社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

「M-1グランプリ2020」感想。マヂカルラブリーと標準語で関東芸人がM-1で勝つ方法

審査員も務めたナイツの塙さんが以前からこう言っている。

僕は、関東芸人はM-1で勝てないと思っています。ちょっと、言い過ぎかな。言い換えると、勝とうと思わないほうがいい。予盾するようですが、そう思えたら、チャンスはあるかもしれません。

 

関東人がM-1 で勝つためにはアンタッチャブルの柴田さんのように「べらんめえ口調」の習得が必要なのか。いや、そうではない。標準語がダメなら喋らなければいい。

それが2020年のM-1グランプリ優勝者、マヂカルラブリーの戦略だったのかもしれない。そこを掘り下げながら、全体の流れの感想を言っていきたい。

 

コロナ禍におけるM-1

 今年はコロナ禍の影響でゲスト(相席食堂におけるインフルエンサーのゲスト並にいらない存在)が呼べなかった代わりなのだろうか、いつもより力と金をつぎ込んだオープニングVTRコーナーと1組目が敗者復活戦枠だったのも相まって、最初の漫才が始まるまでに約50分かかったのは流石に長かった。

そして始まる漫才。

昨年がぺこぱを筆頭に「誰も傷つかない笑い」がブームだったけれど、今年は完全に「大声で叫ぶ笑い」になっていましたね。

有吉の壁でも「大声は笑える」という話はあったが、M-1グランプリでもそうだった。この世の真理。

 

1番手は大会初の敗者復活戦枠が引かれ、インディアンス。625点

去年は正直、M-1グランプリよりその後の相席食堂の街ブラ-1グランプリでロケ中、素人にイジラレているのが見ていて、いたたまれなかったというか「殴れ!」と思ってしまったので、今年もあるかどうか知らないけど、リベンジしてほしい。

M-1グランプリは順番が大事だとよく言われるが、次の東京ホテイソン含めて審査員の点数がまだ温まってなかったので、厳しめの点数になってしまった。確実に去年より良かったので来年も頑張ってほしい。漫才大好き!M-1楽しい!感がよく出ているのも好き。

 

2番手に登場した決勝初進出の東京ホテイソン。静ボケ 剛ツッコミ

得点は今大会最低の617点

いや、滅茶苦茶面白いだろ!!!!

「アンミカドラゴン新大久保に出現」のようなワードセンスとアハ体験。唯一無二。

個人的には最終決戦のメンバーになってもおかしくなかった。松本人志さんが「声のバランスがあってない」と言ってたけど、あれでいい、あれこそだろ!!!

オール巨人さんの「漫才が難しすぎる」はまぁ、分かる。M-1グランプリ向きではないのかもしれないけど、マヂカルラブリーみたいにドベから優勝になって欲しい。


3番手に登場したニューヨーク。ダークにリベンジ 642点

去年以降あまりにも「誰も傷つかない笑い」が表立ってしまったので、

 

不謹慎や犯罪ネタという新しい切り口での時事ネタ漫才をしたニューヨークは良かったですね。ネットの一部層からは滅茶苦茶嫌われているニューヨークだけど、嫌われる事を嫌がらないというのが強みだと思うので、この形式の漫才をもっと高めて欲しい。ここら辺から点数がインフレし始めた。

 

4番手で登場した見取り図。真逆の才能Ⅲ 648点

安定安心いつも通りの見取り図だと思う。「ドンキーコングの下B」は滅茶苦茶笑ったけど、審査員の年齢的に分かったのかなと不安にもなる。飛び道具的漫才が多い今年のM-1の中で「正統派なしゃべくり漫才」で最終決戦までいけて良かった。

 

5番手に登場したおいでやすこが。個性と技のハーモニー 658点 

ボケのこがけんが歌う著名なJ-POP楽曲に見せかけた謎の歌に、ツッコミのおいでやす小田が大声でツッコミを繰り返す。

M-1グランプリで鬼門とされる歌ネタ。しかも最終決戦も歌ネタ。

僕もM-1で歌ネタは無理じゃない!?と最初はなったが、あまりにも上手すぎるこがけんの歌声と、聞いていて気持ちが良い小田の大声ツッコミに笑ってしまった。基本的に大声って一歩間違えると「キンキン声で耳には入るけど頭に入ってこない」状態になりがちだけど、聞き心地が良い大声はスンと入ってくる。

M1の決勝でおいでやすこが敗退

松本「R1で頑張ってください」

おいでやす小田「出れへんねぇぇん!」
この流れになると思ってたけど、そんな事はまるでなかった。勉強し直します。

 

 

6番手で登場したマヂカルラブリー。 我流大暴れ 649点 

フレンチレストランを舞台にボケの野田が縦横無尽に動き回るスタイルの漫才。

「城の門が開かない時の開け方してるじゃん!」というツッコミは昔、「成田闘争で警官倒す時のやり方じゃん!」という天才の発想をしていた。一本目は頭がピークだった気もする。

マヂカルラブリーに関しては後で書く。

 

7番手で登場したオズワルド。NEO東京スタイル 642点

2年連続出場。「自分の名前を発音するとき口が開きっぱなしで怖いから改名する」というネタ。

去年はミルクボーイの後という最悪の順番だったが、今年も優勝したマヂカルラブリーの後という順番。オズワルドの前の組が優勝するというジンクスが出来そうである。

「まのセキュリティ」で爆笑した。こういう独特の着眼点を知れるのも良い所。

ただ、時代が時代なら、いなり・カッパ・かんぴょうを「雑魚寿司」と呼んだのは炎上するぞ!?

