社会の独房から

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タローマンに会いに「展覧会 岡本太郎」に行ってきた感想

「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」をご存知だろうか。

太陽の塔(若い太陽の塔)をモチーフとした巨大ヒーロー「タローマン」が、「奇獣」と呼ばれる怪獣となった岡本太郎作品と戦う特撮ヒーロー番組。円谷プロも取材協力している。

www.nhk.jp

 

1970年代に放送されたのだが、「展覧会 岡本太郎」の開幕と合わせてNHKのEテレ1で再放送している。youtubeでも見ることが出来る。

www.youtube.com

 

1970年代は僕の生まれる前であり、浅学なのでそういった特撮番組があることをしらなかった訳だが、岡本太郎による生み出されたタローマンと奇獣があまりにも魅力的でハマってしまった。

母親に確認すると「懐かしいわね」という回答があり、タローマンの実在性を確認することもできた。

母親のお気に入りは「真剣に、命をがけて遊べ」の回。

「タローマンは遊びのような趣味を許さない」というメッセージに感銘され、友達たちと命懸けでだるまさんがころんだを遊んでいたらしい。イカゲームの先取りである。

 

 

僕と岡本太郎の接点は万博記念公園だろう。

関西の映画ファンならお世話になる事が多いエキスポシティにある109の映画館。

僕はモノレールから出た後に見える太陽の塔を遠くから眺めるのが好きだった。

わざわざ

他にはない、リアルなサウンドが

あなたを包み込みます。

ほら、ここから……

ここからも……

そしてここから……

さらに針が落ちる小さな音、\ピィィィィン/(デカい音)

ジェットエンジンの大轟音も\ヴェゥァァァアアゥェゥェァアアアァン/(クソデカい音)

それではこれより、現実を超える驚きの感動を

お楽しみください……IMAX!で皆さんご存知だろうIMAX画面で映画を観るなんて超大作なので期待で鼓動がはやまるのを感じながら太陽の塔を見る。昔は「税金でわけのわからないモノをつくるな」と叩かれていたこともあったらしいが、関西映画ファンたちの聖地のシンボルになるとは誰も思わなかっただろうな。

 

 

太陽の塔に心を掴まれている僕。そんな太陽の塔モチーフのタローマンを好きになるのは必然である。

 

なんと!当時の撮影に使われた貴重なタローマンも「展覧会 岡本太郎」にあるらしい。

 

行くしかないなと思った。

回顧展って大体東京スタートで地方を回る順なのだが、流石大阪に所縁のある岡本太郎。大阪スタートである。

場所は大阪中之島美術館。ちなみに映像以外は全て写真撮影OKでした。

 

 

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大阪中之島美術館は名物である宇宙猫で人々を出迎えてくれる。二度目の梅雨もどこかに消えたのか猛烈な炎天下。アクセス方法は多いけど、どの最寄り駅からも微妙に遠くて10分ぐらい歩くことになる中之島美術館。宇宙猫もどこか暑そうである。

 

 

 

受付の前には息を切らせて「ぜぇぜぇ」言っているようにしか見えない太陽の塔くんがいる。「展覧会 岡本太郎」が始まって最初の日曜日なので流石に人は多め。ただ、人数制限をしているのでそこまで邪魔になることも少ないと思う。

 

 

 

中に入ると「傷ましき腕」など力強く、強烈な作品たちに釘付けになる。ここからは奇獣を見ていこう。

 

 

 

まずは、記念すべき第一話に登場する奇獣「森の掟」。

人類の自然破壊に怒って出現し、タローマンと東京で対峙することになる。

でたらめな行動対決になるのだが、タローマンは「芸術(人生)はいつでも行き詰まっている。 行き詰まっているからこそ、ひらける。そう岡本太郎も言っていた!」ことを思い出し、無事に「森の掟」を倒す。

「人はでたらめをやろうとしてもそれはどこかで見たようなものになってしまう」

それはまるでどこかで見た特撮空間になってしまうタローマンの映像その物。しかしその先のひらけた芸術こそタローマンかもしれないし、そんなことないかもしれない。知らない。

 

 

 

奇獣「歓喜」。別名梵鐘「歓喜の鐘」

本物は愛知県名古屋市北区にあるので本物ではない。特撮ではタローマンに棘を抜かれ(変な汁も出る)て太鼓のように叩かれるという結構グロい攻撃をされる。そんな自由なタローマンの行動を見ていたミュージシャンが「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ 。そう岡本太郎も言っていた!」ことを知るシーンはハンカチ必須でしたね。

