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ホラー映画『事故物件 恐い間取り』感想。

ドラえもんの映画を観たかっただけなのに、『事故物件』のコラボCMでクロちゃんの気持ちの悪い映像を観せられる映画館が一番の事故物件になってしまった。

 

f:id:Shachiku:20200828134550j:plain(c) 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

 

「事故物件」

それは殺人、自殺、孤独死、無理心中……などの死亡事故が起きた「いわくつき」の部屋。

 

そんな事故物件に住み続ける芸人・松原タニシ

彼の体験談を綴った著書「事故物件怪談 恐い間取り」を映画化したのが本作だ。

そんな芸人をジャニーズの亀梨和也が演じている。

パンフレットで松原タニシ氏が

「普通に亀梨さんとお話している時も。亀梨さんが

僕っぽい動きをされるんで、”あれ?僕が亀梨さんのマネしているのかなって”混乱したこともあった」

 と仰ってて、亀梨さんのカメレオン演技を褒めたかった意図があるのは理解できるけど、「顔を見ろよ。顔を」って思わずにはいられなかった。すいません。

関西弁の亀梨さんは違和感少なかったと思います。そして関西ローカル番組だと司会が安田大サーカスの団長なのに東京だとよゐこになるのもリアルの質感があった。

 

監督は『リング』シリーズでお馴染みの中田秀夫。去年『貞子』という怖くも面白くないホラー映画を撮っていたので本作も心配だったが

 

www.shachikudayo.com

 

正直、本作も怖くはない。

ただ、途中までは淡々と事故物件紹介していく感じだったのに、終盤で少年漫画の読切みたいな除霊バトルが始まったの爆笑してしまったので、そういうのが好きな人には非常にオススメ

今回はそんな映画の感想をネタバレありで言っていきたい。

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監督:中田秀夫  
原作:松原タニシ「事故物件怪談 恐い間取り」(二見書房刊)

脚本:ブラジリィー・アン・山田

 

あらすじ

かつて自分の笑いで祖母が長生きした経験があり、笑いで人を救うのが目標である売れない芸人・山野ヤマメは中井大佐とお笑いコンビ「ジョナサンズ」を組んでいたが、傘を使ったコントがダダ滑りし、解散。その最後のコントを見ていた唯一のファンであり、霊感があるヒロイン小坂梓に突然の雨が降ってきたので傘を渡す。

ピン芸人としてパッとしなかったヤマメだが番組プロデューサーから、“テレビに出してやるから事故物件に住んでみろ“と無茶ぶりをされ、かつて殺人事件のあった物件に引っ越す。一見普通の部屋だが、撮影すると映像に白いものが写り込み、音声が乱れるなどの怪奇現象も起こり……

 

 事故物件1件目

事故や違法建築が発覚したマンションの405号室。6階が立ち入り禁止になっている。

女の笑っているような声が聞こえたり、ビデオにオーブ(光球、死者の魂)が映ったり、部屋の前にバールを振り上げる男が見えたり、駐車場で赤い服の女が現れたりした。

基本的にヤマメはお笑い芸人で、除霊を行う能力も、それを実行するやる気もないので、家で心霊体験にあい、それをテレビ番組で発表して、「芸人」として成り上がっていくのが本作の大筋だ。

それ故に、幽霊が誕生した原因追及も必要最低限に結構淡々とストーリーは進んでいく。

 

事故物件2件目

本作で一番怖い物件である。

2DKの間取りで和室の畳には血痕が残っていたり、洗面所の排水口には白髪混じりの髪の毛が大量に残っていたり、風呂場には突貫的なリフォームがされており「管理人さんはもっとしっかり仕事して」とクレームを入れたくなる部屋である。

過去に70歳の老婆がニートの息子に殺されており、その殺しの一部始終を見せられるシークエンスが本作で一番「ひぇ」ってなる。

あと、ここでヤマメの元相方である中井大佐(瀬戸康史)の母親が意識不明になり、父親が火事で全身火傷の重症になってしまい、離脱。本作で可哀想なのはダントツで中井である。

f:id:Shachiku:20200828190005j:plain(c) 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

 

事故物件3件目

部屋にはロフトがついており、ロフトに上がるためのハシゴの柵には不自然なヘッコミがある。

入居者は異様な頭痛に襲われ、無意識にロープで自分の首を絞めたくなってしまう事故物件である。

過去2件、首つり自殺があり、「なぜ首つり自殺をしたくなるのか」その原因は分からないまま次へ引っ越すので観客は消化不良である。

f:id:Shachiku:20200828155350j:plain(c) 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

