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『ライザのアトリエ』レビュー。太ももに魅力され近寄ると限界ド田舎の憂鬱さにビンタされる

 

「その太ももで錬金術士は無理がある」とゲーム発表時から言われ続け、その太ももで日本ゲーム大賞2019「フューチャー部門」を受賞し、その太ももで国内販売15万を超え「アトリエ」シリーズ最高のスタートダッシュとなった本作。

確かにライザの太ももが素晴らしいのは当然だが、このゲームの魅力はそれだけではなく、そもそも太ももに騙されてこのゲームをやると「新しいモノを拒否する排他性と狭すぎる人間関係にどうにもならない閉塞感が複雑に混じり合いまるで地獄のような糞田舎」を体現したストーリーでもれなく死ぬ。私は三回ぐらい死んだ。

そんな本作『ライザのアトリエ』の感想を書いていくよ。

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 「田舎は死ね」ストーリー

シナリオは『灼眼のシャナ」でおなじみの高橋弥七郎先生。

あらすじ

湖の中に浮かぶ「クーケン島」という田舎島に住む主人公、ライザリン・シュタウト(通称ライザ)とその幼馴染であるレント、タオは各々の生活の中で退屈や不満を感じ、変化を求めていた。そんな中、島を訪れたクラウディアとその護衛を務めていた錬金術士であるアンペル、その仲間のリラと出会うことで、友達を増やし、技術を学び、力をつけ、冒険の幕が上がる。

といった流れだ。

一言で言うと「クソ田舎の閉塞感に抗う少年少女達のひと夏の冒険」といった感じで、東京出身以外の人は誰でも共感出来る内容になっていると思う。東京出身は知らん。

 

主人公のライザは冒頭から「自分はなんてことのない農家の娘(そんな服がはちきれそうなのになんてことのないは無理だろとは思う)と様々な事を諦めつつ、このまま糞田舎で何者にもなれず何も成し遂げる事が出来ない現状を「そんなのいやだ!」と誰にも聞こえない叫び声を上げ、同じ苦しみを抱いた同世代の仲間と共に未来が見えないまま行動していく中で、ほんの少しの勇気で踏み出した所に「錬金術」という可能性に出会う。

そんなちょっとした奇跡から始まる冒険に東京出身者以外、誰しも涙が出てくる。

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↑ウニは海ではなく木から落ちるぞ。私は気が狂ってる訳ではないぞ

 

そして見慣れた何でもないクソ田舎の風景は「錬金術」を覚えた途端、素材に溢れ、文字通り輝き出す。私たちも夢や希望を持つと、今まで何でもなかった風景が輝き出す事があったと思う。ここら辺の表現が本当に上手い。

ただ、クソ田舎に対してフォローがあるのかなとストーリーを進めても、更にクソ田舎が嫌いになるイベントの連続で、脚本家の「田舎はどうしようもない程糞!」という新海誠に通じる気概を感じてしまう。

 

ただ、主人公のライザは本当に良い娘で、どんな時も健気で優しく、諦めず、周りへの気遣いも出来て、底抜けに前向きで明るい。クソ田舎のクソな大人達と相反されてライザへの好感度がうなぎ登りになる。こんな娘が欲しい(直級)

 

散々クソ田舎クソ田舎と書いてきたが、大冒険を通してライザの心境が変わり、成長していく中で、「まぁこんなクソ田舎でもライザは生まれ育った所だしな、あんまり悪口いうのは程々にしておこう」とプレイヤーも一緒に成長するようになってくる。

 

ストーリーに関しては本当に良く出来ていて、中盤の田舎へのヘイトが爆発する所で腸が煮えくり返る衝動を我慢さえすれば、後は最高のジュブナイルな物語を堪能出来るだろう。

 

ひと夏の冒険という輝きと切なさを内包した、アトリエの中でも屈指のEDだと思うので、ここから先はあなたの目で確かよう!(ゲーム発売日と同時に発売される攻略本並)

 

