『アンブレイカブル』、『スプリット』と続くシャマランユニバースの一作である、『ミスターガラス』を観て、とても楽しめし、傑作だと思うのですが、一つだけ、デヴィッド・ダンの扱いだけ引っかかるものがあったのでそれを主にして作品の感想書いていこうと思います。 バリバリネタバレあるというかネタバレしかないので気をつけてください。
□今までのシャマランユニバースを軽く振り返る
『アンブレイカブル』
2001年公開。列車事故でタダ一人残ったしがない中年警備員ハゲのデヴィッド・ダン(ブルース・ウィルス)は骨形成不全症という難病をもつイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)から手紙が届き、会います。そしてデヴィッドがコミックのヒーローのような存在であると伝えます。最初は信じていませんでしたが色々あり、愛する妻子との関わりを通して自分の力を確信したデヴィッドは少女暴行監禁を解決しました。最後、実はイライジャが列車事故始めとする数々の大規模事故の犯人だとい判明し、メディアに「Mr.ガラス」と名付けられたイライジャはデヴィッドの通報により逮捕されて物語は終わります。
『スプリット』
2017年公開。引き取られた叔父に性的虐待を受けていた女子高生ケーシー・クック(アニャ・テイラー=ジョイ)は別に仲も良くない友達達と一緒に拉致監禁されてしまいます。誘拐犯ハゲのケビン(ジェームズ・マカヴォイ)は、解離性同一性障害、いわゆる多重人格でした。色々ありケビンの24番目の人格「ビースト」が目覚め、可愛くない女子高生達を殺し、ケビンの主治医で精神科医カレン・フレッチャー博士も殺し、ケーシーも追い詰めますが、ケーシーの悲惨な過去や、日常的に虐待を受けていること察し親から保護されているという不道徳な者以外であったため、ケーシーを純粋な者と見なし、そのままどこかに行き物語が終わります。
□『ミスターガラス』あらすじ
『スプリット』で逃げたケビンはまた新しくチアリーダー集団(シャマランの趣味だと思う)を拉致監禁し、それを『アンブレイカブル』から自警団として息子(アンブレイカブルから役続行でその成長をみた観客は親戚の叔父叔母になる)と行動していたデヴィッドはチアリーダー集団を救い、ビーストモードになっているケビンと戦います(ここはまぁ予算が大変なんだなぁ~っていうバトルシーンですけど超人になりすぎないギリギリのリアルがあると思います)しかし、途中で警察が割り込んできて二人とも捕まり、精神病棟に移されました。
そこで精神科医のステイプル先生に出会い、ケビンもデヴィッドも超人なのではなく、ただの普通の人であると説明します。空想科学読本みたいな結構無理ある説明に見えましたが先生という肩書きと論破力でケビンもデヴィッドも自分の力について揺らぎます。
そして同じく精神病棟に薬漬けでおかしくなったというカモフラージュしていたイライジャは超人というモノを知らしめるために高層タワーでケビンとデヴィッドを戦わせるという目的のため、ケビンと脱走(ここらへんの警備があまりにもガバガバだけどまぁお約束ですね)デヴィッドはそれを追います。
終盤ビーストモードのケビンとデヴィッドは精神病棟前で再び決戦!しかし、途中ケビンの父親が実は『アンブレイカブル』で起きた列車事故の被害者だとわかり、ケビンがイライジャを殺し、割り込んできた警備隊にケビンもデヴィッドも殺されます。
実は精神科医のステイプル先生は超人を人知れず抹消する結社の一員だとわかります(結社の集合がレストランなんですがメンバー以外の人が去るまで店に居続け、本題の会話はしないという圧倒的非効率を実践しており、もしコーヒー1杯で何時間も居続けるおばさんいたらどうするんだ、貸し切れよというツッコミはおいといて)
最後の最後にビーストモードのケビンとデヴィッドが戦っている姿がネットにより世界中に配信されて終わるという物語です。
□デヴィッド・ダンというヒーロー
