子供の頃、ヒロインの紫東遙さんがその草薙 京みたいなバンダナ含めて29歳っておばさん過ぎるし、14歳の紫東恵の方が良いよって思っていたが、自分がいつの間にかそのおばさん扱いした紫東遙さんと同世代になってしまったことに動揺を隠せない。子供の頃に戻りたい。
ただ、やっぱり29歳で草薙 京スタイルはないし、紫東恵の方が良い。譲れない。というか29歳の姉が自分と同い年の男子と付き合ってるの知ったら普通引く。まぁでも妹の人生より長い片想い期間だし、手作りの手袋渡す時可愛かったし、そんな性癖もないだろに同僚達に監視カメラ越しに見られているにも関わらず、綾人とベットを共にするし(絶対に同僚の中には遥に片想いしてた人もいたハズ。その人は遥の行為を見て衝撃と怒りと悲しみと興奮に全身を覆われ、脳が破壊されたまま映像をダビングしたと思う。これでサイドストーリーの映画1本作って欲しい)で綾人への想いが重いから許す。
という訳で映画『ラーゼフォン 多元変奏曲』の話をしていきたい。
この『ラーゼフォン』どうしても当時は『新世紀エヴァンゲリオン』と比べられ、酷評される事が多く「ポスト・エヴァ」や「エヴァの亜流」「ライディーンのエヴァ版」扱いされ、作品単体として正当な評価を受けているとは言い難かった。
確かに昨今のアニメ映画が『君の名は。』の大ヒットを受けて、SF要素のあるボーイ・ミーツ・ガールモノが多くなったように(『HELLO WORLD』でパンフレットに『君の名は。』以後、東宝社内で求められる企画が変わったと書いてある)『新世紀エヴァンゲリオン』の社会現象以後、同じような企画が通り安くなったのは想像に難しくないし、作品としては難解な作品設定や、主人公の置かれている立場、神話などを元ネタにした所、いつ回収されるかわからない伏線など似ている所は多い。
ただ、殆どの伏線を回収し、広げた風呂敷を畳み、綺麗な終わり方をしたのが本作だ。
そして『ラーゼフォン多元変奏曲』は劇場版として複雑怪奇だったTV版を「綾人と遙のラブストーリー」として一本化し、純愛ラブストーリー作品としても「学生時代の初恋を成就したい!」と人類なら一度は願う事をストレートに描き、26話あった話を2時間以内にまとめ、独自の終わり方をしている。
今回は劇場版を見直したので、『ラーゼフォン多元変奏曲』の感想を書きつつ、テレビ版やゲームの話もしていきたい。
【原作】BONES・出渕裕 【総監督】出渕裕 【監督】京田知己 【音楽】橋本一子【ED】坂本真綾「tune the rainbow」
あらすじ
突然出現した異次元からの来訪者"MU"は、東京を木星に酷似した絶対障壁の半球に包みこみ外部と隔離してしまった。それから3年…。中に残った高校生の神名綾人は逆に外の世界が滅亡したと教えられ、恋人の同級生美嶋遙との記憶も遠くなりつつあった。その綾人の前に一人の女性が現れる。 紫東遙と名乗るその女性は絶対障壁の外へと綾人を連れ出そうとする。実は彼女こそ、今や12歳も年上となったかつての恋人美嶋遙だった。MUの力で障壁内では時間の進行が遅延させられていたのだ。そして綾人こそはこの世界運命を握る鍵である時間調律師……MUとこの世界を変革する能力を持った人間だった。綾人が真の目覚めを果たし、巨大な神像"ラーゼフォン"と一体化したとき、世界は崩壊の淵に立たされる。はたして遙は想いを告げ、綾人を、そして世界を救うことができるのだろうか……。
ブルーフレンド
やはり『ラーゼフォン』を語る上で欠かせないのが「ブルーフレンド」だろう。
『ラーゼフォン多元変奏曲』でも再現されている。
『ラーゼフォン』を知らない人でも電光掲示板などを使った演出を見たことある人は多いと思う。
それまでの綾人は自身が敵の血を引く存在であること、いずれ自分の血も青くなる事、どこにいるのかも分からない初恋相手の美嶋遙など様々な悩みがあった。
