2013年に発売された『The Last of Us(ラストオブアス)』は累計売上本数が全世界で1700万本以上を記録。
また、ゲーム史上最多となる、231以上のメディアで「GOTY(ゲームオブザイヤー)」を受賞した紛れもなく歴史に「名作」として名を残すゲームである。
ただ、私は本作が好きではなかった。
特に『The Last of Us(ラストオブアス)』は当時、正義厨だった私には終わり方が納得いかず、「何やっとんねん!おっさん!!!」と怒りながら先を進めた思い出。
そして、現在。
延期に延期を重ねた『The Last of Us Part II』が遂に6月19日に発売される(ホンマか?)
私も歳をとり、自分の中にある正義との折り合いをつける手段を身に着けた今だからこそ『The Last of Us(ラストオブアス)』ともう一度向き合い遊ぶ事にした。
全人類が遊んだだろう本作で今更ネタバレも何もないと思うが、これからはネタバレありで感想を書いていくので注意してくれ。
ゾンビゾンビしていない
本作ではゾンビは感染者という呼び方なのだが、その種類が少ない。
ランナー、ストーカー、クリッカー、ブローターの4種類だけである。
いろんな種類を作っているレパートリー豊かなパン屋ではなく、食パンだけ作り続けているパン屋のような拘りを感じる。
また、ホモ・サピエンスの感染者しかゲームには出てこない。犬の感染者とか猿の感染者が出てきそうでドキドキしたのは私だけではないハズ。
しかも、ゾンビが発生した原因などが分からないままなのである。
他のゾンビゲームはそこにストーリーの重点を当てているゲームは多い。
例えば
そういうのに本作は興味がないのだろう。謎の菌で終わらせている。
一応サラリと感染者については触れている。まとめてみると
モチーフは恐らく冬虫夏草。
1.未知の寄生菌が人間の脳に寄生する。
2.寄生されてから二日程で理性を失い、人間を襲う(ランナー)
3.時間が経過すると頭部がキノコ状になる(ストーカー)
4.さらに時間が経過すると、頭部が原形を留めないほどキノコになる(クリッカー)
5.さらにさらに時間経過すると、全身が固いキノコ状の腫瘍に覆われる(ブローター)
6.感染最終形態。ブローターからさらに感染が進み、活動を終え死亡した後、苗床となり、胞子を放出する。
こういう設定がしっかりあるので、菌の原因などについても裏では設定はあると思われるが、本編では明かされない。
設定厨などはモヤモヤする事もあるかもしれいが、その代わり本作では
「現代社会が謎の感染菌で滅亡したパンデミック後」という世界の描き方が巧くてワクワクしてしまう。
つまり、「なぜこうなってしまったのか」ではなく、「こうなってしまった後どうなるのか」に重点を置いているのだろう。
考えてみると大人気ドラマの『ウォーキング・デッド』もウォーカーというゾンビが生まれた理由は現在も分かっておらず、「パンデミック後」を見事に描いているという共通点がある。
個人的には「原因」と「結果」は巧い事両立して欲しいが、中々難しいのかもしれない。
↑ここはまかせて先にいけおじさんが普通に強くて後で助けに来るとこ好き
『The Last of Us(ラストオブアス)』はジャンルはゾンビモノだがゾンビは主役ではなく、人間が主役である。
そして更に言うならジョエルとエリーの物語というミニマムな物語でもある
それ故に、ゲーム中でもゾンビより人間の方が厄介であり
何よりも、ジョエルが強く、恐ろしいのである。
ジョエルとかいうおっさん
40代後半という初老である本作の主人公。
最初はクリッカーに為す術もなく噛まれると一撃死でゲームオーバーなので頼りない感じがするが、こいつのグーパン強くね?って気づくと世界が変わる。
本作はステルスゲームなのだが、私はどうにもこうに我慢できずに敵を殲滅したい慾が出てくる。
ただ、敵の数は多く、味方の数は少ない。
そして弾薬には数に限りがある。
ならばどうする。
そう、殴り殺す。
焦ってはいけない。
ゆっくりじっくり迅速に
殴り殺す。
私は難易度中級で遊んだので、意外とアイテムが落ちていてそこまで弾薬に悩む事もなかったが、貧乏性なので極力節約していた。
