『リング』や『仄暗い水の底から』などで知られる中田秀夫監督。
そんな中田秀夫監督は今でもJホラー界の顔的存在だが、
「中田秀夫はJホラーを産み、そしてJホラーを終わらせたがっている」
と言われる程の評価が最悪だった作品がある。
それが今回取り上げる映画『劇場霊』
【監督】 中田秀夫 【脚本】 加藤淳也 三宅隆太 【出演者】 島崎遥香 足立梨花
予告で中田秀夫最高傑作と名高い『女優霊』を押し出してハードルを上げておいての『劇場霊』なので、そりゃ映画館でお金払って鑑賞したホラー映画マニアが落胆するのもよく分かる。シリーズ待望の新作ゲームが糞ソシャゲだった時の感覚だろう。
因みに企画に秋元康の名前があるのでクオリティがイマイチなのも仕方ないのかもしれない(失礼)
物語
映画冒頭、早速人形霊が女性を襲い掛かる所から映画が始まる。
ホラー映画でよくある怖さの根源を勿体ぶって中々全貌が掴めず、観客の想像力を煽り、恐怖を倍増させるとかそういうテクニックは一切ない。最初からクライマックスだ!!!!これが平成Jホラーの新境地。
娘たちを人形霊に殺されて発狂したおやじは人形霊をナタで壊し始める。
何度もナタを振りおろして手足を壊し、灯油をかけて火をつけようとしたところに、警官が現れ親父を拘束してしまう。
「放せ、その人形が殺したんだ」と訴えるおやじを、警官が連行していく
いや、手足だけじゃなくちゃんと顔までナタでボコボコしておけよ!
そしたらこの映画は冒頭3分ぐらいで完結してたよ!!!
そんな事言っても無意味。…舞台は20年後へ。
島崎遥香は売れな女優。
彼女は超有名な演出家・錦野豪太が開く新作舞台『鮮血の呼び声』という舞台劇のオーディションを受ける。
『鮮血の呼び声』とは中世のハンガリーに実在した女貴族・エリザベート夫人を描いた作品。エリザベートは、自分の若さを保つために少女を集めては、その生き血を浴びていたとされている。『劇場霊』そのままのストーリーである。
島崎遥香は無事に脇役である農民の娘の役を貰えた。
しかし、舞台稽古に冒頭で壊された呪いの人形が小道具として使われていた。
その夜、美術スタッフのエリコは「ちょぉぉだぁぁい」と人形に襲われ、死蝋状態になって死んでしまう。
そして舞台稽古で人形の首を飛ばした主演の女性も人形に呪われ、意識不明の重体。
ここまで被害が上がっているのにお金が回収出来ないからと中止にならならい舞台。
資本主義の負の側面。東京オリンピック五輪の先駆け存在。流石中田秀夫は未来を見る目がある。
島崎遥香は意識不明になった女性の代わりに主演となるが、演出家の枕営業を断ったため、冷たい対応をされる(このシーンが必要だったのか全然分からない。劇団のリアリティを出しているのか)
また演技稽古中、人形に睨め付けられたり、血がドバっと出る幻覚に見せられたりして発狂してしまい、役を降ろされてしまう。
それにしてもこの人形、別に演出家肝いりという訳でもなく、美術スタッフが買った奴なので「気になるんで人形替えて下さい」と言えばどうにかなりそうなものだが、そうはならない。もどかしい。
そしてニートになった島崎遥香は人形の過去を知るために冒頭のおっさんの家に行くことに。
そこで明かされる事実。
20年前に記録的な豪雨があった日、おっさんを迎えに車を出した長女は土砂崩れに巻き込まれ、車ごと土砂に埋まってしまう。雨はさらに2週間続き、長女の死体が見つかったのは3週間後。
遺体は見るにしのびなく、考えたおっさんは長女に似せた人形を作る。そして事件が起きたのは、長女の葬式前夜だった。人形が、2人の妹・真希と早織の命を奪ったのだ。
「若くて綺麗な身体、これからの未来、人生が羨ましかったのかも」というおっさんの言葉に「エリザベートと似ている」と島崎遥香は考える。
最後におっさんは「あれはもう私の娘なんかじゃない」とつぶやく。自分の娘ソックリの人形を作るおっさん、かなり気持ち悪い。
真実を知った島崎遥香は「駄目ー(棒)」と言って本番の舞台に乱入。
人形と新しく主演となった女性を引き離すが、呪いの事情なんて知らない現場は大混乱。観ていて滅茶苦茶気まずい雰囲気になってしまう。ここがこの映画で一番怖い。共感羞恥心をなめるな。
当たり前だが、島崎遥香は舞台を滅茶苦茶にしたので責められる。その時、空気を呼んだ人形霊が舞台の照明を点滅させる(グッチョブ)
そして今までコソコソ動いていた人形霊が気でも狂ったのか、映画の尺を気にしてたここから大ハッスル。
その劇場にいたあらゆる人間を「ちょうだい…ちょうだい…」と言いながら物理的に襲い掛かる。
今までかろうじて眠たいホラー映画として体裁を取り繕っていた本作が、ギャグ映画となる。
(C)2015「劇場霊」製作委員会
人形霊、警察官などは瞬殺するのに島崎遥香にはやたらもたつく。この人形、島崎遥香のファンなのかもしれない。
島崎遥香はおとりになって人形を舞台にひきつけ、中央の檻に入る。そのまま上に上がり、そこから人形霊にダイレクトアタック。そして最後は
「ちょうだいちょうだいって、あげないんだから!(棒)」と言いながら檻の中の小道具の剣山で人形の顔を刺して無事人形霊撃破。
人形霊弱すぎない?
劇場霊とは。
最後に
どのサイトを見ても圧倒的不評の本作。
中々擁護が難しい眠たい映画で、99分の映画と比較的短いのにそれでも我慢できずに2倍速で観たくなってしまう出来である。
ただ、島崎遥香ファンは楽しめると思う。
なぜなら島崎遥香がやたらカメラ目線してくるので、「ぱるると目が合った。俺だけを見ている」現象を映画で味わうことが出来るからだ。流石秋元康。