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実写映画『カイジ ファイナルゲーム』感想。日本国民の心はカイジだったんですね

「死者の口が開いた!」

パルパティーンが復活する某星の戦争シリーズ最新作同様、あんなに苦労してようやく地下労働から脱出したのに1年も経たない内にまたしても「借金まみれ」の負け組になり地下労働に戻ってしまう衝撃的な始まり方をした『カイジ2 人生奪回ゲーム』から9年。

再び藤原竜也カイジとして戻ってきた。

まーた「負け組」になって地下労働からスタートするのかよと思いきや、今度は日本という国全体をカイジと同じぐらいの「負け組」にするというスケールの多きさ、発想力。福本伸行先生天才!ってなる設定で最初からワクワクが止まらない。

そんな傑作?怪作!である実写映画『カイジ ファイナルゲーム』の感想をネタバレありで書いていく。

映画「カイジ ファイナルゲーム」オリジナル・サウンドトラック

監督佐藤東弥 脚本福本伸行 徳永友一

 あらすじ

2020年。東京オリンピックを終えた日本は、不景気に陥っていた。1,000円に値上がりした缶ビールを買うのも躊躇するほど困窮しているカイジ(藤原竜也)は、帝愛グループの企業の一つを任されるまでになった大槻(ハンチョウ)と再会する。カイジは、金を持て余した富豪の老人が主催するイベントで自分と組んで大金を得ようと持ち掛ける大槻の誘いに、一抹の不安を覚えながらも乗ることにする。

 個人的感想

自分のツイート、読み返してみるとまるで中身がねーな。

 

4つのゲーム

今までのカイジ実写映画は概ね原作に沿って展開されており、利根川や一条との勝負は原作にもある。しかし、本作は脚本福本伸行先生による完全オリジナルとなっている。ファンの方ならご存知だと思いますが、正直、最近の福本伸行先生が描くストーリーというのが1番の地雷要素なので不安だったのだが、確かに駄目なところはあるけど、意外と良かった。

 

冒頭でも書いたように本作はカイジが「負け組」から脱出するストーリーではない。

東京オリンピック後の日本という、誰もが不景気になるのではと不安視している近未来が舞台である。カイジ曰く「日本全体が帝愛の地下みてぇだ」という最悪の日本である。

敵は福士蒼汰演じる高倉(顔芸が凄い)陰の総理とまで呼ばれるエリートであり、シリーズお馴染みの帝愛や政府を利用して預金封鎖(金融機関にある国民の預貯金を自由に引き出せなくする事)を行い、国民の預金、証券、保険の総額1,500兆円で国が抱える負債1,500兆円を「相殺」する事で国を再建しようと企む男である。そう、この映画のカイジたちの目的は「預金封鎖を止めること」。つまりは、日本を救うことなのだ。これまで「負け組」として自分のためや、仲間のために戦ってきた彼は、遂に日本のために戦うのだ。圧倒的!!スケール!!!!

本作で登場するゲームは4つ。バベルの塔最後の審判・ドリームジャンプ・ゴールドジャンケン。しかし、メインはあくまで最後の審判であり、他の3つはオマケだ。

しかもこの最後の審判が中々のグダグダぶりなので中々辛いものはある。

それでは4つのゲームを解説していく。

バベルの塔

給料の7割をピンハネされ怒るカイジの前に現れる大槻(ハンチョウ)

彼に誘われたゲームこそがバベルの塔だった。街中のどこかのビルの屋上に長い棒が立ち、その棒の頂点にある魔法のカード(電卓)を手に入れたものが勝者という単純なルール。

勝者は装置の表側の電卓に10億未満の数値を打ち、その金額を手にすることができる。もしくは裏面には人生を変える極秘情報を入手する事ができる。

大槻(ハンチョウ)からゴール地点を事前に知らされていたカイジは、隣のビルから鉄骨を架けて塔を登らずに装置を手に入れようとする(1作目の鉄骨渡りと同じ状況)

ドローンの登場やカイジを落とそうとする人々の出現で危機に陥ったが、決死のジャンプで最初に魔法のカード(電卓)触れる事が出来たためカイジの勝利。大槻(ハンチョウ)との約束を破り、カイジは裏面の極秘情報を選んだ(このご時世、大勢の前で多額の金を入手する事は自殺のようなモノだからだ)

 

最後の審判〜人間秤〜

本作のメイン。

総資産が拮抗している2人が全財産を金塊に換え、天秤となっているハカリの上に乗ってその重さを競い合う。このゲームの特徴は支援者をつけることが出来るというモノ。支援者は4つのFに分かれており、それぞれ「family」「friend」「fixer」(銀行)「fan」(観客)に分類され、それぞれのステージで支援者はハカリに資産を積んでもらう。最終的にハカリが重くなった方の勝利というゲームだ。バベルの塔を主催した東郷が、大金を手に入れ政府の預金封鎖計画を阻止するために、帝愛の幹部であり派遣会社を牛耳る黒崎に勝負を挑む。

黒崎は東郷の秘書(新田真剣佑)を利用したり、小芝居を打ったり、様々な暗躍を実行し、カイジ達を追い詰める。

最後は、ドリームジャンプに成功し資産を増やしたカイジがドローン組と協力し、板崎(生瀬勝久)の登場もあり観客の心も掴んだおかげで東郷の勝利となる(ただし東郷は死ぬ)

