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【ネタバレ】映画『ブレット・トレイン』感想。原作で見たかった展開があって大満足のトンチキ日本映画

序盤「おかしな日本観と異常な治安の悪さだけど意外と伊坂幸太郎原作の『マリアビートル』通りの展開だな。関心関心」

終盤「うわぁぁぁデヴィットリーチ監督と真田広之、京都でやりたい放題しよる」

いつも事件に巻き込まれてしまう世界一運の悪い殺し屋レディバグ。そんな彼が請けた新たなミッションは、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見失ってしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デスが待ち受ける終着点・京都へ向かって加速していく。

 

作家・伊坂幸太郎による「殺し屋シリーズ」の第2作『マリアビートル』を、『デッドプール2』のデビッド・リーチ監督がブラッド・ピット主演でハリウッド映画化したクライムアクション。

正直、『マリアビートル』から『ブレット・トレイン』にタイトル変更になっているし、ハリウッド実写版『ドラゴンボール』みたいに原作者から「え?」って思われるようなガワの設定だけ拝借したものかと思いきや、意外にも原作遵守な展開と映画としてのオリジナルエンタメ展開の両立を実現していて非常に楽しい一本だった。

 

 

原作の『マリアビール』では世界一運が悪い殺し屋で、主人公的立ち位置だがら非暴力主義という訳ではなく他人の首の骨を折りまくる七尾と、元アル中で親としてもダメダメな木村、邪悪で狡猾な中学生の王子、そして本作の癒しで最高のコンビの檸檬と蜜柑。

彼らの群像劇なのだが、やっぱり読んでると檸檬と蜜柑のコンビが好きになるんですよ。

怒りと無力の木村、不運の七尾、悪意の王子と呼んでいて辛くなる事が多い中での檸檬と蜜柑パートの面白さが際立つ。

 

流石に映画だと中学生を殺せないので女性に変更になった王子だが、原作だと彼の心象が細かく描かれ、そこにあるのは大人達や自分以外の無能への見下し、世界は自分の思うがままという思想。見事なまでの「オスガキ」である。

不運の七尾と対極的な立ち位置である王子はその運の良さも味方して中盤まで王子に都合の良い展開になるので読んでいて歯がゆい気持ち悪さがある。

檸檬と蜜柑もあと一歩のところで王子をとらえ損ねて、逆に殺されてしまうと「くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!頼むから誰かこの悪魔をこらしめてくれ!」と思って読むことになる。そして王子が無惨に殺されたことを間接的にほのめかす程度で終わってしまうのも物足りなかった。

伊坂幸太郎小説におけるストレス要素は終盤の爽快感への序章なのは分かるが、檸檬と蜜柑は死んだままなのが哀しかった。

そんな僕のような読者が思わずガッツポーズしてしまうのがタンジェリン&レモンであり、映画『ブレット・トレイン』である。

 

 

原作通りタンジェリン&レモン死んだかーとガッカリしていたのにまさかのレモンが息を吹き返す僕の夢小説展開からの王子をみかん号で轢くトドメである。うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!となった。ここだけでも実写化の意味があったといえる。欲を言えばタンジェリンも復活して欲しかったが。

 

後半でタンジェリンが走り出した高速鉄道の窓ガラスぶちやぶって乗ってくる所ぐらいから原作要素が減ってリアリティラインが変わり、真田広之が登場して京都駅着いたぐらいからもうSFの世界観である。そして「Holding out for a hero」麻倉未稀ver流れて大勝利。あんなん日本人なら誰でも笑う(失笑でも可)。

まさしく伊坂幸太郎による怒涛の伏線回収と、デビッドリーチによるイカしたジャパニーズ音楽に乗せた血みどろバイオレンス刀アクション、そしてブラビ、真田広之、マイケルキャンによる役者陣のカッコイイ殺陣の融合によって、異常なまでの盛り上がりを見せる後半は原作ファンから不評かもしれないが、映画としてラストで盛り上がりが必要だと考えるので最高の映画化だと考える。まさに途中下車できないノンストップ殺戮ヤクザ新幹線映画でる。

 

 

細かな所

  • 現実だと東京〜京都は3時間で行けるのに夜に乗って朝になるまで着かない映画の新幹線

 

この本編には関係な無意味なやり取り好き。チャニング・テイタムはブラビ出演作『ロストシティ』繋がりだろう。

 

  • デッドプール2』繋がりかライアンレイノルズが出てくるの好き。なんでこんなカメオが豪華なんだ。

 

  • 京都駅はしょぼいし、京都の住宅街には五重塔が普通にあるし、京都から富士山が見える。
  • それに比べて米原駅の秘境具合よ

 

最後に

駅のホームで堂々と煙草すうヤクザたちがのさぼる治安が終わった日本。

そしてモータルコンバット同様にやりたい放題&かっこいい刀アクションの真田広之

京都で髪を結んだブラピもカッコイイし、真田広之が画面に出ると引き締まる。

www.shachikudayo.com

 

この映画みたいな「外国人の誤解しているヘンな日本」に対して文化の盗用とかなんとかキレル人も多いけど、そもそも原作のあとがきから「架空の列車の走る、現実とは異なる世界の話と思ってもらえれば」と書いてあって、映像化するとある意味原作通りの世界なのかもしれない。

 

確かに日本描写は徹頭徹尾間違っていたかもしれない。いや、間違っていた。しかし、ウォシュレットに癒しを求めるブラビを見て癒されたあの時間は間違っていなかったとハッキリ言える。

誇張した日本が舞台のハリウッド映画、難しいかもしれないがこれからも作って欲しいよ