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映画『名も無き世界のエンドロール』感想。「ラスト○○分、衝撃のラストを見逃すな!!」というデバフとバフ

伊集院光さんと漫画家浦沢直樹さんとの対談の時に、伊集院光さんが『20世紀少年』の最終話の終わり方に不満を持っていて「いろんな秘密、いろんな解釈、いろんなネタ振り・謎をいっぱい残したまま、急に終わって、トンズラしやがったな」と言ってたら、浦沢さんが「そうかもしんねぇけど」と。「でも、それを楽しみに読んだじゃん」と(笑)

と言われて「それもそうだなぁ」と納得していたデブを僕はずっと忘れられないでいる。

「読んでいる間はめちゃくちゃ面白いのに最後はイマイチ」

それが浦沢評として的確なのかもしれない。

ただ、浦沢先生は決して「風呂敷の畳み方が下手」ではないと思う。

それなのに、僕は何故、『Monster』や『20世紀少年』などの浦沢先生の長編作品を読んで「肩透かし」と感じるのだろうか。

その理由は明白であって「風呂敷を広げるのが上手すぎる」からであり、「序盤~中盤にかけて膨らみに膨らんだ期待値程には、ラストの展開が綺麗な着地を見せないから」だと思う。

 

期待を裏切られる為には、まず期待を膨らませなくてはいけない。

普通の漫画などの作品では、まずそもそも、そこまで序盤~中盤までで期待が膨らむ事はない。

「どこに伏線があり、これは真実か嘘か、どういうラストになるのか」というワクワク感が醸成されない。そこまで期待が膨らんでいなければ、ラストの展開が「普通」であったとしても、「肩透かし」「期待外れ」「トンズラ」などと言われようもない。

最後までみてもらう為に、ラストに向かって期待値を上げ続け、ラストで落ちる。

 

そういう作品は浦沢作品以外にも目にする事は多い。

ただ、多くの作品は浦沢作品ほど、面白そうな風呂敷を広げることが出来る訳ではないので、作品以外の要素でバフをかける。

 

例えば「ラスト○○分、衝撃のラストを見逃すな!!」という宣伝文句。

多くの映画ファンから嫌われる常套文句であり、大概の作品は身構えたほどの衝撃なんてくる訳もなく、良くて「予想通り(ニチャァ)」という感じに終わる。

そもそも映画館で映画を観ているのに「お、あと数分で終わるな!もう画面見なくてもいいな!」みたいな発想する人いないだろ!!「エンドロール後も見逃すな!」なら理解できるが。

 

ただ、「ラスト○○分、衝撃のラストを見逃すな!!」で重要なのはこの文言を見てから映画を鑑賞すると「ラスト○○分、衝撃のラスト」のラスト○○分になるまでの時間を普段より楽しめるようになる効果がある所だと思う。

「どこに伏線があり、これは真実か嘘か、どういうラストになるのか」

そういう事を注意深く考えながら映像を観る事になるので、映像的に何も面白さがない会話劇なども普段より集中して楽しんで観る事が出来る。

そして最後の予想通り過ぎる終わり方にズッコケる。

ラストで強烈なデバフがかかるが、それまでにバフがかかる。

それが「ラスト○○分、衝撃のラストを見逃すな!!」だと思う。

そんな宣伝文句を使い、他の多くの作品と同じようにズッコケるようになった映画『名も無き世界のエンドロール』の感想をネタバレありで書いていきたい。

 

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【監督】佐藤祐市 【原作】行成薫 【脚本】西条みつとし

あらすじ

複雑な家庭環境で育ち、さみしさを抱えて生きてきたキダとマコトは幼馴染み。そこに同じ境遇の転校生・ヨッチも加わり、3人は支え合いながら家族よりも大切な仲間となった。しかし20歳の時、訳あってヨッチは2人の元から突然いなくなってしまう。

そんな彼らの元に、政治家令嬢で、芸能界で活躍するトップモデルのリサが現れる。リサに異常な興味を持ったマコトは、食事に誘うが、全く相手にされない。キダは「住む世界が違うから諦めろ」と忠告するが、マコトは仕事を辞めて忽然と姿を消してしまう。

2年後。マコトを捜すために裏社会にまで潜り込んだキダは、ようやく再会を果たす。マコトは、リサにふさわしい男になるために、死に物狂いで金を稼いでいた。マコトの執念とその理由を知ったキダは、親友のため命をかけて協力することを誓う。以来、キダは〈交渉屋〉として、マコトは〈会社経営者〉として、裏と表の社会でのし上がっていく。そして、迎えたクリスマス・イブの夜。マコトはキダの力を借りてプロポーズを決行しようとする。しかし実はそれは、10年もの歳月を費やして2人が企てた、日本中を巻き込む“ある壮大な計画”だった─。

