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映画『ルパン三世 THE FIRST』感想。3DルパンVSムスカのなり損ないおじいちゃん

記憶に新しい山崎貴監督作品『ドラゴンクエストユア・ストーリー』の最後の展開が衝撃的過ぎて、夏頃から本作『ルパン三世 THE FIRST』の不安の声や、ネットの悪い層からの期待の声は少なくなかった。

 ただ、安心して欲しい。次元が最後、ルパンに銃口向けて「大人になれよ」と説教してくるシーンも、「斬鉄剣」が突然おっさん風の声でしゃべりだし、自分の事をアンチウイルスだと言ってくるシーンもない。

いつものテレビスペシャルのような内容だ。

 

パンフレットで山崎貴監督は子供の頃からルパンが大好きだと公言している。

あのオチでOK貰えるまで監督を断っていた『ドラゴンクエストユア・ストーリー』とは違い、ルパンはオファーに対して「やりたいです」と前のめりになっており、作品に対する元々の思い入れや情熱、面白い作品が出来る自信などの違いを感じ取る事が出来る。

 

では、この『ルパン三世 THE FIRST』が面白いのかと聞かれたらアレだよアレ。

 

シティーハンター』の映画の評価で「学生時代に通った定食屋に久しぶりに行ったらおばちゃんが覚えててくれて当時定番で頼んでたメニューが勝手に大盛で出てきて変わらない美味しさに感動した」というヤツがあったが、本作は「学生時代に通った定食屋に1年ぶりに行ったら、当時頼んでたメニューが勝手に大盛で出てきて見た目は豪華になっているが、味はこんなもんだったかなぁと寂しさを覚えた」出来だ(分かり辛くてすいません)

 

そして何より、元々ルパンって『ルパン三世 カリオストロの城』での人を殺さない義賊的なイメージが強すぎてモンキーパンチ作品のハードボイルドタッチなルパンのキャラを知らない人も沢山いて、ルパンに対する解釈違いをどうしても感じてしまう(『カリオストロの城』はルパン三世の王道ではないが、スポンサーや多くの人が求めているルパン三世像だと言うことは理解している)

本作も山崎貴監督自信仰っているが『カリオストロの城』の影響をかなり受けており、恐らく本作も『カリオストロの城』が好きな人にはそこそこ満足出来る出来になっていると思う。あと、ラピュタ臭も凄いので全体的に宮崎アニメが好きな人にはオススメ。

 

 

そんな本作の感想をネタバレありで書いていくのでよろしくお願いします。

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 あらまし

  • ルパン三世の祖父であるアルセーヌルパンが唯一盗めなかったと言われている秘宝「ブレッソンダイアリー」
  • ルパン三世は展示会で警備員に扮しその「ブレッソンダイアリー」を狙うが、失敗。いつものように銭形警部からの逃走劇が巻き起こる、しかしブレッソンダイアリーを狙うのはルパン一味だけではなかった。少女、レティシアも警備員に扮してお宝を盗み出すものの、結局峰不二子に横取りされる。
  • 同じ目的であるルパン三世レティシアは手を組み、峰不二子を雇っていた謎の組織の飛行艇に潜入する。
  • ブレッソンダイアリー」を奪取に成功したルパン三世達は2つの鍵とキーワードを解いて無事「ブレッソンダイアリー」を開ける事に成功する。そこには秘宝の場所と攻略法が書いてあった。
  • しかし、それは謎の組織の幹部、ランベールとゲラルトの罠。
  • 実はレティシアの祖父がランベールで、レティシアは悪事からの解放を条件にルパン三世を嵌めたのだった。捕まるルパン(すぐ脱出する)
  • 謎の組織は秘宝の正体である人知を超えたエネルギーを利用してナチス復活が目的だった事、ヒトラーはまだ生きていると信じている狂信者達である事をレティシアは知ってしまい、飛行機から落とされる。
  • レティシアを助けるルパン三世、そこに峰不二子次元大介石川五ェ門も集合し、ルパンを捕まえに来た銭形も謎の組織を倒すため一時共闘する。
  • 『天気の子』や『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』など最近やたらと映画の中に出てくる「カップヌードル」で本作も閑話休題。『カリオストロの城』リスペクトも感じる。
  • 実はレティシアの本当の祖父はランベールではなく、「ブレッソンダイアリー」の元々の主であり、考古学者であったブレッソン教授だという事が判明する(観客には冒頭5分ぐらいでバレてるが)
  • そしてブレッソン教授の協力者だったのがルパン三世の祖父であるアルセーヌルパンであった事も判明。
  • ルパン三世レティシアは過去の因縁にケリを付けるため、財宝の場所を探索。様々な罠を突破し、無事ゴールに辿り着く。
  • しかし、それは謎の組織の幹部、ランベールとゲラルトの罠
  • ランベールとゲラルトに秘宝をレティシアもろとも奪われ、飛行機で逃げられる。
  • ゲラルトはエネルギーを兵器として使い、ヒトラー復権に利用しようとするが、ランベールは自分が王になるのがふさわしいと言い出し、醜い争いになる。
  • ゲラルトの銃がレティシアに向けられるが、それをランベールは身を呈して守り、ランベールは死ぬ。
  • ゲラルトはそのエネルギーをヒトラーに届けるが、ヒトラーの正体はルパン三世が変装したものだった。最終的にエネルギー兵器はゲラルトもろとも自滅する。
  • カリオストロの城』からテレビスペシャルでもお馴染みのヒロインとの別れ、追いかける銭形で完結

