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谷口悟朗監督好きに見て欲しい『ブラッディエスケープ-地獄の逃走劇-』感想レビュー

変な「東京」でギミック兵器を操る改造人間が1人の少女を守る為にヤクザと不死身の吸血鬼組織から逃避しながら死闘を繰り広げる王道娯楽バトルアクション映画でそのジャンルで観たいモノが全部観れるので満足度高め。そして地面は割れる。

映画『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』公式サイト

 

公式HP見ても分からないようになっているが、本作はあのワンピースフィルムレッドで大ヒットを飛ばし宮崎駿、新海誠に並ぶアニメ映画監督になったのでは!?と僕の脳内で勝手に思ってる一番好きなアニメ映画監督谷口悟朗が原案・クリエイティブ統括を務めるテレビアニメシリーズ『エスタブライフ グレイトエスケープ』(以下『エスタブライフ』)と同じ世界観での物語となっている。

 

ただ、安心して欲しいのは本作を鑑賞するにあたってテレビシリーズを予習する必要性はない。これで多くの人が安心したと思う。え、エクスタ?初めて聞いたアニメっていう人も多いだろうから。地上波放送以外にはFOD独占一挙配信アニメだったので知名度低いのも仕方ない。

『エスタブライフ』の主人公たち「逃がし屋」たちは登場するものの、あくまでも物語の縦軸は本作オリジナルの登場人物達で展開していく。

 

一応、世界観とテレビシリーズの説明をしておくと

 

舞台は遠い未来の東京。AIに管理され、遺伝子改造によって種の多様化がはかられた東京は、「クラスタ」と呼ばれる地域ごとに街が分断され、獣人や魔族などがそれぞれのクラスタに分かれて暮らしている。

線路によって東西が別れているために資本主義と共産主義に分断されている池袋や、上野動物園にちなんで獣人の街となった上野、ヤクザが仕切る新宿、今は亡き大江戸温泉から温泉の街になっているお台場など、それぞれのクラスタは独自の文化を発展させており、互いに人の行き来はできず自分の生活するクラスタの外へ出ることは許されていない。その中でテレビシリーズの主人公達の「逃がし屋」は別のクラスタに移動したい者の手伝いをするという物語。

 

テレビシリーズでは劇場版で監督脚本も担当した谷口悟朗ではなく『ご注文はうさぎですか?』の橋本裕之が監督なのもあって、かなり緩い。基本的に主人公たち(女性)のイチャイチャを楽しむものになっている。人も死なないし、危機的状況もあるにはあるがそれは主人公たちもよりイチャイチャさせるための装置的な役割となっている。緩いのは緩いが話が進んで行く内に世界観が徐々に分かっていく仕様でこれはこれで面白い。

登場人物も「仁義とは魔法少女である」と悟りを開いた魔法少女になりたいヤクザの頭など全体的に緩い。

 

そんな緩いテレビシリーズからこの劇場版を観ると温度差に風邪を引く。

劇場版の主な舞台はヤクザが仕切る新宿なのだが、アニメシリーズだと「大して悪いことはしてない」街を守る良いヤクザ感だしているのに劇場版だと治安は終わり少女の体を売ろうとしたりする「闇金ウシジマくん」のヤクザになる。1人先に脱出して魔法少女として良い空気吸ってる元頭が許せなくなってくるぜ!!!

そして人もバンバン死ぬし流血描写も多い。展開も終始シリアスなんだけども、かと言って鬱展開か?と言われるとそうではないし、最近流行の露悪的か?と言われてもそうではないと答える。王道娯楽バトルアクションとしての軸を外さないのが谷口悟朗監督の真骨頂ともいえる。

故に最先端な物語ではない。全体的に2000年代の香りがする。

ただ、こういうので良いんだよってなる。どれだけキャリアを積もうともエンタメとしてちゃんと王道娯楽エンタメを逃げずに作ってくれる谷口悟朗監督、尊敬しかない。

「逃走劇」と言うシンプルなシナリオを起点に、全ての要因がキャラの魅力に繋がっていくので「こいつら好き」となるし、最後も変な引きとかなくスッキリと劇場を後にできるのも好印象。あまりにも怒りのデスロードみたいな展開に怒りのデスロードみたいなBGM流れる所で笑ってしまうのはご愛嬌。

 

映像も日本人には忌避する人が多いCGアニメなのだが、ただのCGじゃねぇぞ。『シドニアの騎士』や『空挺ドラゴンズ』で有名なポリゴン・ピクチュアズによって抜群のカメラワークでグルグル動く妥協点のCGアニメだぞ!!!これは好みなのだがもう少しCG薄くなってくれると嬉しいのだが…。

 

本作を一番観て欲しい人、エスタブライフファン以外には『ガンソード』や『コードギアス』『スクライド』など谷口悟朗監督の娯楽作品で青春を過ごしてきた世代の人達だよ。

同窓会を、しようぜ。

 

 

最後に

『エスタブライフ』はテレビシリーズや劇場版だけでなく、新たなキャラクターたちが活躍するスマートフォンゲームも予定しているらしい。正気か?映画も正直全然ヒットしてないぞ。

そもそもテレビシリーズをFODで一挙独占配信しており、IPを育てる気があるのか非常に気がかりである。僕はFOD独占配信を否定しない。フリーレンとかスパイファミリーみたいな原作の時点で超人気でプラットフォーム会社が争奪戦になるようなIPとは違ってアニメ化になる事自体が奇跡みたいな作品ってどうしてもある。そんな作品が独占配信で安定して普通よりお金貰って良い作画で製作できるのは良いことだと思う。ただ、これから劇場版やソシャゲにも伸ばしていく必要のある新規のIPを登録者がはてなブックマークの利用者ぐらいしかなさそうなプラットフォームで独占配信させるの、いくら谷口悟朗ネームバリュー使っても無理だろ!!!となってしまう。無理だろ!!!

 

 

最後に最後に流行るの無理とか言って罪悪感出てきた。現在では契約も切れたみたいでテレビシリーズはプライムビデオでも見れるよ!!!ソシャゲリリース待ってますし、本シリーズが流行ってないなんてデマは流すのはやめましょう。「流言は智者に止まる」荀子の言葉です。