社会の独房から

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『新サクラ大戦』レビュー。令和とは思えないゲームだけど愛せる。

大正ロマン×冒険活劇×ロボット×恋愛×歌劇×時代劇×オカルト×少年漫画的熱さと様々要素が入り混じったエンターテイメント溢れる作品で、当時のSEGAがこれでもかと言えるほど徹底した作り込みを施した『サクラ大戦』シリーズは2005年に発売された『サクラ大戦V 〜さらば愛しき人よ〜』を最後に新作が出る事はなくなり、伝説となって幕は閉じたのかと思われていた。

 

しかし、2018年4月、東京・ベルサール秋葉原で開催されたイベント「セガフェス2018」において伝説は再び幕を上げる事が発表され、今年、14年の年月を経て本作『新サクラ大戦』が遂に発売された。

 

ただ、このファン待望『新サクラ大戦』の評判があまり良くない。

ネットでも結構叩かれている。

個人的にはこれには思う所がある。

 

14年の月日は長く、旧作のファンだった人はもはや、金持っているおじさんか、金持っていないおじさんしかいない。

そして14年もあれば過去の思い出が誇大化にするには十分な長さであり、『サクラ大戦』シリーズが物凄い超名作という評判だけが独り歩きしてしまったなと思ってしまう。

 

確かに、伝説のOPだけで3億かかったという噂がある 『サクラ大戦3~巴里は燃えているか~ 』を筆頭に頭おかしいクオリティの部分はあるが、基本的にシミュレーション要素含めて苦戦する事ないヌルるさとテンポの悪さが重なり合い、結果的にゲームとして楽しむのではなく、ストーリーを進める上での作業になってしまった所がある。

オマケにヒロイン達は面倒くさい性格が多かったりして結構人を選ぶ作品で、個人的に目的がハッキリしている凄い尖った作品シリーズだなと認識していた。

 

昨今、ゲーム評価って全体的に完璧じゃないと叩かれてしまう風潮がある。

「ゲームに求めるモノ」「サクラ大戦シリーズに求めるモノ」様々な物差しがあって、何を重視するかで作品の評価って全然変わってくるので、『新サクラ対戦』の体験版が低評価でも私はあまり気にしてなかった。言いたい奴には言わせておけばいい。

 

そんな私が実際に遊んでみると思う。

 

 

 

反省しようセガゲームス

いや、確かに凄く良い所もある。ただ、あの「SEGA」の看板背負ったフルプライスのCSゲームとは到底思えないクオリティ部分も確かにあり正気かセガゲームスってなる。

 

サクラ大戦シリーズに求めるモノ」用の物差し用意したのに、「なんでなんでそうなるの!?」で頭が一杯になるストーリー展開と、顔は良いのに情緒不安定過ぎて怖くなるメインヒロイン、「今って令和だよ!?」って元号を心配するバトルパートと言った要素が小さな鉄粉となりどんどん目に入ってくるのが邪魔になって、物差しで全く測れない状況になってしまった。

 

そんな本作『新サクラ大戦』のレビューを書いていきたい。

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 あらすじと概要

 

太正十九年、帝都・東京では「降魔大戦」と呼ばれる戦いが勃発。この戦いに参加した帝都、巴里、紐育の華撃団は、自分たちの消滅と引き換えに世界を救う。

その後、降魔大戦での功績から華撃団による都市防衛構想が世界中に認められ、「世界華撃団連盟(WLOF)」が設立。世界の各都市で華撃団が誕生する。各国の華撃団は2年に1度開催されるWLOFが開催する「華撃団競技会」で歌劇と戦闘の技術を競い合い、人々はこれを「世界華撃団大戦」と呼び熱狂していった。

降魔大戦から10年後の太正二十九年。帝都では新たなる帝国華撃団が結成され、世界華撃団大戦での勝利を目指し活動を開始する。しかし、再び世界中に降魔、さらに正体不明の敵も現れ、「平和の祭典」から「世界の命運をかけた戦い」へと変遷していく。

 

