NETFLIXに加入して勉強になったことは、海外にも面白くない作品は一杯あるという当たり前を知れたことだったりする。
確かにネトフリオリジナル作品の中でもドキュメント系は面白いのが多いし、年に1本ぐらい「これはアカデミー賞狙いますで~」みたいな意識高めでお金もかかってる重厚な作品を出してくる。
ただ、基本的には素材は旨そうなのに出来たモノはボンヤリした味わいになっている事が多く、「70点」を量産している気がしてしまうし、2時間程度で終わる映画ならまだしも1シーズン10時間ぐらいあるドラマとなると鑑賞がどうしても億劫になってしまう(しかも大半は1シーズンで終わることなく、クリフハンガー的終わりでモヤモヤしたままなのも辛い)
そんな中、久しぶりに当たりのドラマを見つけたので今回は紹介したい。
それは『アンブレラ・アカデミー』(今更かもしれない)
私が本作に興味を持ったのはビジュアル満点の「金魚」を見たからである。
THE UMBRELLA ACADEMY TOM HOPPER as LUTHER HARGREEVES in THE UMBRELLA ACADEMY Cr. CHRISTOS KALOHORIDIS/NETFLIX © 2020
癖が強過ぎる見た目、大好物。
こんなキャラが出てくるドラマ、面白くない訳がない。
そして実際に滅茶苦茶面白かったのでそんな本作を紹介していきたい。
あらすじ
1989年、世界中で妊娠していない43人の女性が同日同時刻に突然出産するという事件が発生、億万長者の実業家であるレジナルド・ハーグリーヴズ卿が、特殊な能力を持つ7人の子供を養子として引き取り、世界を救うスーパーヒーローに育てる“アンブレラ・アカデミー”を創設。
しかし計画通りには進まず、子供たちが育ち、ティーンエイジャーになると家族は散り散りになり、アンブレラ・アカデミーは解散、さらに時は経ち、ある日父は謎の死を遂げてしまいます。父の死を弔うため大人に成長した兄弟姉妹は嫌々ながらも再集結、特殊能力により地球が8日後に滅亡することを知った彼らは、人類を救うため、そして父の死に隠された謎を解明しようと立ち上がることに・・・
個性豊かな人達
No.1 ルーサー
真面目で頑固で繊細な童貞ゴリラ。
コードネームはスペースボーイで能力は「怪力」
アカデミーの長男であり、リーダーとして活躍しようとするが悲しいかなリーダーの素質が乏しい。天然で阿呆な行動をとる事が多く、身体が大人だが中身は子供のままである(家族全員が大なり小なりそういう傾向にあるが父親が悪い)
リーダーとして無理していたS1に比べてS2では比較的自由であり、本来の彼を垣間見る事が出来る。
No.2 ディエゴ
コードネームはクラーケン。モノの起動を曲げることができる能力。
原作コミックでは能力が「水中で息を止めること」というスパロボにおけるゲッターロボ3ぐらいの限定的な活躍しか出来ないためかドラマでは大幅改変している。
ルーサーと並ぶ程度に戦闘力が高く、戦うシーンは多いが残念ながらあまり活躍出来ない。それに加えて能力がどちらにしろイマイチ地味である(そもそも能力を使う場面が少ない)
性格は反抗的で自信家な傾向があり、少し生意気な次男タイプ。
天然な所が多くあったり、基本的に阿保。ただ、母親や家族想いな面も多く、憎めない奴である。
No.3 アリソン
コードネームはザ・ルーマー。
『〜という噂を聞いたんだけど』と彼女が話し始めると、相手へ発した言葉をそのまま実現させるという人を操る洗脳系能力の持ち主。
そのチートな能力の為に作中では色々な理由から使えないようにしていたり、相手も積極的に喉を狙ってくる。家族の中では比較的まとも(恋し過ぎじゃねとも思うが)
No.4 クラウス
コードネームはザ・セアンス。
死者と交流できるという特殊な能力を持っているが、その能力のせいであらゆるクスリや酒に手を出してしまう。
ドMで同性愛者。本作のお笑い担当であり、癒し担当。
ダメ人間かと思いきや、家族への情も厚く好きになる。
No.5
マネキンが恋人の毒舌生意気短パンショタ(中身58歳のジジイ)
