社会の独房から

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映画『かがみの孤城』感想と原作との違いを解説

序盤のウレシノはもっと邪悪だからな

中学生のこころは学校に居場所をなくし、部屋に閉じこもる日々を送っていた。そんなある日、部屋の鏡が突如として光を放ち始める。鏡の中に吸い込まれるように入っていくと、そこにはおとぎ話に出てくる城のような建物と、6人の見知らぬ中学生がいた。そこへ狼のお面をかぶった少女「オオカミさま」が姿を現し、ここにいる7人は選ばれた存在であること、そして城のどこかに秘密の鍵が1つだけ隠されており、見つけた者はどんな願いでもかなえてもらえると話す。

 

 

原作は本屋大賞 史上最多得票数で受賞し、累計発行部数160万を超える直木賞作家・辻村深月による同名の大ベストセラー小説。それを『映画クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』『河童のクゥと夏休み』『カラフル』で有名な原恵一が監督。アニメーション制作は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』などのA-1 Picturesという安心安定の座組。

 

これはもう2022年最後にして最大!映画館文化をぶっ壊す話題の旋風を巻き…………起こさない!!!!これが……本当に話題になってない!!!!

 

完全にすずめとスラムダンク興行収入的には苦戦していても話題性だけはなぜかあるアバター2が映画館の中心である。

このままじゃ、アニメ評論家の藤津亮太さんが来年ぐらいにアフター6とかで「知られてないけど名作なアニメたち」として本作ピックアップして宇多丸さんが「聞いたことありますけど見てないんですよー」とか言ったりして消費されるアニメになるか、ねとらぼ辺りのネット記事で「すずめだけじゃない2022冬の名作たち5選」みたいなしょうもない奴に選ばれてしまうのが目に見えている。

あまりにも話題になってないので、僕は普段松竹系の映画館に行くので毎回『かがみの孤城』の番宣やオオカミ様バージョンの注意事項ムービーを見せられていたが、あんまり映画館行かない原作ファンの人などは「えっ……今日から公開なんだ……」ぐらいのテンションである。

 

ちなみに安心安定の座組と書いたが、本音では原恵一の前作『バースデー・ワンダーランド』がまぁ酷い出来で心配だった。そういえば自分のブログでも感想書いてたなと懐かしみながら、糞ボロカスに叩いているのかなと読み返してみると

www.shachikudayo.com

煮え切らない事を延々書いている。ブログ始めたばかり、長文書き慣れないという状況での記事なので読んでて恥ずかしくなってしまう。なんだよFF15イズムって。Twitterやブログなど個人の感想や意見は常にデジタルタトゥーとして残る時代だけど、僕は毎日常に成長し続けているので過去と現在、昨日と今日とで意見が違うことがあってもそれは僕が成長している証なので、最新の僕の意見を見てくれたら間違いない。そこんとこよろしく。

『バースデー・ワンダーランド』の時も『アベンジャーズエンドゲーム』と公開日が被ってて空気だなとか書いているので、多分『バースデー・ワンダーランド』も『かがみの孤城』も他の大作映画と公開日被ってなくても話題になってない可能性は高い。

 

 

話が大幅に逸れてしまったが、ここからは映画『かがみの孤城』について書いていきたい。

まずハッキリ言いたいのは原作が超大傑作なので観るのを悩んでいる人はまず映画館に行った方が良いし、時間があるなら原作も読んで欲しい。オチは途中ぐらいから読めるけどそんな事どうでもいいぐらいの展開でグッとくる。映画観て「オチ途中で読めたわーwwwしょうもないわー-wwww」とかいう奴ぶん殴りたくなる。

本作の登場人物たちは不登校の少年少女なのだが、その描写がリアルで読んでて辛くなる。こんな文章書いているので当たり前だが、僕も不登校の経験がある。

 

