社会の独房から

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『十三機兵防衛圏』レビュー。ゲームで物語を語る一つの完成形にして究極のカタチ。

宇宙戦争」「タイムトラベル」「喋る猫」「怪獣」「MIB」「巨大ロボット」「焼きそばパン」「アンドロイド」「女性型眼鏡アンドロイド」「大日本帝国軍人」「昭和ノスタルジック」「スケバン刑事」「リーゼントヤンキー」「未来からやってきた謎多き女装美少年」「ジュブナイル」「VHSのビデオテープ」「メガゾーン23」「ウォーリー」「マクロス」「記憶消失の少年」「ミステリー」「SF」「幼女先輩」「ロリコンメガネ」「ホモ」「ネタバレになるあれこれ」など炎上した集英社の人のセリフを借りると性別関係なく「少年の心」をもっている人間なら誰でもワクワクしてまうワードや世界観、設定が「加減しろ!バカ!」と言いたくなる程詰め込まれている『十三機兵防衛圏』

しかもそれを主人公を13人にする事で、やりたい事だけやって、風呂敷を広げるだけ広げてそのまま終わる雑な展開ではなく、1つ1つを丁寧に描き、一見無関係で個々の話だったモノが1つの大きな物語へと収束していくストーリーは「極上」あると断言出来る。

 

そんな物語をヴァニラウェア製作によるあまりにも美しく、狂気のグラフィックで語られるのはもはや暴力である。

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令和の暴力こと『十三機兵防衛圏』を感想を書いていく。ネタバレには十分な注意を払っているが、本作が気になっている人はまずは無料で出来る体験版をプレイすることを推奨する。

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 物語をゲームで体験するという事。

 「ゲーム」と「物語」という二つの相性の悪さは、ゲームの歴史においてしばしば問題になる。

「映画的ゲーム」「一本道」「自由度」「ゲーム性」といったゲームに関わる評価で使われるこれらの言葉。物語だけに力をいれるとゲームじゃなくても良いやんと言われる事は多々ある。

確かにゲームで物語を語るのは難しい。ただ、ゲームだからこそ面白い物語もある。

なぜならゲームは物語を観るのではなく体験する事が出来るからだ。

体験と一言で言っても色々な種類がある。

例えば、ゲーム部分がプレイヤーそれぞれの物語を生むという事。

苦戦していた敵にギリギリ勝った時や、逆に楽勝だったのに一つのミスで全滅した時。

それらがプレイヤー毎の思い出になり、物語に深みを与える。

また、ホラーであれば映画だと怖い所は目を瞑ればいいが、ゲームだと自分で操作しないといけない。そこに映画以上の恐怖としての物語が機能してくる。

 

そして本作『十三機兵防衛圏』ではシナリオが選択によって分岐するタイプのADVではない。そう言うと、ただ物語を観るだけだと思ってしまう。

しかし、そうではない。プレイヤー自身がどの順番で進めていくかで物語体験が大きく変わっていくのだ。

 

本作は、大枠の1つの話に収束していくのだが、それまでの過程が時系列はバラバラ、語り手も13人でバラバラに進んでく「群像劇」になっている。

どのキャラを先に進めるかで後の話の印象が変わっていく。

例えば三浦というキャラを始めるとその衝撃的な始まり方でプレイヤーにある疑惑を抱かせて、それ以降の物語体験がガラリと変わる。

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この秘密を出す量とタイミングが絶妙で、各キャラの物語を進めていくうち所々他のキャラと交錯しつつ、一方のキャラのストーリーでは分からなかった事実がもう一方のキャラのストーリーで判明していく。

プレイヤーが物語の大枠を推測出来たころに二転三転する新しい爆弾がバシバシ落とすストロングスタイルのため、飽きさせないどころかこの後の展開が知りたくなるようグイグイ引っ張ってくる。

 

ただ通称「猫クレープループ」のように次にいくフラグが一部分かり辛い所はある。気をつけて。

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↑シリアスな展開だからこそ焼きそばパン野郎の緩急が目立つ。

 

物語を鑑賞するという行為は、完全に観客は聞き手であり、ストーリーの部外者になってしまうが、「バラバラの情報を自分なりの整理し、ストーリーを頭の中で組み立て推理しながら次の物語を読んでいく」という行為はナラティブ技法的であり、ばら撒かれた物語の断片をプレイヤーがそれぞれ独自の順番で拾い集めさせるというシナリオの語り口そのものが「ゲーム」になっているのが面白い。

これは「ゲーム」という媒体でないと作れない「物語」の形式であると断言出来る。そしてプレイヤー毎の物語体験がそこにはあるのだ。

 

本作ではバトルパートのゲーム性含めて、ゲームシステムが「物語」できちんとSF的説得力の塊で説明され語られる。その結果、プレイヤーとゲームの世界がシンクロしていくこの拘りも素晴らしい。

 

また、ストーリーを忘れた場合や、複雑で分からなくなった場合でもアーカイブモードの究明編で確認する事が出来る。f:id:Shachiku:20191208154916j:imagef:id:Shachiku:20191208154920j:image

↑物語の根本から、物語を彩る小物の紹介まで多くの情報を観る事が出来る。ここが本編だと言っても過言ではない。f:id:Shachiku:20191208154922j:image

