人類は学園ミステリーが好き。古事記にもそう書いている。
去年映画館で予告を見てから「クレしんで学園ミステリー出来るの!?」と驚きと不安とワクワクが同居していが、まさかの公開直前で延期。
そんな突然の延期から3ヶ月...何か都心ではまたコロナ感染爆発しているし、ドラえもんみたいに1年延期あるのでは!?と戦々恐々としていたが、無事に公開してくれた。ありがとう。
映画『クレヨンしんちゃん 花メキ!謎の天カス学園』を観たおっさんの私ですが、恥ずかしいぐらい映画館で号泣してしまった。マスクがびしょびしょである。
ドラマで泣きながらご飯を食べて味を聞かれたら「しょっぱい」って答えるシーンがある。今までそれは「涙の味」だと思っていたけど、実は「鼻水の味」だと知ったそんなクレしん映画の感想をネタバレありで感想を書いていきたい。
しんちゃんと風間くん
しんのすけと風間くんの友情にフォーカスしている本作。
しんちゃんから「お互いのホクロの数まで知り尽くした関係」と称される通り、しんちゃんと風間くんはかすかべ防衛隊メンバーの中でも何かと接点が多く、一番交友関係が深い。
そんなしんちゃんと風間くんは親友だが、性格や生い立ちは正反対である。
風間くんは私立小学校のお受験を控えており、英語塾を初め様々な習い事に通っているなど、幼稚園児にしてエリート。多分筆者より学力がある。
能力だけでなく、性格もエリートであり、周囲の期待に応えるため歳不相応に真面目で礼儀正しい。また、責任感と正義感が人一倍強いが、短気且つ融通が効かなかったり、本番に弱い性格故に空回りしてしまうことも多い。そしてマザコン。
そんな風間くんはしんちゃんと衝突してしまう事も少なくない。
筆者自身も「ルール厳守」な考え方なので、映画でしんちゃんと風間くんが衝突した時は風間くん側に肩入れしそうになったし、現実で「自由奔放」な性格の人なんて危なっかしいので近くにいて欲しくないと思うが、風間くんはそうは思ってない。しんのちゃんのことが表には中々出さないが好き過ぎる傾向にある。「ボクのともだちは心がエリートです」と言える関係。そんな青春が欲しかった…
しんちゃんと風間くん、親友だけど多分腐れ縁とかではなく、性格も進路も全然違ってこのまま成長していくと別々の道に行くと思うんだけど、それでもこの二人ならかすかべ防衛隊ならこれから先も自分たちの意思で一緒にいる事を選んで、肩を並べて立ってそうでその光景を垣間見る事が出来た本作は僕に効く。
「オラの心がエリートだゾ」
原作では43巻に収録されている有名なエピソードだが、アニメでは「ボクのともだちは心がエリートです」の一言はカットされており、その一言を解釈して再構築して映画化したのが本作ともいえる。
エピソードを紹介すると
風間くんはある日塾の仲間と歩いていると、うんこの被り物をしたしんのすけがやってきて(どうやって作ったのか)、いつも通り風間くんに対しておふざけを始める。しかし、塾の仲間にこんな奴と友達だと思われたくない風間くんは(流石にうんこの被り物はね)、しんのすけを冷たくあしらってしまう。
その後、翌日の塾でのテストに備え夜遅くまで勉強をしていた風間くんは、魔女っ子マリーちゃんのフィギュアを当てたくて夜食としてプリンを5つも食べてしまう。そのせいで風間くんはテスト中に激しい腹痛に襲われ、テストは下から数えた方が早い結果になってしまう。実力社会なので、仲良くしていた塾の仲間達からは冷たい態度を取られ、その上腹痛はさらに悪化し、みんなの前でウンコを漏らしてしまう。
雨の中、傘もささずに絶望していると、しんのすけとみさえに遭遇。風間くんの様子を察したみさえは野原家に連れて行き(偉い)、温かい風呂と着替えを用意する。温かいみさえとしんのすけに昨日、冷たい態度をとってしまったことを後悔した風間くんは、帰り際にしんのすけに謝り「明日、ドッチボールをしてくれる…?」と気まずそうに遊びに誘う。
しかし、しんのすけは「ヤダ!」と拒否。それを聞いた風間くんは深く落ち込むが、しんのすけは「オラ、サッカーがやりたいんだけど」といつもの調子で言う。
