社会の独房から

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映画『一度死んでみた』感想。デスメタルがデスメタルになってないのには意味がある。

監督はauCMの『三太郎』シリーズを手掛ける浜崎慎治。脚本はソフトバンクCM『白戸家』シリーズを手掛けてきた澤本嘉光。そこにフジテレビも関わるという

ここまでの「Not For Me」案件中々ないよ。

と思ってしまうのは僕だけだろか。

ただ、ただである。

観てもない作品に対してNot For Meと偏見を持ったままでは、ドンドン偏屈な頭になっていってしまう。

 

Not For Meこそが新しい自分を開く扉である。

 

そんな期待を胸にこの映画を観た。

 

「意外とそこそこ面白い」という感じ。特に新しい扉は開かった。

ノイズもあったけど何だかんだ話がしっかりしていて、伝えたいメッセージも分かり、何より俳優陣の熱演が気持ちよい。

期待値-5で観に行ったら+5ぐらいの面白さが出てきて

結果的に+10になったような作品で満足度がある。

そんな本作の感想をネタバレありで書いていきたい。

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デスメタル騒動について

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(C)2020 松竹 フジテレビジョン

 

予告で主役の野畑七瀬演じる広瀬すずさんが歌っているデスメタルの歌詞に「です!です!」と連呼しているのが一部デスメタルファンの方々から「こんなのデスメタルじゃない!」とクレームがあった。


映画『一度死んでみた』予告(60秒) 2020年3月20日(金)全国ロードショー

 

では本当のデスメタルとは何ぞや。という本質論はここでは書かない。

 

ただ、これは作品を観た人なら分かるが、「こんなのデスメタルじゃない!」というのは完全に製作者の意図することだった。

この騒動で製作陣はシメシメとほくそ笑んでいるのではないだろか。

 

野畑七瀬は父親である野畑計(堤真一)への反発からデスメタルの道に進んだだけであり、野畑七瀬の顔の良さから多くのファンは獲得しているが(なんせ広瀬すずだし)音楽プロデューサーからは彼女の歌声には「魂がない」とdisられる。

パンフレットにも音楽を担当したヒャダインさんが「野畑七瀬はデスデス言っているだけでデスメタルになると思い込んでいる。可愛い」と仰っている。

野畑七瀬が本当にしたい事はデスメタルではない。では彼女は何がしたいのかが本作の一つのテーマになっている。

野畑計のセリフに次のようなモノがある。

 

目に見えることだけが存在じゃない、大事なのは存在する目的。何のために生きるのか。それがない人は存在していない。死んでいるのと一緒だよ。

 

野畑七瀬には「父と同じ製薬の仕事に就き、大勢の人を救いたいが、同時に自分の妻を看取ることすらしなかった父と同じ道は進みたくない。」という葛藤がある。

だから彼女はデスメタルの道に逃げたが、それは彼女の本当の目的ではない。それ故に「デスデス」という歌詞になってしまう。そこには魂がない。

 

しかし、野畑計は実は妻を救うために薬をぎりぎりまで開発していた事が判明し、また、病院に行けなかった事をずっと悔やんでいることを野畑七瀬は知る。

妻よりも大事な研究などあるはずもないと、野畑計を軽蔑していた野畑七瀬は自分が間違っていたことに気づく。

 

そして野畑計にとって一番大切なモノは娘である野畑七瀬自身だった事を知り、彼女は逃げていた本当にやりたい事に向き合い、生きていく事を決意する。

「製薬で多くの人を救う」

だからこそ、彼女の魂が籠った「水平リーベ僕の船」は多くの人を感動させる(ここの広瀬すずさんの歌唱力凄い。好き)

 

役者が豪華

 

こんな事書いたけど、ここら辺の人達は「本当にいたの?」って思うぐらいの存在感なので安心して欲しい。

それ以外にも

竹中直人妻夫木聡加藤諒佐藤健・でんでん・柄本時生前野朋哉西野七瀬城田優原日出子真壁刀義本間朋晃池田エライザ・志尊淳・古田新太松田翔太大友康平・野口 聡一

といった大物俳優(+宇宙飛行士)たちが5分に1度ぐらいのペースで出てくるので画面を観てるだけでも楽しい。佐藤健のキスシーンとか『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』以来の劇場から悲鳴が聞こえてビックリした。

邦画のお祭り映画だと思うと楽しめる。

 

あと、広瀬すずさんと吉沢亮さんのコンビというNHK朝ドラ『なつぞら』で結ばれなかった二人がこの映画で結ばれる形になったのが、本作の物語以上の意味を僕たちに与えてくれる(ただ、エンドロール後のキスシーンが蛇足過ぎる。ここ話題になった欲しいなというスタッフの嫌な笑顔がチラついてダメだった。キスまでの積み重ねもなく唐突のキス。本当にダメ。反省して欲しい。『スターウォーズep9』でのあのキスを思い出す)

 

吉沢亮が存在感ない世界線

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(C)2020 松竹 フジテレビジョン

本作のもう1人の主役でもある松岡卓演じる吉沢亮

存在感のないゴーストのような存在なのだが

そんなイケメンで存在感がないは無理がある。

これだけはまず、ハッキリ言っていきたい。

ただ、思っていたより存在感を消せていたと思う。凄い吉沢亮

 

社内ではゴーストと呼ばれる存在感のなさを松岡卓自身は欠点だと思っている。

しかし、野畑計は言う。その存在感のなさは一つの特技、才能なのだと。

そしてその言葉通り、松岡卓は存在感のなさを発揮し、何度も窮地を救う。

 

人と違う所はみんな特技である。

 

そんなある意味、綺麗ごとにも聞こえる言葉が本作では重みをまし、自分のダメな所、嫌な所、人とは違う所。それらをほんの少しでも以前より愛せるようになる優しい映画になっていると思う。

 

最後に

コロナ騒動でどうしてもピリピリしてしまう昨今、こういう頭のチカラを抜いて観れるのも息抜きに丁度良いと思う。

初期のクドカン作品臭もするし、伏線はしっかり回収してくれるため気持ちが良い。

棺桶を買い占めるシーンとか邦画コメディの悪さも出てるけど、まぁ笑える人には笑えると思うので、笑いのセンスが合うかどうか決闘みたなノリで観に行くのも良いかもしれない。

広瀬すずさん、やっぱり歌もうまいので歌手活動も並行してやって欲しいなと願望も書いておきたい。

 

最後に一言。

色々考えたけど、やっぱり吉沢亮に存在感ないは無理がある(地味な恰好してるけど、イケメンさを抑えきれてないからね、地味イケメンだよ)

 

小説 一度死んでみた (角川つばさ文庫)

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