カプコンがようやくポール版バイオを「世界一金をかけた嫁自慢映像」だと気づいてくれただけで僕ぁ、嬉しいよ。
あらすじ
巨大複合企業「アンブレラ社」の拠点があるラクーンシティの孤児院で育ったクレア・レッドフィールドは、「アンブレラ社がある事故を起こし、そのせいで街に異変が起きている」という不可解な警告のメッセージを受け取る。不審に思いラクーンシティに戻ってきたクレアだったが、ラクーン市警に勤める兄クリスは、クレアから聞いたその話を単なる陰謀論だとあしらう。しかし、やがて2人は変わり果てた姿の住民の姿を目にし、アンブレラ社が秘密裏に人体実験を行っていたことを知る。
ゲームの映画化は、難しい。
個人的に好きなのは『サイレントヒル 』ぐらいで、『トゥームレイダー2』『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』『ストリートファイター』『アサシンクリード』『サイレン』などなど多くのゲーム映画は興行収入的に苦しく、変な趣味の愛好家しか好まれない作品ばかりである。そんな中で2002年から計6作が作られたミラ・ジョヴォヴィッチ主演でポール監督の実写映画『バイオハザード』はシリーズ累計興行収入が200億円を超える大成功ゲーム映画と言える。
しかし、このポール版バイオは、ゲームの一部設定や一部のキャラクターが登場するものの、中身は全くの別物。
確かに『1』はそこそこ面白かったし、『2』は『1』ほどではないが原作の『バイオハザード2』『バイオハザード3』をベースにした作品で感心した。
しかしラクーンシティが崩壊した『3』からは『マッドマックス』や『北斗の拳』のような世紀末になり、以降は廃墟と化した世界観で作品が展開されていくという映画独自の色が強まっていく。
こんな荒廃した政府や社会も何もない地球でアンブレラ社は戦闘機乗り回してウイルスの研究するの、一体何が目的なの……!?なんなのそのモチベーション維持の仕方……自己啓発本出そう……と思わずにはいられない。
さらに主人公のアリスは超能力を手に入れたり、失くしたりして忙しい。
このように『3』以降は原作レイプがおそろしくカオスになっていき、シリーズ全部見ても訳が分からんという感想になってしまう。本当に訳が分からん。
さすがに制作陣も思うことがあったのだろう。バイオハザードのプロデューサーである小林さんが「ポール監督のシリーズが完結し、今度はバイオとホラーを大切にしてくれるゲーム好きの監督に撮ってもらいたかった」
と言っていたり
プロデューサーのジェームズ・ハリスも、ゲームのファンのために映画化したと言う。
「僕らは、今作の舞台を最初のゲームの設定だった1998年にすること、1作目と2作目を併せてゲームのプロットをかなり忠実に追っていくこと、そしてキャラクターたちも映画スクリーン上で初めてきちんと描くことを決めた。それこそ、ファンが望んでいた、今までにない『バイオハザード』映画なんだ。」とファンに向けてメッセージを送ってくれた。
原作再現。
原作再現こそが本作、映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ 』のテーマだろう。
ポール以外の制作陣が「あれ、この映画バイオハザードもはや関係なくね?」と気づいていたことを知れただけでも僕は嬉しい。
そんな仕切り直しでもある本作の監督はヨハネス・ロバーツ。
ほぼ全編が水中で撮影された海洋パニック・スリラー映画『海底47m』がそこそこヒットしたり、イギリスSFホラー映画『ストレージ24』のアメリカ興行収入の額はわずか72ドル(7,200円)で逆に話題になったりした監督だ。うーん。
僕も『ストレンジャーズ 地獄からの訪問者』と『海底47m』を観たが、中身が何もない(本当にない)ストーリーに不意打ちビックリ系の恐怖演出の連続という「B級」ホラー映画の申し子みたいな内容である。うーーーーーーーーーーん。
もっと他にいない!?あの超人気IPバイオハザードの監督だよ!?という気持ち。
ただ決まってしまった事に文句を言っても仕方ない、ファンとして座して待つのみ。
という訳で公開初日。観た。
youtubeでゲームのムービー集詰め合わせを見ているかのような気持ちになった。
基本的に原作の脚色をせず要素だけをぶち込む。
