「エロイムエッサイム」という言葉をご存知だろうか。
エロイムエッサイムとは、中世期の欧州で人気となった「グリモワール」という魔術書にある言葉で悪魔を召喚するのに使われていたと言われる。有力な解釈としてはヘブライ語で「神」を意味する「エロイム」と、フランス語で「群れ」を意味する「エッサイム」からなる言葉で神または悪魔など何らかの神格を呼び掛ける言葉。
日本では水木しげる原作の『悪魔くん』で使われ有名になり、それ以降もFGOや『四月は君の嘘』といった最近の作品にも使われる。「エロイムエッサイム エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」と願いを叶えて欲しい時に使われがちである。
映画『禁じられた遊び』では不幸な事故で母親を亡くし自分も心臓が止まったと思ったら運良く落雷が起きて蘇生した少年、春翔。彼が母親を蘇らしたい一心で唱える呪文として「エロイムエッサイム」が使用するが……という話。ここから映画の話を書いていきたい。
監督はJホラー界の重鎮中田秀夫。
近年では『事故物件-怖い間取り-』や『"それ"がいる森』で有名。ホラーの撮影方法を忘れてしまった中田秀夫。
特に『"それ"がいる森』ではジャニーズ映画なのに子供を捕食して巨大化するクリーチャーが出てくるパニックホラー映画という今見返すと「そういうことだったの!?」となる作品である。ただ、面白くはない。鑑賞もオススメしない
そんな中田秀夫監督作品なのであまり期待していなかった。ただ、本作ではホラーというよりホラーエンタメとして極振りしているので観客側がそれにチューニング合わせられたら楽しめる出来にになっていると思う。本作の最大の特徴はやはりファーストサマーウイカが演じる極度のメンヘラ怪異、“蘇り怨霊モンスター”美雪だろう。
台詞が少ない分、顔で魅せる。なんなら変に加工する前の生前の方が怖いまである。
結局人がいちばん怖いってそういうことじゃなくない!?
美雪は植物のように土の中で育ち、Jホラー定番の怨霊でもアメリカホラー定番のゾンビでもない異色のモンスター。土の中から不思議な力で湯呑を割ったり人に乗り移って殺したり、様々な呪法を披露してくる美雪だが満を持して身体を得て蘇ると、鉈という物理で襲い出してて笑ってしまう。倒し方も物理である。「やはり物理・・・・‼物理は全てを解決する・・・・‼」
巨大化すると負けフラグに似ている。怨念が身体を持つと負けフラグ。
また、シソンヌ長谷川による胡散臭い霊能力者も魅力的だ。
『来る』や『カルト』のようにどう見ても胡散臭い霊能者が普通に格があってそこそこ強い展開に弱い僕にとってドンピシャだった。もう少し活躍してくれても良かった。やはり九字切りはテンション上がる。
そして橋本環奈。
去年は『カラダ探し』で女子高生役やっていた橋本環奈だったので本作でビール飲んだりタバコ吸ったりすると「大丈夫!?」ってなるけど、年齢的に制服着ている方が大丈夫ではないのである。
そんな彼女は目の大きさと表情の豊かさのおかげでホラー映画向き。恐怖で歪んでシャーペイみたいに顔がシワクチャになったと思ったらパグみたいなチャーミングな表情になったり変幻自在である。
恐怖場面ではすぐ固まってしまって「動け動け!」とイライラしてしまうこともあるが、中盤では覚醒してカメラを構えて向かっていくシーンは「ヨーーーーーーーーシ!!!」となる。そりゃ好きな感情を持っただけで何もしていないのに呪われたらたまったもんじゃない。「何で私が呪われなきゃならないんだ?むしろ商売のネタにしてやるよ!!!」と覚悟完了するの本当に好き。
最後に重岡大毅。
舞台挨拶ではザ☆陽キャ。圧倒的頼れる明属性といった感じだったのに映画が始まると陽キャ感は消えて少し頼りない父親になっているの凄いなってなる。ただ、子供が死んだ母親の指ちぎって持ってきたのに冷静に「ママの指か?」じゃないんだよ。
そりゃこんなイケメンと付き合ったら美雪も浮気しないか心配になってメンヘラ感強まるって納得できる。やはり結婚するなら重岡大毅のようなイケメンではなく筆者のような不細工の方がオススメ。えっ…絶対に嫌…消えてしまえ…?
最後に
後半はホラーというより変態露出魔に追いかけられるアクション映画感強かったし、怪異に追いかけられて人の気のない山に逃げるな!逃げ道のない小屋に入るな!ってなったよね