松本人志さんが「叫ばないでいて欲しかった」は私も同意。でもそれではM-1では勝てないのかもしれない。

 

8番手に登場したアキナ。覚醒するファンタジスタ 622点

下馬評で圧倒的に1位だった中、「楽屋に意中の女性を連れてくる」というネタだったが、厳しかった。個人的には最下位。覚醒してファンタジスタして欲しい。

 

9番手で登場した錦鯉。  おっさんずバカ 643点

ボケの長谷川が自身を題材にしたパチンコ台を演じる漫才。レーズンパンの天丼は個人的には本大会で一番爆笑したけど、ここが最終決戦になってしまうと飛び道具しかない魔境のような最終決戦になってしまっていた(それはそれで見たかったが)

49歳奥歯は8本抜けている長谷川さんから織りなす馬鹿馬鹿しいネタは卑怯。

「バイトはじめて30年だよ!」のツカミで袖の若手が将来を悲観して泣いたってエピソード好きだからこれからも頑張ってほしい。CR.まさのりは現実にも出そう。金儲けして欲しい。

 

10番手で最後に登場したウエストランド。 小市民怒涛の叫び 622点

「お笑いは今まで何もいいことがなかったヤツの復讐劇なんだよ!」という魂の叫びしか結局覚えてないけど、それで十分かもしれない。M-1グランプリ終了後の番組で爆笑問題太田さんが「ウエストランドは残念だったな」と10日前に結果を予言して、弄っていたのが一番面白かった。

 

マヂカルラブリー

2007年に初の決勝進出を果たしたが、決勝進出したコンビの中で唯一審査員全員から80点台をつけられ、最下位に終わった。

特に審査員の上沼恵美子さんからは「一生懸命やってるのは分かるけど好みじゃない」「よう決勝残ったなと思って」と酷評された。

それから3年。彼らは実力をつけた

野田クリスタルさんがR1で優勝して「えみちゃんありがと〜!!」と叫び、

今度は再びマヂカルラブリーとしてM-1グランプリというステージに立ち、上沼恵美子さんから「バカバカしさが突き抜けるのは芸術。本当に良かったと思う」と絶賛されたのは物語性があり過ぎる。

打ち上げで上沼恵美子さんを更年期ババァと下劣な中傷するのではなく、テイストはそのままに芸を見直し、自分達のネタで彼らは見返したのだ。

 

最終決戦で行ったサンドイッチマン富澤さんが「転がっているだけでとれる優勝」と評したマヂカルラブリーの「電車のつり革に掴まりたくないネタ」

ナイツの塙さんが「関東芸人はなぜM-1に勝てないのか。標準語で漫才やっている関東芸人のみんな、俺の代わりに頑張ってくれ」に対する答え。

標準語を喋る関東芸人がM-1グランプリ勝つ方法。それは「床に寝そべってチ〇コ出してションベンしたら自分にかかるネタ」を無言でする事だった。

発想が自由過ぎる。誰もマネできない。相方のマヂカルラブリー村上も村上は本名ではなく鈴木なのも自由。

個人的には上戸彩さんのお決りの「結果はCMの後!」でみんなズッコケる中、野田クリスタルさんだけは電車に乗っているネタだったのを見て、凄いなと感心した。優勝だよ。

 

個人的には「パワハラ騒動」で叩かれ過ぎてしまったせいか上沼恵美子さんが点数甘めコメントも優しいのは少し物足りなかった気もする。

あと、「M-1グランプリ出ない」宣言している和牛だけど、今年出てたら優勝の可能性高いと思ったので色々と勿体ない。来年がラストイヤーだと思うけど、どうするんだろうか。

 

正直、去年のM-1グランプリが過去最高と言ってもいいぐらいの大会だった。ミルクボーイやかまいたちの完成度、ぺこぱやすゑひろがりずニューウェーブ。何もかも完璧だった。それに比べるとどうしてもレベルは落ちる(コロナで練習不足なのか噛んだりするシーンもよく見かけた)(例年に比べると全体的なレベルは高いと思う。去年が例外過ぎた)

ただ、「しゃべくり漫才」が強いとされてきたM-1グランプリで、コント漫才や歌芸などが強くなって来たりなど、新しい自由な漫才の形が育ってきている気がする。

 

あれだけ永遠とふざけてた野田クリスタルさんが泣きながら「最下位とっても優勝することあるんで諦めないで下さい!!」と締めるのも本当に良し。色々あった2020年の締めくくりに相応しい大会だったと思う。 

 

最後に一言

一番面白かったのは「M-1グランプリ」の裏でダイアンの津田さんが『どうぶつの森』配信始めた事だった(誰が見るんだ)