社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

【ネタバレ】映画『ドクター・ストレンジ/MoM』感想と解説。サムライミがやりたい放題で楽しそう

ドクター・ストレンジ/MoM』というより『ワンダヴィジョン/MoM/withドクター・ストレンジ/死霊のはらわた添え』みたいな映画

【監督】サム・ライミ

まず、この映画を観る前にディズニー+で配信してる『ワンダビジョン』を見てない人は絶対に見てからの方が良いし、見てなくても劇場で売ってる『ワンダビジョン』のパンフ読めばドクストMOMのネタバレは無しで全容が分かるのでそれを読んで欲しい。『X-MEN』シリーズは別に観なくていい。

ディズニージャパン、買収した20世紀スタジオの映画はパンフレット作らない事多いのにマーベルとなると映画じゃなくてもパンフレット作るの何!?という感情もあるけど、まぁ今回は良い仕事してる。20世紀スタジオもお願いします。それではここからネタバレありで感想書いていく。

 

予告から想像した内容と違い過ぎ

www.youtube.com

 

この予告を見た時の僕は

予告編のワンダ:ワンダはドラマの『ワンダビジョン』で闇落ちから復帰したけど、別ユニバースのワンダが敵として登場して戦いそう→最初から最後までメインヴィランでした

予告編のゾンビストレンジ:きっとこいつがラスボスだな→まさかの主人公の最終フォーム

予告編のイルミナティ:なんなら全ユニバースの管理者レベルで強そう→かませ犬

予想できるかこんなの!!!

 

 

ママには子供をぶつけるんだよ!

ワンダって

  • 子供の頃に紛争で両親が死んだ
  • 過酷なヒドラの人体実験を幼少期に受けた
  • 残った唯一の肉親の弟ピエトロが死んだ
  • 立ち直るのに支えになってくれたヴィジョンを結果的に自分の手で殺した上でそれが無駄。
  • せめてヴィジョンを埋葬したいとソードの本部に行くと、彼はバラバラに解体されていたのにショックを受け、「現実改変能力」で自分の世界を作る
  • その世界は幻想だけど理想の家庭と子供を手に入れたよ!でも多くの人を巻き込んだから最後は自分で消したよ!
  • 他の世界に幸せそうに暮らしてる自分と子供が沢山いるよ→私は?????

やった事は到底許せないけど同情はする。愛ゆえに判断を間違えるのって他のヒーロー達もあったことだと思う。例えば、自分の両親を殺したのが洗脳されたバッキーだと知ったトニースタークや、ガモーラが死んだ事を知った時のスターロードなど。

ただ、ワンダが不運だったのは力があまりにも強過ぎるが故に『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で住民を犠牲にしてしまったのと同じで規模が大きくなってしまいがちなところだ。

確かに『ワンダビジョン』で精神支配された住民たちの事を考えるとあのドラマのオチでワンダが許されるのおかしいだろ!と僕もモヤモヤしたし、ヒーローとして死なないとダメとは思っていたけど、想像以上に救いのない悲しいオチ。

 

僕はやなせたかし先生のヒーロー像に影響されているので、ヒーローは巨悪を倒す存在であると同時に困っている人を助けたり、お腹がすいたら食べ物を分けてくれたり、苦しみの中にいる人に手を差し伸べてくれる存在だと思うので、シリーズを重ねる上で悲しみだけを背負って生きてきたワンダが最終的にたどり着いたのがメインヴィランの立ち回りで誰も手を差し伸べる事に成功出来なかったのが悲しい。

序盤でカマータージの人達を虐殺しているのを見て「あっこれあかん奴だ…」と思ったけど、救いはないんですか!?

ともう一度『ワンダビジョン』を見直した。

あのドラマって最後、「助けてママ、お願い!」と消えたはずの双子の声が聞こえて終わるんですよね。多分それってダークホールドの力による幻聴か、別ユニバースからのSOSだと思うんです。

 

そうするとワンダは子供たちを救わなければならないと考え、それでユニバースの行き来する能力があれば子供たちが病気や大けがになっても助けることが出来ると考えるようになる→別ユニバースの自分は力がなく信用できない→自分がなんとかしないとダメだと思うようになる。結果的にこの考えが悪落ちの原因になる。ドリームウォークしとけば、子供たちと戯れることができるので本当はあそこまでアメリカを執拗に狙う必要はない。でもそれでは何かあった時に子供たちを救う事が出来ない。自分1人で何とか出来る「力」がいる。

 

しかし、その目的は最終的に子供達が自分を拒否し、自分の役割がそれではない事を知り、別ユニバースの自分が言った「私が愛します」を聞いた事で、自分が何とかしなくても別ユニバースのワンダが子供たちを守ってくれると気づいたんじゃないかな。それはもしかしたらずっと自分が子供達を守らなければと苦しんでいた彼女にとってほんの微かな救いになってくれたらいいなとそんな祈り。

そしてストレンジがアメリカの力を奪って自分で解決せずに、彼女の後押しすることを選んだのと同じく、「自分でメスを握らないと気が済まない奴」だった魔女が、それを思い上がりだと認め、子供を他人に託す物語なんだろな。

 

 

あと、せっかくプロフェッサーXがいい感じで救いそうだったのに首ポキッで終わりなんて。あのすごく頼りになるようなならないような扱いが絶妙にプロフェッサーXそのものだったけども!

