今、1番ホットな怪異「ターボババア」をご存知だろうか。
高速道路のトンネル内を車で走っていると、突如窓を誰かに叩かれる。振り向くと自分の車と並走する老婆がこちらを見ている、というもの。
場所は六甲山とされる場合が多い。まれに、真夜中の町内に現れ、追いかけて来てはそのまま突き抜けてどこかに行ってしまう。
老婆の速度は、最速で時速140キロメートル以上とされる。車と併走してドライバーを驚かせる以外は危害を加えるなどは無く無害だとされる。
老婆に追い越されると死ぬという説もある。
現代でいう所のウマ娘みたいな奴である。
ここから派生して「バスケばあちゃん」「ホッピングばあちゃん」「棺桶ババア」「ボンネットばばあ」「自転車で高速道路を走るサラリーマン」「高速でハイハイをする赤ちゃん」などが存在する。自転車で高速道路を走るサラリーマンとか迷惑ウーバーイーツの先駆け的存在でもある。
そのインパクト故に、印象に残りやすく名前は知っているという人も多いと思うがそのインパクト故に漫画などで登場しても1話きりのゲスト扱いばかり。
主役級にはなれない怪異なのか。
ババァは所詮ババァなのか。
そんな絶望の中、まさかまさかの天下の漫画アプリ「少年ジャンプ+」でターボババアが主役級に活躍する作品が出てきてしまった。
『ダンダダン』である。
『チェンソーマン』『地獄楽』の元アシスタント龍幸伸先生によるターボババアVS宇宙人という摩訶不思議な世界観である。
この漫画を読んだ時に多くの人がピーンと来たことだろう。
2021年、ようやくターボババアの時代が来るのだと。
学校帰りの女子高生達が「領域展開ってこう?」「こうじゃない?」って言いながら五条先生のモノマネをするように、「ターボババアの走り方ってこう?」「もっと大腿四頭筋を張る感じ」と言ってターボババアのモノマネをする時代はすぐそこまで来てるのだと。
時代だと。
そんな白ヒゲである「ターボババア」だが2013年に『高速ばぁば』として映画化されている。これから来るトレンドの流れに追いつく為にもこの映画を観て「ターボババア」をより理解しておこう。
という訳でホラー映画『高速ばぁば』の感想をネタバレありで書いていく。
あらすじ
ジャージ姿の3人組アイドルグループ「ジャージガール」のアヤネ、ナナミ、マユコはある番組の企画でレポーターとして廃墟となった老人ホームを訪れる。廃墟に到着後、一人で先行して肝試しを行ったアヤネは老人の影に襲われ入院してしまう。その後、自宅に帰宅するも3人の周りで奇怪な現象が続発する。ビデオに映った不気味な影、そして、アヤネは頬の傷が治らなくなりジャージガールの脱退を余儀なくされ、残った2人の身体にも不気味な症状が次々と現れる。マネージャーやディレクターなど周囲の人々にも呪いが広がっていく中、彼女らは恐怖の連鎖を食い止めるべく、再び老人ホームを訪れる。
ばばぁにしては高速
虐待があった施設で発生した呪いの話で、高速100キロババァとかの都市伝説とは何の関係もない。そもそも高速道路が出てこない。
ばばぁの走るスピードは高速といえば高速だけど、あくまで「ばばぁにしては」というレベルであり、若者を実際追いかける時はギリ捕まえられないくらいの速さでしかない。高速ばぁばの中ではB級。俊足ばぁばである。
↑俺でなきゃ見逃しちゃうねと言いたくなるシーンもある。
(C)NEXT MEDIA ANIMATION.
この映画でいう「高速」とは「高速で移動するばぁば」ではなく「高速でばぁばになる」という意味である。
呪われて感染するとすごいスピードでばばぁになる。ある意味恐ろしい。
↑アイドルだったアヤネも高速でばばぁ化
(C)NEXT MEDIA ANIMATION.
真に高速なのは人間側。
冒頭から同じアイドルメンバーが不可思議な状況になりグループを脱退したり、
マネージャーの望月は腕に傷を負い醜く爛れてしまったり、
ディレクターの榎本は足をねじり折られて、膝から切断したり、
自分の口からフサフサの白髪が出て来て最後はミニババァがニチャとしたり、
怪奇現象が起こりまくっていて、本来であれば焦ったり、恐怖で震えたり、ノイローゼになったりしてもいいのに、この映画の登場人物達は悲惨な事件が起きた次のシーンでは何事もなかったかのように日常を過ごしている。
無我の境地を手に入れてんのか。
ばばぁより、登場人物の気持ちの切り替えが高速すぎる。怖い。
↑生前は老人虐待を受けていたストレスを死後解放しているのかやたらはっちゃけている高速ばぁば。(C)NEXT MEDIA ANIMATION.
そして何より高速ばぁばより主人公たち「ジャージガール」が歌う「女子力わっしょい」のこのアイドル絶対売れねー感の方が怖い。
アイドル同士の足の引っ張り合いの方が怖い。
自分の娘がばばぁになったからって急に老人虐待しだす母親が怖い。
「怪異より人間の方が怖い」というホラー映画ではありきたりで陳腐な台詞を使う映画はよくあるが、この映画では台詞ではなく内容でそんな気持ちになってくるので、「なんでもセリフで説明するな!」と怒る系の映画好きにもオススメ出来る映画だ。
最後に
『ダンダダン』ではあんなにも強いターボババアだが、『高速ばぁば』のばばぁは所詮ばばぁでしかないので1人の女の子と押し勝負すると普通に負ける。非力。
よくよくばばぁの顔を見るとただのばばぁである。
(C)NEXT MEDIA ANIMATION.
こんなばばぁが必死に頑張っているのを見ると感動してしまう。老人虐待ダメ絶対。
この映画を観た後に『ダンダダン』を読んでも主人公たちよりターボババア応援したくなってしまう事だろう。漫画ではターボババアと和解してくれたらいいのになと思う。
2021年はターボババアの時代になるためにも『ダンダダン』の大ヒットを祈る。
わーわー書いてますが、僕からは以上です。さようなら。