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【ネタバレ】『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』感想。絆、勇気、友情VSダーク松平健

どうせ殺せれないんだからデスゲームに子供を参加させんな

 

逃走中が映画化されると聞いてすごくワクワクしたんですよ。逃走中と聞くと大半の人はハンターから逃げて大金ゲットというイメージが湧くかもしれないが、個人的に逃走中で一番好きなのはその世界観、ストーリーである。

 

そもそも逃走中の舞台は基本的に2900年の月面。地球が人の住めない環境になった事で人類は月面に移住し、そこに君臨している巨大企業 「クロノス社」 がアンドロイド 「ハンター」 を使った一大エンターテイメントゲーム 「逃走中」 を開催しているという設定だ。

天才科学者・月村サトシが逃走中の収益で月の環境改善を目指すが、クロノス社はハンターを使い、月面支配を企んでおり…という展開や、逃走中を開催して資金を集め軍事国家を作ることを目的とするクロノス社のライバル企業ヘリオス社の有明リョージや朱月サクよって月村サトシが拉致されたり、月村サトシが爆発で生死不明になった後、月村サトシとは性格が真逆で実の兄である如月カケルが登場したりといった逃走中のゲーム中にちょくちょく安っぽい衣装と演技で挟まれる。むしろゲーム部分がいらないから先を見せろってなる。

 

そんな逃走中の通称「未来ドラマ」と呼ばれるストーリー(茶番劇)は残念ながら足立 梨花演じる青山シズカがゲームマスターを引き継いでからこの数年ほぼ動いていない。なんなら足立さんが15周年プロジェクト発表会に出席した際のインタビューで

「お気づきの方もいらっしゃると思いますが、これは20歳のときに撮った映像をずっと使い回しております」「いつの間にか(収録に)呼ばれなくなったんですけど、番組見ると私、いるんですよ」

と暴露するぐらいである。

 

令和生まれの子供なんて大人と違って月村サトシを知らないと思う。

だからこそ、逃走中ストーリー愛好家は飢えているのである。

月村サトシは!?如月カケルは!?高月ハンゾウは!?ヘリオス社は!?そしてクロノス社は!!??

そんな期待を胸に映画を観た。

 

 

何も登場しない。

 

厳密に言うとクロノス社というワードは出てくるけど、現代が舞台だし、ダーク松平健は出てくるのに月村サトシなどは一切で出てこない。クロノス社の掘り下げなども一切ない。えっ未来ドラマって実質終了したって?そんな…。

ここからは映画の内容を掘り下げで語っていくよ。

 

 

アイドルの顔を見る映画

JO1とFANTASTICSが主演ということで、そういう映画である。カメラも基本ドアップでアイドルの顔を映すので、それで満足できるかどうかって話である。

 

ストーリーは添え物。逃走中に参加したのに途中から捕まったら消滅してしまうデスゲームになってしまった。最後まで生き残れるか?という縦軸のストーリーで展開していく。

そしてダーク松平健にクロノス社が乗っ取られてからワイルドハンターという新種のハンターが登場する。特徴はその大きな口で、その口で捕まえた逃走者を食べて消滅させるのかなと思いきや、捕まった逃走者はなんか足元からスーッと消えていくのである。その口は一体何のためにあるんだ?と困惑を隠せない。またモニターにダーク松平健一味が登場すると画面にノイズが走るのだが、ノイズを走らせ過ぎで純粋に見辛くて不快である。

 

途中色々な駆け引きがありそうなゲームが登場するが頭脳戦とか駆け引きは特にない。仲間を信じて行動するか自己犠牲か、自分から無駄に死んでいくかだ。

 

 

主人子たちは高校時代に陸上部の仲間だったが、ある事をきっかけにバラバラになってしまった事情を抱えている。それぞれ個性あってイケメンでゲームが進む毎に誤解が解け仲間としての絆が深まっていく。最後は元陸上部っぽくバトンを繋げていくように宝を開ける鍵を自分を犠牲にしながら次に渡していくのだが、歯で鍵を咥えて頭ぶん回して結構遠い特定の位置に落とすのがやたらうまい投資にハマっているだけのただの大学生のスゴ技だったり、時間がないのに鍵を渡す時に「俺の話を聞いてくれ!」と自分の身の丈話をする元エースだったりしてじわじわくる。

そして極めつけはラスト。

それまでの皆の想いを受け取り、宝を開けるためにラスボスと対峙する主人公。映画を見に来ている観客もアイドルのカッコイイ所を見たいだろうし、カッコよく決めてくれると思うじゃん!!まさかのここから消滅させられるのである。しかも「なんでだよ…」みたいな情けない事言いながら足元からスーッと消えていく。さっきまでの熱い展開はなんだったの。

 

主人公たち全員消滅してしまい、残ったのは過去にトラウマがあって喋れない小学生の男の子とラスボスとの一騎打ちという誰が見たいんだこの展開?になる。

最後の最後でまさかのJO1とFANTASTICSのファンですら「?」とする展開が凄い。制作陣的には子供から大人まで楽しめる映画にしたいから共感できるように小学生を登場させたのだろうけども、僕が子供の時って別に同学年の子供に共感するとかあんまりなかったからイマイチよく分からない。それよりカッコいい大人が登場してくれた方がテンション上がった。というか、デスゲームモノにメタ的に死ぬことがないと分かっている小学生を出すの、ただただ緊張感がなくなるだけだろ。

 

喋れない男の子もこの映画で起きた全てをリセットするボタンをいつでも押せる状況なのに中々押さないのにもイライラしてしまう。襲うラスボスも急に動きがのろくなるし。

というか、喋れない設定なのに途中であった21を言ったら負けというゲームでどうやって勝ったのか意味不明過ぎる。

 

 

最後に

基本的にポンコツ映画である。感動の押し付けが凄いのもポンコツ映画らしくて好き。

ポンコツ映画はそのポンコツさが面白かったりするので、是非見て欲しい映画。決して虚無ではない。何か全体的に懐かしい感じがするので令和でもこういう映画観れるんだっていうのが嬉しい。あとHIKAKINだったりクロちゃんだったりゴイゴイスーだったりガチャピンだったりゲストキャラの登場のさせ方が結構面白い。運営サイドしか知らない情報持ってるので何かありそうで何もなかった邪悪な廣井きくりみたいなキャラクターだったり、何か急に頼もしい味方になる2人の子分だったり、要所要所は輝いている。全体になるとぼやけるが…。

 

僕は最初に舞台挨拶見てから本編の流れで、舞台挨拶に登場したオシャレな見た目と映画本編では全然雰囲気違って誰が誰が分からなかったけれども、舞台挨拶でオカリナさんに似ているといじられた人だけは映画本編で「オカリナさん!」と分かってよかった。というかJO1ってずっと韓国アイドルだと思ってた。日本グループって知れただけでも良かった。

 

それはそれとして、「未来ドラマ」そしてクロノス社を描いた映画も頼む…!!!!