数年に1度開催される細田守映画を皆でワーギャー叩くSNSの奇祭

映画観て監督の人間性まで滅茶苦茶叩かれる3大巨頭は細田守、庵野秀明、新海誠でお馴染みだが、叩かれるコメントと同じぐらい(もしくはそれ以上に)熱心なファンの熱いコメントが多い2人に比べて「まぁ興行収入は右肩上がりの傾向だし成功では」「変な映画でおすすめ出来ないけど俺はまぁ好きだよ」ぐらいの感想が多い細田守監督。『おおかみこどもの雨と雪』以降本当に手放しで褒めている人を見たことがない(断言)
そんな細田守監督最新作『果てしなきスカーレット』は邦画オリジナルアニメ映画女子高生出すぎじゃね問題に一石投じる主人公が16世紀のデンマークの王女。そしてシェイクスピア4大悲劇の1つである『ハムレット』をベースにしたファンタジーもの。正直2時間ぐらいの尺しかない映画1作でファンタジーって相性悪くないか?と常々思ってはいるがその心意気は良し(よし)
鬼滅とか国宝とかチェンソーマンの映画を観た人ならこの映画の予告見た人も多いと思うが、ハッキリ言ってストーリー的には予告以上のものはない(断言)父親を殺され復讐にも失敗した王女が死者の国で復讐の旅にでて「でしょうね」という結論に向けて歩き続ける。
復讐がテーマな作品って木曜サスペンス劇場でよくあった「復讐はよくない、負の連鎖を断ち切ろうと悟る」系か『ガン×ソード』みたいな「復讐をやりきる」系の2つに分かれるけどSNSだと圧倒的に「復讐をやりきる」系が人気。ただ本作は高い予算と日本のみならず世界で老若男女問わず安心して見てもらえるようなマスなターゲットにしているし、キァラクター的にもテーマ的にも「やっぱりそうなるよね」な結論になるから「でしょうね」しかならない。
「復讐の連鎖を断ち切り自分を許し隣人を愛し争いやめましょう」という手垢にまみれたテーマで、現代でそれをやるの、それはパレスチナやウクライナの人々にも言えるか?とも思ってしまう。
愚直な描き方だし君主制なのに民主主義みたいな思考の登場人物もおかしいけど、それでも僕は平和の為のメッセージを照れることなく描くラストは好きだ。
最近村田沙耶香の小説とか読んでて思うけど、社会を俯瞰的に見て冷笑に近い手つきで上手に描く作品が多いなと思う。そういうの読んでて頭良くなった気がするし実際に面白いんだけど読んだ後「だから何なんだ…」と思うこともあって、そういう意味でも本作はあまりにもご都合主義的に話は進んでいくし、導線は切れまくっていて「?」の連続だし今までの細田守映画に比べてもエンタメじゃないし伝えたいことは本当にシンプルで、でもだからこそ…な作品。好き。『時をかける少女』の次に好き。
というか、前作の『竜とそばかすの姫』であった明らかにおかしい「48時間ルール」の描写みたいなただの不勉強なのかやりたい展開の為に嘘ついたのか分からない現代社会が舞台故のノイズが本作では設定が観客には殆ど明かされないファンタジー世界を舞台にすることで解決していて滅茶苦茶観やすい。
やたら都合の良い登場をするサンダードラゴンも、「これは罪を罰する存在なんだな」と何かしらのメタファーとして読解できる所謂”空気のない宇宙空間であんなに爆発音が出たりするのは変という質問に「俺の宇宙では出るんだよ」と答えたルーカス理論”であらゆる事が解決可能。この世界の食べ物はどこから?とかあらゆる事がそういう事もあるか~~で解決できる(できるか?)
しかし、本作が変な映画なのは間違いない。
現代から死者の国やってきた聖という日本人看護師(アーチャー)がずっと「人殺しはだめだ」とスカーレットを説得するというオタクから90%嫌われる不殺キャラ。人殺しダメならダメでずっとそれを通してくれたらいいのに何か急に人を殺す。え~~~殺しちゃうの!?もしかして終盤での闇落ち展開?とか思ったけど、人を殺した事への言及がないまま物語は終わっていく。なんだこれ。聖の過去を思い出させるキッカケが必要だったのは分かるけど、相手を殺さなくても良かったのでは!?と思ってしまった。明らか致命傷だけど致命傷じゃなかったで良かったのでは!?
