「デスストってクソゲーらしいですね」
これはデススト発売前日である11月7日に会社で唯一ゲームの話が出来る後輩から言われた台詞である。
デスストこと『Death Stranding』とは小島秀夫監督作品、コジマプロダクション開発、ソニー・インタラクティブエンタテインメントよりPS4向けに発売されたテレビゲームである。
なぜ発売前なのにデスストがクソゲーって知ってるんだこいつと思ったが、話をよく聞くとグーグルのオススメ記事になっていたまとめブログにそのようなことが書いてあったらしい。
グーグルのおすすめ記事とはスマホでchromeアプリを開くとトップに出てくる記事の事で、これがユーザーの閲覧履歴からAIがユーザーごとにオススメの記事を紹介してくれるお節介機能なのだが、フラゲした少年ジャンプの内容を書いたまとめブログですら普通にオススメされたりしているネット無法地帯の所でもある。
いくらそんなグーグルのオススメ記事だからって今時まとめブログの内容を信じるとか後輩のネットリテラシーが心配になるが、それはそれとして後輩と同じようにデスストをクゾゲーらしいと思ってる人が多いのではと気になって色々調べてみるとこのゲーム、発売前から荒れに荒れていた。
日本において話題作のゲームが発売前から作品自体の出来に関わらず、荒れに荒れる事は残念ながらよくある事なのだが、ここで自分なりにネガキャンの現象を整理し、「デスストってクソゲーらしい」の「らしい」を調べてみたので気軽に読んで欲しい。
小島秀夫という人気者で嫌われ者
小島秀夫監督という日本のゲームクリエイターの中ではトップクラスの知名度がある。例えばツイッターのフォロワー数ランキング(2019年11月9日調べ)では
1位小島秀夫@Kojima_Hideo フォロワー数80.7万
2位山本大介@DaikeYamamoto フォロワー数54.3万
3位桜井 政博@Sora_Sakurai フォロワー数37.4万
4位増田順一@Junichi_Masuda フォロワー数36万
5位横尾 太郎@yokotaro フォロワー数17.7万
ダントツで1位である。
また小島秀夫監督は英アカウントもあり、そちらは240万以上もフォロワーがいる。
ただ、知名度があればあるほど、人気が上がれば上がるほど、アンチも増えるというのが世の常であり、このフォロワー数ランキング、よくよく見れば、叩かれている所をよくみるゲームクリエイターランキングとも言える。
特に小島秀夫監督はゲームクリエイターとしては珍しく関西人の血が騒ぐのか表に出るのがお好きなので、インタビューなどもよく応じたりして、意識高い事を発言やリップサービスなども多い。
それ故「出る杭は打たれる」が如く、嫌っている人はいたり、小島秀夫監督をサブカルクソ野郎と罵っている人達は確かによく見る。
そして小島秀夫監督の出たがりはゲームの中でもそうで、特徴的なのは『メタルギアソリッド ピースウォーカー』での「コジマ・イズ・ゴッド」であり、そもそも今どき、会社名に株式会社コジマプロダクションという自分の名前を入れちゃう人は中々いない。
ただ、そのお陰で「小島秀夫」というブランド化に成功したとも言えるし、なにより分かりやすい。
他にも、小島秀夫監督が嫌われる要因はまだある。
本作、『Death Stranding』は2015年に起きた「小島秀夫監督コナミ退社騒動」後、初の作品という事で注目されていた。ただ、この退社騒動が幽閉騒ぎなどがあり、映画監督のギレルモ・デル・トロ氏がツイッターで「FUCK Konami(コナミは最低だ)」とお気持ちを表明したり当時大騒動になった。
ここらへんの時系列などはこちらの記事が詳しく書いてあるので紹介する。
ただ、コナミも小島秀夫監督も当時の詳しい事情などは話さないので起きた事以外の内情は全て憶測の域を出す、私もこの事はこれ以上言及しない。一つ言えるのは、コナミがこれで会社としてのイメージが大幅に下がったという事は間違いない。
これで面白くないのが元々のコナミファンである。自分の好きなものが理由はどうあれ「FUCK」と言われるは気持ちが良いモノではない。
また小島秀夫監督がコナミデジタルエンタテインメント執行役員副社長就任中に、コナミが今まで持っていたIPを活用したゲームがあまり出ていなかったのもあって、小島秀夫監督がそれらのリソースを全て自分のゲームに捧げ、割を食っていたと思っていた人達の存在もおり、そういった層なども一部小島秀夫アンチとなったり、そこまで行かなくてもコナミの首輪がない小島秀夫監督作品は失敗して欲しいと願っている人もいる。
他にも独立後、小島秀夫監督はツイッターをよく利用するようになったが、広報ではなく、小島秀夫監督自身が自分を褒めているツイートをRTしたりするとどうしても自画自賛感が凄く感じてしまう。正直私も小島秀夫監督のツイッターをフォローしているがRTは非表示にしている。
また、『Death Stranding』のレビュー点数が低い事に怒っているツイートをRTしたり、生生しさを感じたりする場面もあった(仕方がないことはよく分かっているが)
