僕にとって『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』と言えば、「衝撃のアルベルト」さんが生身で第3使徒サキエルと戦うというまさしく「衝撃」をプレイヤーに与えたことと、「素晴らしきヒィッツカラルド」さんがグルンガスト参式を指パッチンで真っ二つにすること、ジャイアントロボが後半インフレについていけず倉庫番になったこと、主役の草間大作くんがショタ可愛いという事しか知らない。
そう、全てスパロボ知識だ。
「ガトーはハゲ」「マークデスティニーでお馴染みの飛鳥真先輩」「シュバルツ・バルトはスパロボオリジナルの敵」などなど何でもスパロボ知識で語ってしまうのは原作ファンからしたらイライラしてしまう事もあるだろう。
当たり前だがロボアニメはスパロボで済ませるのではなく、原作を見た方が良い。
ただ昔のアニメって平気で50話まであるし、間延びしてる描写も多いし、バンダイチャンネルじゃないと見れない奴が多いなどハードルが高い。
その中でOVAで短く、Netflixで見れるしでハードルの低さに定評がある『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』を観たので感想を書いていきたい。
あらすじ
来るべき近未来、人類は第三のエネルギー革命シズマドライブの発明によってかつてない繁栄の時を迎えていた
だが、その輝かしい平和の陰で激しくぶつかり合う二つの力があった世界征服を策謀する秘密結社BF団
「われらの、ビッグファイアのために!」
かたや、彼らに対抗すべく、世界各国より集められた正義のエキスパートたち、国際警察機構
そしてその中に史上最強のロボット、ジャイアントロボを操縦する一人の少年の姿があった
名を、「草間大作」「砕け!ジャイアントロボ!」
世界観が化け物
テレビがあったり、飛行機が飛んでいたり、巨大ロボットが動く。そんな比較的近代史だと思われる世界観の中で漢王朝や三国時代などを思わせる服装の人が出てくる。
(c)光プロ/ショウゲート/フェニックス・エンタテインメント
まぁ1992年から1998年の間に製作されたアニメだし、『ストリートファイターII』のダルシムのように外国の方に対する偏見の塊のようなキャラクターが出てきてもおかしくはない。流石「いきなり差別かよ? 日本人野郎らしいな」で有名な差別主義国家である。ただ、名前をよくよく聞いていると戴宗のように『水滸伝』で出てくる名前のキャラクターが出てくるし、決めつけはあの有名な諸葛孔明が出てくる。
(c)光プロ/ショウゲート/フェニックス・エンタテインメント
最近流行の異世界転生モノであり(ではない)、最近流行の英雄召喚システムである(ではない)時代を先取りしていた。差別国家扱いして誠にごめんなさい。
調べてみると原作が『三国志』や『水滸伝』でもお馴染みの横山光輝先生。
本作はスター・システムを起用しており、横山光輝先生の人気キャラが集結しているスーパー横山光輝大戦でもあるのだ。
その結果、巨大ロボが動くような未来的SF要素と共に『水滸伝』に出てくるような時代のキャラクターたちが大真面目に戦い、死んでいく。更に衝撃を出す人間がいたり、瞬間移動したり、弓矢を大量に飛ばしたり、魔法使いのサリーがいたり、化け物と合身する忍者がいたり、大変奇怪な絵面になっている。
ただ車や飛行機など含めて全ての動力源が止まりつつあるという設定なので木造船や馬での移動に説得力がある。
そもそも、展開が怒涛なので細かなツッコミポイントはスルーしてしまうが巧い。
流石今川監督だ。
(c)光プロ/ショウゲート/フェニックス・エンタテインメント↑主人公の草間大作。あんまり細かなロボの操作もしないし、個人の戦闘力も子供の領域を出ないが、飛んでいるジャイアントロボや動きまくっているジャイアントロボから腕一本で体を支え、吹き飛ばない事をみても握力は相当なモノだと考察できる。短パンの裾が風でヒラヒラするのがショタポイント高い。
十傑集
(c)光プロ/ショウゲート/フェニックス・エンタテインメント
↑これが噂の十傑集走り。
本作の魅力の1つがやはり十傑集だろう。
- 混世魔王 樊瑞
- 衝撃のアルベルト
- 激動たるカワラザキ
- 素晴らしきヒィッツカラルド
- 眩惑のセルバンテス
- 白昼の残月
- マスク・ザ・レッド
- 命の鐘の十常寺
- 暮れなずむ幽鬼
- 直系の怒鬼
感性が小学生なので二の名との組み合わせだけで無限にワクワクしちゃう。
こういう数が多いって敵の幹部ってどうしても最初に出てきた奴が一番印象に残りやすいが、本作でもそう。衝撃のアルベルトさんだ。
(c)光プロ/ショウゲート/フェニックス・エンタテインメント
悪の美学を持つダンディな男、衝撃のアルベルト。
過去、国際警察機構との戦いにおいて盟友・眩惑のセルバンテスを倒し、自分の右目を奪った戴宗に恨みを持っており、己の手で彼を討つ事を望む。しかし、戴宗との最後の戦いにおいて、戴宗が命と引き換えにしてまで任務を優先した為、不完全な形で決着がついてしまった。
爆発が迫るの中、最後に会話がコレ
戴宗「どうした、衝撃の、お前さんも一緒に逝くか」
アルベルト「何を言う戴宗、わしは納得いかんのだ、貴様との決着がこんなもので良い筈があるまい」
戴宗「未練だぜ」
アルベルト「戴宗」
そんな戴宗との不本意な決着もあって、BF団と国際警察機構の戦いは両者自身で付けるものとの信念を硬くしていたアルベルトはBF団員としてではなく私怨で動いている幻夜の行動を許せる訳がなく、幻夜の野望を阻む機会を来るチャンスを待つ。
そして最後の大怪球戦。
ジャイアントロボ絶体絶命の中、ジャイアントロボの肩に雪塊をまとって死んだフリをして隠れしていたアルベルトが姿を現す。
いいか小僧、わしは決してお前たちに加担するのでもなければ、馴れ合うわけでもない だがな この作戦、例えどんな裏があろうともこれだけはわかっているぞ そう世界の運命は、こんな若造などに好きにさせるものではない 全ては我々BF団と貴様等国際警察機構とで、決着をつけるものだ 違うか! 違うか! 違うか!
