前作、復讐者スカーの感想で
エンヴィー、グラトニー、スロウス、プライド、キングブラッドレイ、お父様が健在の状態なんだけど、後半でこれ解決するのか!?終わりまでやれるのか!?と心配になる。そしてあんなにハマり役の山田演じるキンブリーは回想だけなのか!?
恐らく後編は未だかつて見たこともないほどのソードマスターヤマト展開になると思う。
実際に観て分かった。コミックス13〜27巻の内容を消化するのは原作RTAを極めても無理だったことに。
1作目でも原作RTAしつつ、1本の映画になるように大泉洋やハクロ将軍大幅パワーアップからの映画オリジナル展開で〆たが、そこが原作ファンには不評でもあった。
制作陣も流石に反省したのか、2作目である前作『復讐者スカー』から原作のストーリーを再構成しながらも大きな改変することなく、RTAのスピードでグルングルン進んでいく手法を選んだ。そんな中でも『復讐者スカー』はタイトル通りスカーを物語の軸とし、「復讐の連鎖」をテーマに描いていたのでギリギリ映画として成立していたが、本作では軸がないのでまじで「どうやったら映画として面白くなるのか」を放棄したようにしか見えない原作の切り貼り、ファスト映画、ソードマスターヤマト展開のまま詰め込むだけ詰め込むけど、尺が足りてない総集編みたいになってる。
ここからはネタバレありで感想を書いていくよ
イタリアロケの予定だったが、コロナの影響でとん挫。
代わりに街も機関車も含めて全編ほぼグリーンバックでの撮影に。決して多くない予算がCGで飛んだのも想像に難しくない本作だが、見ていて本当に目立つ低予算感。
冒頭、ホーエンハイムとイズミ師匠の邂逅が終わると前作の続きであるグラトニーの腹の中から始まるが、コスプレ感強い役者陣の見た目に、CGまるかわりの背景。そこに低品質クオリティによる巨大なトカゲになったエンヴィー戦。その後の
完結編
最後の錬成
のタイトルロゴが低予算感凄くてここだけでも見どころ。
なにもかも酷くて「この映画はこのぐらいのレベル」が冒頭ですべて分かるので、ある意味その後は安心して観れる。
- グリード周り
デビルズネストのグリードは総じてカットされた実写版だが、完結編において初登場。実写版ではエド達の知らない所で過去にお父様に反抗して消滅させられたが、リンの中に入れられて復活。そのまま速攻でホムンクルス組と縁切り。それ自体はいいのだが、原作と違って積み重ねが皆無の状態で、終盤の別れの展開は原作ベースなのが面白過ぎる。
グリード「仲間が欲しかっただけかもなぁ!」
僕「いや、お前のことよく知らんし」
グリード「遅れてきた反抗期だよ!」
僕「いや、シーンが足りなさ過ぎてただの反抗期に見えるぞ」
原作だと感動出来るシーンも映画だと「なになになになに」となるので積み重ねの大事さを知る映画。
-
兄者の研究を読み解くメイ
エド「皆、バラバラで当たり前だ!」
スカー「これには裏がある!」
メイ「バラバラ…?そうか!バラバラにするヨ!」
メイ「裏…?そうか!裏返しにするヨ!」
捜査一課長で奥さんとの日常会話の中で事件解決へのヒントを毎回得る大岩純一か。
- 突然フェードアウトするレイヴン中将
オリヴィエに地位を奪われたのは分かるが、それまでちょくちょく登場してたのに死ぬシーンすらなくフェードアウト。
あの大和田伸也なのにやたら大根演技で逆に怖くなったけど、背景グリーンバックという何もない空間での演技なので難しかったのかもしれない。
- キンブリー未登場
過去編で「素晴らしい!」とか大はしゃぎしてたキンブリーが「過去編で異様にテンション高い人」で終わってしまった。山田裕貴が滅茶苦茶似合っていただけに残念。個人的に「怨嗟の声など私にとっては子守歌に等しい!!!」と言いながら自分の信念を曲げようとしたプライドに内部から邪魔したキンブリーの退場の仕方、魂の暴風雨の果てへと立ち去り消えていく所がハガレンの中でも屈指に好きなシーンだから一切なかったのが残念。
- ブリッグズ
ドラクマ軍は強い……こちらもただでは済まない。そんなドラクマ軍との戦争だぁぁぁぁぁ→次のシーンでオリヴィエ・ミラ・アームストロング少将がセントラルシティ入り。部下もセントラルシティに。えっドラクマ軍は……
- プライドに乗っ取られアル登場
さっきまでホーエンハイムと再会していたアルがいつの間にかプライドに乗っ取られエド達に襲い掛かる。ここまじで脈略なさ過ぎてビビる。この映画で一番下手な繋ぎだと思う。そしてそのまま最終決戦、約束の日へ。
- 大佐の復讐
映画の1作目でヒューズ中佐をエンヴィーが殺したって明かされており、そこで大佐の復讐の火炎放射器は完遂しているので、今更大佐の闇落ち話されてもなぁと。
ラスト、一人落ち込み思い悩む大佐に中尉が「目を治す方法を一緒に探しましょう。それまで私があなたの目になります」と言って明るいところへ連れ出す終わり方、失明しても大佐は前向きなんだよ!と怒るファンもいるだろうし賛否両論あるだろうけど、個人的には好き。
- 気のせいかもしれないが、アレックス・ルイ・アームストロング の腋毛黒くなかった?
- 秒で死ぬスロウス
- 秒で死ぬエンヴィー
- 秒で死ぬグラトニー
- 秒で死ぬプライド
- キング・ブラッドレイ
「なめるなよ、あれは私が選んだ女だ。私とあれの間に余計な遺言など要らぬ」の台詞なかったのは寂しい。舘ひろしは「とにかく私の理解を超えた作品。台本を読みましたが、五里霧中で……。ストーリーを全く理解できないまま撮影に入り、そのまま終わってしまいました」と告白して叩かれてたけど、こんな脚本読んでも分からないのも当然だわった話。原作まで読んだ舘ひろしは偉いよ(上から目線)
- 「誰も俺たちに『諦めろ』って言わなかった」
これも1で大佐が賢者の石を探すエルリック兄弟に「いい加減にしろ」って言ってたの思い出して、笑いそうになる。原作があまりにも隙が無く完成している物語だから全体的に1のオリジナル要素が遅効性の毒になっているよね。
最後に
興行収入的にはかなり厳しいことになってる本作。2,3作目合わせて1作目に届かなさそう。評判的には1作目より良いんだけど、1度失った信頼を取り戻すのは難しい。
栗山千明様も山田涼介も良かったのだが、コロナの影響か最後の決戦も人が少ないのがさみしい。許せないよコロナ。背景が浮いていて画面に1、2人しかいないせいで全体的にteams会議っぽい。
それにしても実写版シリーズ3作とも大絶賛して楽しんでいる荒川弘先生はリアル邦キチ疑惑ある。