治安が悪い作品が好きだ。
街中を飾る落書き、花ではなくゴミが咲き誇り、
暴力に満ち溢れ、人間をハンマー代わりに振り回す。
夜空には星々ではなく、スーパー玉出のネオンが光り輝き、その下では浮浪者が逞しく生きている。
治安は終わっていれば終わっているほど滾るし
倫理観は狂っていれば狂っているほど愛おしく
今の日本から極めて近く限りなく遠い世界であればあるほどそのギャップが美しい。
ただ、一言で治安が悪いといっても様々な種類がある。
例えば『クローズ』はその拳だけで成り上がっていくために不良で固められた学校が舞台でなければならない。治安の悪さが前提の作品であり、受けて側も「不良漫画」だからある程度は治安が悪いハズと予測して漫画を読むだろう。
だが、世の中には予測不可能な治安の悪い作品がある。または予測以上の治安の悪さにぶん殴られる作品がある。
例えば『名探偵コナン』
あまりにも長寿化した結果、解決した事件が非常に多いのに作中の出来事は全て一年以上は過ぎていないという設定もあるため2日に一度は殺人事件が起きているという世紀末な世界観になってしまった。
このように想定していなかった所でとんでもない治安お化けが誕生することがある。
そして今季、滅茶苦茶治安の悪いドラマが生まれた。
藤原達也主演の『青のSP』である。
あらすじ
学校内に警察官が常駐し、トラブル対応や予防活動を行う「学校内警察(スクールポリス)」制度。 表向きは何の変哲もない公立校に見える赤嶺中学だが、自ら志願して配属されたスクールポリス・嶋田隆平により様々なトラブルがあぶり出されていくことに・・・。法に触れれば、教師であろうが生徒であろうが容赦無く逮捕!? 警視庁捜査一課の敏腕刑事だった嶋田の目的、そして赤嶺中学が抱える本当の闇が明らかになる!
学校内に警察
殴る・蹴るは暴行罪であり、金銭などを脅し取ったりするのは恐喝罪で、万引きなどを強要するのは強要罪である。
そんな当たり前の罪が学校内ではイジメとして処理され、「イジメられる方も悪い」という謎の責任転嫁さえある始末。また、教師による体罰も昔からの問題である。
そういったいじめや体罰という犯罪が蔓延する治外法権の場所に学校がなっていいのかという問題に切り込んでいるのが本作であり、「学校は教師と生徒の聖域です!警察官がいるなんて不自然だと思います!」という教師の発言と、それに正反対の立場をとるスクールポリスの「法に背いた者には法をもって罰する、それ以外に正義はないからだ」のどちらが正しいのか。これは、「道徳」か「法」かという論点にも似ている。
そういう2つの立場からの熱いやり取りの中で、イジメとか万引きといった殆どの学校でありえる問題を扱うと思っていた。思っていたが、どうやら本作は違うらしい。そういう次元の犯罪ではなかった。
この学校、魔境である。
ここからは各話毎の治安の悪さを掘り下げて書いていきたい。
治安の悪さ
- イキリ散らかしていたのを近くのクラスメイトに注意されたので逆上して窓を割ったり、教師を殴ろうとしたため、速攻で逮捕される学生(このドラマの逮捕第1号、ドラクエで言うスライム的ポジション)
- 自殺した親友の復讐に犯人をSNSで晒すなどのネットリンチをしたら、その更に復讐で刃物を持った男が学園に乱入して来て大暴れ。スクールポリス目的のマスコミも大量にいたために全国区のニュースで取り上げられる(生徒達の精神的状況を考えるとこの時点でしばらく休学にでもなりそうだが、何も変わらない)
これがドラマ第1話である、因みに生徒は2人、乱入した部外者1人逮捕される。次に第2話。
- 教員免許偽造して学校勤務している男性
- 妊娠してる教師の引き出しにネズミの死骸が入れられる
- 妊娠してる教師を応援しながら裏垢でイキる生徒達
- 偽免許教師が保身のために妊娠してる教師の飲み物に異物を混入させ流産未遂事件を起こす
- 流産に失敗したので実力行使でバットを持って襲撃する
これが第二話。妊娠した女性教師が可哀想過ぎる話である。
因みに逮捕された生徒は1人。偽教師も逮捕。この事件後の全体朝礼で、「この学校どうなってるんだよー!」というあまりにも正論な野次が飛ぶ。次が第3話。
- サッカー部メンバーに告白し玉砕したヤンデレストーカーがサッカー部の水筒にドラッグ混入テロ
- それを飲んだ部員が半裸で暴れる
- ヤンデレにストーカーされた男性生徒がそのストレスからムシャクシャして備品盗難ネトオク出品
