あの三池崇史監督が「さらば、バイオレンス」と宣伝したこの映画は冒頭から生首が転がり、銃弾と血、刀と四肢が飛び交う最高にイカしたバイオレンス映画になっている。
つまり「さらば、バイオレンス」とは真っ赤な嘘ということだ。
しかし同時に「さらば、バイオレンス」はある意味本当でもある。
なぜなら、本作は主人公レオとモニカのロマンス映画でもあり、命を懸けた人生の祝福でもあるからだ。我々は壮大な「初恋」をこの目にするのだ。
ただ『テラフォーマーズ』や『ヤッターマン』などを手掛けた三池崇史監督なので「さらば、実写化映画」と宣伝してくれた方が個人的には少し寂しくも嬉しかった気がしないことはない。
本作『初恋』の感想をネタバレありで書いていきたい。
あらすじ
『龍が如く』シリーズでよくみる欲望の街・新宿歌舞伎町が舞台であり、これまた『龍が如く』シリーズでよくみるファンタジーヤクザと『龍が如く』シリーズでたまに見る悪徳警察に追われる少女モニカ(小西桜子)
そんなモニカを守るのは、病に侵されているプロボクサーの葛城レオ(窪田正孝)
そこに『龍が如く』シリーズでよくみるチャイニーズマフィアも加わり、モニカとクスリを巡って大騒動。
ヤクザと悪徳刑事にチャイニーズマフィア。
ならず者たちの争いに巻き込まれた孤独なレオとモニカが行きつく先に待ち受けるものとは。
欲望がぶつかりあう人生で最も濃密な一夜が幕を開く!
魅力的なキャラクター達
葛城レオ(窪田正孝)
(C)2020「初恋」製作委員会
筋肉が凄い。
プロボクサーという役なので、上半身裸のシーンが多いのだが、まぁ筋肉が引き締まっている。好き。
親に捨てられ、「これしかなかった」とボクサーの道を歩むものの、どこか冷めていて生きているようで生きていない。そんな彼は残り命が短いと診察され、ヤケクソになり追われていたモニカを助ける。
最初はそう、ただの自暴自棄だった。
どうせ死ぬんだから「死」なんて怖くない。
そんなある意味自殺のような行動がヤクザやチャイニーズマフィアの抗争に巻き込まれるようになる。
しかし、中盤で「残り命短い」はただの診察ミスで健康体だったことが判明する。
あんなに身近だった「死」は急に遠い存在になり、その時彼は初めて「生」を感じ、「死」に恐怖する。
生にしがみつくか、自分と同じように生きているようで生きていないモニカを守るか。
そして彼は判断する。モニカを守ると。
「死んだ気になりゃやれるはず」
今まで死んでないだけで生きてなかった彼は初めて「生」を感じ、それ故に「死」も感じることが出来る。だからこそ死ぬ気で行動することが出来る。
葛城レオの人生はここから始まるのだ。
モニカ(小西桜子)
(C)2020「初恋」製作委員会
2020年に映画『アストロエイジ』 や実写版『映像研には手を出すな!』など急に売れっ子になった小西桜子さんの体を張った演技も本作の見どころの一つだ。
クスリのせいでモニカには自分のおやじの幻覚が見えるのだが、見える幻覚のおやじがブリーフ一丁なので絵面がシリアスな笑いである(ブリーフ一丁に見える原因が幼少期からおやじにレイプされていたという笑うに笑えない理由なのも卑怯である)
特に電車の中でブリーフ一丁のまま琉球舞踊踊るおやじをどんな気持ちで見たら良いのか分からない。異様で異常ある。
『龍が如く7』でもそうだったが、ヤクザを題材にした作品でのブリーフ一丁率の高さが気になる。親和性があるのかもしれない。
加瀬(染谷将太)
(C)2020「初恋」製作委員会
個人的今一番好きな俳優さん。
最初は今どきの温厚な人間だと思わせておいて実は策士的ヤクザ。
策士なのは良いが実際の行動になるとポンコツなところもあるため、何一つ策通りにならない可愛らしい所がある。