 

事故物件4件目

原作では淡々と事故物件での異様な現象を紹介してく感じなのだが、映画では「オチに向けて盛り上がりがないとダメ!」なので遂に最後の事故物件で霊と直接対決を行う。

ここから本作のノリは完全に少年漫画になる。

 

ヤマメ自体は普通の人なので「胡散臭い霊媒師」の高田純次(本物)から貰った御守りで「冷蔵庫の中で勝手にアイス食べてるデブの霊」や「カップル霊」「ハゲの霊」などを倒すとボスである「ヤマメをストーカーしていた死神風のよくわからん霊」が現れる。

正直、雑魚の霊たちが「カップル霊」以外に前フリも伏線もなく突然に「冷蔵庫の中で勝手にアイス食べてるデブの霊」みたいなインパクトのある奴が出てくるから「だれだれだれだれこいつだれ」って滅茶苦茶戸惑う。

ヤマメ演じる亀梨さんも戸惑っていたので、生まれて初めて亀梨さんと感情の高ぶりが一致した瞬間だと思う。

 

「ヤマメをストーカーしていた死神風のよくわからん霊」という映画をちゃんと観ていてもよく分からないラスボス。

その圧倒的霊パワーに苦戦するヤマメに味方が駆けつける。

霊感があるヒロイン小坂梓である。

f:id:Shachiku:20200828190040j:plain(c) 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

小坂梓役の奈緒さん、可愛い。目が大きくホラー向け。

ただ、敵の力は圧倒的で小坂梓ですらも操られてしまう。

絶体絶命のピンチ。

 

そんなヤマメたちの為に駆け付けたのが

元相方の中井である。

しかも「お前の為に来たんじゃない」とベジータツンデレ要素もある。完璧か?

ラスボスを前にして、今までの味方が駆けつける展開は少年漫画の伝統である。

中井は更にヤマメに事故物件を紹介していた不動産屋さんから除霊グッズを授かっており(不動産屋さんが霊に知識があったり、強いみたいは伏線は一切なかった)

デッカイ線香の火により、死神みたいな霊は苦しむ。

しかし、死神みたいな霊はその火をヤマメたちにも喰らわせようとするが、

その時

小坂梓が持ってきてたあの、冒頭のコントで使っていた傘。

ヤマメ、小坂梓、中井の絆の証でもある傘。

ヤマメはその傘を開いて身を防ぎ、行き場を失った火は再び死神みたいな霊の元へ———

ラスボス撃破である。

冒頭でのアイテムが終盤でキーアイテムになるのはオタクがみんな好きな奴である(主語デカ)

笑い(コントで使った傘)でヤマメは人を救う(物理で)

ヤマメはお笑い芸人としての目標も達成したのだった。

 

ヤマメは事故物件暮らしをやめ、付き合う事になった小坂梓と新しい部屋を探すが、そこに死んだハズの死神みたいな霊が現れ、不動産屋を殺して、物語は終わる。

打ち切り漫画かな。

 

原作からのこの改変、原作ファンの人からすると賛否両論なのは理解できるが、正直映画で「うっすらボンヤリ幽霊が見えるか見えないか」的展開を終始されても反応に困るのも事実で、私はこの展開に笑いを我慢するのに必死だったのでアリだと思う。

ホラーと笑いの相性は抜群だ。

 

最後に

「事故物件」というのは、ここ数十年の間に使われるようになった名称に過ぎません。

どの部屋も、過去にその場所で、その土地で、実際に何が起きていたかは分からないのです、住んでみるまでは。

 

というタニシの言葉がある。

確かに僕たちが住んでいる部屋もかつて何があったのか知らない。

これから引っ越す部屋も何がある所なのか分からない。

そこでなにが起こるのか理解できない。

ただ、「知らないからこそ良い」ことってあると思うので、僕はこの先も必要な事以外は知らないまま生きていきたい。そして引っ越す前にこの映画を見るんじゃなかった。

引っ越すのこわ。

 

最後に一言。

冒頭のクソ面白くないコントが本当にクソ面白くないわ、尺が長いわでビックリしたよね

(更に女装しているのが亀梨さんだと分かって更にビックリした)

 


【ホラー映画レビュー】『事故物件 恐い間取り』感想。

事故物件怪談 恐い間取り

事故物件怪談 恐い間取り