讐

第4話というかなり序盤に数話参戦し、その後暫く自軍を抜けるが、そこそこ序盤の内に戻って来る為、総参戦話数は『V』を抜いて歴代トップになった本作。

同じ復讐鬼のヴァンがいたり、復讐経験者のドモンがいたり、みんなアキトに理解度が高い。特にアキトとユリカの再会時、ユリカと顔を合わせず去ろうとするアキトに対し、「そいつはお前のタキシードだろ?花嫁を迎えるための」「お前も嫁さんもお互いに生きてんだ。行けよ」とヴァンが背中を押すシーンは、『ナデシコ』好きにも『ガンソード』好きにも堪らなく込み上げてくるものがあるだろう。これこそ私たちが観たかった『機動戦艦ナデシコ The Prince of Darkness』がここにあった。完全にねつ造なんだけど、ボイスあり、イラストありでやってくれて完璧である。ありがとうスパロボ。ちなみに完全にアキトのメンヘラなストーカーと化した北辰も面白い。

 

スパロボというゲーム

原作では救えそうにない人を無理矢理救ったりすると叩かれたり、救わない方が作品としての完成度が高くなることって多いと思うんですよ。死んでたと思ってた人が生きてた展開は萎える一面もありますし、ただ、本編じゃないからこそ。お祭りだからこそ出来る事があると思います。まさしくスパロボのアキト救済はファンからしたら「一時の夢」なんですよね。夢なので原作には影響しないですが、一度だけではなく何度も様々な形の夢を見させてくれます。そんな夢だからこそ救われるモノがあると私は思います。

 

ロボットアニメはどうしても人の死を避けれないジャンルだと思いますし、自分の好きな人が死んでしまう事もあると思います。ただ死んでしまってもいつかスパロボに参戦して自分の手で救えるという希望を持つことが出来るゲームだと思うんです。

今後、スパロボは私達にどのような夢を見させてくれるのでしょうか。