作者の辻村深月さん自身も学校で馴染めなかった経験があると語っている。

小中学校のころ、友だちとうまく付き合えなかった。教室で数人ずつの班(はん)を作る時、自分だけ余ってしまうこともよくあった。学校は楽しい場所では全くなく、周囲から「友だちがいない」と見られていると思うたび、自分が恥(は)ずかしく、心配する親にも申し訳なかった。

《いじめられている君へ》辻村深月さん:朝日新聞デジタル

 

そんな経験があったからか、本当に分かる、分かると言いたくなる細かな心理描写が多い。例えば

カーテンの布地の淡いオレンジ色を通し、昼でもくすんだようになった部屋は、ずっと過ごしていると、罪悪感のようなものにじわじわやられる。自分がだらしないことを責められている気になる。

最初はそれで心地よかったものが、だんだんと、やっぱりいけないんだと思うように、なぜか、誰に言われた訳でもないのに、なってくる。

 

あらゆることに罪悪感を感じるのは不登校あるあるじゃなかろうか。罪悪感まで感じなくなったら完全に外にでなくなる。

また、いじめっ子が反省していると担任教師が言ってきたシーンで

「反省してるとしたら、それは、自分が先生に怒られたと思ったからだと思います。私のことを心配してるわけじゃない。自分がしたことが先生たちに悪く思われるのが怖いからだと思います」

 

『タコピーの原罪』みたいにいじめっ子とイジメられっ子が手を取り合う展開、本当に嫌いなんだけど、そういうのがまるでない所か拒否するのが本当に信頼できる。

あまりにも優しい展開で「うー-ん」となるのも全くないと言ったらウソになるが、でも、だからこそ、いま、居場所がない子供にも読んで欲しい。そんな小説だ。

今回は原作を読んだ160万人が映画館に行ってくれるように原作との違いを中心に解説などを書いていく。ネタバレ要素は縦軸の大事な所は書かないようにするが、本音を言うと何も知らない状態で原作本読んで欲しい。

 

 

原作との違い

原作小説は約554ページ。

それを116分の映像にするのか非常に厳しい。ここで2つのパターンが考えられる。1つは原作を大幅に変更してオリジナル色強くして尺に収めるか、もう1つは原作の中から1つのテーマを選び、それを中心にして2時間に収めるか。原恵一監督は後者を選んだ。

 

「原作を読んで、ストーリーの流れを変えて無理に自分の映画にする必要はないだろうと感じました。ただ、7人全員の背景をきちんと描くのは時間の制限もあって難しい。こころを中心にした7人の物語、ということでやるしかないだろうと」

「大好きな映画とか漫画とか小説から受けた傷で、傷だらけなんですよ」中学生7人の物語が『クレしん』監督の心を動かしたワケ | 文春オンライン

 

そんな感じで縦軸は同じものの、主人公こころちゃん以外の描写はあまりない。しかし、こころちゃんが滅茶苦茶可愛い。これだけでも観る価値がある。

 

1年通しての物語なので、服装が結構変わるが、どれもこれも可愛い。正直こころちゃんが可愛いと言う東条萌ちゃんより明らかに可愛いのでこれはこれで問題があるかもしれない。こころちゃんへの悪口で「ブ――ス」ってあるけど、橋本環奈にそれを言うような滑稽さがある。あと映画だと母親が不登校に対して理解度高い母になってるけど、原作だと娘が不登校になった直後はイライラ度数高めで読んでて心痛い痛いになりがち。

 

 

  • ウレシノ

原作読んでて序盤のウレシノに「うわぁぁぁぁぁ」(ドン引き)ってならない奴いる!?読者はこころちゃんに感情移入しまくっているのに、恋愛気質ですぐ女性に惚れちゃうウレシノにストーカーされるこころちゃん。せっかく楽しい空間を見つけたのに好きでもない男に好かれ、質問責めにあって、食い物を渡されて、空気は最悪。再び閉じこもってしまうこころちゃん。その解決法も微妙だったし。まぁ途中ぐらいからウレシノも色々大変だんだろうけど……とのその振り上げた拳を降ろす程度には許せる。