 

そもそもプロフェッサーXが精神世界で救出しようとしたワンダってダークホールドによって支配されながらも良心があるワンダじゃなくて、身体乗っ取られたイルミナティ世界のワンダなんだな。


アース616のワンダは最後の最後以外徹頭徹尾ヴィランだったと思うと悲しみ

 

 

イルミナティ

「ワンダはどうにでも出来るからストレンジが最も問題なんだ」→ワンダに瞬殺

もしかして‥ギャグ集団なのか…?

 

そんな愉快なイルミナティの紹介だ!

プロフェッサーX
 世界最強のテレパシスト→首ゴキ!
・ブラックボルト
 インヒューマンズの王。核爆弾級の破壊力を持つ声の持ち主→口を塞がれ頭蓋骨陥没
・ミスターファンタスティック
 史上最高の頭脳を持つ、ゴム人間の科学者→裂けるチーズ
キャプテン・アメリカ(カーター)
 第二次世界大戦から生きる超人兵士→胴体両断!
キャプテン・マーベル(マリア) 
 無限石の能力を持つ超人。キャプテン・マーベルに出てきた黒人のパイロット、マリア・ランボー→像の下敷き!
・モルド
 至高の魔術師。別世界のモルド→こっちでも小物

 

それでいいのかイルミナティ!?

特に『ファンタスティック・フォー』なんて爆死映画から新しい作品を作るというハードルの高さがあるのにそこに加えて「ワンダに手も足も出ず殺されたヒーロー」って印象消えないぞ!?そりゃジョン・ワッツ監督も離脱するよ!という気持ち。

 

何か『ワンダビジョン』のクイックシルバーの扱いや『ホークアイ』のキングピンの扱い見ているとケヴィン・ファイギ の「MCU本流以外で出たキャラなんて撒き餌以外つかわねー」という強い信念を感じる。

まぁ、プロフェッサーXは今までも『ファイナルディシジョン』で塵になったし、『ローガン』ではローガンと勘違いした偽ローガンに刺されて死んだりロクな死に方してないな…。

パトリック・スチュワートも高年齢だし、プロフェッサーX役引退と言っていたから今回がファンサービスでもう二度と出ない可能性あると思うとこんな終わり方で悲しくなりますよ。

あと、よく考えなくてもミスターファンタスティックが「ブラックボルトが口を開いたらお前は死ぬぞ」みたいな余計なこと言わなかったらそのまま勝てたんじゃないか。
ワンダもめちゃくちゃ過小評価してたしあの世界のミスターファンタスティックは頭悪いだろ

 

細かな所

  • エンドクレジットのシャーリーズ・セロンはおそらく「クレア」父親はダークディメンションの旧支配者であったがドルマムゥの登場以後は配下だったり、母親はドルマムゥの妹だったり、ドルマムゥの縁があるキャラなのでドルマムゥの再登場もあるのか?
  • ノーウェイホームもドクターストレンジMoMもマルチバースが発生してるのにTVAが介入しないのは既に神聖時間軸が崩壊しているからかな、ロキが悪い。
  • 敵を倒してこれで一安心と家から出たら取りつかれてて主人公の絶叫顔で終わるの『死霊のはらわた』と完全に同じオチだったけど、

ストレンジに第三の目が!一体どうなる?!

普通に生活してました
なんだこれ!

  • ストレンジ先生は合理性が過ぎる部分があったけど、本作で犠牲を強いることなく未来を作ろうとするヒーローになったのは良かった。また、「自分でメスを握らないと気が済まない奴」だったストレンジ先生が、クリスティーンに自らの身の安全を託し、アメリカに「君ならできる」とワンダを託すのも変化の表れって感じで良い。やはりこの映画はストレンジの映画。
  • パンフでサム・ライミ監督が「映画監督とはオーケストラの指揮のようなもの。美しいハーモニを奏でるように指揮する」と言ってたけど、音符攻撃なにアレ。突然挟まれるオシャレ魔術に気が狂いそう。
  • 人名で「アメリカ」ってやっぱり違和感ある。刃牙で「日本」って名前の格闘家が出たら「正気か?」ってなるのと同じ。
  • ノーウェイホームでもそうだったけど、ワンダは子供。ストレンジはクリスティーンと本当にヒーローが世界を救う意外で報われない展開が続く。次の映画であるソーならきっと!完全なハッピーエンドになってくれるハズ!!
  • プロフェッサーXの登場シーンで流れるアニメ版X-MENのテーマのアレンジはズルい。あとは活躍してくれたら完璧だった。
  • イルミナティ世界のヒーローたち、弱い癖にプライドだけは高そうでストレンジ先生の負担が他より高そうなのが分かる映画だった。

 

最後に

最近のMCUってどうしてもサプライズを求められるし、その傾向はマルチバース展開になってより増したのは事実。ただ100%自業自得なので頑張ってほしいが、高くなっていくハードルを超すのが段々と難しくなってきた印象がある。特にエンドクレジットはフェーズ4になってからテンションが上がらない事が多くなったけど、「勝手に飯食ったなら金払え」という100%正論おじさんが自分を殴り続けたこと3週間、ようやく「終わった」のは劇場も笑いに包まれた良い終わり方だった。

いや、彼何も悪くないよね!?