世間では大人気でも、触れてこなかったコンテンツってあると思う。
僕の場合はそれが『SHIROBAKO』だった。
理由は色々あって、社畜で辛い時期だったので社畜アニメを見たくなかったとか。
嫌いな上司があいさつに「ドンドンドーナツどーんと行こう!」って言ってきて困惑していると『SHIROBAKO』にハマっているらしく(しょうもない声優ラジオにありがちなオリジナルあいさつ的な奴らしい)作品の印象が最悪になったりとか(『SHIROBAKO』自体は何も悪くない)
こういうのってタイミングの問題だと思うが、結局僕と『SHIROBAKO』は噛み合うことなく時間が過ぎていった。
そして劇場版『SHIROBAKO』
社畜としても僕自身落ち着いてきたのでようやく純粋にこのアニメを楽しむことが出来るかなと思い、まずテレビ版を見て予習バッチリで映画を観ようと思っていたら
そう、コロナ騒動である。
近場の映画館もいつ封鎖されるか分からないし、観たい時に観とかないと後悔するなと思い、また中途半端に2、3話見るぐらいなら完全未見で観たろと決意。
仕事終わりにイソイソと劇場版『SHIROBAKO』を観た。
今回はそんな完全未見オタクによる劇場版『SHIROBAKO』の感想である。
まぁ今まで数多くのアニメ映画を観てきた僕である。アニメを作るという物語の縦軸がハッキリしている作品で迷子になることはないだろう。余裕だ。ガッハハハ。
ちなみにネタバレしかないので注意して読んで欲しい。
監督:水島努 シリーズ構成・脚本:横手美智子 アニメーション制作:P.A.WORKS
感想
冒頭に「これまでのあらすじ」的なコーナーがあったおかげで何となくテレビシリーズの流れを把握する。みゃーもりという女の子がダメダメなアニメスタジオを奮起させ、怒る原作者と和解し、アニメを大成功させた内容らしい。
本当はテレビ版の『ドラゴンボール』みたいに15分ぐらいかけてねっちょりあらすじをやって欲しかったが、そこは仕方ない。
そして、ボロボロの車が走るところでクレジットが流れる。
この運転のシーンが意外と長い。
カーレースでもしてくれるのかと思いきや、そんなことなくボロボロの車が走るだけ。哀愁を表現している?
そしてツタがボーボーでスタジオジブリのような建物に到着(アニメ会社の知識がジブリしかない)
会議室では知らない人達(実は幻想)が「みゃーもり」って怒涛の連呼してくれたお陰で主人公と思わしき「みゃーもり」の名前と顔を覚える(正直、鑑賞後も顔と名前が一致したのはみゃーもりだけである)
タイマス事変というのが起こり、アニメスタジオが寂れたらしい。開幕即鬱である。
こういう即鬱って劇場オリジナルでは中々ないのでここら辺の自由さがテレビ版で観客の信頼を勝ち取ったテレビ映画の強みだなとは思う。
テレビ版を見ておらず、思い入れもないのでムサニというアニメ会社が衰退していても何も思わないが、テレビ版からのファンの人たちはどう思ったのか気になる。続編で前作のキャラが死んだり、不幸になっているのって結構な炎上ポイントだと思うけど、意外と燃えてない印象。アニメ業界という現実でも世知辛いのが寂しいリアリティと悲しい説得力を生んでいるのか。
しかし、まぁ出てくる人出てくる人当たり前だが知らない人ばかりである。おそらくテレビ版を見ていたら「懐かしー」とか「ここでこいつが!」とか色々想う事もあっただろうに、僕は展開と顔を覚えるのに必死である。昔テレビで流れたスタジオジブリのドキュメンタリー番組をぼっーと見ていたらネットで「さっき横切った人〇〇〇では!?」とか「この人はあの○○○○なのでは!?」とか盛り上がっており、置いてけぼりをくらった事を思い出す。やはり知識は作品を楽しむための土台だなと改めて思う所存。
その後、みゃーもりは気分ではなさそうなのに「女子会」らしき飲み会に参加。
どういう集いなのか分からないが、それぞれ声優や脚本家などアニメ関係の仕事をしているらしい。会社の元同期か?なんか距離感もあるように感じられるし。
そこで現れる七福神。
えっ何七福神。
なんか「こちとらレギュラーですよ」という余裕すら感じられる登場だったが、辛そうな女子たちにこれから幸せが届きますよって意味か?
