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『スマホを落としただけなのに2 囚われの殺人鬼』感想。白石麻衣さんファンとシリアスな笑いが好きな人は必見の映画!

前作でネットストーカーの疑惑をかけられた際、Facebookに自分のアカウントのニセモノがあることが判明したのに、全く動じることなく「ほらみろっ!俺は何も悪いことしていない!」という態度をとったバカリズムの図太さを見習いたい今日この頃。

 

本作では残念ながらそんなバカリズムの続投は無かったが、ツッコミどころが増え、エンタメとして面白くなった『スマホを落としただけなのに2 囚われの殺人鬼』の感想をネタバレありで書いていきたい。

f:id:Shachiku:20200221182905j:image(C)2020 映画「スマホを落としただけなのに2」製作委員会

監督:中田秀夫 原作:志駕晃 脚本:大石哲也 主題歌:King Gnu

 

 

スマホは落とす

冒頭、前作主役組の結婚式を終え、白石麻衣さん演じる松田美乃里がFacebookにログインするところからこの物語は始まるが、美乃里がフリーwifiに繋げた時に出てくる『スマホを落としただけなのに2 囚われの殺人鬼』というタイトルロゴ。

これじゃスマホを落としただけなのにじゃなく、フリーwifiに繋げただけなのにやんというツッコミと共に、この映画の幕は上がる。

その後もスマホを落とす描写がない。

ではこの映画にスマホを落とすシーンはないのか。

いや、ある。

予告でもスマホを落とすシーンがなく、もしかしてスマホを落とさないのかとファンを困惑させたが、本作では事件が解決し、最後の最後に回想として

「 美乃里が就活中にスマホを落として、それを拾ってくれたのが、後に恋人になる主役の千葉雄大演じる加賀谷学だったということが判明する」

 

前作では冒頭で田中圭スマホを落としたことで、 北川景子さんが犯罪に巻きこまれたりして悪いことだった「スマホを落とす」行為が本作ではその対として描かれており、スマホを拾ったという共通点を持つ悪役である成田凌演じる浦野善治と加賀谷学の対比として、闇VS光として見事に象徴するシーンとなっており、またオタク君が大好きなタイトルの回収としても意味のある個人的大好物な終わり方でした。終わり良ければ総て良しと言うが、本当に笑顔になって劇場を後に出来る。

 

神奈川県警が無能

こういう作品で警察が無能なのは仕方ないし、前作でも加賀谷学以外、まともに機能していなかったが、本作ではそれ以上にパワーアップしている。

例えば

  • サイバー犯罪対策室の室長であるずんの飯尾和樹が サイバー犯罪どころか初歩的インターネットにもあまりにも疎くて無能(まぁ無能がトップになるのはある意味現実的なのかもしれないが)また、この飯尾は死体を見つけてもビックリしたまま加賀谷学が来るまで死体を見つめるだけ。飯尾が死体見つけた意味あったのか
  • 殺人鬼である浦野善治の監視が1人。いくら監視カメラがあるので遠くから監視していてもハッカー相手に1人である。しかも、多額の借金のある隙の多すぎる警官。浦野善治に自分の尿をスープとして出すなどの笑ってしまうぐらいのヒールな行為を連発することから、観客のほぼ全員がこのクズ警官が殺され、浦野善治が脱獄することを直感する。そして本当にクズ警官は殺され、脱獄する。それはそれとしてこれを演じるアルコ&ピース平子祐希はクズ役が滅茶苦茶似合っていたので、これからもクズ警官の役をやってほしい。
  • 美乃里の警備が1人。警察の偉いさんが美乃里を必ず守ると言いつつ1人である。基本的に人材が足りていないかもしれない。結局、犯人らしき者(実は公安)を見つけても返り討ちにされてしまう。というかなんで公安の人は警察を気絶させたのか、何も分からない。
  • 浦野善治の顔写真が変わっているのに気づくのが遅い。後半、浦野善治は脱獄するのだが、浦野善治は警察のデータベースをハッキングした結果、指名手配をかける時の顔写真を変えており、警察は浦野善治を素通りさせてしまう。浦野善治の脱獄に慌てたのかもしれないが、顔写真が変わっていることに誰も気づかないものなのか。しかも、大量殺人犯である顔写真なんてニュースとかでテレビやネットに流れただろうに、誰も気づかないのである。

これ以外にも細かく神奈川県警の無能さが全面に出ているが、ある意味神奈川県警をリアルに描いているのかもしれない。

 