ナイフで扉を開けたり、伝説的な言葉「かゆうま(かゆい うま)」の再現や、有名な1のゾンビが振り返るシーンや、レオンのロケットランチャーなど。ゲームで見たことあるシーンを脚色せずドン!!と再現する。この連続だ。
ただ、『1』と『2』の物語やキャラクター、要素を再現しつつ、わずか107分の上映時間に詰め込んだ結果、中盤あたりから完全に急ぎ足。リッカーの出番はすぐ終わり、リサはファンサービス以外に出番の必要性も感じられないまま普通にバイバイ置き去りにする(連れて行ってあげて!)ラスボスのGともショボイアクションでの戦闘で終わり。そして爆風含めて自動敵味方識別機能があるロケットランチャー。
最後らへんになると怖くなくなるのはある意味原作再現しているのかもしれないが。
本作はシーンの原作再現頑張っている割にキャラクターは独自の脚色が強い。
他所でヘマをしてラクーンシティに左遷されたヘタレ新人のレオン。なぜが列車の運転が出来る。ハワイで習ったのかもしれない。
田舎から出たいだけの小物。人間味があり、優しい。金で仲間は裏切るけど、子供は絶対に殺さない男ウェスカー。こいつ続編でサングラス掛けて大物感出してももう手遅れじゃない??個人的にはウェスカーがジルと別れる際の走り方がゲームに忠実にゲーム走りしてたのか馬鹿映画って感じで好きだが。
見た目が大幅に変わって最後の最後まで「誰!?」となったジル。
狭い空間で仲間はあっけなく殺されて、自分もゾンビの群れに襲われているのに一人で二時間ぐらい粘っていたゴリラことクリス。原作通りの強さだけど、なんだお前。
また、おそらく予算もなくコロナの影響もあったのだろうロケーションとエキストラ問題に対してラクーンシティの設定を「大企業アンブレラ社は移転を決めたたため、町に残ったのは僅かな従業員と引っ越しができない貧しい人々だけ」にして解決。
その結果、『2』を再現しつつ町には全然ゾンビがいない。一体一体のゾンビの造形は不気味で良いのに町でのパニック要素は完全に消えている。何度も何度も映される柵にかぶりついているゾンビ達ぐらいである。
ゾンビの種類も少ない。ヨーンやプラント42とかも出て欲しかった。ヨハネス・ロバーツ監督はバイオは好きだけどゾンビに興味がないのかもしれない。全体的にゾンビを流し気味。
主要撮影期間も2020年10月17日から2020年12月24日で完了というほぼ2か月と恐ろしく短い本作。
ダラダラ撮影してないのはいいけど、ウィリアム・バーキンが車で逃げようとする運転シーンで演じるニール・マクドノーのよくわからない表情の顔だけをダラダラ撮影していたり、もうすこし撮り方とカットを考えて撮影したらいいのでは!?と思うってしまうことが多い。スペンサ―邸での真っ暗な中でゾンビの顔が何度も出てくるところとか所々良かったシーンもあるが(目はチカチカする)
本作の魅力はセットの再現度だろう。
タイトル通り「ラクーンシティへ、ようこそ」を感じることが出来る。
ラクーンシティ警察署やスペンサー邸の再現度の他にも、あちこちに散りばめられたイースターエッグや小ネタなど「見た事ある!見た事ある!」となる感覚はバイオハザードのアトラクションに参加したような気持ちになる。映画の内容的もUSJやディズニーランドにある映像系アトラクションを楽しみ感覚で鑑賞するのが一番楽しめるかもしれない。
最後に
ゲームをそのまま再現しても映画としては微妙。
ピアノの旋律で隠し扉が開くのゲームだからギリギリなのであって、映画でやられると「なんだこれ!」となってしまうし、ゲーム知らない人はどんな気持ちで鑑賞するのだろうと思ってしまう。馬鹿映画。
ポール版バイオでそういうギミック採用せず「サイコロステーキレーザー」を使ったのは映画映えもインパクトもあって良い判断だったと確信する。
あと、メインの4人が死なないのは分かるが、明らかに死ぬ為に出てきたおっさんがどいつこいつもセクハラ発言や行為をする最低野郎で、デブの白人なのが今のアメリカを象徴してたなと。
アメリカでは評判が悪いだけでなく、興行収入にも苦戦している本作。
ゲームの映画化は、難しいなと改めて感じてしまう。
ゲーム要素もありつつ映画としても面白い。
そのハードルの高さ。
ヒットしているゲーム映画を見ていると名探偵ピカチュウやソニックなど大人気で可愛いキャラクターモノなのでバイオも大人気クソデカおばさんことマザー・ミランダが主人公の映画作ろう!
それはそれとして最後に唐突に出てきた牛が吹っ飛ぶのだけ笑ってしまったんだけど、あれ何。