アニメでは声優が梶裕貴になり、原作の厭な描写がカット&軽減され、見た目もキャラクターみたいに可愛くなっているので、かなり見やすい。消臭具合が18禁から全年齢ものになった感じ。

  • リオン

原作だと金髪になって距離開けるまでスバルがこころと良い感じになるのかなと思ってたけど、映画ではスバル×こころ要素がことごとくカットされていて、その分、リオンと会話するシーンになると劇伴がモーレツに変わるので「あっ…」と分かりやすい。映画、キャラのデザインや本編選び方など何も不満ないけど劇伴だけ独特だなって思う。

スバルは本作で1番といっていいぐらい影は薄いのでファンの人は物足りないかもしれない。リオンはマジでカッコいいし、姉との描写が+されてて感動する。

  • フウカ

原作だとこころちゃんとの一番の友達って感じだったけど、映画だとそこはカットされて地味にウレシノとのカップリング要素が増えた感じ。水曜日のダウンタウン企画でクロちゃんが彼女が出来たように、世の中ではガツガツ行く男性が結局は彼女できるんかなぁと辛い気持ちになるクロちゃん未満でウレシノ未満の僕……。

  • マサムネ

原作だと電気が通っているのでマサムネがゲーム機持ってきて「ゲームの間」と名付けられるほどみんなでテレビゲームをするのだが、なぜか映画だと電気がなくテレビゲーム描写はない。映画だと孤城の舞台が香川なのか……?偶にならすごろくや人生ゲームとかで盛り上がるかもしれないが毎日は辛くないか?僕はマサムネとスバルの関係性好きだったからゲーム要素薄くなってラストのやり取りが不安だったけど、そこは安心していい。あと声優がコナン君の高山みなみさんということであまりも作品の空気に合わない露骨な中の人ネタ描写があるのでそこも必見。必見かな?

  • アキ

映画だと比較的良い子だけど、原作だとフウカに軽く悪口言ったりして「問題児」感がましている。映画だとラストで「アキの問題の根本解決してなくね?」と不安になるかもしれなが、そこは原作読んでくれ。世界は悪い人もいるけど良い人もいる。

 

 

全体的にこころちゃんをイジメてた子達と担任の先生以外は性格が丸くなっており見やすい。それが良いかどうかは分からないが、多くの人が楽しめる映画になっているのは間違いないので是非、映画館で観て欲しいと思う。僕は展開を知っているものの最後は泣いた。出来れば最後にも「夢見る時がある」と言って欲しかったが、リオン描写で+があったので良し!!!!

 

最後に

居場所。

子供向けの映画かなと思うかもしれないが、そんなことはない。

学校、職場、実家など。狭い人間関係がこの世の全てだと勘違いしてしまうことは大人になってもよくある。ここが全てだと思ってしまうと順応するために必死にそれは必死に生きていくことになるけど、辛くて挫折したくなる。朝の通勤中、自転車を漕ぎながら涙が止まらなくなる。そんな時、僕はTwitterに出会って、「世界ってこんなクソみたいに色々な人いるんだ」と実感して、居場所ってここだけじゃなくて色々あるんだなと知って、職場の狭い狭い世界にも「多少は大丈夫」になったことがある。

世界に広さを知るキッカケは僕がTwitterだったけど、それがゲームだったり、本だったり、その中で『かがみの孤城』は道しるべになる小説、映画だと思う。僕ももっと早くこの作品に触れたかったと激しく後悔したのは今でも思っている。なので、今、悩んでいる、苦しんでいる人、すべてに触れて欲しい作品だ……!

 

そして映画館の入場特典でポストカードが貰えるのだが、それが原作終了後の1場面。ぼくはこころちゃんの画で「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」となったので是非、ゲットして欲しい……!!!