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【ネタバレ】映画『ジュラシック・ワールド3/新たなる支配者』感想。恐竜と人類の共生のテーマは無理だった。

前作の最後で広げた大きすぎる風呂敷「恐竜と人類の共存とそれに付随するトラブル、そしてその問題に対する解決策もしくは絶望」を前作から4年も待ち望んでいたのに、それが何も解決しないどころか蚊帳の外で、巨大イナゴワールド/新たなる支配者になるとは思わんやん。

 

絶滅したはずの恐竜が現在の時代に蘇ったら…。そんな「もしも」を実現させた映画『ジュラシック・パーク』(1993)からおよそ30年。

世界累計興行収入は5000億円にものぼり、まさに歴史の転換点となったジュラシックシリーズのフィナーレとなる『ジュラシック・ワールド3/新たなる支配者』

ジュラシック・ワールド」シリーズの主演クリス・プラットブライス・ダラス・ハワードに加え、「ジュラシック・パーク」初期3作で中心となったサム・ニールローラ・ダーンジェフ・ゴールドブラムが演じる3人の博士もカムバックすることでも話題になった。

 

 

 

前作、邦題では『炎の王国』だけど原題ではFallen Kingdom、直訳すると堕ちた王国。予告では島が火山で滅び、恐竜たちの王国が崩壊という意味にミスリードさせながらも、本当は恐竜たちが世界中に解き放たれ、人間が頂点に君臨する世界が崩壊し、パークからワールドにタイトルを変えた意味が判明する最高のラストからの本作である。

 

恐竜と人類の共生。

恐竜たちを世界に放ったオーウェンとその仲間達がその罪と対峙しながらどう向き合っていくのか、恐竜と人類の共生の話にどこまで食い込んでくるのか、と期待してたらメインは「悪の製薬会社の陰謀潰し」である。最終的には世界で暴れる恐竜パニックですらなく、今までどおりの狭い箱庭での恐竜パニック映画になる。

 

一応、最後にとってつけたように「地球という惑星の中で人類よりも恐竜のほうがはるかに長い時代を生きてきた。互いを尊敬し合えば心が通じ合い、人類と恐竜は共存できる」というメッセージで終わる。

しかし、作中で登場人物たちと恐竜が心通じ合っているシーンが少ない&人が恐竜に喰われるシーン&人のエゴで生物兵器化する恐竜のシーンが多すぎて「いや、人類と恐竜の共存無理ですわ!?」と心の中のお嬢様が叫んでしまった。

基本的に肉食恐竜との関係性がオーウェン&ブルー以外に扱えてなくて「好きに戦え」状態のままである。まぁ、お互い好きにやろうぜも一つの答えなのかもしれないが。

 

 

そして巨大イナゴ。

まさかここまでイナゴが注目されるとは誰が思っただろうか。

「いや、よくよく考えると人類と恐竜の共存無理ですわ!?」と心の中のお嬢様が叫んでしまった制作陣が打った手が「人類からの好感度が恐ろしく低く、恐竜より気持ち悪い生物を出してアンリマユ状態にして誤魔化す」である。結果、人類のエゴによって誕生した経緯は同じなのにイナゴは遺伝子組み換えを強制し、恐竜だけはそのままというオチである。人類からしたらどっちも脅威だろうし、せめて恐竜も単独生殖できないようにするとかあるだろ。イナゴ差別。

 

確かに、対立している関係性でも 「共通の敵」を作る事で仲良くなる心理はあるし、物語でよく利用される。第3の敵が突如出てきてそれを国の壁や人種の壁を越えて協力しながら倒すのって完結編あるあるである。

しかし、本作では別にイナゴの脅威に対して恐竜たちと協力するわけではない。

イナゴが作物を食い荒らすことで大規模な飢餓が起きる→それを何とかしないとダメ!がメインの流れで、横からお腹空かせた恐竜が襲ってくるだけのストーリーのオチが「恐竜と人類は共存できるはず」と言われても。