歴代のメインキャラクターデザインを担当していた藤島康介氏から「週刊少年ジャンプ」で連載された漫画『BLEACH』の作者として知られる久保帯人氏に変更。これまでのシリーズでも多数の楽曲を提供してきた田中公平氏が音楽を手掛け、そしてストーリー構成には、『428 〜封鎖された渋谷で〜』などで有名なイシイジロウ氏を起用している。

ゲームは、シリーズ伝統のエピソード型の構成。アイキャッチ、一話ごとの次回予告を取り入れ、テレビアニメを強く意識した作りになっている。

帝国華撃団の隊長「神山誠十郎」となって、「アドベンチャー」と「バトル」の2つのパートを繰り返し、ヒロインたちとの絆を育みながらストーリーを進めていくという、これまでのシリーズ同様の形式だ。

 

メインキャラクター紹介

神山誠十郎 (CV阿座上洋平

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本作の主人公。シリーズファンの中にはサクラ大戦ではなく大神大戦になっているほど人気がある帝国華撃団花組の初代隊長、大神一郎の「魂」をしっかりと引き継いだ主人公になっている。

イケメンであり、強く熱血で誠実、劇場のもぎりもこなす有能でありながら、極めて本能に忠実。お風呂場に女の子がいれば本能のまま突貫し、玉砕。

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↑大浴場という場所は神山誠十郎が裸になるか、女の子を覗く為だけに存在する。

 

ただ、決める所はキチンと決め、文字どおり「勝手に動く身体という特技」をいかんなく発揮しながら、華撃団メンバーの寵愛を一手に集める。

股掛けキング、エロ神、ロリ神と揶揄されてもおかしくない中、「大神なら仕方ない」と言わしめたあのカリスマ性がこの神山誠十郎にはある。

個人的にはこのゲームを通して一番好きになったのが、どのヒロインよりもこの神山誠十郎だった。

選択肢で、選択した言葉に二言三言付け加えて、真反対の意味になり、ヒロインから好感度下がるのはご愛嬌。f:id:Shachiku:20191229135502j:image

 ↑誰もが躊躇する事をやってのける漢、神山誠十郎

 

天宮さくら(CV佐倉綾音

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よくある妹系ヒロインかと思いきや、芯の通った激情家。

本作のメインヒロインなので、ストーリーに大きく関わってくるが、正直かなり面倒かつヒステリックな性格で、合わない人にはトコトン合わない。とある事情で苦悩するシーンも全く共感出来ず、あまりの情緒不安定さに怖くなってしまった。

真宮寺さくらも大概面倒な性格だったが、パワーアップして引き継いでいる。

『新サクラ大戦』はアニメ化も予定されているが、恐らく5ch掲示板で本スレより天宮さくらアンチスレの方が勢い凄くなりそうなのが目に見える。

あと、さくらの部屋に入る時にノックするのだが、「どなた?」という声がやたらと不機嫌で暗い声なのに神山誠十郎だと分かると急に声色が上がるのがリアル感あって苦手。

ただ、和服美女でCV佐倉綾音なので100点。

大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險』も好きだったし、和服美女が好みなだけかもしれない。切実に大正ブームを望む。

 

東雲初穂(CV内田真礼

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巨乳、八重歯、三白眼、江戸っ子娘、勝ち気で明るいムードメーカーでありながら時折見せるか弱さが萌ポイント(死語)という属性モリモリであるものの、彼女のメインシナリオ含めてかなり割を食っていて目立たない。正直、世界華撃団大戦でサブキャラを大量に出すくらいなら1作目ぐらいメインキャラの掘り下げを頑張って欲しかった。続編に期待。

 

クラリス(CV 早見沙織

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2Pカラーの織姫であり、好奇心旺盛な文学少女

 早見沙織ボイスで罵倒されるのが快感になる。メインヒロインの中で、唯一のミニスカなので、脚イベントがやたら多い。脚を1手に任されている。好き。

 

望月 あざみ声 (CV 山村響

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忍者ロリ。横顔とか斜め顔は可愛いが、真正面になると 『平成狸合戦ぽんぽこ』に出てくる狸にしか見えなくて、駄目だった。好き。

 

アナスタシア・パルマ(CV福原綾香

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専用の無限がやたら使い勝手よくて好き。

 