 予定調和

この映画は決して雑な作品ではない。

ただあまりにも教科書通りの分かりやすい伏線の張り方とか、丁寧過ぎるお話の展開とか。

上記のあらすじ読んだらほとんどネタバレで、それ以上のサプライズが一点しかなく、

「ラスト20分衝撃の真実」という宣伝文句に期待すると大変ガッカリする所だと思う。

例えあらすじを読んでなくても開始20分ぐらいでほとんどの人が「あれ、これもしかしてそういうこと?」という感想になるし、「いや、そんな分かりやすい訳がない。何か他に衝撃的な事が起きるハズだ!」と深読みしていき「岩田剛典演じるキダが出て行った後に柄本明さんが何か手紙を読んでいる、実はキダの行動全てが手紙主の計画通りなのか」とか色々考えている内に「ラスト20分衝撃の真実」の20分になり明かされる真実。

「そのまんまかーい!」

ツッコミと共に始まるエンドロール。

決して退屈にはならないけど、特別印象に残る所もない感じである。

本来「衝撃」と書かれている時点で、これまでの物語の筋から外れた結末が訪れることは誰でも予想できる。しかも、映画を作る人間はその「衝撃」を演出するためミスリードをしようと既定路線を懇切丁寧に描き、ただあまりにも伏線がない唐突な衝撃さだと呆気にとられるのである程度、リードを広げる。そのリードの幅の中で観客が各々考察するのが楽しい訳だ。

本作も「ラスト20分の衝撃」という宣伝文句を見て観に行く人はその衝撃を期待する訳だが、この映画はマジでミスリードの要素が全くなく、ストレート150キロが飛んでくる。

変化球を期待してた観客にはある意味衝撃なのかもしれない。

 

確かに「ラスト○○分、衝撃のラストを見逃すな!!」というバフがなければ、全体的に少し眠たい展開かもしれないが、B級映画にありがちな雑さは全然なく、丁寧な物語の進め方はストレスなく見れたので、変に最後、デバフをかける宣伝も必要なかったのではと思わずには言われない。

 

日本中を巻き込む“ある壮大な計画”だったって言ってる割にはそんな壮大でもないし、徹頭徹尾、映画の内容と宣伝文句があってなかった。まだGitHub上に三井住友の一部コードをアップした年収300万の男の方が日本中を巻き込んだ騒動起こしたよ。

 

本作で面白いのは岩田剛典演じるキダの職業が「交渉屋」になる所。

『レオン』のジャン・レノをイメージして役作りしたという事だが、岩田剛典に合ってて滅茶苦茶カッコよい。

残念なのは、「交渉屋」として活躍するシーンが少なく、その交渉のシーンも銃で脅すとか物理推しであり、僕が期待してた交渉ではなかった所。

『交渉屋キダ』が見たかったがそれらがdtv独占配信のアナザーストーリーへの誘い方に見えて辛い。

そして廃業になるからってそんな危険な職業を紹介した自動車修理工場の社長もどっか狂ってるヨ(ここも伏線かと思ったけど、そんな事はまるでなかったぜ)

 

本作の唯一の衝撃のシーンは、最後、犯行現場が実はキダが教えられていたホテルではなく、隣のホテルだったこと。キダは最後の最後で思い直してマコトを止めようとホテルの部屋に入るが、そこには思い入れのあるコーラがあるだけ。直後、隣のホテルの一室が爆破。これまた思い入れのある冬の花火が上がる。

ここの花火が意外と地味なのが良かった。心に残る花火って何百発も放たれる花火とかではなく、一発のありきたりな花火なのかもしれない。

花火を打ち上げてエンドロールを迎えたマコトと、まるで映画のラストにあるような花火の打ち上げを見て、映画(虚行)が終わり、現実を迎えるキダ。この対比もよかった。

 

 

 

続きはDTVで

突然だが、今季のドラマは当たりが多いと思う。

『青のSP』『俺の家の話』『天国と地獄』などなどがある。

また和製ウォーキングデッドこと『君と世界が終わる日に』もウォーキングデッドのつまらない所盛り合わせって感じで中々面白いが、このドラマ、第一シーズンは地上波だが、第二シーズンはhuluで独占配信が決まっている。

やめろ!!!!!!

という気持ちを抑えるの一杯である。ただでさえゾンビモノなんて終わり方に期待出来ないのに第二シーズン続くなら絶対クリフハンガー的に終わるやん。安息の地を見つけたと思ったらゾンビの大群がやってきて襲われて終わるとかになるやん!!hulu入っちゃうやん!!

そして映画『名も無き世界のエンドロール』

「ラスト20分、想像を絶する衝撃のエンドロール」というキャッチコピーだったけれど、ラスト20分より開始5分前に流れた「この映画の続きはdtv独占で配信!」という予告が流れた方が衝撃だった……しかもその予告シーンでキダがいたから映画では死なないという微妙なネタバレも喰らうし、しかもdtvである。なんでhuluとかdtvみたいに少し微妙なサブスクで配信するんだ。せめてhuluに統一してくれ。

映画後のキダが交渉屋として活躍する話。どちらかと言えば映画の話が0巻で、dtvが1巻みたいなノリになりそうである。映画では交渉屋の話が全部触り程度だったのは全てこの為だと思うと何だかなと思ってしまう。

文句は言ってるものの、思惑通りにdtvに加入して感想を書くと思うので、その時はよろしくお願いします。

 

名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)

名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)