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映画『二ノ国』感想。脳筋クソザコ暗黒騎士は今日も支離滅裂

ジブリ映画を雰囲気そのままゲームとして動かせる事を強みとした『二ノ国』を映画にしたら意味ないのでは。

そんな疑惑をもったまま観た本作。

感想は、分かりやすく言うといつもの日野脚本。

暗殺にも使えるし、世界征服にも使える殺戮マシンが子供たちの間で流行ってる『ダンボール戦機』や超次元サッカーの『イナズマイレブン』などぶっ飛んだ設定を物語の土台に乗せるのは上手いものの、話の畳み方が致命的に下手というかご都合展開が多すぎるというか、フワフワしたまま終わってしまう事で有名な日野晃博さんだが、そんな脚本は本作でも健在だ。

日野さんの脚本って結構叩かれてるし、本人もそんな状況を見て落ち込んでいるとインタビューで答えていたのに未だに自分が脚本を書くことに拘る、そのハートの強さは見習いたい。

日野脚本による力強い本作の感想をネタバレありで書いていく。

映画『二ノ国』オリジナル・サウンドトラック

 

 『二ノ国』シリーズ

2010年にDSで発売された『二ノ国 漆黒の魔導士』から始まった『二ノ国』シリーズ。その後、2011年にPS3で漆黒の魔導士のストーリーに追加要素が加わりリメイクされた『二ノ国 白き聖灰の女王』そして2018年に発売されたPS4『二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム』に続いての今回の映画化。

 

二ノ国』シリーズって正直『二ノ国 白き聖灰の女王』から8年ぐらい新作が出なかったので、『妖怪ウォッチ』など人気作を多数抱えているレベルファイブということもあり、打ち切りになったのかなとファンの間でも諦めムードの中、去年からゲーム新作、過去作リメイク、映画化という怒濤のコンテンツの波がやってきているので、ぜひ映画で興味をもった人はゲームもプレイして欲しい。

 

脳筋クソザコ暗黒騎士ハル

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↑左がユウで右がハル

それでは本作の感想を書いていくが、やはり本作の肝はユウとハル。二人の少年だろう。

予告を見る限り「どちからの命を救えば、もう一方は死ぬ」という命の選択をテーマにしており、親友同士がお互いの大切な人を守るため刃を交える姿に、観客は感情移入し、一緒に悩み、その決断に涙するものと思っていたらそんな事は全く無く、ただただ、思考がワイルド過ぎたり、親友の説明を何も信じない割に敵にはあっさり騙されたりするハルに呆気に取られる。

例えばこのシーン

ユウ「ヒロインと王女は命が繋がってる!ヒロインが死ねば王女も死ぬ!そんな話を昔聞いた」
ハル「いや違う!王女救ったからヒロインが死ぬんだ!どっちかしか救えないんだ!俺は王女を殺す!」

いや、なんでそういう物騒な思考回路になるんだよ、

少しは親友の話も聞いてやれ、信じてやれよ。お前本当はユウが嫌いだろ。

これは人は信じたいモノを信じる生き物で、真実なんてどうでも良いという現代の風潮への皮肉なのかもしれない。

 

そもそもテーマの「どちからの命を救えば、もう一方は死ぬ」という命の選択が実際には嘘というのも酷い。

ユウは王女のアーシャを守りたいが、ハルはヒロインのコトナを守りたい。

アーシャを殺せばコトナが救われるというのはハルが抱いた妄想、もしくは敵がハルに吹き込んだ完全な嘘なのである。

本当は命がアーシャとコトナで共有であり、どちらかが死ぬと残りの片方も死ぬという真逆の設定が真実なのである。完全にハルが間違っているのである。

この嘘が観客は早々に分かってしまうのでハルがピエロにしか見えない。そして、あんな化け物扱ったり、自分を村人Aから暗黒騎士にジョブチェンジさせようとしてくる様なヤツの言うこと信用するなよ。FF4かよ。どう考えても悪巧みしている悪者だろう。愛する者の為に世界を敵に回す的な発想は良いけど、まず前提を疑えよ。少しはバスケだけでなくRPGゲームもしとけよという想いがフツフツと沸いてくる。

 

ただ、現実ではスターで、外面はイケイケで強く見えるハルが異世界である「二ノ国」では「どうせここは夢なんだし人殺しくらい…!」とか「王女を守ると言うなら親友も殺す!」など言って暗黒面に落ちかけたり、戸惑ったり、迷ったりするのが彼自身の「弱さ」という本性が出ている感じがして人間味溢れていて好きです。

本作の一番のストレス要素でありながら、何だか愛おしくなってしまうハル。

そんな暗黒騎士になって強くなったハズなのにユウに普通に負けてしまう、「脳筋クソザコ暗黒騎士」であるハルが本作の最大の魅力と言っても過言では無いと思う。

 