新しい性癖こんにちはってなる小さき悪魔。コナン君の実写は彼しか出来ない。
『アンブレラ・アカデミー』の魅力の8割が彼と言っても過言ではない。
時空を移動できる能力を持っており、全体的に地味な能力が多い中で目立つ。
他の家族は世界の危機なのに自分の事を優先したり、愛とかにうつつを抜かして話がワチャワチャする事が多いが、彼が画面に出るとメインのストーリーが進展するのでそこの安心感も凄い。好き。
また、目的達成のために手段を選ばない非情さと口の悪さが目に余るが、所々見える家族に対する愛や、想いが尊い。好き。
エイダン・ギャラガーさんがいつまでこういうショタ役を出来るが分からないが、今この瞬間の彼を目に焼けつけよう。
No.6 ベン(故人)
作中では既に亡くなっている。死者と交流できるクラウスと共に行動している。
身体から巨大なタコ(触手)を出す能力。
彼が死んでから家族がバラバラになったというのがよく分かる人格者である。
特にS2で能力が制御できずに悩む家族に対する彼の「君は孤独じゃない」という一連の説得のシーンは本作随一の名シーンであり、S1から通して必要だったのはこのセリフだったなというのがよく分かる。
本作のテーマの1つは親からの解放だと思う。
No.7 ヴァーニャ
性格は内気なタイプで、現在はバイオリニストとして活動している。
家族の中で唯一スーパーパワーを使えず、「普通」の人として劣等感や自分のアイデンティティの欠如に長年悩む。
ただ、実は…というのが本作のキーである。
人によっては彼女にイライラしてしまうだろう。しかし、僕も劣等感を抱いて生きてきた側なので彼女に親近感湧くし(どちらかと言うとS1ではルーサーにイラっとした)S2でようやく自分らしく生き始めた彼女を見て嬉しく思う。
あと、ダンスの時の動きが可愛い。
家族以外にもコミッション(委員会)と呼ばれる時空を管理するというとてつもないスケールの大きさであるS1,S2の敵が「年金」や「駐車場の場所」を気にしたり、現場と管理で確執があったりする生々しさがあったりと印象的なキャラクターと設定が多い。
親の気持ち
本作を6人のスーパーヒーローが世界滅亡のために立ち上がるヒーロー譚だと思うと中々に辛いと思う。
家族関係が冷え切っているし、どいつもこいつも不器用な為、家族喧嘩ばかりする。
お互い冷静に話し合っていたらここまで状況が悪化しなかったのでは!?と考えてしまう。特にS1は全ての行動、選択が悪手になってしまっており、イライラしてしまう人もいるだろう。
家族全員が大人になりきれておらず、父の死、世界の終わりをきっかけにして成長していくという話なのは分かるが、一致団結するのがS2の終盤という遅さが辛く感じてしまう(その分S3は楽しみだが)
とにかく本作は彼らの親の気持ちになって、わが子を温かい気持ちで見守る心づもりを持とう。子供は失敗するモノなのだ。
本作は家族喧嘩を中心として時空を管理する敵の妨害を受けながらも、世界崩壊を阻止すべく未来と過去に飛びながら、ヒーローになっていく物語なのだ。
イライラしてしまう所もあるが、それはそれとして先が読めない展開と強烈な個性を持つキャラクター達、OPでトレードマークである傘が毎回出てきたり、戦闘時に流れる懐かしのBGMなど癖になる演出の数々。
1度見始めるとグイグイと作品世界に引き込まれて寝不足になる、そんな作品だと思う。
S2で時間軸系は落ち着いたと思うので、S3で世界中で妊娠していない43人の女性が同日同時刻に突然出産するという事件の裏側や、父親の正体など引っ張っている謎が解明してくれることを期待している。
気になる人は取り敢えず1話を見て引き込まれるかどうか判断して欲しい。面白いよ。
最後に一言。
金魚が全然活躍しねーじゃん!(それ目的で鑑賞するのはオススメしない)
アンブレラ・アカデミー ~組曲「黙示録」~ (ShoPro books)
- 作者:ジェラルド・ウェイ(作),ガブリエル・バー(画),ジェームズ・ジーン(扉絵)
- 発売日: 2010/03/30
- メディア: 大型本