淳一は単身、農家を営んでいた。そこへ東京で元妻の爽子と暮らしている小学生の息子・一也がひとりで訪ねてくる。淳一はしばらくふたりで暮らすことにするが、その頃から近くの森で怪奇現象が多発する。それは淳一が住む町にもおよび、不審死や失踪が相次ぎ……
『事故物件 恐い間取り』が興行収入22億円突破し、再ブーム中の中田秀夫監督の最新作。ただ近年は『貞子』『嘘喰い』『スマホを落としただけなのに』などクオリティに関して何も信用できない監督でもある。僕も中田秀夫監督の最新作の時はいつも有給をとって朝1映画館に向かっているが、鑑賞後は大体「なんでこれ観る為に有給とったんだろう?」と自己反省から始まる。
ただ、中田秀夫監督の次回作にはまた有給とって朝1映画館に向かうのだろう。僕にとって中田秀夫監督作品は負け込んでいる時のスプラトゥーンの試合に似ている。
そんな中田秀夫監督が『事故物件 恐い間取り』と同じプロデューサーの秋田周平と再タッグを組み、主演に映画主演8年ぶりの動物大好き!相葉雅紀。その息子役にはジャパニーズJr.の上原剣心などが参加した映画が今回取り上げる『それがいる森』となっている。
まずネタバレなしで感想言うなら「ここ最近の中田秀夫作品の中でもトップクラスにチープだよ!?」という事。ジャンル映画なのでそういう映画だと飲め込める人なら問題ないが、相葉雅紀主演という事でそのファンの方々と、テレビでも宣伝しているのでそれに釣られた人がどこまで楽しめるか僕は関係ないのに不安である。「楽しかったよー」ってコメント待ってます。
ここからはネタバレありで感想書いていくよ。
”それ”の正体は
宇宙人である。つまりこういう事。
ジャパニーズ・プレデター
これこそが行き詰まってるJホラーの次なる一手なのだと中田秀夫監督なりの答え。
アーノルドシュワルツェネッガーの代わりに相葉雅紀なのである。
ホラーかと思いきや実は宇宙人モノ。タイミング的にジョーダン・ピール作品の『NOPE』と被ってしまった。そんな被り方する!?出来の差は比べないでくれ。
宣伝では散々”それ”の正体を隠していたが、映画では冒頭の銀行強盗犯(パンサー尾形)が山の中で"それ”に襲われる時点で「あっプレデター的なやつ!?」と勘づく。
その後の無駄に長い転校先の学校での交流シーンの後、本作で一番魅力的なクラスメイトの丸橋くんと熊が出る山を登ることになった一也。
そこでクソデカ主張が激しい滅茶苦茶チープな宇宙船を発見してしまう。コントで使われそうなやつ。
宇宙人、もっと隠す努力をしよう。
ここで観客は「あっ、そういう系」だと理解する。
その後、本作で一番魅力的なクラスメイトの丸橋くんが襲われ、行方不明に*1。
終盤くらいまで”それ”の全貌が明かさないまま大人は殺され、子供は行方不明になるという不可解な事が続き、その過程でチラチラとその姿を観客に見せるという演出。ここら辺は意外とよく出来ていて緊張感あるシーンが続く。ジャンプスケアの使い方も効果的で結構ビックリする。流石中田秀夫監督。それにしてもオレンジ狙いでもないのに二度もビニールハウスに”それ”が来る理由が不明だった。そういう所だぞ中田秀夫監督。
実はこの映画よくできていて、"それ"の正体が阿保らしく、ありがちでチープな程、作中で"それ"の正体に対して警察や学校の教頭先生など大人たちが信じない事に説得力が出てくる。
僕でもあんなチープな化物が写っている写真を見せられても信じないだろう。
故に唯一の目撃者である一也のどうしようもなさ、話しても誰にも信用してもらえない感じがよく分かる(それはそれとして一也にイライラする人は多そう。僕もキレてないで全容をさっさと父親に話せよ!と思ったし)
そして終盤の大虐殺展開。
今まで主人公たちに少しでも素っ気ない態度を取ってきた警察や、教頭先生、同級生の子供まで皆殺しだぜ!!!
今までチラチラしか映らなかった宇宙人がここからはハッキリと姿を現す。そしてここから完全にアホ映画。
子供を捕食して大きくなった宇宙人はこの時点で210㎝ぐらい。圧倒間体格差で物理的に人間を殺していく。イメージとして漫画『テラフォーマーズ』に出てくるゴキブリ宇宙人みたいなの。
この宇宙人
- 1秒間隔でカサカサして笑えてくる
- 瞬間移動したりしなかったりする
- 子供を拉致した後、わざわざUFOの近くで捕食する意味が分からなった。食べてる所を見られるのは恥ずかしい的な?そして食後のチープなCGによる分裂、なに?
- 口がパクパクして観客に印象付けながら、そんな小さな口で子供喰えるのかよと思ってた所に身体全体が口になる演出はよくあるけど、良かった
- 最後、「こんな植物系の細菌あるなんて聞いてないよ~バイバイキーン」は情けないぞ
全体的にもう少し宇宙人のビジュアル拘ってほしかった。あまりにも普通過ぎた。
細かな所
- 相葉雅紀の繊細で優しいけど父親として頼りない感じが役柄にドンピシャで良かった。それでも最後は子供守るために、子供の意見に理解はしつつも説得する姿もいい。あと、驚く演技も自然でいい。
- 犬とか動物は死なないけど、人間の子供は死ぬ。行方不明の子供達は最終的に助かるかと思ったけど、普通に死んでいた。そのシビアさは結構好き。
- エンドロールのUFOが写った写真。本作の舞台となった天源森のモデルは福島にある「千貫森」古くから多くの謎の発光物体(つまりUFO)の目撃例があるという場所で有名らしい。今度行こう。
最後に
物語の縦軸である「父親の成長」「子供同士の友情」はしっかりしているので画面はチープでフワフワしていても意外と最後まで観れる。個人的には『学校の怪談』シリーズ観ているかのような気持ちで映画館を出れたので満足度は結構ある。
出来の良くないSFホラー映画として正直人には勧められないし、相葉雅紀ファンはこの映画を観て楽しめるのか不安だ。
「楽しかったよー」ってコメント待ってます。