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【ネタバレ】『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』感想。大佐はエピソード4ぐらいで子供を遊園地に連れていきそう

アバター』が大佐映画だったのは自明だったけど、『アバター2』も大佐映画だった件

 

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ジャームズ・キャメロン監督が革新的な3D映像を生み出し、全世界興行収入歴代1位の大ヒット作となった「アバター」の約13年ぶりとなる続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』 

前作は興行収入=作品の面白さではないことの証明のような作品だと僕は思うのだけども、当時は普段映画観ない人でも3D映像に興味をひかれて劇場に足を運んでいた。

映像は凄いけど、ストーリーは面白くない。それが当時からの多数の評価だったと思うし、僕も賛同するけども、そんな中で印象的な登場人物は主人公ジェイクでも、女戦士のネイティリでも、モンキーボーイに将来の妻をNTRれたツーテイでもなく、クオリッチ大佐である。

(C) AFLO

 

言ってしまうと映画『アバター』は僕にとってスティーブン・ラング演じるマイルズ・クオリッチ大佐の為にあるような映画だ。大佐は優秀な軍人であり、部下の面倒見もいい。近い将来に住めなくなる地球の為、人類存亡のために、そして何より任務のため、自分達の数倍は身体能力が高くエロティシズムのある見た目の青い宇宙人や、狂暴な動物たちがウヨウヨしている惑星パンドラにロクな補給もないまま放り込まれ、限られた資源の中で遂行可能な戦術を進め、決して安全な場所から命令するだけのクソ上司ではなく、必要となると自ら最前線で陣頭指揮を執り、最後は自分自身がパワードスーツに乗って攻撃を仕掛ける軍人の鑑である。

それなのにジェイクのクソ阿呆野郎は人類を裏切って女の為にベルベットモンキーの睾丸色の宇宙人に寝返り、大佐は戦場で散ってしまった。映画のラストは、謎のUSAパワーで何とかなって「USA!USA!」出来るのかなと期待していたが、見事に裏切られたのである。

滝に落ちたり、爆発に巻き込まれたりで生死不明の終わり方ではなく、完全に息の根が止まる描写がある誤魔化せない死に方。

そんな大佐が続編である『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』で見事に復活である。

「えっこの状態からでも生き返れる手段があるんですか」状態である。そしてあったのである。

 

人間とナヴィのDNAを掛け合わせた肉体と操作員の意識をリンクさせたアバターによって、ナヴィとの接触を図る「アバター計画」。続編ではさらに技術が進化し「Recomたちは、アバターの体にRDA社の兵士のメモリーをダウンロードした存在で、操作員とのリンクはもはや必要ないのです」とランドーは明かす。

『アバター』続編、人気悪役クオリッチ大佐復活の理由|シネマトゥデイ

 

個人的には事前情報何も入れずには映画を観たので冒頭でいきなり復活したのは正直、うっそだろ!!!!と思ってしまった。

スターウォーズEP9のパルパティーン復活と同じで、変に人気でてしまったから退場するべき所で退場できない大人の事情を感じてしまう訳だが、クオリッチ大佐がいないアバター観たいかと言われたら非常に厳しい。心が二つある~~状態である(この言葉本当に便利)

 

復活したクオリッチ大佐だが、本作では彼の息子であるスパイダーとの人間ドラマがストーリーの要となっている。というかジェイク・サリーの家族の話は長々やる割に全く心に響かなくてビビる。

一作目の時のクオリッチ大佐は敵に対して任務完遂のため徹底した冷徹さがあり、それはまるで初期のベジータを彷彿とさせるが、本作のクオリッチ大佐は前作同様にクールで冷徹そうに見えてスパイダーに対する愛情を隠しきれず、その結果、全体的に温かさがある。その姿はまるで超時代のベジータ

それを魅力がなくなったと捉えるか、奥行深いキャラになったと捉えるかは人それぞれだろう。

僕はこれはこれでアリと唸ったというか、ジェイク・サリー家とクオリッチ家、2つの家族の話がアバターの縦軸にしていくのだと思うとこの掘り下げは必然。そして両家を繋ぐ存在がクオリッチとジェイク・サリー、両方にとって息子のような存在であるスパイダーである。

 