公開前から話題になってたダンスシーン。どこで挟まるんだ?ラストか?と思ってると中盤急に出てきて笑ってしまった。絶対にいらない。絶対にいらないがダンスシーンがない『果てしなきスカーレット』は色々な意味で話題性に欠ける気もするのでオリジナル映画って難しいね。急に歌うからミュージカルが苦手とかそういうのは卒業したけど、それでもこれはなに??となってしまう。しかも「愛」「愛」うるさい曲でなんと細田守自身が作詞までしていて「あ…あんた…少しはその道のプロに任せる精神も大事では…」とは思う。
あとキャリバンの前で聖が踊るシーンのジジババ達の笑顔の1枚絵がゆっくり横にスクロールしていくのシュール過ぎると思った。時間の使い方が優雅過ぎる。
さっきまで殺しあっていた敵に囲まれる状況の中で隠れることもせずど真ん中で治療を始めるのも、患部を診るために袖を破こうとしたらスカーレットが恥じらいの描写がいちいちあるのも謎。恥じらいのシーンは絶対にいらない。カス。
アクションシーンは滅茶苦茶良い。園村健介&伊澤彩織らがアクションシーンに参加してモーションキャプチャーを使用しているらしい。ダークソウルで見た事ありそうな敵やエルデンリングみたようなステージも出てきてテンションあがるし、いつかダークソウルの映像化に挑戦して欲しい。
細田守、演出は相変わらず滅茶苦茶良いんだけど、説明台詞が演出の邪魔している感はある。
いや、本当に細田守は演出は業界屈指だと思うのですがフロム作品と相性良いと思うんだよな。
前作の覇王色の覇気からの今回の 生ぎたいっ!!!といい細田守、ワンピース大好きか?もう一度ワンピースの監督やりたいってラブコール?
宮野真守と津田健次郎のやたら声の良い登場に意味を見出せない骸骨2人組好き。
オリジナルアニメ映画
興行収入の面では苦戦しそう。興行収入ランキング見てて思うけどやっぱりファンタジーって難しいジャンルだと思う。新しいことして苦戦するの、次の新海誠映画もそういう意味では不安ではある。
鬼滅とかチェンソーマンとか人気原作の人気の章を超作画で描き、ファンに何度も来てもらために週替わりで特典を用意するという映画業界での必勝法が確立された現在でギャンブルみたいなオリジナル映画って正直難しい立ち位置にあると思う。『君の名は。』が大ヒットして以降どれだけ多くのオリジナルアニメ映画がSNSにいる1部の人に気に入られただけで消えていったか。映画監督や脚本家としてセカンドチャンスがなさそうなシビアな世界にビビる。
それでも僕は観ていてドキドキするオリジナルアニメ映画が好きだ。例え予定調和なしょうもない話でも初見時は「もしかして…!?」とドキドキさせてくれる。
次回作の細田守作品はどうなるんだろう。今回の失敗(失敗)で偉いさんから脚本家付けろとか本当に言われるかもしれん。そうなれば以前組んでいた奥寺佐渡子氏か?今年大ヒットした映画『国宝』の脚本を担当したから細田守の叩き棒として使われているのよく見るけど、僕は『国宝』観てないのであんまり言及しないが『国宝』大ヒットしてるけど脚本を褒めてる人あんまり見ないから叩き棒としてどこまで成立しているのか不明である。
細田守脚本でもそうでなくても次回作が楽しみだ。東宝のソニーもしばらくは鬼滅の映画で資金は潤沢にあるだろうし、細田守作品もこれからも作り続けて欲しい。そして公開初日は強いワードを使った酷評が拡散されyoutubeで「酷評」の文字のサムネ動画が乱立し、映画サイトの評価は星2になったぐらいで「いや、面白いよ!」という擁護コメントが徐々に増えていくのを見ながら「あぁもう細田守の最新作に時期なんだな…」とオリンピックや日暮熟睡男の起きる年のようなSNSの恒例のお祭りになってほしい。
お祭りは…お祭りはなぁ!!!!!!!!
参加した方がいいですよ。
