社会の独房から

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PS5『Demon's Souls(デモンズソウル)』感想レビュー。敵に勝てなくて泣きながら尻に目覚めた話。

ソウルシリーズってやり始めるまでが結構悩むというか、「社会人の大切で短く儚い余暇を死にゲーという勝てない敵に一日中悩んで、ストレスでハゲそうになりながらも進歩すらなく悶々としている間に一日が終わってしまうあの日常に戻る覚悟があるのか」と自問自答してしまう。

旅に出る前夜の憂鬱さに似ている(旅の予定を立てたときは楽しみで仕方なかったのに直前になると急に億劫になるやつ)

そして旅行もソウルシリーズも日常へは戻れない……と嘆いていた憂鬱は、一度度立つと日常から脱出できて良かった!!というポジティブな気持ちに見事なまでに生まれ変わっている。

抱えていた憂鬱感がスーっと消えて、心が不思議な解放感で満たされ、熱中していく。

恐らく、身体は覚えているのだろう。

死にゲーというストレスの先には日常生活では得られない達成感や楽しさに溢れていることに。

今回、ようやくPS5を買う事が出来たので、勢いそのままに『Demon's Souls(デモンズソウル)』を遊んだその感想を書きました。よしなに。

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まず、最初に僕のソウルシリーズの遍歴を書いていこうと思う。

SEKIRO→ダクソ3、そして本作デモンズである。見事に発売順から逆行している。

SEKIROがマイベスト1と言ってもいいぐらい脳汁ピュピュ出たゲームであり、そこから高難易度ゲームに対する苦手意識が薄まり少しずつ挑戦している所だ。

ゲームの腕前は下手。

ダクソ3日記読んでもらえると分かって頂けると思うがパリィが出来ない。

 「このボスのこの攻撃はパリィが出来ます。はぁい余裕」って言いたいだけの人生だった…

そして今回、デモンズの初見感想は篝火…篝火どこ…?ということ。

篝火とは探索の拠点であり、 篝火で休息するとHPや魔法の使用回数を回復したり別の場所にワープとかできたりする。リスポーン地点。

SEKIROだと基本的にボス戦前に篝火があり、ボスに負けても再挑戦が楽だった。

しかし、デモンズはそうではない。

デモンズはステージ制を採用しており、ボスを倒してステージをクリアしないと篝火は出てこない。途中で死ぬとステージの最初からやり直しなのである。

これがまじで緊張感がやばい。

特に最初のボーレタリア王城1ではレベル上げが出来ず、ステージを進めば進むほど溜まっていくソウル(経験値みたいな奴、死ぬとロストする)

ソウルが溜まっていけば溜まっていくほど、勿体ない精神が爆発し、「死んではいけない」という緊張感が高まり、お腹が痛くなってくる。そこに襲い掛かってくる宮崎英高の殺意。

 

大玉転がしや弓矢、死角から襲い掛かってくる雑魚敵、物陰に隠れている雑魚敵、背後から襲い掛かってくる雑魚敵、曲がり角からの雑魚敵、ターミネーターの如く執拗に追いかけてくる雑魚敵。雑魚敵(雑魚じゃない)

初見殺しが盛りだくさんである。

こちとら側溝に落ちた5円玉を勿体ない精神で諦めず拾う男。ソウルを無駄にしたくない精神で一杯だが、宮崎英高が許してくれない。

「YOU DIED」を回避できない。

先に進むとボス部屋までのショートカットを開通する事が出来るステージもあるが、その前に死ぬと絶望感が凄い。完全に最初からである。

ただ、横方向には広くないが縦方向に広い立体的な構造が多いダンジョンは入り組んでいる割には迷う事は少ない。探索自体はストレスが少ないというソウルシリーズ通してあったフィールドマップデザインの凄さがデモンズである程度完成していたのを実感できた。こちらの集中力が切れない限りは初見殺しの配置を把握出来たり倒し方が分かるので2回目以降は問題なく対応出来たりして、自分の成長を実感できる。ソウルは無駄になっても自分の中の経験が無駄になるような事は一切ないのは良い。

攻略ルートや宝の隠し方など「発見」に重点を置いた、秀逸なデザインだと思う。ルートやアイテムの隠し方が巧妙で、思わぬ場所から宝を発見することができるので探索のしがいもあった。散々歩いた挙句に何もない行き止まりというのがないので探索していてワクワクしながら敵の奇襲に向けて緊張感を保てる。この「発見」の要素は良かった。

 

良かったが、問題もある。

それ以降のシリーズで少しずつ減っていったが、デモンズではバリバリある死に方。

落下死。その理不尽さ。

崖などの細い道も多く、そういう道に限って敵を配置している厭らしさ。

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落下死はダクソ3でも少しあり、SEKIROでは殆どなかったが、デモンズでは滅茶苦茶存在する。