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↑アンペル先生は男ながら、このゲームで一番可愛いと思う。基本的に男も可愛いゲーム

 

採取と調合

「アトリエ」シリーズの代名詞であり、このゲームの核でありながらある意味ラスボスの「錬金術」こと調合システム。

調合システムは今までのシリーズと違い、ツリー表示を採用し、より分かりやすくなった。それぞれに対応する素材を投入していくことで、簡単に完成するものになっており、「おまかせ材料投入」機能を用いれば、オートで調合することも可能だ。

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モノを完成させるだけなら容易だが、品質や効果、能力の上昇を狙っていくと途端に時間泥棒になる。
素材を集め、自分で選び、調合し、新たな何かを生み出す。
一見面倒にみえるこの一連の作業が楽しい。

 

必要な素材もどこでどうやって入手出来るのか詳細に確認出来るし、また、ファストトラベル機能が完璧でどんな時でも瞬時にどこでも移動出来たり(序盤は掲示板経由でのファストトラベルだったり、ライザの部屋にしか戻れず不便だが、途中でどこにでも行けるようになり、世界が変わる)ゲームデザインが気持ち良く集中して採取と調合を繰り返して出来るようにされており、もう一度言うが時間泥棒である。

 

また、今回はアイテムが使い捨てではないという事が大きい。
従来のアトリエシリーズでも錬金術で作った爆弾などを駆使して強敵と戦うのだが、せっかく強いアイテムを作っても使ったらなくなってしまうので、若干虚しさを感じられずにはいられなかった。
本作では爆弾や薬などの従来は消耗品だったアイテムが使ってもなくならず、装備と同じようにキャラクターに持たせて永続的に使うことが出来る。
そのため、爆弾などのアイテムも最高の一品を作ろうというモチベーションが生まれ、ストレスと虚無がなくなっている。こういうのをヌルゲーと叩く人がいるが、このぐらいの温度が丁度良いのである。今までが火傷をしていたのだ。

 

本作は過去作の当たり前を見直し、ノーストレスな設計を心がけているのが遊んでいてよく分かり、信頼できる作りになっている。

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図鑑で確認し、採取地に出掛け、素材を採取してきてアトリエに戻り、部屋で調合をおこなう。新しいアイテムなどが出来てくると、また素材が足りなくなり、再度採取地に遊びにいく。その繰り返しが気持ち良く、また自分が強くなっていってる事を実感しやすいので更なる「高み」を目指し、冒険したくなる。

 

また、調合やり過ぎて、ストーリー的にどこに行けば良いのか分からなくなってもあらすじに行き先も書いてある親切設計なので、問題ない。本作は至る所が親切心で出来ている。ゲームシステムとしてのバリアフリー化が素晴らしい。

 

バトルシステム

従来の「アトリエ」シリーズは、ターン制のコマンドバトル。静的なものだったが、本作ではシリーズ初のアクティブバトルが採用され、バトル全体のスピード感が上がり、コマンド選択時も時間が経過するため、的確でスピーディな状況判断力が求められるので、最初は色々戸惑うだろうし、難しいと感じる人もいるだろう。

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「慣れ」は必要だが、出来ることが増えれば増えるほど(後半になればなるほど)楽しくプレイ出来る。

 

バトルの攻撃手段の基本はAP(アクションポイント)で管理される。APは通常攻撃などでモンスターにダメージを与えることで貯める事ができ、スキルなどを使用する場合はAPを消費する。また、CC(コアチャージ)を消費し、アイテムを使ったり、仲間からの提案“アクションオーダー”に応えることで、強力な追撃を発生させたり、APを全消費して必殺技を使ったり、敵が必殺技を放つ前にブレイク状態(気絶)にして邪魔したり、その時々の状況を見てどう動くかという判断して動かないと駄目な為、「やることが、やることが多い!!」状態によくなる。

しかし、そのほどよい忙しさが気持ち良く、短時間でも「戦った~」という充実感がある。

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↑基本的に戦闘中は画面がずっとうるさい

 

