社会の独房から

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ジャンプ名作漫画『タカヤ -閃武学園激闘伝-』『タカヤ-夜明けの炎刃王-』について語りたい。

「よっしゃあああツッ!THE ENDォォ!!」で有名な『タカヤ-夜明けの炎刃王-』そして『タカヤ -閃武学園激闘伝-』について今回は語りたい。

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    (C)「タカヤ-夜明けの炎刃王-」

 タカヤと言えば、このあまりにもインパクトのある衝撃的な最終回や、途中でタイトルが変わって急に学園バトルモノから異世界バトルモノに変わってしまったこと、ヒロインの白川渚が主人公の火叢タカヤの背中に胸を押し付けた際に発した台詞である「あててんのよ」ばかり話題になる現状に私は憂いてた。確かに「あててんのよ」は現在でも使われる事もある偉業とも言える台詞である。

しかし、この漫画は魅力はそんな所ではないと。

いや、そこも魅力だが、他にも少しはあると。

ちなみにタカヤを知らないという人向けに説明すると週刊少年ジャンプ2005年25号から2006年26号まで連載した坂本裕次郎作の少年漫画作品であり、学園生活から始まり、バトル漫画、異世界転生と作風が次々に変わりジャンプ誌面から最終的によっしゃあああツッ!となってしまった漫画である。

 

白川渚というボコボコヒロイン

この漫画の魅力の一つには、この漫画のヒロインであり、恐らく人気投票したら一位になるのではと思っている白川渚の存在が欠かせない。彼女の魅力はなんと言ってもその男の妄想をそのまま体現したかのような圧倒的な美貌(作者の限界を感じる)と一途な想い、そして高慢でツンデレな性格からの圧倒的ボコボコ描写だ。

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(C)「タカヤ -閃武学園激闘伝-」第一巻

このメインヒロインの白川渚は自分の顔が良い事も自覚していて、主人公のタカヤにも「こんなに可愛い私に好かれて嬉しいでょ?」というキャラ。

そんな彼女がずっと好きだった幼なじみであるタカヤの目の前で顔をボッコボッコにされて「顔・・・ボロボロのなっても・・・き、きらいにならないで・・・」と咽び泣くシーン。

大きな声では言えないが、メッチャ好き。

こんなモノを幼少期に読んでしまった私は恐らくこれの所為で性癖がゆがんでしまったと思う。作者である坂本裕次郎先生には責任取って欲しい(笑顔)

バトル漫画でヒロインも戦う事はあるが、ダメージを受けても『烈火の炎』の風子みたいに(メインヒロインではないが)服装が破れて男子読者に喜ばせるお色気要因になる事が多い。

ただこの漫画ではヒロイン関係なしに顔面を思いっきり殴られる。この男女平等パンチを平然としてくる敵の民度がやばすぎて泣ける。

また、ヒロインの目の据わりようもここまでやるかと思う程の据わりようでゾクゾクする。

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(C)「タカヤ -閃武学園激闘伝-」第一巻

読み切り版タカヤは今読んでもよく出来ていて素晴らしいのでまずこの読み切り版が載っている第一巻だけでも読んでみる価値はあると思う。

ちなみに読み切りではなく本編1話ではボコボコにされないが、代わりにこれまた素敵な絶望顔を見せてくれるのでそこも素晴らしい。

 

ただ、残念なこと話が進んで、『グラップラー刃牙』の最大トーナメントのパクリでなくオマージュ的展開である「閃武新生闘王会」編になると、出場せず観客席で解説要因になってしまった白川渚は驚きや感動みたいな表情はするもののボコボコにされる機会がなくなっていくし、親の顔のように見てきた「森」の風景が「トーナメント会場」になってしまうのも悲しい。

 

ただタカヤのバトル描写は正直悔しいがそこそこ面白い。

タカヤはバトル漫画だが、ジョジョみたいにスタンド能力みたいなモノはないし、「念能力」「○○の実」みたいなものもない。あくまでも格闘術がくる純粋な殴り合い。そんなリアリティラインである。

基本的に覚醒して敵を倒すという事はなく、自分と相手の実力の格差をしっかり描きつつ、どうしたら相手に一矢報いる事が出来るのかの説明もあり、勝つまでの過程を論理的に楽しめる。ただ、勝ち抜け戦であるが故、主人公であるタカヤが勝つことはメタ的視点から分かりきっているので、一切ハラハラする要素がない。安心して読めるね!