特に腐れ谷。

「落下死の理不尽さを知った」と言えば腐れ谷
「毒は油断ならないと知った」と言えば腐れ谷

「ネズミは疫病持ちだから気を付けないといけない事を知った」と言えば腐れ谷

「見た目が醜いババァは精神も醜い」と言えば腐れ谷
「数の暴力を知った」と言えば腐れ谷

「人面虫の生理的嫌悪感やばすぎぃ!!」と言えば塔のラトリア
「ナメクジや気持ち悪い生き物多すぎて精神が摩耗した」と言えば腐れ谷

「腐った描写が多ければ多いほど最後のボスの美しさが輝く」と言えば腐れ谷

恐ろしいステージである腐れ谷。クリアした後なら言える、「好き」と。人面虫は嫌い。

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↑人面虫の鳴き声の生理的無理さがやばい

 

他にもマンイーターなど、落下死を誘発してくるボスもいて中々コントローラーを投げたくなる。後のシリーズで落下死が軽減された意味がよく分かる。

ただ、SEKIROやダクソ3と比べてボスが圧倒的な強者という訳でもないのでクリアするだけなら意外とそこまで難しくないと思ってしまうのはこちらの感覚がマヒってしまっているからだろうか。蒙古タンメン中本で北極ラーメンを経験した後に蒙古タンメン食べるようなモノかもしれない。

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↑「こいつ1人でよくね?」と言いたくなるようなやたら強いNPCが助太刀してくれることもある。

 

ボスも後半はギミック系が多かったし、探索がメインのゲームだったんだなぁって気持ち。

そんな蒙古タンメンだったデモンズなのだが、攻略法をミスると尻から火が出て、泣きながら後悔する事になる。

 

嵐の祭祀場のソウル傾向という悪意があるからだ。

そこは雑魚敵すら結構強く、何より遠距離攻撃してくるエイがうざかった。

その結果、生身状態(HP満タン、基本的に一つのステージをクリアした時だけなれる状態)含めて死にまくっていると

 

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なんか今までいなかったところに赤い敵がいるーーーーー!!!

知らなかったのだが、デモンズソウルでは生身状態で死ぬとエリア毎のソウル傾向が黒くなり、敵が強くなったり新しい敵が出てくるらしい。

しかも、この赤い敵が普通の雑魚より強いし、普通の雑魚も消える訳じゃなく純粋に敵の数が増えるだけという地獄。

しかもしかも、この赤い敵の出現位置がリスポーン地点から近く道も狭いので戦わないと先には進めないという地獄。

しかもしかもしかも勝てないからレベル上げしようとソウル集めしたくても一番効率が良いのが嵐の祭祀場という地獄。

普通さ、勝てないから死ぬ訳で、死んだら更に難易度上がるのおかしくない!?

 

一部界隈でソウルライクより難しいと噂される2Dマリオシリーズだって何回か死ぬと「このコースをクリアしたことにしてつぎに進みますか?」という選択肢とか出る時代である。

 

普通のゲーム「おや、何回か死んでますね。どうします?難易度下げたり、回復量多くしたり、何ならクリアしたことにしますけど?」

僕「するする!!!」

これは分かる。

デモンズ「おや、何回か死んでますね。分かりました。更に敵の攻撃は激しく、もっと強い敵も用意しました(ドーーーン!!!!)」

僕「死~~~~~」

恐ろしいゲームである。

しかも、調べると昔のアプデ前は生身だけでなくソウル状態(生身で一度死んだ基本の状態)でも死ぬとソウル傾向が黒になっていたらしい。そりゃ、ファミ通さんだって7・7・9・6の29点という微妙な点数つけるよ。尖っているよ。

 

まぁ文句を言っても仕方ないので高難易度に苦戦しつつも頑張っていると、何か今度は誰かが乱入してきた!!!

 

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秒で殺された。

何だったんだあいつ…と思いながらスタート時点にリスポーンすると、何かさっきの奴がまたいるし、こっちに襲い掛かってくるしで、当然死ぬ。

 

 

???????

 

最初、オンラインで誰かが侵入してきたんだと思ったんですね。

見た目が、普通の雑魚っぽくないし、遊んでいたのが日曜の昼間だったのもあったので。

昔、『スプラトゥーン2』で低ランク帯で遊んでいると上手い人達の複垢っぽい集団にリスポーン地点まで攻められて、死んだ→リスポーン地点に戻る→速攻で敵に「こんにちわ」されるの繰り返しをされたトラウマがあって、同じような感じでどこかのキッズに執拗なまでに狙われていると思って、「やれやれ」と村上春樹小説に出てくる主人公のような事を言いながら一度ゲームを強制終了させてオフライン状態でゲームを始めたのにーーー

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まだいる!!!!!!!!!

