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「M-1グランプリ2021」感想。ライフ・イズ・ビューティフル

島田紳助M-1を創設した理由は「漫才師がやめるきっかけ作るため」だったのは有名だが、今回、50歳の錦鯉が優勝したことで「50の大人でも青春」というドラマが生まれた。

同時に売れないお笑い芸人に「もう少し俺も頑張ろう」という幻想を与えてしまったのではないか。

 

人生を賭けるに値するのは、夢だけだと思いませんか?

この名言が重くのしかかる。

 

やめるきっかけという最初の理由が完全に壊れ、売れない芸人の高齢化を心配してしまうそんな「M-1グランプリ2021」の感想を書いていきたい。

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モグライダー 637点  8位 

「頑張れないやつが神社で祈っても仕方ねえだろ!」

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審査員が7人体制に戻ってからの637点は歴代トップバッターの中で一番点数が高いという凄さ、最高の開幕だった「M-1グランプリ2021」

 

皆が知っている美川憲一の「さそり座の女」冒頭のいいえの部分に注目する着眼点の良さは順番が後半だったら最終決戦にいたかもしれない。そんな世界線の話を思わずしてしまう。

ともしげの滑舌で聞き取り辛いとか言う人いるが、これでも過去最高レベルで聞き取りやすかったよ。2022年は間違いなくモグライダー売れるでしょ。

 

2ランジャタイ 628点 10位

松本人志「なんかアレですよね、見る側の精神状態によりますね」「自分の体調を知るためにはいい漫才かなって」

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今大会で一番爪痕残したコンビ。

普段と変わらない形の漫才をM1という晴れ舞台で披露して、頭を抱える審査員のリアクションが期待通りだった事と、暫定ボックスでオール巨人ネタ出来ただけで勝ちである。

志らくが96点と高得点出しているけど、審査員全員低い点数の方がランジャタイ的にはおいしかったかもしれないが、ガチなので仕方ない。

「ランジャタイとは落語」とよく言うけど、全体的に慌ただしい中、情景描写や声帯模写が素晴らしいと思う。そりゃ志らくは高得点だわ。

 

今大会って、前大会でマヂカルラブリーが優勝したことで、漫才の形を変えてしまったんだと言われてきたけど、少なくともM-1ではまだまだ正統派が強いなと改めて思う。

 

3ゆにばーす 638点 6位

ランジャタイで荒らされた後なのにこの落ち着き。

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掴みは滅茶苦茶良いし、テクニックも凄いと思うけど、全体的に生々しい下ネタが続いて微妙に笑い辛い。あと、敗退の時の川瀬名人コメントの「風俗行ってやりますわ!」も中々。M-1という大会が、ゆにばーすの目指す方向と真逆にいっているような気がしてならない。ただ、「我が身を行く」という点ではランジャタイと同じだし、それが好きというファンも大勢いると思うので、このまま攻めていつかM-1優勝したら本当に伝説だと思う。

 

4ハライチ 636点 9位

ハライチがラジオリスナーからの人気投票で敗者復活戦勝ったというなら、アルピーの立場なさすぎるだろ!!!!!

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個人的には金属バットか男性ブランコでしたけどね。全治癒好き。

塙が言っていた「岩井は分かり辛い笑いをやりたがるし、最後にそれが出来て良かったんじゃない?」というコメント通りだと思う。優勝こそ出来なかったものの、やりたいことやって、M-1という呪いから解放出来て良かった。

自分たちがやりたいネタで爽やかにラストイヤーを締めるそんな卒業式。

 

金属バットか男性ブランコが勝ってたら勢いのまま最終候補に残ってそうだったのが、少し残念だが。

 

真空ジェシカ 638点 6位

個人的優勝は真空ジェシカ

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一発一発のワードセンス、着眼点の鋭いボケ攻撃、間を含めた構成など抜群だったと思う。

上沼恵美子真空ジェシカのネタを褒めながら「私がついていけていない、もっと笑いたかった」とコメントするのは正直だったと思うので、結果に異論はないです。

真空ジェシカ

川北「この中に一人だけ嘘つきがいます。誰か当ててください」

ガク「うん」

川北「日本人『ぼくは嘘つきじゃないです』韓国人『ぼくは嘘つきじゃないです』中国人『ぼくは嘘つきじゃないです』…さあ誰?」

ガク「偏見で答えさせようしてない?」

みたいなテレビでは難しいようなネタも滅茶苦茶面白いので、是非ライブとかも行って欲しい。

 

6オズワルド 665点 1位

誰もがオズワルド優勝だと思ったそんな一本目。

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最初は「あー、このネタか」と思ってけど、滅茶苦茶ネタが進化していてビックリした。

「これが友達0人か~」は繊細なネタだと思うけど、畠中の演技がうま過ぎて「これは友達0人だな!!」となるのは見事。

ランジャタイで場の空気が壊れて重たい感じがずっとあったけれど、真空ジェシカから少し温まり、オズワルドで爆発したので、後のコンビはやりやすそうだった。点数もインフレした。

 

ロングコートダディ 649点 4位

ワニから連想させてこのネタ完成させたって天才か?天才だ!!!