カイジは黒崎に言う。「ようこそ、バカにしていた底辺の世界へ!!」

ドリームジャンプ

参加者は全員自殺志願者。10人が同時にバンジージャンプを行うが、縄が繋がっているのはそのうちの1つだけ。その1つを選んだ者だけが生き残るという命をかけたゲーム。

カイジは勝つために配線を切り停電させ、前回のゲームから当たりの位置をズラさせないことに成功(警備はガバガバ)本作のヒロイン加奈子に前ゲームで用いられた券(外れた万馬券のような物)を集めてもらい、そこになかった9番が当たりだと判明。9を選んだカイジは見事、金塊を10倍にして最後の審判へと戻った。

 

ゴールドジャンケン

別名「接待じゃんけん」という高倉の得意技。3回勝負で3回のうち必ず1回は3つある手のひらサイズの純金を握って出すことがルール。つまり1回は必ずグーを出さなければならない。よって、グーを3回目まで持ち越すと手が相手にバレる。1回目か2回目で消費しておくのが理想である。カイジは1度でも勝てば自分の勝ちというルールを提案したが、その代わりにあいこの時も高倉の勝ちというルールになってしまった。

総理達は東郷の策略により閉じ込められ、カイジが負けるごとに預金封鎖に伴って印刷された新札へとたどり着くパスワードを開示する約束をする。

1戦目はカイジの負け。2戦目も金塊グーを出しカイジが負け。後に引けなくなった3回目でカイジは金塊を握らずにグーを出し勝利する。高倉は金塊を持った人間の手の動きや肩の動きなどで判別していたが、金塊を持たずにグーが来ることは予想できなかった(ここにツッコミ入れている人は多いが、補足すると本来は金塊グーで勝つとその黄金を貰えるので、政治家相手では普通のグーをする人はいなかったという説明は一応出来る。本来は接待ジャンケンなのだ)

3戦目で勝った事でカイジは最後の関門であるトランクのパスワードを守り抜いたが、実はそれは明日の正午に自動的に解除される仕組みになっていたので、高倉の実質勝利となる。

と思わせておいて、実はカイジ達は最後の審判で勝った金で印刷会社を買収しており、パスワードの解除のことも知っていた。総理達がトランクごと持ち出した新札は実は表面の1枚だけであり残りは旧札、監視カメラによって彼らがそれを持ち出す現場を撮影することにも成功。カイジ達は預金封鎖を阻止することに成功した。

高倉の「相殺」で日本を救う策を崩れ去った。高倉は言う。

「弱者が日本を食いつぶしている。その重みによって日本という船が沈みかけている。多少の犠牲が仕方ない」と。

だがカイジは訴える。

「誰が何にBETするかは自分で決めるもんだ!勝負すべき人間が決めるんだよ!!」

 

悪魔的だ!

完成度で言えば、圧倒的に1作目が良かったのは間違いない。本作は結構な尺を取って秘書(新田真剣佑)が実は東郷の愛人の息子だったいう話をするのだが、まぁ〜興味が沸かない。復讐のため秘書になったが、東郷の人柄に触れカイジの味方となる。いや、良い話ではあるし、彼が投げたコインが最後に勝敗の決め手となるというのも良いんだけど、コイン1.2枚であんなに天秤動くのかという素直な疑問も生まれてしまう。

 

あと、本作のヒロインがビックリするぐらい目立たなかった。パンフでも「女性を出すことがノルマ」みたいに福本伸行先生仰ってたけど、本当にノルマだったんだなと。ラッキーガールの意味とは何だったのか。てっきりジャンケンで活躍するのかと思いきや何もなかった。

 

ただ、やっぱり藤原竜也カイジは良い。彼が1作目で高級車を思いっきり蹴っちゃった時から大ファン。

藤原竜也カイジって原作のカイジとはまた違うというか、かけ離れた存在になってしまった。それでも原作にある魅力と原作にはない魅力がタップリ詰まっていて、実写化ってこういう原作のキャラを独自に解釈し、演じてくれるのが魅力だなとシミジミ思うわけですよ。

 

なんかよく原作再現度ばかり注目する人いるけど、そういう人は原作だけ見てれば良いんスよ(暴言)原作は原作、アニメはアニメ、実写は実写。それぞれの強みや魅力があり、そういうのを最大限発揮してくれるような作品が大好き。

 

そしてまさかの3作皆勤賞となった「犯罪的だ・・・」のセリフ。本作では予告でも使われており、カイジは別に口癖のように「犯罪的だ・・・」って言うキャラじゃねーだろと思ってたんですが、まさか、ラストシーンだとは思わなかった。積み重ねがあったからこそ出来る感動。めちゃくちゃエモかったですよね。怪作ではあるけれど、ラストシーンだけでこの映画は好きと言える作品は『トリック劇場版 ラストステージ』を彷彿もさせる。

 

最後に

ネット軽く見ると意外と評判悪い本作。

確かに完成度は高くないし、説教臭い。

肝になるギャンブルの弱さはまぁ、最近の福本漫画読んでいたので期待をそもそもしてなかったのも個人的には大きい。

ただ、藤原竜也筆頭に役者陣の熱演と、遠藤や坂崎や大槻(ハンチョウ)といった懐かしいファンサービス。無駄にスケールがデカイ話に、熱い説教。そして福士蒼汰の変顔。個人的に鑑賞後の満足度がすごかったのでオススメな作品です。こういう映画に出会えるから映画館で映画を観るのが好きなのかもしれない。

最後に一言。

新田真剣佑の筋肉が凄すぎてパツンパツンのスーツが破れないかヒヤヒヤしたよね。

 

カイジ ファイナルゲーム 小説版 (講談社文庫)

カイジ ファイナルゲーム 小説版 (講談社文庫)

  • 作者:円居 挽
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/14
  • メディア: 文庫