ようやく本題ですが、皆さんもブルース・ウィルスという俳優さんはご存じだと思います。『ダイハード』シリーズで世界一ついてない男であり、くたびれたおっさんが悪態をつきながら戦う最強無敵のヒーローを演じたり、もはや世界一有名な終わり方をした『シックスセンス』で実は死んでいた幽霊役を演じたりしていました。私も子供の頃、よく『ダイハード』を観ていたのでブルース・ウィルス=無敵であり等身大のヒーローという認識とありました。
そんな彼が『アンブレイカブル』では奥さんともうまくいっていない口数も少ない冴えない中年警備員を演じていました。タダこれは彼がヒーローとして輝くための土台という認識だったため、奥さんと子供に仲良くなって以外の要素は最後にヒーローとして目覚めた後に変わっていくのかなと思いきや、『ミスターガラス』ではそんな奥さんも亡くなり、相変わらず口数も少ない地味で冴えない禿げたおっさんのままで、作中でも結構影が薄いです。
終盤、ケビンもイライジャもそれぞれ自分の答えが見つかったり目的達成したりして心安らかに死んでいきますが、デヴィッドだけ苦手な水中戦で弱ったところを水溜まりに頭を押しつけられ溺死というこんな地味なヒーローの死に方は観たことないですね(ヒーローでも死ぬときはあっけないとうシャマランからのメッセージかもしれませんが)
しかしあまりにもあっけなく死んでしまうのであぁ、これは最後にどんでん返しで実は死んでませんでしたパターンやBVSのラストのスーパーマンみたいに棺桶が鼓動して終わるのかなと思いきや、そんな事はまるでなく超人はいるかもしれないという認識を世界中に知らしめて、一点の分子が崩れると全体が一気に崩れて粉々に割れる性質を持っている映画タイトルのガラスのように世界は変わっていくことを暗示して終わります。
いや、良い終わり方だけど!結局イライジャの思惑通りで終わるんですよね。ケビンもデヴィッドもそのための駒でしかないわけです。
確かに『アンブレイカブル』ではイライジャの誕生から物語は始まり、『ミスターガラス』では彼の死で終わる訳ですからからがこの物語の主役であり彼が報われるのも当然なんでしょうし、ケビンは散々人も殺してるし、死ぬ時は美少女に抱かれながら死んだわけだから本望なんでしょうけど、デヴィッドは最後、息子を観ることなく死んじゃうんです。そもそもデヴィッドはその口数の少なさからか、一体全体何を考えて何がしたいのか、目的はあるのか、本当にヒーローとして活動したいのか、それとも奥さんが死んで自暴自棄になってるだけなのか、母親が死んで悲しんでいる息子を勇気付けるためなのか分からないままなんですね。個人的には息子の為なのかなとは思いますが。
最後の最後のシーンでデヴィッドの息子とケーシー、そしてイライジャの母親が一同に集まるんですが、あんな人様に迷惑かけまくっていたイライジャの母親が「私がイライジャの母親よ」とドヤ顔気味なのがモヤモヤしました。
□受け継がれるヒーロー
『アンブレイカブル』から『ミスターガラス』までの十数年前の年月の間で一番変わったのってブルース・ウィルスの人気だと思うんですね。 『アンブレイカブル』の時はまだまだ人気があり、様々なアクション映画にも出ていましたけど十数年でブルース・ウィルス自体も歳取りましたし、ヴィン・ディーゼルやロック様、ステイサムといった新しいアクションスターが次々に登場しました。
ただ、僕らみたいなファンや、今のアクション映画を築き上げている人達って『ダイハード』やブルース・ウィルスを観て育ってきたんだと思うんです。ここら辺は『ミスターガラス』のラストと同じだと思うんですよ。本人の意思とは関係なく、デヴィッドの映像を観てあの世界が新しい価値観が波及したように。僕達の世界もブルース・ウィルスを観て新しい価値観や夢、ヒーローを感じる事が出来たんですね。
最後、デヴィッドはヒーローとして息子に尊敬されながら、ケビンと戦い、弱りながらも映画のように華々しい最後でなくても必死に足掻いて死んでいくのはシャマランからブルース・ウィルスへの、そして観客へのメッセージのような気がして…
まぁ、完全にこじつけですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。