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シャークネードだけじゃない!漫画『チェンソーマン』感想。レゼ編の完成度に感動した話

「チェーンソー」「サメ」「トルネード」「爆弾」と言えばなんだろうか。

そう、みんな大好き国民的サメ映画『シャークネード』である。

 

そんな『シャークネード』の頭悪く熱い文脈を含みつつ、切ない終わり方とまるで一本の傑作映画を観たかのような満足度と完成度を誇る『チェンソーマン』のレゼ編の感想をネタバレありで書いていくので取り合えず6巻まで読んでくれ。

チェンソーマン 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)

物語の完成度

 シンメトリーという言葉を聞いたことあるだろうか。

左右対称を意味する。

映画の構図なのでシンメトリーを使われたりするが、レゼ編では展開自体がシンメトリーとなっている。

どういう事かというと

 

デンジが花を食べて始まる

レゼが喫茶店に行く

学校のプールで泳ぐ

嵐の中避難

レゼが自分の正体をバラす←ここが中心

台風の中戦う

海に2人でダイブ


レゼが喫茶店に行く(殺される)

デンジが花を食べて終わり

である。

見事な対称だ。

 

対称部分を比べながら解説すると

 

  • デンジが花を食べる所からレゼ編が始まり、花を食べてレゼ編が終わる。こんなにも切なく花を食べるシーンを他に知らない。

f:id:Shachiku:20200303205257j:image(c)チェンソーマン第5巻

f:id:Shachiku:20200304124936j:image(c)チェンソーマン第6巻

 

 

  • 最初は任務のために喫茶店に向かっていたレゼだったが、二度目のこのシーンでは任務のためではなく、自分の気持ちのままに向かう。その対比。ここ一番美しいと思う。

f:id:Shachiku:20200303205311j:plain(c)チェンソーマン第5巻

f:id:Shachiku:20200303210057p:plain(c)チェンソーマン第6巻

  • 深夜の学校のプールでデンジとレゼが二人で泳ぐ。この時はレゼ主導だったが、海へのダイブはデンジが決める。2人の思い出の象徴でもあるプール。

f:id:Shachiku:20200303205322j:image(c)チェンソーマン第5巻

 

f:id:Shachiku:20200303210036j:plain(c)チェンソーマン第6巻



 

  • 嵐の中、学校に避難するデンジとレザ。嵐の中戦うチェンソーマンとボムの悪魔(シャークネード)静と動

f:id:Shachiku:20200303210718j:image(c)チェンソーマン第5巻

 

f:id:Shachiku:20200304124951j:image(c)チェンソーマン第6巻

 

  • レゼが正体バラす←ここが中心

f:id:Shachiku:20200303205843j:image(c)チェンソーマン第6巻

 


か、完成度~。

週刊誌だとは思えない完成度である。

こういう事書くと、完成度を優先したあまり中身は面白くないのではと思う人もいるのかもしれないが、ハッキリ言うと

滅茶苦茶面白い。

レゼ編の面白さはシャークネードだけではない。デンジである。

 

 

デンジは阿呆である。

以前にも書いたが、『チェンソーマン』最大の魅力は主人公のデンジである。

 

レゼ編でもそんなデンジの魅力が爆発している。

チェンソーのチェーンを使って移動する話を聞いて、普通ならスパイダーマンみたいにチェーンを飛ばして引っかけて建物から建物に移動すると思いきや、

デンジがチェンソーを使った結果がチェーンでサメを調教するというモノである

スパイダーマン』ではなく『シャークネード』になる。

これこそがデンジなのだ。

また、レゼのために今まで世話になった公安、マキマさんを裏切り逃避行を提案する。

好きなった女性のために行動する。

これこそがデンジなのだ。

滅茶苦茶な行動でありながら読者に嫌悪感を与えず、次はどんな行動を見せてくれるのか期待してしまう。これこそ主人公。

今まで嘘で固めていたレゼだったが良くも悪くも等身大であるデンジに触れる事により、変わっていく物語がレゼ編だ。

 

ほろ苦い終わりになってしまったが、デンジというキャラの個性がより際立ったと思う。

 

 ネズミとマキマさん

底知れない存在であるマキマさん。

レゼ編ではそんなマキマさんの人となりが分かり始める。

キーワードは「ネズミ」

レゼと天使の悪魔が話す「田舎のネズミ」と「都会のネズミ」

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 (c)チェンソーマン第5巻

レゼと天使は田舎のネズミの方が良いと言う。

天使の場合はゆっくり生きたいという意味だが、レゼの場合は

自分自身が「都会のネズミ」として、ソ連のモルモットとしての人生でしか生きれない事に対する哀愁と絶望、自由に生きる「田舎のネズミ」への願望を表しており、最後にデンジとの逃避行を選ぶ伏線にもなっている。

そしてマキマさん。

 

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 (c)チェンソーマン第6巻

 マキマさんが言う「田舎のネズミ」が好きの意味は

 

田舎のネズミを犬が殺すところをみていると安心する。だから田舎のネズミが好き

 

という意味であり、それはレゼや天使が言う「田舎のネズミ」が好きの意味とは全く違う。

自分自身をネズミに例えているのではなく、あくまで人間目線での「好き」だ。

というかマキマさん、デンジとレゼ、2人きりの会話を知っていたような感じだったので余計怖さが増す。

怖い、マキマさん、怖い。

 

 

ロシア語の歌など

皮剥ぎを得意とする殺人鬼を倒した衝撃的なシーンでレゼが披露したロシア語の歌がある。

 

グーグル翻訳すると

今日はジェンとのデートの日。
準備は万端。
朝は一緒に教会に行って、 カフェでコーヒー飲んでオムレツを食べよう。
公園で散歩した後に
水族館に行って、イルカとペンギンを見よう。
昼食を食べたら一息ついて、

今朝から何をしたかを
思い出すまで話そう
思い出せないから
そうして夜は、教会で寝よう

 

大体ニュアンスはこんな感じである。

平穏の象徴的な歌なのかな。

 

 

レゼ編のラスト、絶対死ぬまで忘れないと思うし、あれだけで単行本代の元取れて嬉しい。

それにしても『チェンソーマン』のレゼ編は本当にオススメなので、是非一度読んで欲しいし、アニメ化、映画化を希望したい。

最後に一言。

6巻単行本の表紙本当に好き

タツキ先生の『妹の姉』を何処となく彷彿とさせる表紙だ)

 

チェンソーマン 5 (ジャンプコミックス)

チェンソーマン 5 (ジャンプコミックス)