そういった事があり、圧倒的人気者の小島秀夫監督が失敗する所をみたいという黒い感情などが積み重なり『Death Stranding』発売前から叩かれる土壌が出来つつあったと言える。
クソゲーと広がる速度
あなたは「ゲハ」というモノをご存知であるだろうか。
そう「ゲーム苦手板」こと「ゲハ」は2ch(現5ch)に存在する掲示板にある一つの板であり、日本のゲーム業界にとっての最大の癌の一つとも言える。
ただ、一言でゲハと言っても色々勢力図のようなモノがあるのだが、基本的にゲハの中に引きこもってくれるので変にゲハが潰れて住人が外に放出されるより、ゲハで隔離され、飼い殺しになっている状態はある意味平和だった。
しかし、ゲハがより最悪に変わる。「はちま」や「オレ的ゲーム速報@刃」といったまとめブログの存在が生まれ落ちたからだ。
まとめ用にスレが立ち、まとめ用にレスされ、まとめられ拡散される。
ゲハの中で終わってた世界がゲハなんて知らない人達にまで拡散されるのである。
更に今はそのまとめブログがグーグルのオススメ記事で拡散され、SNSで拡散され、ニコニコ生放送のコメントで拡散され、youtubeのチャット欄で拡散される。
人は自分があまり興味のないことは深く知ろうとしないのでその拡散される「クソゲー」という中身のない暴言をそのまま頭の隅に入れてしまう。
これの最大の被害者であり、最大の祭りがFF15であろう。
海外で10日ほど前にフラゲされ、それを配信。
配信を見た人が各所でネタバレ。
公式がそのことに触れたが、更に荒らしが凄くなり、ただ騒ぎたい人も加わり、普段エアプは駄目と言っている人ですらそのお祭りに加わる始末。個人的にはあの叩かれっぷりには狂気を感じた。あの狂気に飲まれた人は再びあんな祭りが出来るゲームを今も探している。FF15アゲインである。
そして当日や前日にレビューが解禁される事が多いゲーム業界で『Death Stranding』は発売一週間前という比較的早くレビューされた。そして84点(2019年11月9日現在83点)スタートと良い感じの点数だったが、大手サイトのIGNが6.8点だったため、そこがアンチに注目さて拡散された。
本来、レビューというのは、本質的に主観的なものである。大手だろうが個人だろうが、レビューにはライター毎の嗜好や基準がある。だからこそメタスコアでは個別ではなく、全体の平均からデータを取っているのである。その中で閲覧者が自分の感性にあったレビューを読んで共感したり、全く違う感性に触れて感化したりしていくものだと私は思っている。
点数はとても直截でわかりやすい。ただ、それだけなのだが、それが全てな人が多い。
また、ユーザースコアが6.6点である。確かにこれだけみると点数が低いように見えるが、ゲームに詳しい人ならご存知の0点爆撃を受けている。
これは『Death Stranding』に限らず、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でも『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』でもあった事で、発売後数日は0点爆撃を受け、反動で10点爆撃も受け、点数が滅茶苦茶になったところで、怪しい点数が削除され正常に戻る現象である。
0点爆撃は有名なので、ゲームに知識があれば知っている人は多いのに、そんなモノは関係なく、点数が低いと煽る。そういう人が確かにいる。
そういう人は理由はどうあれ、後で点数が良くなっても関係なく、その時その瞬間煽れればそれば良いのである。瞬間瞬間を必死に生きる『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』の精神の持ち主はネットには多い。
ゲームにおいてユーザースコアの信頼度は個人的に0である。
映画レビューサイトのロッテントマトでは逆に批評家の点数よりユーザーの点数が信用される時代になりつつある。羨ましい映画業界。
そして何よりも『Death Stranding』は繋がりがテーマにあるように他の大勢のプレイヤーと国道を作ったり橋を作ったりして配達を快適にするレイド的システムがあるのだが、ここがやはりプレイヤーがそもそも少ないゲーム発売前とゲーム発売後では楽しさの前提が違う。
デスストは一人用ゲームだが独りではないのだ。
そして極めつけはデスストがファミ通のクロスレビュー40点満点とってしまった事がネガキャン材料になってしまった。
「あれ、満点なら良いやん」と思う方がいるかもしれないが、ファミ通は未だに『ジョジョASB』での満点騒動の余波があり、満点だと逆に不安になるという意味がわからない現象になっている。ただ、40点以下でも「ジョジョASB以下www」と煽られるだけなので、どっちにしろ相手にするだけ無駄である。