このスパイダーは1作目で大佐が死んだ後も幼すぎて地球に帰ることも出来ず、パンドラに残ることになった。ジェイク・サリーは冒頭のナレーションでスパイダーのことを実質ファミリーの一員と紹介するけど、映画を観ているとこの「実質」の差が辛い。

途中でスパイダーが拉致されても、ジェイク・サリーは「ここの場所をゲロったらどうしよう」の心配はしても救い出そうとはしない。他の家族も同様にあまり心配している描写はないし、特に仲がよかったキリは流石に心配する描写あるけど、それ以上に自分の母親のことで頭が一杯である。冷たい。

極めつけは最後に「俺達は家族だ」でギュと抱きしめ合うシーンでそこにはスパイダーがいないのである。タイタニックみたいな事が起こった直後で生死が分からないのに心配する描写すらない。家族で一致団結がジェイク・サリー家の方針らしいが、そこにはスパイダーはいない。あとで一応合流するが、盛り上がるだけ盛り上がって1段落ついた後に遅れて合流する飲み会のような気まずい空気がある。

他にも大佐が「おまえの子供を人質にとった」と言うとネイティリも「こちらもスパイダーを人質にしたぞ」のくだり、「お前の息子を!」と言いながらスパイダーの胸に刃突き立てたり傷までおわせるのだが、その後に何のフォローがないのが凄い。はは、おれに対する愛情ないじゃん!と僕なら軽く反抗期になるレベルである。

息子が死んで修羅と化したネイティリにスパイダーは「はは怖い」状態。そんなスパイダーも最後の最後は大佐ではなくジェイク・サリー家との生活を望んで大佐から離れる。原住民にやり過ぎな大佐たちにドン引きするのも分かるけど、この状態からジェイク・サリー家に戻る決断するのも凄い。幸せになって欲しい。

 

そして大佐。本作でもジェイク・サリーを途中までは追いつけるけど、結局は原住民の数の力に勝てるわけもなくボロ負けである。明らかに前作よりも人類側は戦力が弱いので勝てる訳もなく……何も学んでいない……。良い勝負にするためか、途中から海の民が画面から消え失せる。まだ大事な娘が捕まったままだぞ!!!こんなん八百長である。それでも大佐は負けるし、ジェイク・サリーとのタイマンでも負ける。これはもうダメだろ!!!

 

5分強ぐらいあったエンドロール中にこれからの大佐の事を考えていたけど、恐らく次回作では今回の失敗で大佐に対する軍の中での立場が下がり、地球から軍の中でも過激で無法者たちが集まった部隊か、大佐のコピーの中でも情を削除した冷徹マシーン集団が敵となり、パンドラを徹底的に襲撃。当然、スパイダーもピンチになる中でクオリッチは悩みに悩んだ末に軍を抜け、パンドラでのゆるキャンを経て、スパイダーを助ける為にジェイク・サリーと共同戦線を張ることなる。家父長制のジェイク・サリーに対して「お前は良いやつかもしれんが父親としては最低だな」とか言ったりしながら一緒に戦う。最後は今までにない安らかな表情で死んでいく……まで妄想して泣いたね、僕は。エンドロールが終わって泣いていると、他の観客にこの映画を観て泣いたと勘違いされて「マジか……」みたいな表情されたのだけが不服。

 

 

 

最後に

日本では捕鯨興行収入の話ばかり話題になる本作。あの鯨の脳汁には老化を止める効果がある事が判明したけど、正直に言うと「老化を止める」なんて魔法みたいな効力あると、そりゃ人類は止まらんて、という気持ちにしかならない。これが食べると滅茶苦茶美味しいとかなら他に代用できるだろとか思うけど、「老化を止める」である。例え大佐みたいにコピー人間作れる技術があるとはいえ、コピー人間はコピー人間。自分だと認識している今の自分は死んだら終わりである。

例えばアフリカにいる比較的知能の高い動物の脳汁から「老化を止める」天然物質がある事が判明したら、知能が高いとか知らんから僕たち一般層まで流通できるまで量産されて欲しい気持ちで内心は一杯になる。ジャームズ・キャメロンだって鯨と「老化を止める」を天秤にかけたら本当に鯨を選ぶのか、そこまでの男なら僕は何も言うまい。お前こそが真の男だ。