アドベンチャーモード

本作のアドベンチャーモードでもシリーズ伝統の時間制限付きの選択肢(通称LIPS)は健在だ。

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↑何を選んでも駄目なモノは駄目なヤツも存在する

 

LIPSでは、普通に考えたら好感度を下げるような選択肢を選ぶメリットは全く無い。

ただ、選択肢の中に必ずと言っていいほど「好感度は下がるが、その後の反応が面白そうで是非見たい選択肢」や「本能が目覚める選択肢」が用意されているのがズルい所だ。

「選びたいけど、選んでしまうと好感度が……」という、プレーヤーの葛藤を煽ってくる悪ノリが今作でも数多く用意されている。ただ、意外と好感度はすぐ挽回出来るので、一周目は本能のままに選ぶのをオススメする。

逆に一周目から完璧を求める人はそれで好感度下がるの!?と理不尽な選択肢もあり、イライラしてしまうかも知れない。

 

また、ヒロイン達は表情がとても豊かであり、コロコロ変わる表情が見ていて飽きない。久保帯人氏が描いたキャラが目の前で生きている感覚になる、この凄さは静止画では伝わりにくい、動きの凄さがある。

特にコミュニケーションモードは極上だ。

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↑私はもうおじさんの年齢なのにドキドキしてしまった

 

キャラクターの顔がこちらの想像以上に懐に入ってくるので、思ったより近いっていう迫力と、徐々に盛り上がって、興奮していく会話内容も臨場感があって引き込まれた。アドベンチャーパートはこのモードだけでもプレイする価値があると思う。

個人的には直前までポケモンやっていたので、ポケモン感覚でヒロインとスキンシップが出来た。

こういうモードは 『ファイアーエムブレム風花雪月』など他のゲームでも最近はよくあるものだが、

やはりサクラ大戦はそもそもギャルゲーとして作られている上に、あのSEGAが魂を込めて作っているので情熱が違う。このモードの為だけに『新サクラ大戦』の買うのも良いと思う。

 

アドベンチャーモードの問題はフルボイスではないと聞いていたが、想像してたより1.5倍ぐらいボイスがない所だ。

多種多様なモーションで激しく動き回るだけに無声だと空虚さ凄い。

何よりボイスを付けるべきイベントと文字情報で良いイベントとの選分が出来てない。演技の出来を見せるイベントで声無しはない。アレにはビックリした。声優の演技をもっと堪能させてくれ。

何でもかんでもフルボイスだから良い訳ではないが、妥協を感じてしまう。

ただまぁアドベンチャーモードは全体的に良くて、こんなリッチなギャルゲーそうそう遊べないのでオススメだ。

 

バトルパート

これまでのバトルシステムは、初代~2が王道のシミュレーション、3~Vはシミュレーションバトルに自由度が加わったARMSシステムを採用していたが、本作ではシミュレーションという前提を覆し、シリーズ初のアクションバトルへと生まれ変わった。

そう、あのシリーズファンなら夢にまでみたアニメのような霊子甲冑で壁走りなどが出来るのだ。f:id:Shachiku:20191229135650j:image

しかし、この『新サクラ大戦』の評価を著しく下げているのがこのバトルパートというのは間違いない。

〇と△ボタンを組み合わせただけでシンプルにコンボを撃てて、□で必殺技。

無双シリーズから〇ボタンと□ボタンを入れ替えていることに少々イラ立つ。

撃破した時の音やエフェクトはとても気持ちよく、大勢の敵を一気に吹き飛ばすと中々の爽快感がある。

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ただ、ジャスト回避は実装しているものの派手な見た目に反してアクションゲームとしてはかなり浅い。

思考停止して、ダッシュしながら△ボタンで回転斬りを繰り返すが一番ではと途中で気付いてしまう。

 

しかし、浅いのは別に良い。個人的には「サクラ大戦」にそこまで求めていない。

ただ、たたである。

ロックオン機能がない。これによるストレスが凄い。

セガよ、テストプレイしたか?

ロックオンがないなら、ないなりのゲーム性にしてくれたら良いけど、

このゲーム、空中にいる敵が出てきて滅茶苦茶狙い辛い。

セガよ、テストプレイしたか?