その言葉に涙を浮かべる風間くん。他愛もない会話でふざけ合いをする2人の姿でこの短いエピソードは締めくくられる。
そして原作漫画では「ボクのともだちは心がエリートです」と風間くんの一言が添えられる。
細かな好き
- みさえは登場時間こそ短かったものの、「子を心配し、応援する親の良さ」が前面に出ていて大変良かった。普段、どうしてもしんちゃんに対して怒り気味な事が多いが、それも愛があってこそ。しんちゃんが1週間不在になり、電話がかかってこない事に対して寂しいと涙を流すシーンとか大好き。裏のMVPです。青春とは? と聞かれて「あったなぁ」てしみじみするみさえさんに対して「今こそ青春」と輝くひろしも最高か。
- サスガくん大好き。後悔こそ青春も大好き。あんな告白までしておいて、サスガくんとチシオちゃんの絡みが全くなくて可哀想だな…と思ってたところに、エンディングのイラストで最高の描写があってニヤニヤが止まらん。サスガくん、カニばかり食べていたから、購買部での買い方が分からなくて困惑していた所をチシオちゃんが一緒に焼きそばパン買ってあげたんだろうな。青春じゃん…。スピンオフ作品作って欲しい。
- 舐めていたミステリー要素だったけど、思っていた以上にガッツリミステリーだった。犯人も意外性があったし、満足度が高い。
- 「マサオくんはマサオくんらしく」「ねねちゃんはねねちゃんらしく」「ボーちゃんは意外な側面もありつつボーちゃんらしく」それぞれが全く違った観点をもっているのに、同じ目的の為に一致団結する。それがかすかべ防衛隊なんだね。
- 本作は映画オリジナルの脇役たちも素晴らしい。普段は明るいけど周囲に見せないだけで強烈なコンプレックスとトラウマを抱えてるスポーツ少女や、勉強もスポーツもなんでもできるギャルとか、弱きを助ける鉄仮面番長(実はイケメン)とか、人間嫌いで森に住んでる野生児美少女とか、好き。
- ラストのマラソン。謎解きが終わり、これで終わりかなって思っていたらそこからが本番だった。筆者は風間くんの手紙のシーンから後はずっと号泣していた。
マラソンではスーパーエリートの風間くんにかすかべ防衛隊とチシオちゃんは苦戦を強いられるけど、今まで登場してきた学園のみんなの協力と応援により、苦難を乗り越えていく。桜が舞い散る時期に見たかった気もするけど、オリンピックの時期で丁度よかったと思う。コンプレックスを乗り越えたチシオちゃんの姿。笑えて泣ける。
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「頑張っている人を笑うやつはハゲワシに頭つつかれてほんとにハゲになればいい」名言。
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そして最後は素の風間くんとしんちゃんが互いに本音を語りながらゴールして、幕を閉じる。引き分けにならずにどっちかが勝ったのも最高だし、それを踏まえて「引き分け」になったのもいい。習い事漬けでエリートを目指す風間くんは自由奔放なしんちゃんに怒る事もあるけれど、実はしんちゃんのことが大好きで行く行くは離れ離れになることを覚悟しながらもずっと一緒にバカしたいと思っているって関係性。大丈夫だよ、風間くん。きっとしんちゃんなら小学校以降別々の進路になってもみんなをつなぎ留めてなんだかんだ大人になっても一緒になって、今回の事を思い出として語りあうと思う。そしてそんなかすかべ防衛隊を酒のつまみにして老後を過ごしたい僕。
いやもうホントに最高の青春映画だった。これに尽きる。
最後に
本作が29作目なので次が記念すべき30作目である。モチーフはニンジャらしい。
去年、今年とクレしん映画は最高なので来年も期待したいし、「クレしん映画は昔がよかった。近年は駄作」というおじさん方にも是非観て欲しい。そんな『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』である。