そんなこともあり「戦う意義」が希薄だった綾人は友人・朝比奈との逃避行生活の中、必要とされることで初めて「守りたい、失いたくない」という感情が芽生えてきた。
朝比奈も青い血になり、人間の時だった記憶がドンドン失っていく。しかし、それを綾人に伝える事が出来ないままであった。
そんな中、綾人と朝比奈が逃げ出した先の街にドーレム・ヴィブラートが現れる。
「必ず帰ってくるからここで待っててくれ」と朝比奈に告げ出撃する綾人。朝比奈も綾人に対する想いを伝えるが、自分がムーリアンだという事実を最後まで告げることができなかった。その後、ホテルに残された朝比奈は、ドーレムと同調してしまう。
ボディブローをドーレムにくらわして撃破した直後、綾人はビルに映ったメッセージに初めて気づく。
その時初めて、自分が手に掛けているドーレムが誰であったかを理解する。
この話は『勇者ライディーン』の第36話「地獄の射手マダンガー」をラーゼフォン風にアレンジした話になったいる。ここは大切なので元ネタについても書く。
主人公である洸のクラスに岬百合香という記憶喪失の美少女が転校してきた。そんな彼女は洸の隣の席に座る事になり、洸とは早くも親しい関係になる。だが実は巨烈獣マダンガーの心臓は岬百合香自身であり、巨烈獣マダンガーを殺すと彼女も死んでしまうと洸は知り、葛藤する。
それでも洸は戦う事を決意するが、巨烈獣マダンガーの強さに苦戦。そんな時、別の巨烈獣がライディーンを庇い死んでしまうと、巨烈獣マダンガーは爆散してしまう。
実はライディーンを庇ったのは自らを巨烈獣に改造した岬百合香だった。
というお話。
このブルーフレンドの評判の良さはそれまでの『ラーゼフォン』が難解であったり、地味な話が多かった中で、「戦う相手が実は守りたいと願った相手だった」という分かりやすさと、悲劇の主人公的な王道ストーリーに、優れた演出、BGMとがとても噛み合っている所だろう。好き。
『スーパーロボット大戦MX』においてはエヴァとのクロスオーバーで使途に乗っ取られたEVA3号機に乗っているトウジを綾人が救うとそのまま原作完全再現「ブルーフレンド」という鬼畜コンボ。
トウジは救えたが、朝比奈は原作のまま死んでしまい、月の下でむなしく風鈴の音が鳴り響きながら戦闘終了と同時にシナリオクリア。
『ラーゼフォン』がまたスパロボ参戦出来たら、今度は朝比奈救えて、ドーレム・ヴィブラートを味方として使える気がする。
テレビ版と劇場版の終わり方の違い
劇場版で何度か繰り返される『鏡の国のアリス』の最後に出てくる詩。
不思議なる 国をさまよい
長き日を 夢見て暮らす
つかのまの 夏は果てるまで
金色の 夕映えのなか
どこまでも たゆたいゆかん
人の世は 夢にあらずや・・・
それを踏まえてラストでこんな会話がある
玲香「ねぇ、おばあちゃん。結局アリスは、本当に現実の世界に戻ったのかなぁ?」
遥「どうして?」
玲香「だって『人の世は夢ではないのか』って言ってるんでしょ?」
遥「そうね。だけどアリスは、本当に夢の世界に行ったのかしら?」
玲香「えっ?」
遥「結果的にアリスは現実の世界に戻って来たけど、本当はそれってどうでもいいことなのよ。どっちの世界が現実なのかなんて関係ないわ」遥「だって、彼女には記憶が残ってるんだから。鏡の国で経験した素敵な記憶が…少なくともそれは、彼女にとっては現実なんじゃないかしら。それでいいんじゃない? おじいちゃんはそう言ってたわ」
劇場版では綾人は調律した(世界の改変や破壊の事)結果、時と時の狭間に生きる「時の観測者」になる。「人」として過ごすことが出来ない為、遥と共に現実に戻る訳にはいかない。
その代わり、遥に希望する過去を問う。