戦闘も寄り道せず、調合もあまり極めないまま進めると歯ごたえある難易度であり、うっかり雑魚敵に瞬殺されてしまったり、苦戦する。ただ、このゲームは調合ゲーなので、少し調合を頑張り過ぎると途端に敵がクソ雑魚化する(難易度は変えれるが)

 

また、ネタバレになるので詳細は書かないが、本作のラスボスは普通にプレイしていると非常に難易度が高く、苦戦する。私はそれまで順調だったがラスボスで詰まって10時間ぐらい準備することになった。

他のRPGみたいにレベルを上げて物理で殴っても勝てない。また、攻略サイトをみて参考にしようと思っても軒並み糞で薄い攻略サイトばかりで全く参考にならない。モンハンぐらい大きなゲームなら腐る程有力な攻略サイトもあるが、こういう中堅所はまぁ参考にならず、自力クリアを目指すしかない。

詳細が殆ど調査中のサイトを検索上位に置くのはやめろと声を大にして言いたい。

ラスボスに関しては別途攻略記事を書くと思う。

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↑こいつの名前はタオ。四人目が仲間に入った時、10割の人がパーティから真っ先に外す事になるキャラだ。

 

グラフィック

まずは黙ってこの動画を見て欲しい。

 

どうだろう、最高ではないだろうか。

RPGってどうしても背景がいくら変わっても段々と移動が面倒になったり、だるく感じるようになってくるが、本作ではライザの尻がメインコンテンツと言っても良いので、いくらでも移動が出来る。全然飽きない、尻、最高☆

 

また、「鮮やかな青空」や「街で聞こえるセミの鳴き声」が”夏感”を醸し出しており、今作では、光の表現をブラッシュアップしたとインタビューで言ってる通り、それが非常にストーリーともマッチして良く出来ている。

 

物語をクリアする頃には、現実ではクーラーがガンガン効いた部屋で親に心配されながら引きこもっていても夏を堪能した!という気分になる。

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また、このゲームはジャンプをすることができるのだが、あきらかに他のゲームとは意図が違う。

ジャンプした所で、どんな小さな障害物でも飛び越えれないし、ショートカットも殆ど出来ない。では何の為にジャンプ機能があるのか。それは間違いなく「ライザの胸を揺らすためだけ」に実装された操作だと思う。

製作陣はアホなのだと思う。

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↑こういう無意味に狭い道があり、必然的にライザの胸に目がいってしまう。

製作陣はアホなのだと思う。

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↑アプデで追加されたライザのお尻に目がいく狭い通路。わざわざこの為にアプデ追加する製作陣はアホなのだと思う。

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↑雨が降ると服が濡れ、よりエチチってなる。こだわりが凄い。

製作陣はアホなのだと思う。

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↑ライザの二倍は大きい胸をもつリラ先輩。ライザが自分を普通の子を強調してしまうのはこういう胸をもつキャラが大勢いる世界観からなのだろうか。これらかも検証したい。

 

基本的にどこもめちゃくちゃ揺れるので胸揺れと尻目的の人は買って満足出来るクオリティなのは間違いない。

残念なところは色違い敵キャラが多すぎる所と、サブクエなどはフルボイスでない所。

 

最後に

このゲームはオートセーブが存在しないので、最近のゲームに慣れているとセーブし忘れて死んでしまうので注意が必要だ。

また、最近の無料アップデートでフォトモードが使えるようになり、ビックリするぐらい自由自在に写真を撮ることが出来る。あなたの想像力が試される。

同時に有料DLCも発表されたがシーズンパスで購入すると税込み7480円という滅茶苦茶強気な値段でビックリしてしまった。新作ゲームが1本買えるぞ。ただまぁ、ライザに貢ぐと思えば安いモノですね。そうでしょ、皆さん。

 

国内では正直、新作ゲームが中々売れない時代になってきている中、本作のこの勢いは多くの会社が参考にしても良い、非常に良い新シリーズの幕上げを告げたと思う。

最後に一言良いですか

「うにが海にあるわけない。森にいけ。」

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