主人公の機体で空中の敵を狙う際は、マリオのように何度も何度もぴょんぴょんしてジャンプ攻撃を繰り返すことになる。

カッコよく壁走りで移動しながら攻撃出来るのかと思いきや、壁走りは特定の壁しか出来ないのでそれも不可。壁を利用した縦横無尽な戦いをしたかった。

それに加えて、光武の手足は短く敵との間合いが計りづらい。

当たらないのにぴょんぴょんジャンプして武器をブンブン振り回す姿はただひたすらストレス。どんな強いボスが出てくるより空飛ぶ敵が数体出てくる方がため息だてしまう。

後、仲間キャラの頭が悪く棒立ちしてることも多く、特に敵が空を飛んでいると銃を持っているアナスタシア以外なにもしてくれない事が多い。

お前らあんなにストーリーだと「諦めない」とか連呼しているのに相手が飛んでるだけで、すぐ諦めるのやめろ。

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↑必殺技は素直に格好良い。

 

また全体的に省エネ設計で、敵の種類とボスの数が少なく、何より戦闘MAPの種類も少ない。

そして、移動では何かとユーザーを落とそうとしてくるのだが、リスポーン地点が遠いく、ここからか〜となる事も多い。また、敵を落としても倒した事にならず、ワープで復帰してくるのを待たないといけない。

敵を全滅させないといけないのにその敵は結構無造作に落ちていくので、復帰するまで待たないといけない事があり、「何待ちなの!?」ってなる事がちょくちょくある。

セガよ、テストプレイしたか?

 

正直バトルパートだけならこの前リリースされたソシャゲ『アクション対魔忍』の方が攻撃をタップしたら近い敵を自動で狙ってくれる分、出来が良いとも言える。

サクラ大戦が感度3000倍に負けるなんて悔しくないのか。私は悔しい。

 

まぁ色々文句はあるが、盛り上がるシーンでバックには〜しれ〜と「檄!帝国華撃団」が流れるだけで興奮しちゃうのでオタクはチョロい。

 

ストーリー

ネタバレになるので深くは書かないが、お話を盛り上げるためには「逆境」が必要になるのは分かるが、本作ではその「逆境」の作り方が非常に雑で、「正気か!?上海歌劇団!」から始まり、強引な「逆境」づくりは、この後も結構頻繁にある。

そのたびに私は画面の前で「なんでなんで?」と口に出して言ってしまっていた。そのぐらいのインパクトと違和感がある。怖い。ただただ怖い。

 

最後に

『新サクラ大戦』本作は正直あまりオススメ出来ない。

まず、アニメ絵と3Dモデルで顔が結構違う気になってしまう。

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また、過去に見たイベントは見返す事は出来ないし、チャプター選択すらもない。

10年以上前の古臭いシステムのまま、快適性にアップデードすることなく令和の時代に来てしまった。

 

だが、私は結構好きだ。

基本的に出来は悪いが、クリア時間約20時間しっかり遊べた。

少なともクソゲーと言われるような出来ではない。

ストーリーも終盤の展開は結構熱いものになっており、サクラ大戦感を強く感じることが出来た。

何よりやはり田中公平氏による楽曲が最高だ。

盛り上がる所をしっかり盛り上げて、熱くなる所はしっかり熱くなる。

それだけで良い。それこそが『サクラ大戦』だ。

恐らく『新サクラ大戦2』は発売されるだろうから、そこでどれだけブラッシュアップされるのかが重要だと思う。

取り敢えずロックオンは必須だぞセガよ。間違いは故郷だ、誰にでもある。ここから直して行こう。

 

『新サクラ大戦』を買おうと考えている人にはお願いだから、その上がりまくったハードルを底まで下げて欲しい。

意外と楽しめるよ。

 

最後に一言

シリーズ伝統の「こいこい」が本作にもあるが、私は「こいこい」のルールが分かるようで分からないまま、何となく遊んでいる状況はまるでギャグマンガ日和の麻雀回みたいになっているので誰かルール教えて下さい。

f:id:Shachiku:20191229135845j:image(C) 『増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和10巻』