本作はなにもかも浦野善治の思い通りになるが、観客は別に浦野すげー!ってならない(アメちゃんによる眼球破壊は面白かったが)

だいたい警察がガバガバ過ぎるだけで神奈川県警!ってなる、そんな映画。

 

 

加賀谷学と浦野善治

f:id:Shachiku:20200221201515p:image(C)2020 映画「スマホを落としただけなのに2」製作委員会

 

やはり、本作の最大の見どころはこの二人だろう。

加賀谷学は前作同様、真面目で少し頼りなさそうな感じだが、浦野善治は前作と変わって白髪になっている。その理由がPCに触ることが出来ないストレスからという正気を疑う理由だし、本作の初登場シーンではエアータイピングという中田監督の遊び心溢れるキャラになっている。

前作でお互いに過去、母親からの虐待された思い出があることが判明したが、本作でそこを掘り下げている。

「愛を知らずに育った人間が他人を愛することができるのか」

浦野善治は幼少期に母親から激しい虐待を受け、「あんたなんか産まなきゃ良かった。」と言われ続け、仮面をかぶることでしか生きることが出来なかった。

加賀谷学も同様、父親を亡くし、それで母親が壊れ、虐待の毎日だった。

だからこそ、そんな愛を知らない自分が父親になれるか確信が持てず、美乃里とも進展せず、母親とも会えないでいた。

浦野善治はそんな加賀谷学を見て、「自分と同じタイプの人間」だと確信したのだ。

 

しかし、最後の決戦の時、加賀谷学は美乃里を自分の命より優先して懸命に守ろうする。

これは子供のころ、例え愛をしらない環境で育ったとしても、誰も愛せない人間になるか、いや違う。例え、育った環境や、親は選べなくても、人は真っすぐ育つことが出来るし、それを言い訳に殺人をしていい訳がない。加賀谷学は正義の道を選び、浦野善治は自分で悪の道を選んだのだ。光と闇の対比。これはこの『スマホ落としただけなのに』シリーズで良く描けているところだと思う。

 

細かな感想

  • 浦野善治に制服を取られてパンツ一丁になったアキラ100%。近くにお盆もあるし、完全に狙っている訳だが、終盤でシリアスな場面でアキラ100%である。中田監督のシリアスな笑いが独創的過ぎる。
  • 冒頭、浦野善治の隣の独房にいたテンプレ的オカマは一体なんだったんだ。
  • 本作のMの正体は加賀谷学の元同僚で、犯行動機が加賀谷学と共に作った会社を壊したくなかったからであり、加賀谷学を愛している同性愛者である。冒頭からBL本が出てきたりして伏線を張りつつ、美乃里に加賀谷学と最近上手くいっていないことを聞き出しており、観客に美乃里狙いだと思わせつつ、実は加賀谷学狙いだったのである。これは素直にうまかったなと思う。犯人なのはバレバレだったが。
  • ダークウェブという犯罪者ばかり集まる掲示板的サイトで「デマ乙」って文字を見た時はネット住民の書き込むノリってどこも変わらないなと思いました。
  • 白石麻衣さんは滅茶苦茶に身体張ってましたね。特に終盤の襲われるエロシーン。この映画って年齢制限あったっけ!?と思ってしまうほどのエロシーンでした。アイドル卒業決まったからってここまで胸や脚を出していくとは…凄い。絶対に中田監督の趣味が入っている。100点。 パンフに白石麻衣さんを襲う音尾さんがずっと白石さんに謝っていて「娘にこんなシーン見せられない!本当はこんな人間じゃない!」って言っているのに撮影が始まると「ぐへへへへ」に瞬時に変わると書いていて、DVDの特典にそれの撮影風景つけて欲しいと心から思いましたね。
  • 最後、美乃里も腕斬られたハズなのに、ノースリーブの服着て、傷後が何もないの、医学スゴってなりました。

最後に

こういう作品の続編ってどうしてもパワーダウンする事が多いが、本作はエンタメに振り切っていてとても面白かったと思う。あと、思いっきり『羊たちの沈黙』の影響を受けているのが分ってニヤニヤしちゃう。

中田監督は最近『貞子』でがっかりしたところだったので

 

 こういうシリアスな笑いをトコトン突き詰めて欲しいなと思いました。

次回作があるか分からないが、楽しみ。

 

最後に一言、

成田凌さんの顔芸ずっと見ていたい