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肉うどんで丸亀製麺のCMでそう。

バリバリのコント師なのにこんなに漫才も出来るなんて……。

まさかの肉うどん天丼だし、しりとりの法則なのに、「肉うどん」の「ん」で終わっているのも面白い。

 

最後にマイクから離れたとこでネタ終わった事が気になる人多いのはどうしようもないと思うので、来年に期待。

 

8錦鯉 655点 2位

50歳になったら膝が痛くなる

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前半心配だったけれど、紙芝居あたりから畳み掛けるように面白くなっていった。

 

9インディアンス 655点 2位

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正直、インディアンスはあんまり好きじゃないけど、確かに去年とかと比べると面白くなってるな~と。

インディアンスのネタってどんどん脇道に逸れていって本筋が薄いから見終わった後、笑った割には印象が薄いことが多いのだが、今年は結構なワードセンスで良かったと思う。

 

10もも 645点 5位

「3年後優勝する顔」に対しての「来年優勝するんで」という解答。100点。

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容姿偏見ネタなので、「仮面ライダー」のアイコンの人や「プリキュア」のアイコンの人がマジギレしていて怖かったけど、平場でも使える「なんでやねん。○○顔やんけ!」フォーマットが強過ぎる。後は本当に共感できることと、時代に合わせることが出来たら滅茶苦茶強そうだし、「人を傷つけない笑い」という流行をぶっ壊す勢いでこのまま尖り続けても面白そう。

後、鉄道顔で中川兄、EXILE顔で上戸彩に画面が素早く変わったのスイッチャーさんがプロすぎる。

 

最終決戦

インディアンス 1票

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一日に二回のインディアンスは見ていて疲れる。

上沼恵美子がインディアンスの漫才や田渕を好きだと公言していたように1票を入れた。

 

錦鯉 5票 優勝

 

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「猿が森に逃げた!」「それでいいじゃねえか」

でホント笑ったし、まさかの錦鯉で伏線漫才を見るとこが出来るなんて予想もしていなかったので驚いた。

つかみの「どうせみんなこうなるんだよ」が50代でも夢が叶うという最高の伏線になるとは錦鯉も思っていなかったかもしれないが。

最終決戦で松本人志が投票したコンビが優勝したの、調べてみると2010年の笑い飯以来である。

 

オズワルド 1票

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スタンダードな漫才が好きなオール巨人なのに今まで微妙に点数が低かったオズワルドに1票入れたのは熱かった。

圧倒的にオズワルド優勝だと思われたけど、このネタはイマイチ笑いが少なかったし、伊藤もそれに気づいたのか後半は噛んだりして色々ボロボロだった。

ただネタ自体はABCお笑いグランプリで優勝した奴なのでクオリティは高いだろうし、そりゃM-1でもやるよって感じだ。

前のネタが受けすぎてハードルが上がった事や、直前の錦鯉が場の空気を壊したのかもしれないし、ネタ自体がM-1の独特な雰囲気にあってなかったのかもしれない。M-1は怖い。

 

最後に

最後、塙と富澤や周りが泣きながら、錦鯉がコンビ同士で抱き着いて終わったのは歴代のM-1でも最高の終わり方、誰しもが納得する終わり方だったのではないだろうか。

そして芸人の姥捨山と言われ続けてきたSMAがバイきんぐやザコシ、アキラ100%など精鋭部隊になったのも面白い。

終わり良ければ総て良し。大満足な「M-1グランプリ2021」だったし、今までの大会より「青春」を感じる事ができたし、「青春」に年齢は関係ないと知る事が出来た。予想外にハートフルな大会でしたね。

 

これは笑い飯の哲夫が言っていたことなのだが、

上沼恵美子はセンターマイクから離れて自分に近づいてきたコンビに高い点数をつける傾向があると。

確かに今回最高得点である98点を出したインディアンスとハライチは2組とも上沼恵美子に近づいたし、去年はマヂカルラブリーもそうだった。

上沼恵美子の点数=距離という法則を知っていると来年からの芸人たちの戦略も変わるかもしれない。オール巨人は怒るかもしれないが、オール巨人のマイナスより上沼恵美子のプラス幅の方が大きいので。

ぜひ、参考にして欲しい(自己責任で)