ただ多くの人が神ゲーと認める『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』も満点だったし、発売前のデスストが40点で不満を言っていた人はデスストは賛否両論のハズ、満点はありえないという固定観念に動かされているだけに見えてしまう。体験版のないゲームは当たり前だが発売前はみんなエアプであり、簡単にネットの評判を信じ、固定概念化してしまう。
そもそも普段フラゲやまとめ記事に厳しい人がフラゲされたファミ通を話題にしていて、幻滅してしまった。
しかし、満点とって不安になる人が多いという状況はどう考えても異常なのでファミ通はそろそろクロスレビューを何かしらリニューアルした方が良いと個人的には思う。
まとめブログに厳しい人は純粋にまとめブログが嫌いか、ゲハで言う所の「敵陣営」だから嫌いだという2種類がいて後者はまとめブログと精神は一緒である。
小島秀夫アンチ層、まとめブログPV増やしたい業者、ただ騒ぎたい人がおのおのが持つ最大限の悪意を利用し、ゲハだけではなく、5ch全体的にデスストのネガキャンスレが乱立し、デススト遊ぶ気もない連中の配慮のかけらもないレスと、狂信者のレス、信者を装ったアンチのレスが荒波のような流れ、デスストの個別のスレも機能停止している。
そしてそれがまた拡散されるだろう。
配信時代のゲームに思うこと
今の時代、「ゲームプレイヤー」と「ゲーム視聴者」の数は変わらなくなるどころか、「ゲーム視聴者」の方が人工がおおいかもしれない。
vtuberなど多くの人(?)がゲームを実況し、それを楽しみにしている人がいる。
私が最近ムカついた発言に「あのゲーム、〇〇(実況者の名前)の動画で見たけどおもんなさそう」がある。これはゲームだけでなくそのゲームの魅力を伝えられなかった実況者もdisってるんだぞという気持ちが強くなる。
ただ、確かに『Death Stranding』がゲーム配信に向いているかと言えば微妙な所である。ムービーは長いし、ゲーム画面も移動が主である。
移動と言っても景色が過激とかそういった事もない。
もしかしたら観るだけなら暇に見えるのかもしれない。
ただ、これだけは言わせて欲しい。
目的地に向けて、自分でルートを考え、重たい荷物を持ち、バランスを取る。
でも一見面倒に見えるそれが楽しく。面倒なのに楽しい。楽しいが面倒。でもやっぱり楽しい。それは動画では分からない。自分でコントローラーを持たないと分からない楽しさがそこにはある。
確かにゲーム配信向けのゲームもあって良い。ただ、時代遅れなのかもしれないが「ゲームプレイヤー」向けのゲームも沢山あって欲しいし、ゲームを「見た」だけで安直にクソゲーって言ってほしくない。忙しい現代社会でクリアするまでに40時間などかかるゲームが敬遠されるのもわかる。ストーリーは気になるけど仕事後にゲームする元気がなく動画で済ませる気持ちも分かる。仕事が悪い。ただそれでも頭の片隅に自分は遊んだのではなく見ただけという自覚が欲しい。それだけを願う。
最後に
自分の好きなモノがクソゲーと連呼されていたらどうしたら良いのだろう。
言い合うのは愚策だ。相手は討論したい訳ではない。バカにしたいだけなので日本人同士なのに日本語が通じない。
やることは一つ。押し付けがましくなく、ただしっかりと正確に自分の「好き」を広げていく必要がある。
あなたの「好き」が他人の「好き」になってそれがまた拡散していく。ネットには総意なんてものは存在せず、それぞれのグループに少しづつ自分の「好き」を広げていこう。私も元々はEXILEが苦手だったが、ツイッターで『HiGH&LOW』を知り、苦手を克服する事が出来た。草の根運動より確実な事はない。
ただ、勘違いして欲しくないのはダメ出しは駄目という事ではない。自分で買った人には無論作品を批評する権利はあると思うし、動画勢だって「遊ぶ」ではなく「見る」からこそ分かる事もあるかもしれない。ただ、批評ではなく罵倒になってしまっては駄目だ。
そこは全然意味が違う。クソゲーと安易に言ってしまうのは簡単だが、言う前に少し考えて欲しい。罵倒がしたいから罵倒しているのではないかと。
全てを褒める必要はないし、信者になる必要もない。ただ、アンチになる意味もないし、わざわざ強い言葉を使って罵倒しなくても良い。正直私も『LEFT ALIVE』をレビューした時にクソゲーを連呼してしまった事を反省している。すいません。
自戒の意味を込めて、ゲームを作った人にちょっとした誠意と思いやりの心がほしいなと後輩の「クソゲー」発言から思う次第である。
最後の最後に。
今、私はデスストを20時間ほど遊んでおり、全部クリアした時は改めてレビュー記事を書こうと思うが、その時クソゲー連呼してたらすいません。
(2019年11月24日追記)デスストクリアしたのでレビュー書きました。お暇ならこちらもどうぞ
出版社/メーカー: ソニー・インタラクティブエンタテインメント- 発売日: 2019/11/08
- メディア: Video Game
- この商品を含むブログを見る