 

 

 

奇獣「未来を見た」
人間の前に出現し、手にした機械によって絶望的な未来や子供の読んでいた漫画のオチを見せて楽しみや気力を奪い、無気力人間を作り出していった。攻撃を予測出来るので攻撃を避けることも出来る強敵である。しかし、タローマンの予測不能、予知できないでたらめなさに混乱し、瞬殺される。

この奇獣が出る「一度死んだ人間になれ」回はリアルタイムで見ていたうちの母も隊員がいきなり第四の壁を超えて「テレビの前の君も、人の評判なんて気にするんじゃないぞ」と話しかけてきた時はビックリしたが、今でも心を支えている大事な台詞だと言っていた。

名言はいつまでも人の心を明るくする。

「間違いないものが間違いない結果を出したところで退屈であるに過ぎないのだ。そう岡本太郎も言っている!」

 

 

 

奇獣「駄々っ子」
同じ事をしたくない、パターン化を何より嫌う岡本太郎を反映するように意地でも負けようとするタローマンに当時の視聴者はハラハラしたことだろう。時代を超え僕もハラハラした。そしてタローマン2号の登場とタローマンの復活に狂気を見る。

「同じことを繰り返すくらいなら死んでしまえ!」

 

 

↑うまく写真取れなかった。2枚目の左上が「疾走する眼」

 

奇獣「疾走する眼」

絵画の「疾走する眼」は92年発表で何故70年代のタローマンに出てくるの?と思うかもしれなが、でたらめな事が起きるのがタローマン。製作現場で摩訶不思議な方が起きても不思議ではない。ある意味作品通りである。リアルタイムで見ていた母が一番好きだった回。僕も好き。これが親子。

 

 

タローマン、僕は全話まで見れていないが岡本太郎展を見ていると、奇獣に出てきそうな作品が多いなと思った。というか岡本太郎と特撮の親和性が高すぎる。

 

 

↑タローマンの可愛いマスコットでもいけそうな四天王。

 

 

 

↑リアル岡本太郎像はビックリする。

 

 

 

ラスボスはやはり「明日の神話」だろう。
描かれているのは原爆が炸裂する悲劇の瞬間。

しかし、人は残酷な惨劇さえも誇らかに乗り越えることができる、そしてその先にこそ『明日の神話』が生まれるのだ、という岡本太郎の強いメッセージが込められているそうだ。真ん中のコイツ以外にも交響詩篇エウレカセブンに出てきそうなモンスターも周りには描かれていて見ていて飲み込まれる感覚になる、凄い作品だった。ラスボス候補、あとは王道の「太陽の塔」か。

 

 

 

そしてタローマン。

実はタローマンは「展覧会 岡本太郎」のチケットがなくても展覧会には別の1階に置いてあるので見たり、写真を撮る事が出来る。お金がない人でも誰でも実物のタローマンに会うことが出来るぞ!!!

 

 

「展覧会 岡本太郎」がなければタローマンの再放送を見る機会はなかったし、タローマンがなければ「展覧会 岡本太郎」に行くことはなかっただろう。タローマンの再放送を決めてくれた全ての関係者に感謝。そして当時タローマンの企画にOKを出してくれた岡本太郎に感謝。*1

 

 

最後に

「展覧会 岡本太郎」を後にした僕はスパイスカリー大陸 / 芥川珈琲で上手いスパイスカレーを食べる。

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ただラッシーを盛大にこぼしてしまい、店員さんに申し訳ない気持ちでカレーを食べる。申し訳ない気持ちで胸が一杯になり味は分からなかった。勇気があればまた行こう。

 

 

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「展覧会 岡本太郎」の戦利品。

ついでに梅田でやっている『鬼滅の刃』吾峠呼世晴原画展に行こうかと思ったけど、行ったら滅茶苦茶混んでいて、当日チケットは売り切れていたので断念。『鬼滅の刃』はまだこんなに人気あったんだなぁと思いつつ、諦める。「ぼくは口が裂けても、アキラメロなどとは言わない。そう岡本太郎も言っていた!」

しかし、諦めなければならない時もある。それを知る。

 

 

 

*1:万に一つでもありえないと思いますが、この記事読んで勘違いされた方いらっしゃいましたら、本当にすいません。