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実写版 『テニスの王子様』感想。中学生の中にどう考えてもおっさんがいる

キャラソンにミュージカル、乙女ゲームや作者のライブなどあらゆるメディアミックスで成功しているテニスの王子様ですら実写映画はファンの間で半ば黒歴史扱いされているという噂を聞き、GWで暇なのでDVD買って鑑賞した。今回はその感想をネタバレありで書いていきたい。

【公開日】2006年5月13日 【監督】アベユーイチ

 

本郷奏多演じる越前リョーマ

本郷奏多といえば今では『キングダム』や『ダイナー』でもそうだったように「クソガキ感」のある役が最高に巧く、邪悪な笑顔をさせたら右に出るものがいない。

日本でゲースロがリメイクされたら彼以外がジョフリー・バラシオンを演じるなんて想像できないほど人を見下した態度、不快なしゃべり方、顔を歪めて笑う姿が最高。神が創造できる上で天上天下唯一無二で三下のクズ役が似合う。そんな彼も本作ではまだ14歳。DVD特典の冊子に着メロはHYDEのSEASON'S CALLと書いてあって、『Blood+』でやたらセンス良いアニメーションOPだった奴やん……好き…となる。

 

今ではyoutuberとして「キャベツ太郎はキャベツとして食べる。信頼している」とか言いながらキャベツ太郎を食べる本郷奏多だが、14歳の彼は可愛さと生意気さとカッコよさがあり、成長途中のまだまだ細い首や手足、無愛想でありながらたまに見せる子供らしい可愛さ。幼くもあり大人になりつつもある、揺れのある声。理想的なリョーマだろう。

 

 

青学

冒頭で異様に長い飛行機の着陸シーンを見せられて不安になるが、

その後の電車の中から物語はスタートする。

本作のオリジナルヒロインをテニプリ世界によくいるラケットを持って荒れ狂う野生不良テニス部から救うリョーマ

怒った野生不良テニス部が「次で降りろ」という展開になり、これ某バットマン映画みたいに駅でボコボコにされちゃうんじゃないか?と心配しているとなぜかテニスコートに移動しており、テニスで不良テニス部をボコボコにしてリョーマの「まだまだだね」とお決りの台詞と共にタイトル文字が現れるという完璧な掴みである。確かにビーダマン世界ならどんな時でも勝負はビーダマン。ハイパーヨーヨー世界ならどんな時もハイパーヨーヨーで勝負するようにテニプリならどんな時でもテニス勝負なのは道理である。

 

そこからは原作でいう関東大会氷帝学園戦まで展開していく。

本作のリョーマはなかなか青学メンバーに馴染めない。河村の寿司屋でみんなワイワイ祝勝会しているのにボッチ体質のリョーマは店の中に入れない所とか陰気あるある過ぎて辛い。

 

そんなリョーマ以外の青学レギュラー陣はテニミュ二代目のメンバーで固められているみたいで違和感はあまりない。ただ、僕の中で大石秀一郎はあの丸々として髪型なので、本作の普通に髪が伸びていている彼は大石か河村か桃城か誰なのか試合が開始するまで分からなかった。

ご飯を食べないリョーマに対してやたら心配したり、優しい中学生達である。

 

そして手塚。

正体が人間の記憶を書き換えるSPECの持ち主であり、真の黒幕になる前の城田流。この時点でまるで中学生には見えないが、流石に本編でもネタにされている。普段はクールだけど、河村の寿司屋で巻物を食べる時にちょっと笑っているのが可愛い。よっぽど美味しかったのだろう。手塚にすら笑顔をこぼさせる寿司。やはり寿司。

 

リョーマは手塚に「青学の柱になれ」と言われるが、原作とは違い「ふざけるな!」とリョーマが反論し、それ以降の練習を欠席。世界合宿に参加するために関東大会にも参加しない意向をリョーマはしめすが…という展開。メインは個人プレーに走っていたリョーマが「青学の柱」として青学のチームの一員として目覚め成長していく物語。2時間の映画としてその軸がブレないので迷子にならず見やすい。

 

そして本作最大の見どころ、氷帝学園

 

氷帝

青学VS氷帝。ここから本格的なテニス試合。

もちろんテニスの王子様なので、ガットが破れたり、ボールが消えたり、ボールから火が吹いたり、重力無視の動きするのは当たり前。白鯨や手塚ゾーン、零式ドロップショットの演出も気概を感じる。

実写版だからといってリアルテニスにはならない。ワイヤーアクションとCGの重ね技の画がシュールだけど味わいもある。

あと、個人の試合結果が原作とは違うのも見ていてワクワクするところ。

 

そして跡部様。

ホクロもないし、懐かしのキムタクヘアーをしている跡部様。

 

跡部様が送迎の車から降りると周りには大勢の雌猫たち.。

それを氷帝レギュラー陣が、跡部様の盾のように歩く姿が面白いし

跡部様が1人でランニングしていると、後ろから200人の氷帝部員が合流してくるシーンもズルい。

そして試合前には氷帝コールをクールに煽る。跡部様が指差すとそこいる雌猫が次々にスタンディングオベーションしていく姿は見もの。原作とはまた違ったスター。

 

そして本作最大の賛否両論ポイントである日吉若だけ存在まるごとカットされた代わりに登場するのが映画オリジナルキャラ、檜垣。

↑全国中学テニス選手権と書いてあるのにどう見てもおっさんである。

 

この檜垣は青学を暴力事件で退学し、南米にテニス留学した後に関東大会の為に氷帝学園に雇われた存在。中学生とは。高校生家族のバレーボール編みたいな存在だろう。

 

この檜垣はガットを破る程のパワーや、雨を降らしたり空を暗くする天候を操る能力を持っているがそこから繰り出されるのが執拗なまでにリョーマの右膝にボールを当てるという大変地味で陰湿な技。

 

そして最期、全国大会の猛者たちが登場するのだが、

アップで映されても、まじで誰?誰?誰?誰?となるのでそこまでこの映画を観て欲しい。

 

 

最後に

「棒気味な演技&安っぽいアクション&読める展開」の三拍子なのだが、リョーマの成長物語だと思うと意外と面白いと思う。ただ、ファンが歪な顔をするのも納得できるので、『テニスの王子様』に対して知識はあるけど、そこまで思い入れがない人は楽しめると思う。暇なGW。是非、この映画を観ることをオススメするよ。

 

(C)許斐剛・TK WORKS/集英社 (C)「テニスの王子様」実写映画製作委員会2006