もはや1つのジャンルとして定着した「VS映画」モノ。
『エイリアン VS プレデター』の大ヒットから派生したこれらの作品は『リンカーン VS ゾンビ』という意外に真面目なB級映画や『メガ・シャーク VS ジャイアント・オクトパス』というド直球のB級映画、『南少林寺 VS 北少林寺』というただの練習試合まで多種多様な映画が作られ、Jホラーの中でも女子トイレに潜む少女の霊「花子さん」と男性トイレに潜む少年の霊「ヨースケ」(誰だ)が激突する『トイレの花子さん新章 花子VSヨースケ』などが世に出されてきた。
ただ、VSとタイトルの名前はついてはいるが、結局対決の決着はつかないことが多い。
本当の黒幕相手に共闘したり、対決者同士が合体しちゃったり、母親の名前が同じだから和解したりする。
そんなある意味タイトル詐欺も多い「VS映画」の中で圧倒的低予算の中、キチンと対決の決着も付く本作『ひきこさんVS貞子』の感想をネタバレありで書いていきたい。
【監督・脚本】永岡久明 【出演】 高山璃子 、 五十嵐夏実 、 呉地佑菜 、 三浦絵里香
「ひきこさん」
ひきこさんはご存知だろうか。
様々な説はあるが、本作では
「いじめ」や「両親の虐待」を受けている子の願いを聞いて登場。
ひきこさんは自分が受けたいじめに対する恨みから、いじめられっ子や虐待をする親を捕まえては肉塊と化すまで引きずり回し、決まった場所に連れて行き放置する。
また虐めてた人間を全て殺すと自分を呼んだいじめられっ子を美味しく頂く怪異である。
対して貞子は皆さんご存知だろう。
もはや、Jホラーの王である貞子と数ある都市伝説の一つでしかないひきこさんの戦い。
これは戦いとして成立するのか、本編の感想を書いていきたい。
ホラーではなく変化球型百合映画
イジメが呼び水になるひきこさんなので、どうしても序盤はイジメシーンがメインになる。
ただ、このイジメシーンが異様に長い。
約90分の映画で30分ぐらいがいじめや両親からの虐待シーンである。
「ボゴォ!!!」という大音量で流れるSEと共に暴力的シーンがあったり、服を濡らして下着が透いたのを見ようとしたり、カツアゲであったり、ババアの正拳突きで「ドフッ!」ってSEが流れたり、じめじめとした展開がフザケタ音響と共にねちっこく進む。
そりゃ、毎回こんな展開ならひきこさんの映画は人気出ない訳である。
高校生のシオリがイジメられ、そんな様子を見かねたクラスメイトのナギサは助けるが、それがイジメの中心だったユリエ達の反感を買い、彼女もまたイジメの標的にされてしまう。
このままでは堪えられないと考えたナギサは、ネットで噂になっている「ひきこさん」に助けを求める。
一方イジメグループの中心であるユリエは、TV番組で見た催眠術に興味を持つ。
病院経営をする父親のコネで催眠術師を呼び寄せると、友達のリサに催眠術をかけさせる。ところが、それがきっかけでリサの体に無念の死をとげた貞子の霊が憑依してしまう。
(C)2015「ひきこさんVS貞子」製作委員会↑この催眠術の一連のシーンがまんま宇宙企画が作りそうな映像である
(C)2015「ひきこさんVS貞子」製作委員会
↑最近知ったけど、催眠術とか時を止める系って9割ヤラセらしいですね。
そして体を貞子に乗っ取らそうになるリサはシオリに救いを求める。
そこで明かされる衝撃的な告白!
イジメていれば傷が痛むたびに私を思い出す!
私だけがあなたを愛してるって気持ちを伝えたかったの!
シオリ…愛してる!
百合映画じゃん!
しかも激オモ感情乗っかかり百合映画じゃん。
好きだからイジメるって発想が小学生。
当たり前だがリサは振られる。
シオリはナギサが好きであり、ナギサもまたシオリを愛していた。
そこにリサがつけ入る隙はなかったのだ。
この映画、もうホラーやめて三角関係メインでやって欲しいと思ってしまうが、残念ながらタイトルは『ひきこさんVS貞子』である
負の感情に覆われたリサは遂にあの貞子になる。
(C)2015「ひきこさんVS貞子」製作委員会
思ってた貞子とちゃう!
井戸の石で進化した貞子期待してたらノーマル進化の貞子が出てきたよ。
完全なるパッケージ詐欺。
そりゃ、井戸の石で進化した貞子とひきこさんって長髪と白い服でビジュアル被りまくってると思っていたけど!
本作に出てくる貞子さんの本名は高村貞子。よく知っている『リング』に登場する貞子は、山村貞子なので別物である。完全なるパッケージ詐欺。
ちなみに実際に存在したと言われ、小説『リング』の元ネタにもなった「千里眼」能力者の御船千鶴子、長尾郁子、高橋貞子の3人が本作では上千鶴子、長瀬郁子、高村貞子として登場する。
(C)2015「ひきこさんVS貞子」製作委員会
↑貞子以外の二人は瞬殺される
そして始まるひきこさんVS上千鶴子、長瀬郁子、高村貞子。
予算がないのが丸わかりなひきこさんによる相手の首の骨を折るという物理攻撃と貞子たちによるエフェクトを使った念力での戦いは眠気を誘う。
最終的にカッターナイフを用意したひきこさんが貞子を刺そうとするが、逆に自分を刺してしまう。
貞子勝利と思いきや、監督の寵愛を受けたひきこさんは立ち上がり逆転KO。
はい。
シオリ、ナギサ、リサの結末は映画を観てね。
(C)2015「ひきこさんVS貞子」製作委員会
最後に
思ってた貞子とちゃう!以外の感想が出てこず、全くオススメできない本作ではあるが、実はシリーズモノである。
『ひきこさん VS 口裂け女』
『ひきこさん VS こっくりさん』
などがあり、どれもひきこさんが圧勝している。
もしかして監督の永岡久明さんはひきこさんをメインに映画を作り続けないと呪われてしまうのか。
そんな可能性すら感じてしまうこの状況が1番怖い。