社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

映画『そして僕は途方に暮れる』感想。藤ヶ谷太輔は僕にとってのヒーロー

中学生の頃、2chで

もし仕事に行きたくなくなったら、そのまま反対の電車に乗って、
海を見に行くといいよ。

海辺の酒屋でビールとピーナツ買って、海岸に座って
陽に当たりながら飲むといいよ。

ビールが無くなったら、そのまま仰向けに寝ころんで、
流れる雲をずっと眺めるといいよ。

そんな穏やかな時間がキミを待ってるのに、何も無理して
仕事になんか行く必要ないよ。

のコピペを読んで「そんな生き方あるんだぁ」と子供ながらにえらく感動した。

 

しかし、実際に社会人になってみると分かる。

そんな事すると、会社から鬼のように電話がかかってくるし、次の日は関係各所に謝罪まわりだし、そもそもそんな状態でビール飲んでも頭の中は罪悪感とか後悔で酒の味なんてしない。一時的に逃げることは出来ても、結局はいつもの生活に戻らなければならないからだ。

Twitterで「仕事から逃げたい」とツイートすると「逃げたら良いよ。死んだりしないから」みたいな甘い優しいリプが来たりするのと同じ、良いこと言ってる風の無責任である。

それを頭の片隅で理解しているからこそ、僕たちはいつも頑張って頑張って踏ん張っている。

でも、だからこそ同時に憧れを持つ、逃げることが出来る人に。一般の人が黄金の精神と力を持つヒーローに憧れを持つように。

そんな僕にとってのヒーローが出てくる映画『そして僕は途方に暮れる』の感想を書いきたい。

あらすじ 藤ヶ谷太輔が逃げまくる。

 

この映画を観終わって、主人公に滅茶苦茶共感できるな~~と思いながらTwitterを覗くと「主人公はクズ過ぎて全く共感できなかったけど、一周まわって笑えた」みたいなツイートが多くて手が震えそうになる。

 

主人公である菅原裕一役を演じる藤ヶ谷太輔さんはジャニーズ事務所Kis-My-Ft2のメンバー。

僕はジャニーズに詳しくないからあんまり彼の事を知らないんだけど、この前『徹子の部屋』に出ていて家族に対する感謝を語っていて「真面目な子だな~~」と思っていたので世間一般で「クズ」と言われる本作の役を完璧演じていて驚く。

何か自分に都合が悪い事が起きると何をしたらいいのか分からずその場から逃げてしまう裕一。この気持ち、滅茶苦茶分かる。

僕も逃げないように日々頑張っているけれども、上司に怒られた時とかその場から逃げ出したくてしょうもない嘘をついてやり過ごそうとしていた時期があった。結局は嘘はバレるので後から更に怒られるという苦しみ。「なんで嘘なんてついたんだ!」と責められても、それから逃げたくてとは言えず謝るしかない。頭の中がごちゃごちゃするあの感覚。

また家では「作ってもらった料理を片付けない」「洗濯しない」「トイレットペーパーをかえない」

居候している身分の裕一がそれを怒られたら、次の居候先でそこだけは「人間とした当たり前」と言いながらちゃんとする所とか、なぜ怒られたのかの本質が見えてない故の言動も滅茶苦茶共感できる。

怒られたら反省する姿勢を示すのではなく、逆に怒鳴って解決しようとする所とかもあるある。

浮気はするけど、クズに徹しきれないので自分から浮気相手に別れようと言うのも理解できる。

「逃げて逃げて本当にやばくなったら、『面白くなってきやがったぜ』と思えばいい」というアドバイスしてくる年季の入ったクズの家に最終的に住み着くのも、「こんな所にいつまでもいたらダメだけど、自分より『下』が近くにいると落ち着く」というクズの思考で大変理解できる(個人的にダメな人間が頑張るシーンは好みなのでその年季の入ったクズが頑張るシーンが一番涙腺に来た

 

大変共感できる主人公なのだが、僕なら逃げ切ることが出来ない。逃げている途中に後悔して戻ってしまう。しかし、裕一は逃げて逃げて逃げて、人間関係を断って断って断ち切っていく。そこに痺れる。

そして逃げ切った先にある境地とそれを知ったからこそ、もう一度始まる新しい幕。

例え世間からクズと叩かれようが、それを見せてくれた裕一は、藤ヶ谷太輔さんは僕にとってヒーローになってしまう。ありがとう。

 

 

藤ヶ谷太輔さんは2018年に舞台『そして僕は途方に暮れる』で同じ役を演じており、今回は4年ぶりに映画で同じ役を演じているみたいで、凄い仕上がり。特にその表情。

浮気しているのがバレて泳ぐ目や、正論吐かれて狼狽の表情とか、逃げて逃げて逃げて、あらゆる責任や説明から逃避をした結果、内なる責め苦を受け続けボロボロになっていくのも秀逸。そしてそんな藤ヶ谷太輔さんに退廃的な色気があり、見ていて飽きない。

ラスト間際の凄い長い鼻水だらーんが美し過ぎてビビった。しかも、本当に自然に長い鼻水。あれだけも見て欲しい。役に入り切ったイケメンの鼻水は美しい。

 

そんな裕一の恋人役を演じるのは前田敦子さん。『もっと超越した所へ。』に続いてヒモを飼う。

僕にはヒモを飼う人の気持ちが全然分からないんだけども、少し前にTwitterで櫻井孝宏が仕事干されて無職になってもあの声で「やしなってよ」と言われたら養っちゃうみたいなツイートを見たのでヒモを飼ってしまう人って結構いるのかもしれない。僕も「やしなってよ(全く透き通らない汚く活舌の悪いノイズのような声)」で養ってくれる人いないものか。

 

そして久しぶりに実家に帰ったら自分が思ってたより母親が弱っている姿になるの、なんかこう本当に心が痛いよね……。まぁ本作は心が痛いだけで終わらない展開があって笑ってしまったけど……。

 

 

最後に

僕も常に逃げたくなる人間なので、今年の目標の1つは「逃げるな!」にした。

先日、駐車場で隣の車にドアパンチしてしまった。見ると相手の車のドアに傷がついていた。幸いな事に運転手はいなさそうだったし、防犯カメラやドライブレコーダーもなさそうだったので、そのまま逃げてしまおうかと悩みに悩みまくったが、「逃げるな!」を決意し、110番通報して相手方にも来てもらった。

もし、110番通報せず逃げてしまったら、寝る前とかに「もしバレてたら当て逃げ犯で捕まってしまう~~」とか心配してお腹痛くて寝れなかったと思う。そう考えると逃げなくて良かった。

 

車止めてからの事故なので保険がきかないらしいので全部自費だが、ドアにかすり傷ぐらい1~2万ぐらいだろうし余裕だな!!と安心した。

そして22日に『そして僕は途方に暮れる』観て一緒に頑張ろうな!藤ヶ谷太輔!ガッハハと笑いながらスマホを見ると相手から修理代の領収書が添付されたメールが来てたので開いてみると70181円と書いてあったので三度見してしまった。

これはまぁ……面白くなってきやがったぜ!

と空を見ながら辛い現実を心の中で対処しました。