社会の独房から

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映画『レジェンド&バタフライ』感想。キムタク、50歳にして極まる

時代劇というよりラブストーリーもの

あらすじ みんな死んでる

 

 

最近の織田信長といえば『麒麟がくる』で無邪気さと狂気を備えたサイコパス染谷将太の怪演だったり、『どうする家康』で本能寺の変でも普通に生き残りそうな圧倒的強者岡田准一だったりと個性豊かである。そんな中、1998年のTBSドラマで若き日の織田信長を演じた木村拓哉が、49歳で生涯を終えた織田信長の年齢を超え50歳になった木村拓哉が、映画『レジェンド&バタフライ』で再び演じる。

 

まずハッキリ言いたいのは本作の魅力の5割は木村拓哉である。残りの4割は綾瀬はるかで、最後の1割はエンドロールの入り方。

やはり本作は主演二人の顔と表情がすべて。演技とかどうでもよくて顔と表情ね。

とくに木村拓哉は50歳という僕の周りには萎びれたおじいちゃんしかいない年齢になってようやく理想的な陰影がつく面構えと印象的な皺が刻まれた表情を獲得し、もう芝居をしていようがいまいが画面に映るだけでカメラに愛されるトム・クルーズみたいになっている。

また、今回の木村拓哉はカッコイイだけじゃない。綾瀬はるか演じる濃姫との初夜の時はまるで「風俗に始めてきたキムタク」のような緊張感を漂わせながら濃姫にボコボコにされて、惨めに帰っていくシーンとか愛嬌と惨めさがあって好き。

 

織田信長像でいえば、本作は無邪気さと狂気を備えたサイコパスでも、圧倒的強者でもない。緊張すれば脚は震え、威勢は良いが無策。元々は国盗りの夢もなかったただの地元のガキ大将だった。

しかし、裏で支える濃姫ともはや夫婦を超えた「ふたりでひとり」の関係性となり、群雄割拠の時代を駆け抜けていく。

脚本の古沢良太は本作の織田信長についてこう言う。

決してカリスマではなく、弱い部分があり、登りつめるほど背負うものが大きくなることで苦悩する信長です。

 

これ『どうする家康』で家康像でも古沢良太は同じような事言っていたので、僕の中ではこの脚本家の引き出しが少ないだけでは?疑惑もある。

 

 

そして綾瀬はるか。

時代劇って女性を活躍させるのは中々難しく、『麒麟がくる』の駒のように「オリジンキャラを無理に活躍させすぎじゃないか」みたいな評価になりがち。

しかし、濃姫については名は有名だけど、資料が殆ど残っていないので好き放題にできるっていう訳。

そもそも濃姫は名前ではなく「美濃から来た姫」の略で、それぐらい濃姫について史実として分かっていることは非常に少ない。

 

濃姫について(おそらく)分かっていること

  • 「美濃のマムシ」と呼ばれた戦国大名・斎藤道三の娘
  • 織田信秀と斎藤道三が和睦することになった結果、信秀の息子・信長に嫁ぐことになった(濃姫はこの時15歳にして3度目の結婚)
  • 濃姫と信長の間には子は出来なかった(通説)

だから創作では濃姫(帰蝶)の人生の描き方も様々である

  • 本能寺で一緒に燃えた
  • 信長は本当に愛する女が別にいて濃姫はさっさと離縁した
  • 仲良しだったけど信長が狂い、途中で袂を分かった

などなど脚本家の好き放題出来る所ではあるが、近年では元々仲良し夫婦のパターンが多い。 

 

そんな濃姫だが、綾瀬はるかはマムシの娘として可愛がられながらも武家の娘として鍛えられたので、腕も立ち頭もキレる、闘う女として演じる。

特に中盤での綾瀬はるかによる殺戮シーン。なんで濃姫に殺戮シーンあるんだ!?と驚く人もいるかもしれないが、『ICHI』や『精霊の守り人』等々、多くの出演作でキレのあるアクションを披露してきた綾瀬はるかによる殺戮シーンがあるのだ。野蛮な相手に今までの稽古から身体が勝手に動いて殺してしまってから「あ…」ってなるあの間も好き。その後昂ってキムタクも○○○○するのも良い。あの一連の殺戮シーン、必要ない!やり過ぎ!と言われ叩かれそうなんだけど、綾瀬はるかによる殺戮シーン入れたかったんじゃ!!という制作陣による熱い想いを確かに受け取った。

 

 

東映70周年を記念した総製作費20億円

東映代表取締役社長の手塚治が「東映70周年を記念する作品。総事業費は20億円。りん議書に判子を押すとき手が震えた」という本作。

そんな20億を期待して本作を観ると合戦シーン少なすぎてガッカリするかもしれない。

なぜかと言うと合戦シーンは叡山と本能寺の2つに集約されてるからだ。2つだけ!?となる。僕はなった。

そもそも織田信長30年の歴史を3時間に収めなければならないので怒涛のテンポで進んでいくが、その犠牲になるのが合戦シーンである。ほぼカット。

織田信長といえば桶狭間の戦い!金ヶ崎の戦い!長篠の戦い!など色々あるが合戦自体を描かれる事はほぼない。結果発表~~~~!!!!のシーンだけある。

 

「時代劇にはお金がかかる」は有名な話だが、正直この映画のどこに20億かかったのか無知な僕には分からなかった。しかしそりゃ大河ドラマで合戦シーンがほぼ描かれなかったり、滅茶苦茶ショボい訳である。こうなったらハリウッド〜~~~~頼む~~~~~~~~〜!!ゲームオブスローンズみたいなの気が狂って作ってくれ~~~~!!!

 

 

最後に

本作観たオタク~~~あのオチどう思った~~~!?僕はあのまま突き抜けて欲しかったよ~~~~~~~~!!!!!!!

なんか時代劇ファンに配慮して伝説になれず中途半端になってしまった印象。まぁあのまま終わったら滅茶苦茶叩かれたのも想像できるのでこんな記念作品で挑戦できないのもわかるが……。ラ・ラ・ランドかよ!!!ってなる。

もしくはあのまま環境音で最後までエンドロール終わって欲しかった。

 

そしてタイトルの『レジェンド&バタフライ』の意味。なぜこんなダサいタイトルなのか。

パンフレットに「従来の時代劇の枠を超えて、華やかなハリウッド史劇のようなスケールになる。そんな想いが込められている」と書いてあったが、そんなスケール感あまりなかったよね。

 

最後に一言。

エンドロールで斎藤工の文字見た時、まじで!?てなるので注目だ。

 

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