社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

ホラー映画『クネクネ』感想。くねくね要素はほぼない

「くねくね」という怪談はご存知だろうか。

2000年にある怪談投稿サイトに投稿された話(おそらく創作と推定される)が起源とされる。この話が、別の者により改変され、さらにこの話が創作である旨を明記した上で、2003年に2ちゃんねるの「オカルト板」に投稿された。しかし、ネット上で伝承していく過程で、この話が創作であるという断り書きが抜け落ち、怪談話の部分だけが一人歩きしていった

 

概要はこうだ

これは私の弟から聞いた話であり、弟の友達のA君の実体験である。A君が彼の兄と一緒に母の田舎に遊びに行った。外は晴れていて田んぼが緑に生い茂っている頃。A君のお兄さんが窓から外を見ていると真っ白な服を来た人がいて、人間とは思えないような動き方でくねくね踊り始めた。A君もお兄さんも、最初はそれが何なのかわからなかったが、やがてお兄さんはわかったらしい。しかしA君が「お兄ちゃん、あれは何なの。わかったなら教えて」と聞くと、急に兄の顔に変化が生じた。みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、ついには持ってる双眼鏡を落とした。A君は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。「何だったの?」
兄はゆっくり答えた。
「わカらナいホうガいイ……」
すでに兄の声ではなかった。兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。

A君は兄が落とした双眼鏡を拾い、見ようとするが、兄の変化を見たので覗く勇気が出ない。その時祖父が駆けつけてきて「あの白いものを見てはならん。お前、見たのか」と迫り、まだ見ていないと答えると安心してその場に泣き崩れた。家に帰ると皆が泣いている中で兄だけが狂ったように笑いながらあの物体のようにくねくねと乱舞していた。

祖母がこう言った「兄はここに置いといた方が暮らしやすいだろう。あっちだと狭いし、世間のことを考えたら数日も持たん… うちに置いといて、何年か経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…」A君はその言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。

 

「くねくね」はインターネットを渡り歩く中で諸説生まれたが、以下のような共通点がある事が多い。

  • くねくねと動く、または踊る。
  • 夏の水田や川原など水辺で目撃されることが多い 。
  • くねくねを遠くから目撃した程度では問題は無いが、詳細が見え、それが何かを理解すると、途端に精神に異常を来たす。
  • 地元民には知られた存在。

インターネット発祥の都市伝説では有名な「くねくね」だが、 2010年に映画化されたものの圧倒的酷評だった。圧倒的である。ニコ生で放送された時は「90%以上がアンケで5(よくない)を押した伝説」もある。

今回はそんなホラー映画『クネクネ』を見たので感想を書いていきたい。

クネクネ

あらすじ

ある晴れた休日、浩平とその娘の遥と再婚相手である良子とその娘である千里。4人は人里離れた山奥にキャンプ場に向かっていた。道に迷った浩平は、道中で見かけた村人に道を尋ねるも、村人は浩平の問いには答えず「今すぐ帰った方がいい」としか答えなかった。

何とかキャンプ場に着き、準備に掛かる遥、浩平、良子だったが、再婚に反対していた千里は輪に加わらず、独りふてくされていた。再婚間もなく微妙な空気が流れる中で迎えたキャンプ場での夜、そんな家族に待ち受ける存在が、襲いかかろうとしていた…

 

思ってた「くねくね」と違う!!!

あらすじでも書いたが、どれだけ道に迷ったか知らないが若い娘2人もつれているのに私有地かどうかも分からない山に勝手にテントを張っての一夜キャンプ。

そんな親も親なら娘も娘。

親の再婚で連れ子同士がギスギスしているのはよくあるが、こういう設定って普通は中学生から高校生ぐらいを想像するが、この娘たち、やたら老けている。

作中で年齢に関する言及はないが、見た目通りのいい年した大人なら親の結婚に反対して貞腐れるなよ………

観ていて全く感情移入出来ない登場人物たちなのでいつ死んでもいい気持ちになってくる。

f:id:Shachiku:20210220204301j:plain(C)2010アムモ98

↑お母さん役じゃないの!?と驚く娘さん

 

そして問題の「くねくね」

「くねくね」の魅力はその得体の知れない存在だと思っていたのだが、映画だと千里眼を持っていた可哀想な少女の怨霊だとハッキリ確定してしまっているので、ただでさえ少ない怖さが更に半減してしまっている。

しかもその「正体」設定はB級ジャパニーズホラーとして又ぞろというべきか、貞子の亜流である。超能力を持つ少女がその超能力を欲に駆られた人々に利用されたあげく、リンチされて殺される、というもの。ご丁寧にその少女には「とよ子」という「○○子」的定番の名前までついており、物語中盤で村人によりその名前が明かされて以降は「くねくね」という名前自体がどこかへ吹っ飛んでしまう。この映画の真のタイトルは『とよ子』である。

f:id:Shachiku:20210220204015j:plain(C)2010アムモ98

しかも「とよこ」は全然くねくねしないし、白いワンピースに黒い髪の貞子の恰好でしかなく、「とよこ」を見て呪われた人間の体がくねくねして死ぬが、CG処理による人体破壊とかはないので演者さんの限界までの身体パフォーマンスによる体をくねらせである。死んでいるハズなのに無理した態勢を維持しているからところどころプルプル震えているシーンすらある。


f:id:Shachiku:20210220203855j:plain(C)2010アムモ98

 そして、なにより「とよこ」に呪われた人間はゾンビ化して人を襲いだすというアメリカンホラー要素も出てきて「くねくね」どこいったの!!!???で頭は一杯である。

父親もゾンビになってしまうが、元から走りがゾンビっぽい走りなのでゾンビ後に変化がないのも面白い。

f:id:Shachiku:20210220203936j:plain(C)2010アムモ98

 

全体的に中盤のどんでん返しがない『カメラを止めるな!』に似ている。

 

最後、うまく「とよこ」から逃げれたと思ったら雨が降ってきて(恐らく全域が「とよこ」の稼働領域である水辺になるので)

「…嘘でしょ…?」

というセリフで終わるが、観てるこっちのセリフである。

 

最後に

住民も目を抉りとったらしいけど傷がないしただ瞼裏返しただけじゃん案件である。

しかも、目が見えないハズなのに正確に移動し、ゾンビの首を切ったりする正確な行動が出来るの完全な魚沼宇水である。心眼の持ち主がこんなにもいたのか…

f:id:Shachiku:20210220204154j:plain(C)2010アムモ98

↑住民はやたらとツワモノ感が出ている

 

変な映画だけど、50分ぐらいの短さなので一度観てう~んってなって欲しい。少なくとも僕が観たい「くねくね」ではなかった。誰か新しく「くねくね」映画作って欲しい!!

 

クネクネ

クネクネ

  • メディア: Prime Video