物語を加速させるキーマンなのだが、策士とポンコツの狭間で狂気に満ちていく怪演が凄まじいの一言。
本作の一番の悪で、一番人も殺しているが、嫌いになれない憎い奴。
前から思ってたけど染谷将太さんって独特の発音の仕方をしてて、聞いてて癖になる。
本作でも会話のシーンが多いので耳が幸せだ。
僕も死ぬときは傷口にクスリ塗ってハッピーになりながら死にてーな。
権藤(内野聖陽)
(C)2020「初恋」製作委員会
ファンタジーyakuzaここに極まる。
最初は時代遅れのすぐ死ぬヤクザかと思いきや、そんなこと全くなく、オタクが考えるヤクザ通りのヤクザで観ていて気持ちが良い。
スマホとか最先端なモノに疎かったり、ベッキーの気迫に圧されたり、可愛らしいとこもありつつ、最後のホームセンターでの決戦では、刀と銃という最高にカッコよい装備で無双してくれる。
個人的に内野聖陽さんってNHK大河『真田丸』での徳川家康のイメージが大きいので、泣きながら山を駆け巡る印象しかなかったが、本当にカッコよい役者さんである。
ジュリ(ベッキー)
(C)2020「初恋」製作委員会
本作のMVP。ハピハピパワー炸裂である。
好感度NO1タレントがゲス不倫によって、社会的制裁の超特大元気玉をくらい、テレビレギュラーが激減したベッキー。
もしかしたら過去のそういういざこざのお陰で本作でのこんな怪演を見ることが出来たのだと思うと、ありがとうゲス不倫という気持ちで一杯だ(最低)
ヤクザ相手に制裁キックするベッキー、復讐相手を見つけ車のボンネットの上で踊るベッキー、絶叫するベッキー、ホームセンター内でウロウロするベッキー、刀を振り落とすベッキー、復讐をやり遂げ叫ぶベッキー、どれもこれも今までみたベッキーの中でNO1である。
「小石に躓いたけど、君が笑ってくれたから、だったらもういいか」精神の極みである。
これから女優ベッキーとして頑張ってくれ!!!出来れば『来る』の柴田理恵と共演した女優アベンジャーズを作ってくれ(願望)
細かなところ色々
アニメ演出
最後のカーチェイスで突然アニメ演出入る。よく出来てはいるがやはり突然過ぎて困惑した。全員突然クスリをやって幻覚を見たのかと思いきや、そうでもなかったし。
アニメの意図に関して監督が説明している
三池崇史監督、『初恋』一部をアニメーションにした理由は?日本の“スタントマン”事情が一因⁉︎ 映画『初恋』外国特派員記者会見
- 日本ではスタンドマンが高齢化している。
- 日本では危険な演出は避けられている。
以上の理由で苦肉の策でアニメにしたらしい。
アニメでもよかったけど、実写で観たかったという気持ちはある。少し残念だ。
ホームセンターのユニディには何でもある
関西在住の僕は知らなかったがユニディとは首都圏中心のホームセンターらしい。
ラストバトルの舞台にもなっている。
ヤクザとチャイニーズマフィアが暴れまくり、腕や首が飛び、死体が横たわる。
大森南朋が「何でもあるな、ユニディは」と突然のフォローをしてくれなかったら大惨事である。ありがとう大森南朋。すまんな、キャラクター紹介では省いてしまって。染谷のお父さんみたいなキャラで面白かったよ。
個人的には仲間由紀恵似の女優の方が印象深い(まじで初登場シーンは仲間由紀恵だと思ったけど、段々全然違うわこいつってなったので恐らく角度の問題)
恐らく僕はユニディに行くことは一生に一度もないと思うが、ユニディの名前は忘れられないと思う。「何でもあるな、ユニディは」
最後に一言。
医者から「健康です」と言われた後に「間違いでした。本当は脳に腫瘍があります」って宣告されただろう名もなき人の事考えると夜も寝れないよ。
(C)2020「初恋」製作委員会
↑こんなにもハピハピの波動を感じる顔はないよ