感染者のランナーとかストーカーなら3体ぐらい襲い掛かってきても問題ない。殴り殺せる。
クリッカーもナイフで反撃を覚えると、一撃死することもなくなり、距離を離れてショットガンで余裕を持って対処できるようになる。
あと、火炎放射器とか爆弾手に入れるとただのストレス解消の相手である。「汚物は消毒だ」状態である。
そんなゾンビよりよっぽど厄介なVS人間。
資源の限られた『THE LAST OF US』の世界では、ほかの生存者を襲うことで資源を得ようとするハンターと呼ばれる輩がおり、これが強い。
感染者たちは動きを抑えてしまえば恐れることはなくなる。しかし、人間が怖いのは仲間との意思疎通で連携をしてくること。
目の前の敵に集中していたらいきなり背後から!なんてこともある。
私はエイムが下手なので、遠くから銃の撃ち合いしても完全に弾の無駄である。
ならどうするか。
敵の場所を把握すると煙幕を投げ、煙と共に強襲。
相手の喉元にグーパン。
これが1番早く、楽である。
それで良いのか「GOTY(ゲームオブザイヤー)」という気もしてくるが、幅広い遊び方が人気の理由だろう。
怒り狂ったジョエルに勝てる敵がいない。
中盤、お腹に穴が開き、死にかけるジョエル。
復帰直後、申し訳ない程度にお腹痛い仕草をするが、少し歩き回るといつもの殺人マシーンとして無双する。
こうなってくるとプレイヤーもジョエルに対しての信頼度が半端なくなる。
ジョエルさんである。
そんなジョエルさんはダーツでは見事に的から外すというお茶目さを持っていたり、エリーを実の娘のような存在へと認識していく親心を持っていたり、人間アピールが随所に入ってくるが、プレイヤーからしたら畏怖の対象でしかない。
そしてなにより一番怖いのがラストシーンだろう。
世界ではなく
日本でも大ヒットした映画『天気の子』でも主人公穂高が好きな子と世界を天秤にかける展開はある。
トロッコ問題的ストーリーは昔からよくある。
FF10とかもそうなのだが、大体は「世界とヒロインどちらかを選ぶなんて間違っている。俺は両方救う」展開になりがちだ。
ただ、ジョエルは世界ではなく、エリーを選んだ。
冒頭でも書いたように私はここの選択が嫌いで『The Last of Us(ラストオブアス)』と距離を置いていた訳だが、もう1度やってみて思う。
そもそも人間ってクソ。
どいつもこいつも自分を守るために他人を傷つける。
暴力で溢れた社会では、人の命はあまりにも薄っぺらい。
そりゃ、仙水さんだって、「花も木も虫も動物も好きだ。嫌いなのは人間だけだ」って言う訳である。
エリーではなく世界を選んだマーリーンだって、世界を救うは建前で、同僚達から「無能」だと思われている現状を変えたかった利己的な目的もある。
そんな世界でジョエルだけが「世界」を選ぶ道理もない訳で(そもそもワクチン自体どこまで信憑性があるのか不透明である)
だからこそ、あんなに嫌悪感があったラストをすんなり受け入れる事が出来た。
医者を殺すシーン。
本作はラスボスと言える存在はいないが、最後に印象に残るのはエリーを手術しようとする医者との対面だろう。
ここでジョエルの怒りに共感できる人なら医者を殺す事も出来るし、
ジョエルの行動に戸惑いを持ってる人なら殺さない事も出来る。
私はジョエルの怒りを表現するためにわざわざ火炎放射器で焼き殺したよね。
当時遊んだときはあんなに嫌悪感あった選択が、今ではそれしかないと思えるのは没入感のおかげであり、ジョエルとエリーの物語をこの手で追体験したからだろう。
最後に
遊ぶ前は、そのあまりに高い評判に思わず逆張りもしたくなったが、実際に遊んでみると、ョエルという殺人マシーンで生存者を次々狩っていくプレデタースタイルに思わずニッコリしてしまった。こうなると私の負けである。
正直、ゲーム中はジョエルのグーパンに頼りまくっていたので『The Last of Us Part II』でのエリープレイが非常に不安である。
エリーのグーパンも滅茶苦茶痛そうだが。
ラスアス2 ではエリーとジョエルが幸せのままで終わってくれることをただ祈る。
↑人類が滅びると自然が生き返る。