社会の独房から

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映画『ONE PIECE FILM RED』は2回目、3回目鑑賞するごとに面白くなっていく説

Ado、めっちゃ歌う(感涙)

初見での『ONE PIECE FILM RED』の感想を書いた時、僕は

みんな大好きシャンクスがメインの映画、そりゃ見るよという気持ちで映画館に向かったわけだが、「無」から沸いてきたシャンクスの娘こと、ウタが歌うシーンが長い。

観る前からワンピースの映画なのにウタの歌シーンの声優adoのMVが主になりそうな嫌な予感はあったが、中盤ぐらいまでほぼほぼadoのMVである。

約120分の映画で全7曲。そのうちの2曲をフルで歌うのでウタワールドに引きこまれなかったら中々辛い所もある。ただ、1曲目の「新時代」以外は歌のバックでストーリーも進むので世間で叩かれているほどではない。

 

しかし、製作陣は製作の初期段階からウタというキャラクターに長年付き添い、愛着も湧いているみたいだけど、映画本編で初めてそのキャラに出会う身としては「なんだこのメンヘラは……」感や、「いや、それよりシャンクス早くだせよ」感は拭いきれない。

 

と書いたが、2回、3回観て気持ちが180度変わった。

完全にウタのライブ目的で映画館に向かっている僕がいる。

 

それには理由がある。

音楽というのは繰り返し聴くことを前提に作られていて、聴けば聴くほど耳に馴染み、演奏や歌詞を深く深く理解できる。そして1曲でも理解できるとアーティストの他の曲なども横断的に理解でき、好きになっていく。ある漫才師が「漫才は同じネタを何回もするとこの前見た奴……と客に思われるが、音楽は定番曲を擦り続けても客のテンション上がるのズルい」と言っていた問題である。単純接触効果ともいわれる。

繰り返し接しているうちにどんどん好きになるのはなぜ? | 日本心理学会

 

漫才と同じで映画というのも基本的に「一回性のエンタメ」である。気に入った映画を阿呆みたいに何度も何度も観返す人はネットに大勢いるが、基本的には一期一会、少なくともそれを前提に作られたコンテンツである。

 

そこで音楽映画だ。音楽は「反復のエンタメ」だが映画は「一回性のエンタメ」なので一発で観客の鼓膜を震わせなければならない。それは非常に難しいので『ボヘミアン・ラプソディ』のように既存のアーテイストで既存の曲を使うのが最近の流行だ。映画を観た後でサントラを聴き、また映画を観たく(聞きたく)(参加したく)なる。

刺激的で斬新に感じる演奏、とてつもなくキャッチーで深みのある歌詞、口ずさみやすい音程、ポップな曲調。短時間で膨大な音情報を詰め込んだ楽曲の数々は「サントラが欲しい!」と思わせる。『君の名は。』のように劇中歌に力を入れている映画も同じことがいえるだろう。

その点、映画『ONE PIECE FILM RED』はどうだろうか。

 

 

正直、上でも書いたように初見で映画を観た時はライブシーンに「なげーな」と思ってしまった僕だったが、『ONE PIECE FILM RED』の強みはその巨大覇権コンテンツという点だ。

 

 

テレビを見ていてもモンスト×ワンピースFILM RED コラボ記念CMで曲が流れてくるし、SpotifyとのコラボCMでも「新世界」が流れてくる。

新時代はこの未来だ
世界中全部 変えてしまえば 変えてしまえば…

ジャマモノ やなもの なんて消して
この世とメタモルフォーゼしようぜ
ミュージック キミが起こす マジック

目を閉じれば未来が開いて
いつまでも終わりが来ないようにって
この歌を歌うよ

初見だと何とも思わなかったけど、これウタの目的や気持ち全部出とる!!!と驚く

 

ラーメン屋でラーメン啜ってても「風のゆくえ」が流れて来て、

私が消え去っても歌は響き続ける

という歌詞でウタ死亡前提!!!!!とラーメン啜りながら涙目になってくる。

どういう気持ちでウタがその歌詞を書いたのか。それを頭の中でぐるぐる考えてしまう。

 

youtube見ていてもワンピース関連の広告が流れてくるし、Twitter見ていてもワンピースの阿保な感想が∞に流れてくる。

 

こんなんウタの副流煙である。

 

まぁ僕がワンピースアンチだったら発狂するだろう世界で運良く僕はワンピースが大好きなのでそんな環境を受け入れていると、とてつもなくキャッチーで深みのある歌詞、口ずさみやすい音程、ポップな曲調、短時間で膨大な音情報を詰め込んだ楽曲の数々に加えて、その歌詞を書いたウタの心境に心動かされるのを感じてしまう。ウタが段々と好きになっていくのだ。

 

初見感想で

しかし、製作陣は製作の初期段階からウタというキャラクターに長年付き添い、愛着も湧いているみたいだけど、映画本編で初めてそのキャラに出会う身としては「なんだこのメンヘラは……」感や、「いや、それよりシャンクス早くだせよ」感は拭いきれない。

と書いたけど、鑑賞後の日常を過ごしていく中で、段々とウタというキャラクターに愛着が湧いてくるのだ……!!じんわりとじんわりと温かい気持ちになっていく。これが父性。僕がウタの父親だった……?独身の僕に娘がいた……!!

 

父親になってしまったら、そりゃ、娘のライブ目的で映画館に向かうし、娘のライブで涙を流すし、娘との別れで嗚咽し、今度こそ助かってくれと祈る。

 

また「新時代」「私は最強」「風のゆくえ」「逆光」「世界のつづき」「ウタカタララバイ」「Tot Musica」といった名曲たちは何度聞いても名曲だし、映画見た後だと歌詞の意味が分かりゾクゾクするし、さらにその状態で映画観ると完全にワンピース世界の住人のようにウタを「歌姫」として見てしまう。さらにさらに映画の余韻噛み締めながら外でもウタの歌を聴くようになる。さらにさらにさらにより良い音響を求めて映画館に向かう。このウロボロス。誰か助けて…。

 

音楽映画なのに映画以外の日常で劇中歌が何度も何度も流れて来るのずるいし、何度聞いても飽きない劇中歌を作った人達の勝ちだと思う。ここはウタワールド。興行収入100億超えてくれ。

 

 

最後に

映画って初見感想と2回目、3回目で感じたことが変わるの面白いなとつくづく思う。

初見で面白かったのに2回目観たら言う程だったという事なんて山ほどあるし、今回みたいに逆になることもある。

故にどうして「面白いとおもったのか」「なぜ面白くないと感じたのか」映画を観る度々に自分自身に問いかけることが何よりも大事なのだと思う。

 

 

それはそれとして8月27日からの第三弾の映画特典が尾田栄一郎描き下ろしでウタが歌う楽曲たちの誕生秘話が描かれる冊子がプレゼントされる。これはもう父親として行くしかないだろ!!