車椅子とユウ

本作の主人公であるユウは現実世界即ち「一ノ国」では車椅子での生活をしている。

ただ、この設定は後半全くと言っていいほど意味をなくすし、鑑賞後、車椅子という設定は必要だったのかという疑問が出てくる。車椅子生活にした上で「二ノ国」では脚の障害をなくすなら、車椅子の設定が必要だったのかとどうしても思ってしまうが、これは最近話題になる意味もなくキャラを白人にするように、黒人やLGBTの設定も意味もなく起用するでことで初めて公平なのではという話と似ていると思うので強くは言えない。

ただ、本作は「一ノ国」では障害者である為、ヒロインに選ばれなかったようにも見えるし、「二ノ国」では健常者である為に王女と恋仲になるようにも見える。

ただ、こういう見方がそもそも差別と言われたらそうだし、内面をみていないと言われたらその通りだと思うので、私も勉強していかないといけないなと思う。一緒に頑張ろうな日野。

 

二ノ国』シリーズファン歓喜

ハルとユウは「二ノ国」を高速で理解し過ぎみたいな意見をみたが、元々『二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム』でも48歳の大国大統領だったロウランが自国を核攻撃された時に「二ノ国」に飛ばされ、20歳に若返りもしつつ、超高速で「二ノ国」の事を理解して行動していたので、シリーズの伝統なんだろ思う。また、同じく『二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム』で出てきたエスタバニア王国や、グラディオンという聖剣(1では杖だったが)またBGMなどシリーズのファンならニヤニヤ出来る場面が多いので、本作はシリーズファン向け作品だと思う。ちょっとジブリっぽいという事で配給会社が間違って公開規模を大きくし過ぎたのが難点だが。

 

そして取っておきは冒頭にもでてきたお爺さん。なんかヤバイ感じで『妄想代理人』に出てきそうなキャラだが、最後にできた服装がオリバーの格好だ。恐らく一作目『二ノ国 漆黒の魔導士』の主人公オリバーの老後なのだ。前作の主人公を老後として出すなんて聞いたことがない。凄い。原点の主人公が次世代の主人公と関わるのは胸熱であるし、シリーズのファンでないとなんだこの爺さん看護師に迷惑かけてるしコワっ!で終わってしまうのは悲しい事である。オリバーはゲームだとめちゃくちゃカッコ良いぞ!今度PS4とスイッチでリメイク出るぞ!

 

王道と雑さと楽しさと

絶対こいつ黒幕やん!というキャラが出てきてあまりにも怪しいので実は黒幕ではないのではと逆に思ってしまうが、そのまま黒幕というストレートさ(日野さん、パンフレットだと元々もっと王宮ミステリーに力入れたと仰っており久石さんに止められて脚本を書き直しており、よくやった久石と思う気持とそれはそれで観たかった気持が半々といった所)

また、魔力の臭いとか初めて聞く要素で犯人を追い詰めるのもミステリーとしてどうなんだと思う。

そしてRPGの鉄板であるラスボスの化け物変化と、助太刀にくるものの、一瞬で出番がなくなる鳥。

妙に尺が長い医師団の踊り(誰得)

これまた長いポールダンス(俺得)

その所為で終盤尺がなさ過ぎて本来なら驚くであろうユウとハルが命繋がったもう一人の自分であるという事実に驚く時間がない(闘技場での息ピッタリが伏線だったとは思わなかった)

作画もジブリ風だからこそジブリみたいに力を入れないと駄目なのに所々良くて所々悪い感じで、作画お化けのようなアニメ映画が多かった今年の中では物足りない印象である。

また、『二ノ国 漆黒の魔導士』のオリバーが母を救う道中で人として成長したり、『二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム』でエバンが真の王になったりした成長要素がハルにもユウにも全く無いのも虚無度に拍車をかけている(私が見つけられなかっただけであったのかもしれない。気付いた人は教えてください)

 

全体的に時間が足りて無くて作りが雑なのだが、登場人物のIQが総じて低いのでここからどうなるか分からない不思議な緊張感があり、楽しめる。

完成度が高くて楽しめる作品もよいが、こういう謎の緊張感ある作品もたまには良い。

 

最後に

個人的には永野芽郁さんの声優演技がそこまで酷いと思わなかったのでネットで叩かれまくっていて驚いた。いや、癖は確かにあるけど僕は好きだぞ!

 

そして日野脚本。

レベルファイブの作品は大体日野脚本なので正直オーバーワークな気がしてならない。

脚本作りが好きなのは分かるが、目のクマも凄いし、最近は新作がどれもこれも延期延期を繰り返している現状はファンとしても辛い。たまには休んで欲しいなという願いを込めてこの記事を終えたいと思う。

最後に一言。

レベルファイブ作品って交通事故起こり過ぎじゃないか!?

 

二ノ国II レヴァナントキングダム - PS4

二ノ国II レヴァナントキングダム - PS4