 

絶望。

オンラインで侵入してきた人じゃなく、ソウル傾向が最黒仕様になった時に出てくるNPCの敵だった。名はサツキ。

しかも、サツキは本当の本当にリスポーンしたと同時ぐらいにこちらを発見し、攻めてくる。復活して何も出来ないまま殺される→PS5の高速ロードで一瞬でリスポーン地点に戻る→再びサツキに襲われるの連続。終わらない輪廻。

 

今までのゲームなら死んでからリスポーンするまでのロード時間で色々考える事も出来たけど、ロードが一瞬で終わるので考えを整理する時間すらない。PS5の高速ロード、本当に早い。でもこんな事で実感したくなかった。

サツキの攻撃力の高さとこちらの防御力の低さが相まって、少しでも攻撃がカスる程度で死ぬ。ちょんで死ぬ。異世界転生してきたレベル99の主人公に狙われる脇役みたいな気持ちになる。しかも、前に出ると他の雑魚敵まで襲い掛かってくる鬱陶しさ。

正直、詰んだと思った。

泣いた。

 

ゲームに飽きたから、自分には合わないから、3D酔いするから、そもそも面白くないから

ゲームをやめることはよくある。

でも、敵が強くて勝てないからゲームをやめるのはモヤモヤしてしまうし、これからの日常生活の中でもふとモヤモヤしてしまう。勝てなかったという呪いである。未練でもいい。

諦めたいのに諦めきれずに泣きながら対策を練っているとダクソ3でもっとも苦戦した敵である「冷たい谷の踊り子」を思い出す。

尻。

そう、尻だ。

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ヒト型で勝てない敵には何が何でも尻に張り付く。

これこそが鉄板の対策だったハズ。

ありがとう、冷たい谷の踊り子。お前との戦いは無駄ではなかった。

そこからは一心不乱にサツキの尻を狙い続ける。

一撃でも喰らったらダメだし、こちらの攻撃は微々たるものだが0ではないので諦めずにチクチク攻める。戦闘中にあまり移動して他の敵に見つかってもだめ。サツキはHPが減ると回復してくるのでそれを阻止する事を忘れてはいけない。兎に角サツキの尻に移動する。どれだけ相手のHPが低くなって勝てそうになっても焦ってはいけない、相手はレベル99の主人公。油断と焦りは死。

try and errorの連続。半日に渡る死闘の末ーーー

 

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 勝てた。

勝てた時は本当にあっさりしている。

そして何より、ボスを倒しエリア全体のソウル傾向が白くなった後の嵐の祭祀場簡単過ぎて笑う。

 

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↑生身での攻略は諦めてステージクリアするとまず投身自殺するようになったよね 

最後に

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これがクリアした時のデータである。うまい人なら10時間切れるみたいだが、僕には無理だ。

ソウルシリーズの元祖という事で難易度もおとなしめだったという印象。

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↑遠距離攻撃でウザかったエイたちも終盤ではソウル稼ぎの餌になる事でプレイヤーの気持ちを反転させる。エイを嫌わないでいられる心遣いが良かった。
 

回復はエスト瓶じゃなく消費アイテムだから勿体なくて使わないでいるラストエリクサー症候群に陥りやすかったり、 魔法が使用回数制じゃなくMP制なので無限に魔法が使えたり、初見殺しや落下死が多かったり、後のシリーズでは理由があって廃止されたシステムがそのままで遊べるので、「こりゃ廃止されるわw」とメタ的にも楽しめる。

元祖は元祖というだけでやる価値がある。

 

他にもオンラインだと見えるメッセージ

走り抜けろ
自重しろよ
罠に気を付けろ

ここは安全だ

周りを見渡せ
ようこそ!
こんにちは!
まあ、がんばれや
嘘メッセージに注意しろ
お前の後ろに・・・
心が折れそうだ・・・
ソウル体生活も長くなった・・・
メッセージなんて読んでる場合か?
ヒントがあるとでも思ったか?
答えはお前の中にある
苦しいです。評価してください

ここからが本当のデモンズソウル

 

様々なメッセージが暗くて辛くてドロドロした探索に温かさを与えてくれるし、緩い繋がりが心を支えてくれる。特に「ここからが本当のデモンズソウルだ」は序盤のダンジョンに書いてあるのは分かるけど、ラスボス前とかにも書いてあっていつまで経っても本当にならないデモンズソウルに笑顔になれる。また、初見殺しが多いデモンズにおいてメッセージで救われた経験は一度や二度ではない。ありがとう、他のソウルたちよ。

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やはり死にゲーの達成感は素晴らしいものがある。

デモンズソウルもクリアしたし、そろそろ『ブラッドボーン』始めようか。

でもやっぱり「社会人の大切で短く儚い余暇をソウルシリーズという勝てない敵に一日中悩んで、ストレスでハゲそうになりながらも進歩すらなく悶々としている間に一日が終わってしまうあの日常に戻る覚悟があるのか」と自問自答してしまう訳で。

 

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