社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』感想。ボーボボに社会的観点あったらアカデミー賞いけるってコト!?

「今度公開されるエブエブって映画、あれ実質ボボボーボ・ボーボボなんだよ」

 

そんな阿呆なツイートを見たのは仕事をサボってスマホを見ていたある日の午後のことである。

エブエブといえば宣伝文句でとりあえず「あのミッドサマーのスタジオA24が贈る」が付く事で有名なスタジオA24が贈る、最近は意識高いけどイマイチ面白い作品が少なくね?疑惑を勝手に抱いているスタジオA24が贈る、マルチバースSF×カンフーアクションの超話題作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のこと。監督は『スイス・アーミー・マン』で有名なダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート。出演しているミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンが第80回ゴールデングローブ賞で主演女優賞と助演男優賞をそれぞれ受賞し、本年度アカデミー賞では10部門11ノミネートと躍進が続いており、作品賞も大本命になっている。

 

高尚で崇高、どの賞よりも誇り高く、最先端価値観バトルの場でもあるアカデミー賞の本命がボボボーボ・ボーボボなんて、信じられない。「不条理ギャグバトル漫画なんてとにかく候補には認めん……アカデミー賞のブランドに傷がつくからな……」と足蹴りされそうなイメージである。

しかし、実際に鑑賞せずアレコレ言うのも趣味が悪い。ということで「実質ボボボーボ・ボーボボ」という評は忘れ、フラットな視点で本作を鑑賞することにした。

 

 

 

滅茶苦茶ハジケ勝負しとる!!!!

 

 

エブエブは実質ボボボーボ・ボーボボというより、ボボボーボ・ボーボボ読んでからエブエブを鑑賞するとより自分の中で咀嚼しやすくなると思う。まぁボボボーボ・ボーボボ読むと殆どの作品がボーボボに比べると分かりやすいな……という感想になってしまいがちだけども。

 

本作は映画クレヨンしんちゃんをベースにハリウッド映画スケールでボーボボの戦闘する感じである。

本来ならばアジア人・中年・移民といったマイノリティな物語としての本作、そしてクィア・ムービーとしての面について語る気満々だったのだが、予定を変更して『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と『ボボボーボ・ボーボボ』について語っていきたい。極力ネタバレしないよう気を付けようと思う。

 

f:id:Shachiku:20230304102108j:image

 

破産寸前のコインランドリーを経営する中国系アメリカ人のエブリン。国税庁の監査官に厳しい追及を受ける彼女は、突然、気の弱い夫・ウェイモンドといくつもの並行世界(マルチバース)にトリップ!
「全宇宙に悪がはびこっている。止められるのは君しかいない」と告げられ、マルチバースに蔓延る悪と戦うべく立ち上がるがー。

 

 

並行世界的なモノを急にみんな「世界線」ではなく「マルチバース」と言い出して戸惑っている。「マルチバース」、即ち、いまの自分とは違う選択肢を選んだ世界。「人生、こんなはずじゃなかった」という幻想の具現化。本作も宣伝で「マルチバース」言いまくっていて、日本でそこ推しても集客に繋がるのか謎。

それはそれとして本作では"バースジャンプ"して異次元の自分とリンクすることで、別の自分が持つ技能にアクセスできる。つまり並行世界にいるカンフーの達人になった自分にアクセスすると今の世界でもカンフーが使えたりする。もう一人の自分の技能だけを借りることが出来るのだ。ただし、バースジャンプするには"最強の変な行動”が必要となる。阿保らしければ阿保らしいほど、それが燃料となり今の自分とは大きく違う自分へと確実にジャンプすることが出来る。

故に主人公のエブリンも、襲い掛かってくる敵もみな戦闘中に"自分が考える最強の変な行動”をしまくる。例えばアンディ・リーとブライアン・リーの兄弟がアナルにトロフィー挿してカンフーしたり、ポメラニアン鎖鎌で有名なイヌ・フーの使い手が登場したり、観ていて????????となるこの困惑さ、その勇姿がまさしく『ボボボーボ・ボーボボ』のハジケリストなのである……。

 

 

 

『ボボボーボ・ボーボボ』はギャグ漫画なので舐められがちだが、戦闘は行き当たりばったりのように見えて、実は明確な戦闘哲学がある。それがハジケリストによるハジケ勝負なのである。

ハジケ勝負とは簡単に言うとハジケリスト同士がお互いどれだけハジケられるかを競う戦いなのだが、ハジケは荒唐無稽であればあるほど破壊力が増す。逆に相手をツッコんだりすると場を制圧されている証拠として不利な状況だったりする。自分のハジケを超えるハジケを重ねられるとかなり不利。最後に「意味わかんねー!!!」というハジケリストにとって最大級の賛辞を吐かせるとほぼ勝ち確とルールが決まっている。

 

エブエブでも動きの機微があまりにも似ていて途中から渡辺直美にみえるエブリンの娘のジョイのハジケた行動の数々、それに抵抗するエブリンのハジケの数々。ずっと「5メガネ!!!!!」しているようなモノである。そして最後、エブリンはキングオブハジケリストのジョイに「意味わかんねー!!!」と思わせることが出来るのか、ジョイの常識内でいるのか想像を超えることができるのか、それが本作の核となっているのだ。

 

 

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と『ボボボーボ・ボーボボ』の類似点を分かって頂けただろうか。しかし、当たり前だが相違点もある

ボケとツッコミの文化 である。

アメリカでもボケとツッコミの文化はあるが、日本ほど明確化されていない。故にエブエブでもツッコミはほぼ不在である。ビュティ的存在はいない。遠くから蚊が飛ぶような声で「お母さん何しているの……」みたいなツッコミ(?)はあるが……。いないならいないで、我々観客がビュティになるんだよ!!!!!!!!!!!

 

ツッコミ不在の大乱闘ハジケ勝負。阿呆の殴り合い。

本当に心の底から阿保なんだけど、それでもみんなカッコイイんだ。

 

 

ADHD

初期の段階ではエブリンは正式には診断されていないものの、ADHDを患っており、その症状ゆえに別の世界に入っていけるというアイディアだったらしい。僕も診察はしてないけど、集中力も注意力も散漫で酷い人生送ってきた。そんな我々がマルチバースを股にかけて冒険してたってこと。そんな気はしてたわ。  

最終的な結論が保守的という批判もあるが、本作は映画クレヨンしんちゃん的でもあるので家族愛が描かれるのは仕方ない。僕は野原一家ファイヤー!が幻聴で聞こえてきたシーンで何もかも受け入れた。

 

 

最後に

本作がアカデミー賞最有力候補になるなら、ボーボボも実写化したらしたらで社会問題を取り入れたら結構良い所行けそうな気がする。毛の王国を滅ぼした白人マルガリータ帝国に立ち向かう黒人のボーボボ。ビュティはアジア人で、ジャンプ作品のヒロインといえばこの人橋本環奈でいこう。これはいける()

 

 

最後に、映画エブエブは確定申告映画でもあるので、公開のタイミングが確定申告と被ってしまったけど確定申告終わってない人は終わらせてから是非、観て欲しい。そうじゃないと冒頭の領収書のやり取りから映画に集中出来ないと思う。