ランベールのご乱心

ツンデレ爺ことランベール。

f:id:Shachiku:20191209213300p:image(C)モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会

序盤からレティシアの親を間接的に殺したり、考古学者として才能を発揮するレティシアに嫉妬バリバリで独占欲と嫉妬の塊。

上司のゲラルトにはヘラヘラするのにレティシアにはすーぐ癇癪起こして暴言や暴力寸前までやっちゃう。

どうかんがても人間のクズ!クズ!クズ!(カイジ役の藤原竜也風)

古田鋼太郎さんの熱演もあり、観ていて普通にイライラしてしまうキャラだ。

 

しかし可愛らしい所もある。

天空の城ラピュタ』でムスカラピュタの力を手に入れて調子にのったようにランベールも巨大なエネルギー兵器を手に入れると急に調子にのり、自分こそが王に相応しいと言ってくる。

それ自体はまぁ悪役らしくて良いのだが、隣に自分より肉体的に強くてオマケに銃まで持っているゲラルトを裏切ってる状態のまま無防備に調子にのってしまうの完全に自己防衛意識が低すぎてじいちゃん!!!てなる。『天空の城ラピュタ』でもムスカは邪魔者を操作室に入れなかっただろ。

なるほど、この兵器を利用出来るのがランベールしかいないからここまで調子にのってるのかなと思いきや、ゲラルトも普通に操作出来て、おじいちゃん!!!ってなる。

なんでそこは無策なんだ。結果的にゲラルトにボコられて、銃で撃たれるの残当としか言えない。

 

最後はレティシアを守って死ぬのだが、直前にレティシアに対して脅迫したり、考古学者の道を絶とうしたり、お前は俺のモノ宣言したり、いくら途中でレティシアに対して心配している素振りがあったものの情緒不安定度が酷いし、そもそも調子にのった自業自得感が凄くて感動出来ない。そういう「お前は俺のもの。ただ、俺以外にお前を傷つける奴は許さない」が許されるのはイケメンの王子様ぐらいですよおじいちゃん!!!ってなる。悪者が死ぬ時に過去の感動的、人道的エピソード挟み込む『鬼滅の刃』メゾットにも限界はある。

レティシアを利用したいのか、潰したいのか、守りたいのか、独占したいのか、揺れ動く乙女心。「おっさんずラブ」ここに極まり。

あと、おじいちゃんとゲラルトの言い争いが、おじいちゃんの声優が古田鋼太郎さんでゲラルトの声優が藤原竜也さんだったので、劇場予告で流れたのもあり、完全に実写版カイジでしたね。カイジ楽しみ。

 

銭形の解釈違い

冒頭でも書いたが、ルパン三世シリーズはクリエイターの色が出やすくどうしても解釈違いが起きる事がある。

私がこの映画で最大の解釈違いが銭形刑事の性格だ。

ルパン三世が飛行機から落下して無人島みたいな所に着地するが、周りに助けてくれる人が居ない。そんな状況にルパン三世は自分が捕まったと嘘の情報を流して銭形をよびよせ、銭形はその通報を嘘や罠だと一切疑わず引っかかってしまう。

私が知っている銭形はそういう他の素人が引っかかりそうな事でも警戒すると思うんだな〜。

本作、だいぶ銭形の性格が単純化されていて違うな〜って思ってしまう。多分飲み屋で山崎貴監督とルパン三世談義すると銭形の解釈で喧嘩すると思う(嘘、ヘコヘコしちゃう)

 

最後に

色々書いたが、映像は全体的に良かった。

山崎貴監督だから制作は白組と思い込んでいたけど今作はトムス・エンターテイメントと、その子会社のマーザ・アニメーションプラネットが制作を担当していた。

 このマーザ・アニメーションプラネットは過去にも『KINGSGLAIVE FINAL FAMTASY XV』というとんでもない映像美を誇るCGアニメ映画を製作している。

KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV(吹替版)

この『KINGSGLAIVE FINAL FAMTASY XV』は本当に出来が良くて、私は今でも大好きなので、未だ観てない人は是非観てほしいし、そのままFF15をプレイして欲しい。

話が脱線してしまったが、この『 THE FIRST』というタイトル。

最初はな〜にがファーストじゃとは思っていたが、初の3Dルパン映画としてのファーストと、祖父であるアルセーヌルパンの因縁の物語。ビジュアルとストーリー両方が見事に『 THE FIRST』になっていたなと思う。

最後に一言。

本作の峰不二子のお色気シーンは小学生レベルなのに峰不二子のテーマBGMがバックで流れるとイケナイモノだと脳内で思ってしまうの峰不二子の呪い過ぎる。

 

KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV(吹替版)

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  • 発売日: 2016/08/30
  • メディア: Prime Video