↑時代が多岐に渡るため、私みたいな若輩ものには初めて知る事も多い。 


そして本作は巨大ロボットモノなのだが、アニメでよくある日常パート、敵襲来、ロボに乗って戦い倒す、日常パートに戻る流れではない。ロボで戦うのは最後の戦いのみ。

本作は、「彼ら彼女らが何故ロボに乗り戦うのか」「何と戦うのか?」「13人の主人公とそれ以外の各キャラクターがどんな想いを持ち、何を壊され、何を憎み、何を守るのか」それらが全て分かり、プレイヤーとキャラの想いが一つになった時、機兵というロボットを起動するシーンを見る事が出来る。

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覚悟を決め、機兵を起動するシーンのかっこよさ!プレイヤーが各キャラの物語を体験し、感情移入しまくった時に見せられるこのシーン!

これだけでも本作を遊んだ価値がある!

語彙なく表現すると「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」ってなる「スタァァァァト!!!」でも可。

 

バトル編

そして『十三機兵防衛圏』では追想編というアドベンチャーモードの他に崩壊編というバトルパートがある。

 敵は基本的にターミナルというを目標に迫って来るので、出現した敵の種類に合わせて、対応する機兵を動かして攻撃してターミナルを死守するのがプレイヤー側の基本戦術。

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一言で言うと『高機動幻想ガンパレード・マーチ』のような戦闘システムなのだがスパロボで敵をサイフラッシュなどのマップ兵器で一網打尽にするのが大好きな人ならハマると思う。

迫りくる数十、数百の物量で攻めてくる怪獣相手にマルチロックミサイルやビームをぶっ放し、巨大な怪獣とは殴り合う。ジャミングやセントリーガンも駆使して防衛ライン維持していくのが面白い。機兵には第1から4世代まである。世代ごとにタイプが違う。

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↑怪獣の種類は硬い敵やバリア機能を持っていたり、遠距離ミサイル撃ってくるなど多岐にわたる。

第1世代は遠距離攻撃はないが、近距離で殴り合うのが強い。硬い怪獣には有効なので、取り敢えず一体は選んでおきたい。第2世代は最初は中途半端な性能に思えてしまうが、ガーディアンというデコイを設置したり、育てると1体1で最強の武器もゲット出来る。第3世代は遠距離攻撃。第4世代は飛行とマルチロックミサイルで100、200の敵をミサイルで一掃する爽快感が最高。最終的にはファンネルもゲット出来る。

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↑このゲームはBGMが全般的に良いのだが、効果音も最高。敵を倒し花火のような爆発が起きた時の効果音で脳汁ピュピュ出る。

 

正直どの機体を強い。好きなキャラを育てて問題はない。

 

お気に入りのキャラだけ使いたい人もいると思うが、各キャラは出撃すると疲労度が溜まっていき、最大時には出撃不可能になってしまうので、13人でうまく登板ローテーションを組んでいくマネジメントも重要。

ただ、ステージ毎にミッション要素があり、その条件に「〇〇と〇〇のキャラを出撃させろ」というのが多いのだが、次のステージミッションが不明な為、条件のキャラが出撃不可能状態になってしまっている事がある。

一応、休息は出来るのだが、それを実行すると連続出撃ボーナスが消えてしまう為、どちらを取るかのジレンマに陥る。個人的にはここがこのゲームの一番のストレス要素だった。せめて、先のステージミッションも確認出来るようにして欲しい。

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↑序盤で機兵のステータスアップが解禁されるが、このニューロリンクをレベル3ぐらいまで上げると3回連続出撃出来るようになる

 

あと、ゲームが苦手な人はカジュアルモードにしたらまず負けないので、物語を楽しみだけどゲームはちょっとの人にもオススメ出来る。

 

最後に

 

13人分のシナリオと複雑な世界観の構築を破綻無くここまで作った 『十三機兵防衛圏』

そりゃ、発表から発売までここまで時間かかるわ!という説得力が凄い。

この異常なまでのこだわりと情熱は神谷盛治さんのインタビュー漫画でも読み取れる。

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 そして13人も主役がいるのでどれか1人ぐらい嫌いとか要らないという感情を持ちそうなものだがそんな事無く、全員好きになる。特に個人的オススメは比治山沖野のカップルです(男男)

 

このゲーム、一見難しそう、取っ付き難そう、という印象があるかもしれない。

事実、SF好きじゃないと話が難しいと感じる人も多いと思う。

実際難しい。

しかし、このこだわりまくった圧倒的ビジュアルとアニメーション。

謎が謎を呼ぶ展開に魅力的なキャラクター達。

個人的にはヴァニラウェアの集大成、大傑作と断言する。もう一度言うが大傑作だ。

ありがとうこんなゲームを作ってくれてとお礼を言いたい。

このゲームを遊ぶ前にネタバレを見てしまうのは勿体ないし、実況やプレイ動画ですませるのも違う。

 

是非、あなたの手でこの「物語」を「体験」して欲しい。

 

十三機兵防衛圏 【Amazon.co.jp限定】オリジナルPS4テーマ 配信 - PS4

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: アトラス
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: Video Game