本作最強の存在ヤンデレストーカーが登場した問題の回。
ヤンデレストーカーは告白して玉砕されたハズなのに脳内では告白成功した事になっており、その後も付き合っていると思い込みながら行動して、その愛ゆえに邪魔する他の生徒にドラッグを飲ませる。ホラーかな。
冒頭からドラッグで飛んだ生徒たちの奇行を見せられビビっていたら、シラフなのにそれ以上に飛んでいるヤンデレストーカーの奇行を見せられお腹一杯。ドラッグ騒動があまりにも大事過ぎて、最後の最後に分かる窃盗がそんなん軽犯罪どうでもいいじゃんとなってしまった。逮捕はヤンデレストーカーが1人。
次が第4話。
- 女子生徒が相手の事を純粋に好きだからという理由で女子更衣室盗撮
- 女教師が男子生徒にエッチなマッサージなど、セクハラを繰り返す
男性教師が女子生徒にセクハラは結構あるけど、逆パターンは珍しい気がする。
突然の百合展開にも驚いたし、生徒の逮捕が0だったのも驚いた。部外者と教師は1人ずつ逮捕。次第5話。
- バスケ部のレギュラーを黒人ハーフの子が取ったのをきっかけに陰湿な王道イジメ
- 教師による「あいつは外国人だから血気盛んだ」という差別発言
- スラム街みたいな場所にギャングみたいなグループの登場。学校の中だけでなく地区全体の治安がヤバそう。ハイローかな。
- 偽ブランドの売買とドラッグの斡旋
- 日中の街中で生徒が堂々と誘拐される
ようやくきた(?)王道のイジメ問題。ただ、まさか今世界で一番ホットな話題の黒人差別と絡め合うという令和感。黒人ハーフのアレン君が味わいのある演技でそれだけでも面白いし、アレン君をイジメてた西田君の絶叫演技が本当にうまい。
あと、 山田裕貴さんがギャングと格闘するシーンは殆ど村山さんだし、ハイロー。
ギャング集団は全員逮捕。神回。
「イジメてたやつは丸焦げしてもOK」
6話
- 同僚の教師に対してパワハラを超えたイジメが起きる
- それを見て見ぬふりする他の教師達
- 当たり前のように起きる窃盗
- 屋上で自殺しようとしている教師に理由を聞きながらも反論し出す校長
- 校長が大ボスになってしまい、何故か虐めてた教師達が味方面して大した制裁も受けずに終わる。これで一件落着になるの文化が違う。
こういう感じである。
6話までにネットリンチ、いじめ、暴漢侵入、マタハラ、傷害、殺人未遂、器物破損、ドラッグ、盗難、盗撮、セクハラ、性的虐待、人種差別、ギャング、パワハラなどの問題がテンポ良く畳み掛けるように起こり、そこにあの藤原竜也が混ざっていくカオス感。細かな所を目をつぶると滅茶苦茶面白い。
あと世界観がポケモンみたいな所があるので、藤原達也がgetした生徒は命令を聞いてくれたり、協力してくれるし、レベル(年齢)が高くて言う事を聞かない教師はポケモンセンター(留置場)送りになる。
最後に
スカッとジャパン的要素もあるので、最後に藤原達也がいい感じの事を言って物語が終わる事が多いが、そのスカッと要素が微妙にずれているのでスカッとしきれない問題がある。逆にモヤッとする。
例えば第2話。女性教師が妊娠して、そこから色々トラブルが起きたところで〆の藤原達也のセリフがこれ。
「妊婦なんてウザイ。面倒なだけだ。そう思いたい奴はそう思えばいい。でも、お腹の子どもに罪はない。そんなこともわからないバカがいたら、俺が根こそぎ逮捕する」
いや、別に妊娠した女性にも罪なくね?
と思ってしまってダメだった。あと、6話のパワハラ教師がその後も普通に職員室にいて一人の教師として話に絡んでくるのもモヤモヤする。
ここからどういう展開になるのか想像が出来ない本作。
このまま治安の悪さがインフレしていくと最終話では校舎ごと大爆発するか、逮捕した問題児を全員無人島に連れて行って殺し合いさせるしか終われないと思うが、どうなるか楽しみである。
あと、やっぱり藤原達也が存在だけで本当に面白い。
校長先生が恋人の死に関わっている事が判明すると普通に殺そうとするのがダメ。
普通の主人公「復讐相手を〇す!!」
— 社畜のよーだ (@no_shachiku_no) 2021年3月2日
↓
普通の主人公「やっぱり俺には出来ない…」
藤原達也「犯人は〇す」
↓
藤原達也「あ゛あ゛あ゛!(頭突き)(腹パン三連発)(ハサミ刺す)(首絞め)」
ポリスとは思えない有言実行の男#青のSP pic.twitter.com/x6jmYxB7r1
流石バトロワで生き残った男。
amarin