綾人「未来は選べない。それは君が人間だから。人間が人間として存在し続けていられるのは、人間が過去の記憶の集合体として存在しているから……だから、君に選べるのは過去だ。君はどんな過去が良かったの?」
遥「……私は……私は神名くんと同じ世界の空気が吸いたかった……私は神名くんと同じ地面を踏んでいたかった……同じ時間を過ごしたかった……私は、私は……私は、神名くんと一緒に大人になりたかった!!」
そのまま遥は「綾人と恋に落ちた」時からの過去を与えられ、彼と結婚して子供を、孫娘をもうけた。
そして孫娘と談笑してる時に目の前に現れた若い時の綾人と共に姿を消す。
最後の最後、孫娘が「またどっか行っちゃったの?」という発言をしており、今までも度々、時と時の狭間にいる綾人と会っていた可能性もある。
だからこそ、遥にとって「夢」とか「現実」ではなく「記憶」が何よりも大切だと思うのだ。
変わってテレビ版では、綾人は自らの望む世界への調律を果たした(ジョジョで言うところの「世界は一巡した」的やつ)
調律後の世界では考古学者になっており、遙と結婚して家庭を築いていた。
どちらもハッピーエンドではあるが、個人的には劇場版の方が好きですね(『Fate/stay night』HFの終わり方もトゥルーエンドよりノーマルエンドの方が好き。「……遅いなあ先輩。これじゃわたし、おばあちゃんになっちゃいますよ?」最高)
本作は学生時代の初恋って特別で忘れられないっていうおっさん達の気持ちの悪い願望や思考がただ漏れしており、子供の頃の僕にはよく分からなかったが、自分もおっさんになって見ると「分かる〜分かるよ〜監督〜」ってウェウェ泣きながら酒飲みたくなるそんな映画。
(C)2003 BONES・出渕裕/Rahxephon movie project
↑こんな顔する主人公こえーわ
蒼穹幻想曲
『ラーゼフォン』と言えばPS2で発売されたゲーム『蒼穹幻想曲』も外せない。
IFストーリを堪能する事が出来るのだが、個人的に好きなのがバーベム編。
ラスボスはバーベム卿なのだが、綾人は組織を裏切り、脱走、同じ志の仲間達との合流、圧倒的戦力差の敵に立ち向かう
ここでは久遠が乗ったベルゼフォンも登場するし、巧刀指令や朝比奈、鳥飼も死ぬことなくラーゼフォンに乗る綾人を応援する展開は原作を知っていると滅茶苦茶熱い。
バーベム卿の目的だった「調律」を完全に否定した上で今を生きるという展開はIFを描いたゲームとして完璧なストーリーだと思う。
PS2で中々遊び辛いが是非、一度プレイしてみて欲しい。
最後に
「人が知覚できる神なぞ神ではありません」
一番好きなセリフだ。
神様気取りだった黒幕の否定の意味も勿論あるが、今まで神話的宗教モチーフの話をしていたのに、最後は人間至上主義的宗教になるのが良い。
神は人の心の中にしかいない。
劇場版はテレビ版よりシンプルで分かりやすいが、それ故に破綻故の魅力が薄まっているのも事実。難しい。
また、『スーパーロボット大戦MX』ではエヴァとクロスオーバーしまくった結果、ただでさえ複雑な原作が更に複雑にして怪奇な物語になっているので、是非遊んで頭を悩ませてほしい。
公開当時は色々叩かれた本作であったが、見直すと全体的な作画のクオリティも高いし、ストーリーも伏線回収するまでが長いものの、よくまとまっている。何より坂本真綾さんが歌う「tune the rainbow」が滅茶苦茶良い。 是非、時間があるなら一度見て欲しい作品だ。
最後に本編であらゆる女子からモテモテである綾人のご尊顔を見ながら終わりたい。
読んでいただきありがとうございました。
tune the rainbow (ラーゼフォン 多元変奏曲 主題歌) (通常盤)
- アーティスト:坂本真綾,坂本真綾 feat.steve conte
- 発売日: 2003/04/02
- メディア: CD