オーウェン&ブルーの関係性がシリーズの見どころだったのに本作ではブルーの活躍もほぼなし。 ブルーが娘(息子?)さらわれて半狂乱でオーウェンの所に「なんとかして!!」と来たところはオーウェンに対する熱い信頼を感じて好きだったけど、それならそれで娘(息子?)であるベータと人類側がもっと協力しているシーンあればもっと印象が違うかったんじゃないかな。

というか事情説明したらクローン少女を拉致しなくても協力してくれただろ。

意識改革が大事なのは分かる。しかし、精神論にしか聞こえないのが残念。

 

細かな所

 

  • 7人パーティは多すぎる

ドラクエとかで4人目以降が馬車行きになるの納得できなかったけど、本作見れば理由が分かる。7人は一緒に行動するには多すぎる。

しかも、本作の一番ダメな所であるパーティメンバーが誰も恐竜に喰われないので緊張感が何もない。

 

グランド博士とかが死なないのは分かるが、それならパイロット女性とか、製薬会社を裏切った男性とか(というかコイツが黒幕かと思った)ギガノトサウルスに喰われて死なないとダメだろ!!

仲間が多くて尺をとっているせいでヴィラン側の人間が喰われるシーンも少なく、製薬会社のボスだけじゃなくて黒い制服きた警備責任者みたいな奴も無惨に喰われて欲しかったし、中盤に出てきた恐竜用スタンガン喰らってもわりと元気なアジア人女性の敵も捕まえるな!!殺せ!!!となってしまった。圧倒的に「血」が足りないと思う。

 

その割を食ったのが本作のメインボスであるギガノトサウルスだろう。

インドミナスとインドラプトルの過去作のラスボス2体は、ほぼ生物兵器として生み出された「架空の恐竜」であり、彼らに罪はないのだけど、作中の人を殺しまくり「悪」としてポイント稼ぎまくっていた。
対してギガノトサウルスは過去に実在した恐竜であり、別に作中でも人を殺しておらず悪のポイント稼ぎしていない。

それなのにラスボス扱いされ、主人公補正で復活したTーレックスにボコボコにされテリジノサウルスに串刺しにされてのメインテーマが流れるのなに!!!????となる。Tーレックスが書いた夢小説か。

それか

スタッフ「アカン……これじゃシナリオが滅茶苦茶で終われない…」→スタッフ「そうだ!ラストはTーレックスに伝統のカッコイイポーズ取らせたろ!これで文句なしの終わり!」

と考えたのかもしれない。どんなストーリーでもそれっぽく終わるデウス・エクス・レックスである。

 

  • 過去作のオマージュは多い

胚の入ったシェービングクリーム缶を登場させたり、ディロフォサウルスの登場でネドリーみたい死に方したり、電源の再起動だったりファンサービス要素は多い。しかし、その結果が散漫したストーリー、展開な気もしてしまう。また、過去作オマージュ多いので、トイレで上から食われるやつとか、おばさんがプテラノドンに襲われその後モササウルスに丸呑みされるやつとか聞くとすぐにイメージが頭に湧く印象的な新しいシーンなかったなって。

 

  • クレアの人、ヒール履くよりどぶ川に顔埋もれている方が似合っている(褒めてます)

  • グラント博士とサトラー博士が良い関係になったし、マルコム博士は相変わらず魅力的で、本作では発煙筒誘導で失敗して大怪我した過去から工夫してエンチャントファイアイナゴスピアをクリティカルヒットさせるという大金星!でリベンジ果たすことも出来たので満足度高い人の気持ちも分かる。

 

 

最後に

これで完結するの!?という困惑しかないが、これで完結するのである。

 

完結といってもハリウッドなのでどうせ次回作はあるので、今度はパーク運営が成功した世界観で旭山動物園のドキュメンタリーみたいな映画作って欲しい。ブルーを頑張って飼育する話とか見たい。