なぁ、戴宗…
そう言いながら大怪球のエネルギーフィールドを吸い尽くし、死んだ。
滅茶苦茶カッコ良いんだが?
ネタキャラばかり思っていたよ。
戴宗に対するライバル関係を超えた重過ぎる感情も、人間離れした強さも、その死にっぷりも何もかも最高。
また、素晴らしきヒィッツカラルドも登場シーンこそ短かったが、インパクトが凄い。
(c)光プロ/ショウゲート/フェニックス・エンタテインメント
悪の幹部に1人はいる人殺しが好き、勝つのが好き、そんな決して物語の縦軸には入れない小物感。愛せる。
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↑悪の組織の会議あるある「足場が悪い」
父と子
本作のオチはエネルギー革命シズマドライブは実は不完全であり、このまま使い続けると世界中の酸素を奪ってしまう特殊分子を発散してしまう。この事に気づいたフォーグラー博士は特殊分子を中和し、安全なものにする3本のアンチ・シズマドライブを作り上げた。
それは3本揃えることでシズマ中心核を三つに分裂させ、安全なものにできるが、逆に1、2本だと不安定になりシズマドライブを暴走させて破壊してしまう性質を持っていたのだが、その事実を伝えることなくフォーグラー博士が死んでしまう。
これで勘違いしてしまったのが息子の幻夜。
世界を救うのではなく世界を壊すモノだと思ってしまった。
アンチ・シズマドライブを使い「人類への復讐しろ」というメッセージだと思った幻夜によって本編の悲劇が起こったのである。
いや、遺書はちゃんと書こう。
『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』全7話で伝わった一番のメッセージがコレ。フォーグラー博士がどれだけ愛情表現が苦手でも、遺言はしっかり残す必要があった。例えば「シズマドライブを修正しろ」と言いたい場合、「シズマを止めろ」では不十分という事を声を大きくして言いたい。
しかも3本のアンチ・シズマドライブが揃った時初めて、遺言映像が流れるという謎のシステム。
そりゃ、幻夜も
今更それはないじゃないですか!!父さん!なぜ一言でいい、ちゃんと言い残しておいてくれなかったのですか!こんな恐ろしいものを僕に渡しておいて、どうしろっていうんだよ!
ってなるよ。
今回の話、ちゃんと遺言残してたら2話で終わってたよね。
ただ、「幸せは犠牲なしに得ることはできないのか、時代は不幸なしに越えることは出来ないのか」
という父親の言葉に捕らわれ、犠牲を出さないことに執着してしまい何もできなくなってしまった草間大作くんが、父の遺言通りに進み、破壊を喜ぶ幻夜の姿を見て、
こんなのおかしいです、こんなの何かの間違いです、銀鈴さんのお父さんがこんな事望むなんて僕は信じられません
「まだ僕には真実は分からないけれど。言葉の意味にただただ従うのではなく、自分の意志で立ち向かい、今出来る事を精一杯して、一生懸命戦う事が大事」だと気づく。
それはまた托塔天王・晁蓋殿の教えである
「真実とは問いかける事にこそ、その意味もあれば価値もある」
という言葉の意味でもあり、ジャイアントロボとシズマドライブという尋常ではない力を父から貰った草間大作と幻夜の対比としてうまく出来ていたなと思う。
最後に
思ってた以上に人が死んでいく作品だった。
君の推しはもれなく死ぬし、僕の推しも死んでしまった。
孔明が言っていたGR計画とは一体何なのか。それを知るまでは死ねない(一生死ねないかもしれない)
よくよく考えるとロボアニメみていたハズなのにロボについて全然言及してない。
いや、でも最後に草間大作くんが父親と同じように片目をなくしたジャイアントロボに対して、救えなかった父親を重ねながら、味方の協力を得つつ、最後はその片目に入って共に世界を救うのは良かったですよ。映像もリッチなので戦闘も面白かったのも好き。
ただ、ただね。ロボより人の方がクセが強いんじゃ。
最後に個人的一番好きだった長官のウォーミングアップシーンを見ながら終わりたい。時間が余っている人はサクッと見れる本作はオススメですよ。
(c)光プロ/ショウゲート/フェニックス・エンタテインメント