旅行は良い。
僕のような存在が気持ち悪いだけで何の生産性もなく、仕事でも出世街道真っ先に諦めた男でも
観光地に行って、城や寺や絶景の風景の写真を撮る。
教養がある訳ではないので、城を見ても「思ってたよりショボい」「想像より大きい」「写真で見たのと一緒」以上の感想が出てこないのだが、「本物の城見た!ヨシ!」という実績解除の為だけに見に行く。それで良かった。しかし、今は違う。違ってしまった。
『ブラタモリ』が始まり、タモリさんが「この石垣はですね~」と視聴者に教養マウントとりながら楽しそうにしているのも見てしまうと「石垣どころか城を見ても楽しめない自分……」という劣等感が心のほんの隙間に生まれてしまったからだ。ならば「勉強しよう!」と意欲が生まれれば良いのだが、惰眠を貪ってしまう自分を抑えきれない。
そんな教養のない堕落した僕でも楽しめる旅行はある。「食べる」のが目的の旅行だ。
腹を満たし、視覚と嗅覚と味覚を刺激する。これ以上の幸せはあるか?否、ない。
そしてそんな食べるだけの旅行に最適な場所がある。香川である。
「うどん県」に改名するぐらいのうどん推し。同僚と旅行の話題になって「香川行ってきたの?」「はい」「うどん食べた?」と二言目には観光名所ではなく食事がでてくる都道府県も中々ない。「金刀比羅宮を見に香川行ってきます」とうどん目的と言うのが恥ずかしい場合のカモフラージュ観光地が一応あるのポイント高い。本当にそこら辺に美味いうどん屋があるので事前に調べて行っても良いし、何も調べず行っても満足度高いのも最高。
今回はそんな香川でうどん食って食って食って食って食って食う旅行をしたので、そのレポを書いていく。
うどんバカ一代
朝の5時半。
うどん県の朝は早い。
香川のうどん屋は夕方には閉まる店が多いので午前中にどれだけまわれるかが勝負の決めてだからだ。
昨晩20時まで仕事をして帰宅し、ドラマの『相棒』を見てから真夜中の間に車に乗って香川にやってきた。不眠不休。
こんなにも朝が早いのは6時から開店にうどんバカ一代目的である。
高松市の観光名所みたいな店で行列が絶えないが、開店直後ならまだ空いている。
注文したのはここの名物である釜バターうどん。サイズは中(2玉)610円
釜バターうどんは熱々の釜揚げうどんにバターと生卵、粗挽きの黒胡椒をトッピングしたうどん。うどんを受け取った瞬間からするバターの香りがたまらない。
天かすと青ねぎはセルフでチョイスも出来て入れ放題なのも嬉しい。
テーブルに設置してある醤油をひとかけして一気に混ぜると完成。
一口食べてみると、笑っちゃうぐらいカルボナーラ。
うどん県の方々、うどんのこと毎日考え過ぎてうどんの向こう側に行ってしまった感すらある。うどんのコシに卵のコクとバターの豊かな風味にピリッとした黒胡椒のアクセントが混じり合い、あっという間に食べてしまった。朝6時に食べるには確実に重たいが、食べている最中はそんなこと気にならないぐらい美味しい。また、味は濃いめだが、後味は悪くないのもポイント高い。良いバター使ってそうである。
よしや
午前7時。2件目は「純手打うどん よしや」
『ナイスタウン』という香川ローカルで一番有名な情報誌で開催された「第一回 ナイスタウン讃岐うどん選手権2017」でも優勝していたり、地元民にも愛されているうどん屋だ。
ここは自販機発券のため、コミュ障にも注文が優しい。定員さんに「あっ‥あっ‥」と顔なしにならなくても良いと思うと気が楽。
注文したのは「ぶっかけうどん」中(2玉)450円
機械製麺の多い昨今、ここは正真正銘の手打ちで有名。しなやかで伸びとコシ、そしてねじれのある麺にぶっかけ出汁がよく絡む。入れ放題の天カスも美味しかった。
がもう
午前8時半。3件目は「がもう」
ここに来るまでの道が絶妙に細くて、慣れない車の運転で「どうにかなれー!」と思いながら渡ったのはここだけの秘密である。
メニューはシンプルで、うどんの玉数と麺の温・冷を選ぶだけ。かけうどんオンリーと聞いていたが、蕎麦もあるらしく、地元民らしいおじちゃんおばちゃんは「蕎麦」を次々に頼んでいて、僕もそっちにしようかと悩む。しかし、初見からイキナリ蕎麦はないだろとうどんを注文。
うどんの大(2玉)は250円と滅茶苦茶安い。120円のあげをセルフで乗せ、うどんの器にダシを入れるも自分というシステムに困惑しつつも前の人の行動をマネしてなんとかやる。
屋内にも食べるところはあるが、テーブル2つ分しかない。外でも食べることが出来るので、青空のもと開放感たっぷりにうどんの美味さを堪能できる名店である。大行列で並んでいる他の客を眺めながら食べるうどんは大変美味。
