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アニメ映画『ぼくらの7日間戦争』感想

「子どもvs大人」「抑圧された学校と自由」そういう現代ではもはやファンタジーのようなテーマで戦った1988年に公開宮沢りえ出演の実写『ぼくらの7日間戦争』から30年

細田守監督の『時をかける少女』のようにアニメとして再び映画化されることになった本作。

 

観た感想としては正直映画自体の出来は悪い。

凄くフワフワしていて、引っかかる点も多い。

そもそもアニメーションに力がなくてアニメならではの表現もほぼない。

笑ってしまうほど「『君の名は。』のヒットに影響されて、この映画作りました。」という事を微塵も隠さないBGMの使い方。

酷いものである。

 

ただ、「現在の出来事で未来に何が起こるのか、君にわかるかな?」が口癖であり、どんな百合の匂いも見逃さない百合探偵であり、明智恭介である私でも百合だと判明するまで全然分からなかった程、ブラフを張りつつ滅茶苦茶巧妙に百合を潜ませており最後の最後の幸福百合展開は今年観た映画の中でもトップクラスの「マジかっ!」となってしまった(脚本家の大河内一楼さんこれやりたかっただけだろ!)

なんで本筋の話や展開はフラフラしてるのにこんな百合だけはキチッとしてるだ。ラーメン屋でラーメンセット頼んだからラーメンは不味いのにセットの小チャーハンは滅茶苦茶美味いみたいな感覚に似ている。

そんな本作の感想をネタバレありで書いていく。

 

 

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監督:村野佑太  脚本:大河内一楼 音楽:市川淳 主題歌:Sano ibuki

 

 あらまし

舞台は2020年の北海道、歴史が趣味の鈴原守は、幼馴染の千代野綾に好意を抱いていた。 

玄関先で市議会議員の父と彼女が口論している場面を目撃した守は、17歳の誕生日まで大人に見つからない場所に逃げようと提案する。

少しずつそんな「7日間限定のバースデーキャンプ」への参加者は増えていき、結局学校の仲間6人で山中にある里見石炭工場に立て籠もることなった。

 

1日目

その工場には先客がいた。タイからやって来たマレットという子供で、彼は不法滞在外国人が住んでいたアパートを摘発された際に両親とはぐれ、異国の地で1人ぼっちになってしまったのだった。守達は入局管理局の者によって工場に閉じ込められてしまう。

2日目

守達は親を探すマレットを放っておけなくなり、入局管理局の者の突入を防ぐ1大作戦を実行。歴史好きだった守の知識が冴え渡り(なろう系ともいえる)大人達は翻弄され一時撤退する。

3日目

綾の父親である千代野議員が公共事業を融通している建設会社の社員を引き連れて(ココらへんの関係性も『君の名は。』っぽい)工場に迫る。

だが、昨日の工場での死闘をネットにアップしてものがバズっており、工場近辺は野次馬に溢れていた。

これで、大人たちが強引な手を打たないよう牽制し、更にマレットの家族にもアピールすることにも成功する。

4日目

守は綾に好きな人がいるのか質問する。綾は「いる。ただ、今の関係が壊れるぐらいなら自分の気持ちに嘘をついた方がいい」とどこか諦めて表情(ここで観客は十中八九、父親の秘書をしているイケメン男性(CV櫻井孝宏)だと勘違いする。なぜなら(CV櫻井孝宏)なので)

守は間接的にフラレてショックを受ける。

5日目

地下からケージで建設社員が登ってきて、守達はピンチになるが、何とか守り抜く。

その夜、7人はそっと目を閉じ、小さなランタンを空へ放つ。これは苦しいこと、辛いことを手放すというタイのおまじないである「コムローイ」という。

6日目

ネットで守達の顔写真がアップされてしまう。そこから勝ち気だった緒方壮馬が昔、いじめられていた事。眼鏡インキャの本庄博人は現在進行形で裏垢でみんなの悪口を書き込んでいた事。綾の友人である山咲香織は自分の親が建設会社の社長で、仕事がなく苦悩しているので、親のために綾に近づいた事。

そういうみんなの嘘や隠し事が次々に明るみになっていき、チームは崩壊。

そこに入局管理局の者が強引に乱入してきて最大のピンチを迎える。

しかし、偶然台風が来ており、裏山が崩れた事により、危険を感じた入局管理局の者は一時撤退する。

バラバラになっていた守達は、守の綾への告白タイムから、嘘がない本当の仲間になっていく(ここで綾は香織が友達としてではなく、恋人として好きだと告白する。そして抱き合う二人。最強)

そしてその、夜。

再び乱入しようとする入局管理局の者だったが、その時、大量のランタンと共に気球に乗って守達が工場から脱出した。

7日目

無事、綾の誕生日を迎える事が出来た。また、マレッドも両親と再開出来てめでたしめでたしで7日間が終わる(マレッドが女の子だと判明)

 

現代問題が安直過ぎる

不法移民であったり、日本でも最近よくニュースで耳にする外国人による不法労働問題。

海外では麻薬の持ち込みのためであったり、犯罪組織が不法に国境を越えたりというケースも少なくない。

もちろん不法移民をはあくまでも「不法」なので擁護する事は出来ないし、かと言ってアメリカでトランプ政権が過剰に弾圧していることで、人権問題に発展したりしている。

何が言いたいかと言うと、この不法移民の問題は非常にデリケートであり、それでいて複雑なモノであり、安直な正義も悪もなく、可哀想だからという単純な感情論で扱える題材ではない。

目の前の子供を助けなければというシチュエーションで盲目的に、複雑な社会問題を「子供」目線で単純化しようとしているという事は分からなくないが、人が良い綾とそんな綾に良い所を見せたい守以外のメンバーが「他人事」でここまで必死になるのも違和感はどうしてもあるし、この入国管理官との死闘は本当に必要だったのか疑問。

もう一つがSNSの顔バレ。

「忘れられる権利」が問題になって久しいが、本作は、SNSを取り入れて現代的な子供の物語にしようとしているのは分かる。

しかし、個人情報をインターネット上に晒されると、その時の誹謗中傷だけでは済まない「祭り」に発展する事は多々ある。

それをこの映画は、最後の宮沢りえ演じる中山ひとみの「人生何とかなるもんよ」という発言1つで解決したような感じになってしまうの、あまりにも投げっぱなし。

確かにかつて、SNSがなかった頃の『ぼくらの7日間戦争』は「何とかなるもんよ」で済んだ時代かもしれないが、今は決してそうではない。人生の呪いとして一生残る事だった十分考えられる。ここらへんは何だかなと思ってしまう。

 

大人になるという事

大人になるという事がどういう事か分からなくなった現代。

何が正解で、どうすれば良いのか。何も分からない。

いつの間にか歳だけ経って、働かないと駄目になったからただ働く毎日。

大人からの抑圧もなくなった結果、大人と子供の境界もふわふわとなった現代。

私達ですらそうなんだからこれからの子供はさらに分からなくなっていくだろう。

ただ、それは決して悪いことだけではなく、自分で選択出来るという事でもある。

本作ラストの気球のように道がなくても自分で新しい道を作る事も出来るのだ。

 

最後に

映画は少しも関係ないのですが、少し前にインフルA型に感染して、ずっと寝込んでおりました。

一回インフルなると体調良くなっても体力がビックリするぐらい無くなっており、この記事も結構フラフラで書いたんです。

何が言いたいかと言いますと。誤字があったり、読み辛くても許してね♡

劇場版アニメ ぼくらの7日間戦争 (角川つばさ文庫)

劇場版アニメ ぼくらの7日間戦争 (角川つばさ文庫)