混乱しているとその後もみゃーもりのミュージカルシーンである。ストレスでクスリやったのか、アニメ業界ではクスリが蔓延しているという告発映画かなと思ったけどどうやら違うらしい。
最近ミュージカルシーンブームが来ているのか
正直まだこの作品のノリを把握出来ていないので現実と虚構を交じり合ったり、いきなりミュージカルが始まると結構困惑する。
ただ、個人的にこのミュージカルシーンが一番好きだ。アニメの無限の表現力と可能性に満ちていて、それに加えてみゃーもりが再びアニメ作りに前向きになる決意がアニメへの讃歌だけではなく、アニメを作る人、見る人すべての人を勇気づけてくれるシーンだと思う。
あと、ちょくちょく作品に介入してくる人形2体。もしかしてみゃーもりの空想世界なのか?やべー女なのかこいつ。でも僕も毎晩シワクチャ名探偵ピカチュウのぬいぐみに喋りかけたりしているから人のことは言えない。社会が悪い。
鑑賞前はリアリティ重視のお堅い感じの作品かなと思ってたけど意外とそうでもないエンタメ作品なのかもしれないとここら辺で気づく。序盤で提示された壁をどうやって壊して行くのかワクワクする。
このミュージカルシーンでみゃーもりが劇場版作りを決意したあたりから作品全体のテンションが変わっていく。
『アベンジャーズエンドゲーム』である。恐らく。あってるよね?
恐らく僕がエンドゲームを見て、ヒーローたちが集結するところでテンション上がり過ぎて涙を流したように、テレビ版を見ていた人たちはテンション上がるのだろう。
ただ僕からすれば個性豊かな知らない人と知らない人が増えていくだけである。
友達と遊んでいたら友達の友達が沢山やってきたかのような戸惑いである。
劇場版『SHIROBAKO』はそういう意味でアッセンブル映画であり、恐らくテレビシリーズで掘り下げ終わったキャラたちが怒涛のように増え、ガンガン話が進んでいく。
初見なのでここらへんは割り切りである。新作のポケモンで新種のポケモンと出会えたような楽しさがあるので、意外と良い。会話は少ないが一人一人が魅力的であり、もっとこのキャラのこと知りたいと思わせる。やはりアニメ版も見ないと。
まぁ、でもこんな所でシリーズ未見の人の『アベンジャーズエンドゲーム』の鑑賞を追体験できるとは思わなかったよね。
一番テンションが上がったのは庵野秀明の登場。
あっ庵野だ!!!ってなる。
庵野ってこう見ると滅茶苦茶特徴的な顔しているな。
あっ庵野だ!!!ってなる。
あと、ジャージゴスロリ女子好き。あの人だけ要素盛りすぎじゃないか。
しかし意外と「劇場版」特有のアニメづくりの困難とかなかった気がする。もっと製作委員会からタレント声優を使うように圧力かけてきたり、そういうのあるかなと思ってたけどなかったね。
その代わりの試練がげーぺーうー会社から権利関係でムサニにヤクザみたく難癖付けてきた件であり、みゃーもりはタイマス事変の悪夢を思い出し、一度は夜の公園で再び心が折れそうになる。しかし、作品を守るため立ち上がる。
この後、げーぺーうーに乗り込むあたりのアクションシーンは結構よかったが、問題はその後だ。
いくらデブ眼鏡が出禁になっていたとしても、これプロデューサーであるみゃーもりの仕事じゃなくないか。
ちゃんとした法務がいたら試練にもなってないし、そもそもそんな露骨に悪そうなキャラ出す必要があったのかもよく分からない。テレビ版でもこういう『スカッとジャパン』的展開あると思うと結構辛い。
総評として中盤まで良かったけど、後半まぁまぁだったなと思っていたら本編でも同じような事言い出して驚く。 掌の上で踊らされていた感覚になる。
本編内の「なんだか物足りない」を観客も一緒に体験できるってすごい、観客の感情のコントロールを完璧に出来ている印象である。
そして出来たアニメ映画『空中強襲揚陸艦SIVA』がムサニの現状とリンクしているのも良い。
タイマス事変以来苦しい状況に置かれていたムサニが、そのトラウマから抜け出して、勝ち目はないかもしれないけど前に進もうと悪あがきをする姿は、まさしく『空中強襲揚陸艦SIVA』のキャラクターたちそのもので美しい。
『空中強襲揚陸艦SIVA』のラストシーンで故郷を目指して広大な宇宙に飛び出していくシーンは劇場版『SHIROBAKO』のラストシーンでもあり、劇場版『SHIROBAKO』で語るべき内容を『空中強襲揚陸艦SIVA』で語っているのもアニメ制作アニメとして完璧に近い終わり方ではないだろうか。
好き。
最後に
いや~舐めてましたね『SHIROBAKO』
リアリティと虚構のバランスが良くて、観ていて飽きないし、とにかく情報量が常に多いので圧倒されるものの、全く知らないアッセンブル映画でもキャラに魅力があれば観れるってことが分かったので良かった。
まぁでも絶対にアニメから見た方が良いので、ちょっとテレビ版見てみようと思う。
また、コロナも落ちついた時ぐらいに劇場版も2回目観たいですな!
というか初見だとマジで感想うっすいなって書いてて自己嫌悪。最後まで読んで頂き本当にありがとうございます。
最後に一言。
最後の最後に「ドンドンドーナツどーんと行こう!」って聞こえた時は嫌いな上司思い出して内心舌打ちしたよね(『SHIROBAKO』自体は何も悪くない)