程よいコシと小麦の香りで香川のうどんを堪能。ラーメン屋でよくあるシンプルな美味しいラーメン食べて「これで良いんだよ!」の感想に似ている。
店の近くに「がもう家」という宿があるので系列店なのかなと思っていたら違うらしい。がもうという苗字が多い場所だったのかな。
麺処 綿谷
朝の9時。4件目は麺処 綿谷。「香川県民1000人に聞く本当に好きなうどん屋」で1位になった店である。朝早いのに客が多い。
朝から4杯目のうどんは流石にお腹も一杯だが、止まらない。
スペシャルぶっかけを注文。670円。
お腹一杯の所に滅茶苦茶ボリューミーなうどんが来る。牛と豚の2種類の肉に、ワカメ、温玉、ネギ、レモンの具材。そして天カス、フレーク状の鷹の爪と七味をセルストッピングできる。
甘めに調理されたお肉と麺が絡み温玉のまろやかさとワカメの歯ごたえがガツンと来てズルズルいってしまう。やはり冷えた状態だと、コシがつよく、食べ応えがある。肉をつゆに浸し、卵をくずし、うどんに絡めて味をかえるのもよい。うどんはいいものだ。
最後は出汁をのむ。肉のうま味にちょっと辛めの七味が良いアクセントになっていて美味。
三嶋製麺所
12時。少し休憩してからの5件目は映画『UDON』の冒頭に出てきて聖地になったことでも有名な三嶋製麺所。あの、オープニングで霧と熊におわれて道に迷って、ようやく人家にたどり着いた先がうどんやさんだった、という設定で登場した三嶋製麺所である。今ではグーグルマップがあるのでそんな迷わず行ける。
山の中にあるわ、店には看板がないわで、映画通り、長閑な風景の中ひっそりとあるうどん屋。駐車場の場所もあらかじめ知ってないと分からないと思う。
メニューは
うどん(温or冷)の大と小、そしてそば(温or冷)の大と小のみ。値段も200円前後。
そして生玉子があるだけといかにも聖地的な店である。
アツアツのうどんに卵がどろどろに絡んでいる。醤油を表面に少し垂らす。醤油が表面をツーとつたっていく。かき混ぜると熱々のうどんが蒸気を立ち上げ、醤油の香りが立ち込める。それを嗅ぎながら、一気に啜る。うまい。うまい。
同じく映画『UDON』で登場した「宮武うどん店」は閉店していたり、映画を観ていて涎たらしたあのうどんはいつでも食べれる保証なんてない。食べれる時に食べに行く。それが大事なんだなぁって思いながらうどんを食べる。
仏生山温泉 天平湯
13時ごろ。流石に腹が限界なので、ここで風呂。飯食って腹を満たし、風呂に入ってサッパリする。無敵の旅行プランである
四国の風呂といえば愛媛にある道後温泉が有名だが、ここもオススメ。
地元の建築家が設計したおしゃれな銭湯で、まるで美術館のような外観である。3回ぐらい「オシャレ~~~」と言った気がする。
浴室は中庭を囲む形で内湯と露天風呂があり、開放感があって気持ちのいい空間である。
ただ、おじいちゃんが真ん中の中庭に落ちるというハプニングを見てしまった。
源泉も掛け流しで泉質もヌルヌルで気持ち良い。ずっ~~~~と入っていたいタイプ。
サウナは床暖房のように暖かくなった床に寝転がる岩盤浴スタイルしかないが、長時間の運転の後に寝っ転がりながらウトウトするのは気持ち良い。
あと、この値上げしまくっている昨今の中でコーヒー牛乳が120円で買えるのはアド。
本格手打ちうどん おか泉
15時。この時間になると閉まっているうどん屋は多いが、このまま帰るのもアレなのでもう一杯食べることにする。
おか泉は地元民は行かないという評判しか聞かないが、地元民行かない=不味いという図式はないのでワクワクしながら店に入る。
ここはおでんもあるので食べたくなるのを我慢できずに「大根」を食べる。おでんは大根あれば、それで良い。
ひや天おろしを注文する。1,100円と香川で食べたうどんの中でダントツで高いが、巨大エビ天2本がドーン!とそびえ立つのは迫力がある。中のエビも大きくて、たまによくある「ほとんど衣やんけ!」ではない。
コシの強いうどんに甘めの汁。天ぷらも揚げたてサクサクで美味しい。今日最後のうどんに相応しい美味しさ。
食べた後にレシート渡されたの思い返してみるとここだけである。
帰る
21時ぐらいに帰宅。
流石に6杯もうどんを食べるともう「うどんはもういいよ~~」状態である。ゲップするとうどんの臭いがする……。
しかし、うどんを食べただけなのにお腹も心も満足感で一杯である。何一つモヤモヤがない。
これからも食べまくる旅行を沢山していきたいものである。