そんな丁寧な戦闘も『タカヤ-夜明けの炎刃王-』では全く無くなってしまう。覚醒ドーンである。もう一度言うね、覚醒ドーン。

その代わり風景「森」が復活して懐かしくなってしまうので良い。

 

 治安の悪さと民度の低さ

私は漫画の世界観の中で「治安の悪さ」「民度の低さ」が面白さに直結すると思っているが、このタカヤでも冒頭にタカヤの親がタカヤを100億円で売る事で物語がスタートする。自分の息子を勝手に金で売るその倫理観。それが一切批難される事なく物語が進んでいくその道徳観。

それが普通なのだから、そりゃ底辺の人はヒロインの顔を躊躇なく殴る訳だと納得出来る。

そしてタカヤが入学する閃武学園もいきなり校長が「力」が全てとか『コードギアス』のシャルル・ジ・ブリタニアみたいな事を言い出す。

そんな学園だから、毎日ケンカが起きるし、どう考えても未成年には見えない顔した奴らばかり。鬼邪高校が可愛く見える。また、部活の脚を引っ張るために建築部の手に怪我を負わしたり、陰湿な屑も多い。

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(C)「タカヤ -閃武学園激闘伝-」第二巻

取っておきは侵入者を排除するために「人では重機には勝てない」とか言い出してビルの中で重機を暴れさせる発想力も面白い。

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(C)「タカヤ -閃武学園激闘伝-」第二巻
やはり「治安が悪く」「民度が低い」漫画は面白いなぁと頷く出来なのでオススメだ。

ただ、この頭悪い展開も「閃武新生闘王会」編になると鳴りを潜め、対戦する相手も格闘好きの良い人ばかりになってしまう。唯一の悪い存在だった決勝相手も闘っていく中で実は良い人だったオチを挟んでしまい、タカヤと闘っていく内に改善してしまう。

これが『タカヤ-夜明けの炎刃王-』になるとファンタジー異世界で、治安とかそういう次元ではなくなり(そもそも異世界に行ってからもほぼ戦闘の連続で街並みや民度が全然分からない)、闘う相手も人間ではなく馬人間とかになってしまう。私は重機に乗る馬人間が見たかった。

 

最後に

タカヤ以後、坂本裕次郎先生の活躍はイマイチ分からないが、憶測では坂本次郎にペンネームを変え、『恋染紅葉』の原作を書いて半年で打ち切りになったのではと言われている。真実は分からない。

私は色々衝撃的だった『タカヤ-夜明けの炎刃王-』の終わり方って結構好き。

何でかと言うと、タカヤって全体的にとても明るいんですね。親に売られたり、どんでもない学園に入学したり、突然異世界に行ったり、やろうと思えばどこまでも暗く出来たハズなのにずっと前向きで、底抜けに明るい。それがタカヤであり、そんなタカヤだからこそ、最終回で作者も色々思う所もあったハズなのに今までと変わらずこれ以上ない程の前向きな終わり方。作者が漫画における誇りと信念を感じ取る事が出来る、そんな素晴らしい終わり方だと思う。

 

私はタカヤの絵が結構好きだったので、是非また漫画を描いて欲しい。

例え連載までの道がどれだけ困難でも関係ねぇ。そうさ、今までと何も変わらない。坂本裕次郎先生と読者が力を合わせれば斬り開けない道はないんだッ!!!!

「THE ENDォォ!!よっしゃあああツッ!」

(これが言いたかっただけ)